10月、天空市内では豊穣祭の準備が始まっていた。
天空電鉄風天車庫。
「珍しいね検さん、海外型電車にデコレーションなんて」
乗務の合間を縫い休憩中の油木佑と溝之口千夏が、電車の整備をしていた長津田検に話しかける。
美しく飾り立てられた電車はいずれも海外から輸入してきたもので、
元ポルトガル・コインブラ市電の7号、元ドイツ・ドルトムント市電の66号、元オーストリア・ウィーン市電の403号、
それに元イタリア・ミラノ市電の512号だ。
「ほら、天空市って海外からの移民の方も多いだろ?差し出がましいかもしれんが少しでも故郷を懐かしんでもらえればと思ってね」
「そういえばもうすぐ豊穣祭なんですよね」
「ああ、町中忙しくなるぞ」
晴天おさかなセンター。
訪れたのは風栄神社の祭神にして経営コンサルタントの大黒金之助、七福神の大黒さんである。
「よぉ、鯛山。今日はいつにも増して大漁だなァ」
金之助が声をかけたのは晴天恵比寿神社の祭神でありフィッシングクラブの会長の恵比寿鯛山、七福神の恵比寿さんである。
「いやぁ、せっかくの豊穣祭ですからついつい意地になってしまいましてな」
「祭りを盛り上げたい気持ちはわかるが、あんまり無茶すんなよ。ぶっ倒れちゃ元も子もないからな」
「ははは、ご心配召されるな。…お、これは大物だ!金さん、手伝ってはもらえませんかな?」
「よしきた!せーの!!」
釣り上げたのは巨大な鯛。この付近でもめったに釣れないという大物だ。
「ふーっ…いくらあんたが大漁の神ってもこれはデカすぎだろ…」
「しかし、これだけ大きな鯛ならさぞ、祭りも盛り上がることでしょうなあ」
二柱の神は規格外の大きさの鯛を前にして大笑いしたのであった。
さて、みなと公園前電停付近。
いつになくどす黒いオーラ全開の男が一人…。
「ふふふ…祭りとあっちゃリア充どもがうようよやってくるんだろうなフフフ…かかってきやがれ、お前ら全員不幸のどん底に突き落としてやるグヘヘヘ…」
どうみても嫌味ったらしい笑いを浮かべるこの男は小野島塞人である。
「あーまた始まった。あんまりリア充いじめんなよサイト」
少々あきれ顔なのは塞人の兄・開人。
「フン、アンタにゃわからねえよ…この俺の苦しみなんて永遠になフヘヘヘ…」
(ダメだこいつ、すっかり荒んでやがる…リア充逃げてこいつの視界から今すぐに!)
その隣では一人黒い笑みを浮かべる早乙女英理荒。
「フフフ…カモになりそうなヤツが近づいてきたら片っ端からいじめてあげるわ…」
「やめとけってエリア、そのうち捕まるぞ」
ウォルター・クラークはそう言いながらも市内の飾りつけをせっせと始めていた。
(つづく)
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リレー小説だけど今回はオムニバスに近い。
■出演
検さん:http://www.tinami.com/view/755610
佑:http://www.tinami.com/view/748897
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