No.92603

mirage -ミラージュ-(1)

riruさん

-指先のほんの一振りで、世界は180度変わることがある。-
-これは、鏡の表と裏の、無限の可能性の話-
その第1話。

次→http://www.tinami.com/view/93861

2009-08-31 10:17:54 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:459   閲覧ユーザー数:442

「・・・・・・・子・・・・・・・・・夜見子・・・・・・・・・・・!!」

「え・・・・・・・」

「ったくもー何ぼーっとしてんの、夜見子らしくないなぁ。髪いじっちゃうよ?」

「あ、ちょ、それはだめ!!」

 

人懐っこい顔が鼻先から離れる。やれやれ・・・と言った顔で親友の明美は隣の席の生徒と話し始めた。

明るめの髪にカールを施したツインテールにはっきりとした目。

ちょっと強引だが、活気あふれるその性格は周囲をひきつけるのに一役買っている。

 

一方私、麻倉夜見子はというと・・・

きっちりと正した制服(といっても生徒会長のため仕方のない部分はあったりするのだが)、一度も染めたことのない黒髪ストレート。

いわゆる、真面目学生である。

だがそれは自分自身いやいややっているというわけではなく、この黒髪だって自慢の1つだ。

手入れはそれなりに欠かさずやっているし、癖をつけないため暑い中でも髪を縛る、という行為はまずしないようにしている

 

そんな2人がどうして親友になれたのか・・・私自身不思議でならない

横目でぼんやり明美を見てみる。明美の周りにはいつも誰かしらがいる。

 

私だって他に友達がいないわけじゃない。

ただ、そんな明美のそばにいると・・・自分が明美という光で作られた影のように思えてしまう。

そんな時の自分の姿を鏡で見ると、ひどいものだ。

そんな鏡の自分に、私は決まってこう言う

 

「しゃきっとしなさい夜見子!そんなんじゃ生徒会長なんて務まらないぞ!」

 

・・・生徒会長という役職は、少なからず心の支えにもなっているらしい。

 

「夜見子、次の教室行く前にトイレ寄っていい?」

「あ・・・うん」

トイレの鏡で櫛を入れる。うん、きょうも乱れてない

明美もメイクを整え、トイレを出ようとしたとき・・・

 

                  ・・・・・またか・・・・・・・

 

・・・実は、私麻倉夜見子は、霊感があるのである。

だがなぜか気配を感じることはなく、見えるのはいつも鏡越し。

さっきも私たちしかいないはずのトイレで他の女生徒の姿を見た。

・・・・・・・・でもさっきの人・・・・・どこかで見たような・・・・・・?

 

 

時は移り変わり。

 

ひんやりとした空気が藍色の光を纏う時刻、携帯のライトを頼りにしながら夜見子は校舎の中を彷徨っていた。

明美からもらった携帯櫛をどこかに落としてしまったのだ。

探すのを手伝ってくれそうなのは明美ぐらいだったが、明美からもらったものを落とすなんてそんなこと言える訳ないので曖昧に説明すると、

「今は彼氏の方が大事な時期だから♪」と、さっさと彼氏と帰ってしまった。

 

薄情者・・・とぶつぶつ文句を言いつつ、床にライトを当てながら階段を下りると・・・

                    あった!!

物陰に、携帯櫛を発見した。

急いで手に取り、立ち上がろうとすると・・・

 

                     「!」

 

大きな、姿見。

かなり古くからあるらしいが、裏の寄贈年月日もかすれてしまっていつからあるのかも分からない。

確か生徒の間では踊り場の大鏡とか呼ばれていたっけ・・・

 

・・・この時間帯の鏡は、鏡を見るのが好きな人だって気味悪がるだろう。

あの能力を持っている私ならなおさら・・・

月が創り出す蒼い光を纏った自分の姿だけが、不気味に映る。幸い、今のところ自分以外の姿は映っていない。

変なものを見る前に帰ろう・・・ 携帯櫛を胸ポケットにしまい、立ち去ろうとした。   ・・・・・が

 

・・・・・・・・・・珍しく、嫌な気配がする

 

夜の学校なんて怖い話の舞台ではよくあることだから、普段気配を感知しない私でも感じるものがあるのかもしれない。

好奇心とは恐ろしいもので、見ないと心に決めた大鏡に目を向けてみた。すると・・・

 

               「明美・・・・っ!!?」

 

思わず後ろを振り向いた。鏡に一瞬映ったのは、確かに明美だった。

だが、鏡に明美が映っていたところには誰も居ない。

鏡を見直してみると、そこにも明美の姿はなかった

 

大鏡に近づく。 鏡面は、怪しげな光を放っている

引きつけられる様に、吸い込まれる様に・・・

鏡には不思議な魔力が宿っているというが、思わずそれを信じたくなってしまうほど、その光は美しかった。

 

                    ふっ

 

                -  !!!!?  -

 

全く以って不意だった。指先を確かめる。 濡れた跡は・・・ない

だがあの感触は・・・鏡面に触れた時のあの感触は・・・

水のそれだった。

 

・・・・・・・・もう一度、大鏡に触れる

 

                ぴちょん

 

鏡面に波紋が広がる。

「これ・・・・・は・・・・・・・」

そうつぶやいた瞬間、鏡から溢れんばかりの光が照らし出された・・・!!!

 


 
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