格闘娘とルカリオ
トバリシティを目指して長い道を進んでいたクウヤ。
その旅路の途中には何度もポケモンバトルを挑まれるトレーナー戦や、突然襲いかかってくる野生ポケモンとのバトルが何度もあったが、持ち前の元気やポケモンとのチームワークを存分に駆使して無事に進むことができていた。
「うっひゃー!
すっげぇ雨だぜこりゃあ!」
その途中のことだった、大雨に襲われたのは。
自然に起こっているこれはさすがにどうしようもないので、クウヤはまず雨宿りができそうな場所を探す。
「・・・あ、そうだ、あそこ!」
そこでクウヤが目を付けたのは、崖の岩壁に大きく開かれた穴・・・いわゆる洞窟だった。
クウヤは迷わずその洞窟に突入し、雨を防ぐ。
「なんとか雨宿りできたな・・・へっくち」
雨が入ってこないことに安心したクウヤだが、体が冷えていたために小さくくしゃみをした。
「うー、このままじゃ風邪ひーちまうぜ・・・ヒーコ!」
暖をとるためにクウヤはボールからヒーコを出した。
尾の火に手をかざして自分の体を暖めつつも、服を脱いで乾かす。
服を着たままの方がかえって風邪を引きやすいことを、クウヤは知っていたのだ。
「うぅーん、木があればたき火もできるんだけどなぁ・・・」
だがこの雨の中外にでようとは思えないし、なによりも拾ってきた枝は湿っていて火がつかないだろう。
「わりぃなヒーコ、おまえの火を借りるぜ」
「モウモウッ」
「気にすんなって?
・・・へへ、さんきゅ」
そうしてヒーコと話をしていると、女の子の声がした。
「ふえぇ・・・やっと雨宿りできました・・・」
「え?」
「え?」
洞窟にはいってきたのは、ピンク色の短い髪で動きやすいスポーティな格好をした、自分と年が近そうな雰囲気の女の子だった。
「あ、すみません!
先に人が来ていたなんて知らなかったんです!」
「いや、そんくらい気にすんなよ」
必死に頭を下げて謝ってくる少女を本当に気にしない様子で答えるクウヤ。
「オレはクウヤ、お前は?」
「はい、あたしはスモモっていいます」
明るく笑って自分の名前をいうクウヤに、スモモも礼儀正しく名前を名乗る。
「そうなんですか、貴方はポケモンジムを巡っているんですね」
「ああ」
スモモもクウヤと同じように暖をとりつつ、話をしていた。
クウヤは自分がシンオウを旅してポケモントレーナーとしての修行をしていることと、そのために各地のポケモンジムを巡ってジムバッジを集めていることもはなす。
するとスモモも、自分もポケモントレーナーだと言ってその話に強く食いついてきた。
「今バッジはいくつなんですか?」
「3個だよ、ほら」
「わぁ・・・クウヤさんって強いんですね!」
「はは、さんきゅなスモモ」
クウヤのジムバッジをみてスモモは素直に関していた。
彼女には決して偽りがなく妬みもなく、純粋にクウヤの実力を評価していることはその素直なリアクションからわかる。
「そのモウカザルも素敵です・・・よく育てられていますし・・・貴方といいチームワークを持っているのがわかります」
「え、そこまでわかんの?」
「はい、あたし、かくとうポケモンを窮め尽くすのが目標で修行しているんですよ」
「かくとうポケモンかぁ」
そう言いクウヤはスモモの足に視線を向けた。
「だからお前裸足なのか・・・でも結構きつくね?」
「昔はきつかったですけど、今はすっかり慣れたんで大丈夫です。
それに、これもあたしにとっては修行なんです。
「そっか、まぁオレもよく裸足で遊んでたから人のこといえねぇけどさ」
クウヤはルネで、貴一夫妻の目を盗んで外に遊びにでていたときのことを思い出していた。
靴をとりにいくこともできず、靴下ででれば汚れてすぐにわかってしまうためにいつも裸足で遊びにでていたのだ。
「今日もかくとうポケモン達と修行をしていたんですけど、その途中で雨が降ってきてしかもその量がすごくて・・・休憩も兼ねて雨宿りしようと思ってたんです」
「んで、ここに入ってきて今、おれとこうやって話をしてるってことか」
「そうですね」
裸足で修行ときき、クウヤはふと疑問を抱いた。
「そういやスモモってさ、旅してんの?
それともこの近くの町にすんでるの?」
「後者です、あたしはトバリシティの出身です」
「え、トバリシティ!?」
トバリシティ、という場所を聞いてクウヤははっとなる。
「じゃあさじゃあさ、トバリシティのトバリジムって知ってるか!
おれそこ目指してるんだけど!」
「え、ええ・・・知ってます」
いきなりテンションがあがって興奮するクウヤにびっくりしつつもスモモはトバリジムのことを肯定した。
「やっぱり、貴方はトバリジムを求めていたんですね」
「ああ・・・あ!」
「どうしたんですか?」
クウヤは外を見た。
「雨がやんでる!」
「ホントですね!」
「よし、次の雨がこないうちにこのまま進んでさっさとトバリシティに到着しちゃおうぜ!
そして一気にジム戦だ!」
「そうですね!」
雨が上がったことでますますテンションがあがったらしい、クウヤはスモモの手を引いてトバリシティを目指そうとした。
「ピィィィィィィ!!!」
だがそのとき、遠くからポケモンの声が聞こえてきた。
その声はただの鳴き声ではなく、叫び声とか悲鳴に近い。
「なんだ、今の声!」
「クウヤさん・・・」
「ああ、言ってみようぜ!」
クウヤとスモモはポケモンの声がした方向に走っていき、声の元に到着した。
そこでは数台のトラックが止まっていて、そばには人間が数人、たくさんある檻にはポケモンがぎゅうぎゅうにつめられており、その檻の中からポケモン達は鳴き声をあげて出してほしいと訴える。
そのポケモン達に対し人間は鳴くな、五月蝿いと叫ぶがポケモン達は鳴くのをやめない。
それに腹を立てて自分のポケモンでそのポケモン達を黙らせようとするとそこにヒーコのひのこがとんできた。
「なんだ!!」
「おいこらお前達、そのポケモンをどうするつもりだ!」
「あぁ?」
「ってあー、お前らはギンガ団!」
「ギンガ団・・・この人達がそうなんですか!!」
ポケモン達を集めていたのはギンガ団だった。
「やいギンガ団、ここで何やってんだ!」
「ここのポケモンを大量に捕らえて我々の元で教育し、最強軍団を作ってシンオウを征服してやるのだ!」
「そんなこと、させてたまるか!
っつーかまたそんなことやってたのかよー!」
以前、ハクタイの森で密猟者として動きポケモン達を大量に捕獲していたときのことを思いだし叫びつつ、クウヤはヒーコでギンガ団と戦う。
「ドクケイル、どくどく!」
「かわして、かえんぐるまで攻撃しろ!」
大勢のポケモンが相手ながらも臆せず、クウヤはテンポよくヒーコに指示を出して次々にギンガ団のポケモンを倒していく。
「・・・クウヤさん、やはり強い!」
その力にスモモが感心していたが、敵のゴローンが放ったいわおとしの岩がクウヤに落ちてこようとしていたのに気づき彼の元に駆けつける。
「クウヤさん!」
「うわぁっ!」
「はぁあ!」
クウヤにとんできた岩をスモモが拳で破壊した。
「スモモッ」
「あたしも戦います」
「っへ、ちょっと腕力が強いくらいで俺達のポケモンに勝てるのか?
こんなちっちぇお嬢ちゃんがよぉ!」
スモモの拳の力に驚きを見せつつも、自分達にポケモンがいるからということとスモモが女であることでギンガ団は威張り散らす体勢を崩さなかった。
「もちろん・・・相手をするのはあたしじゃなく、ポケモンですよ。
貴方達ならばあたし一人で片づけられますが、ポケモンにはポケモンで相手をしたいんですよ。
第一、貴方達のような・・・恵まれた力を他人を不幸にするための力にするような人間を、絶対に許してはおけませんから!」
そういいスモモは青いボールをギンガ団につきだした。
「スーパーボール・・・!?」
「ルカリオ、お願いします!」
「ルカリオ?」
スモモが出したのは、クウヤがシンオウに来て早い時期に遭遇した青いポケモン、ルカリオだった。
そんなルカリオにゴローンがとっしん攻撃を仕掛けてきたが、ルカリオはそれを難なくかわした。
「ルカリオ、かわしてメタルクロー!」
更迭の爪の一撃がゴローンにヒットし、そのゴローンを戦闘不能にする。
「全員いけぇーっ!」
「連続で決めていきます、ボーンラッシュ!」
ギンガ団は自分達が持っているだけのポケモン全員に攻撃指示を出す。
だがスモモのルカリオはボーンラッシュで次々に相手を倒していく。
じめん技がきかないポケモンにも動揺せず、メタルクローやでんこうせっかに切り替えて倒した。
「・・・う、わ・・・」
「なんだよこいつ、つ、つ、つ、つよい・・・!」
「にににににににげろぉぉぉぉ!!!」
戦闘不能になったポケモンをそのままおいてギンガ団は逃げ出す。
だがその行動はスモモを完全に怒らせ、彼女と同じ気持ちであるのかルカリオもうなり声をあげる。
「・・・野生のポケモンをたくさん無理矢理力ずくでとらえるだけでなく、自分のポケモンですら見捨てるんですね・・・。
ルカリオ、こんな人達を決して許すわけにはいきません・・・一気にふっとばしましょう、はどうだん!」
スモモの声と同時にルカリオはその手にエネルギーをため込み、球体に変え、それをギンガ団に向かって放った。
「ぎゃあああああああああ!!!!!!!!」
はどうだんを受けたギンガ団は宙にとばされ星となった。
「つ・・・つえぇ・・・!」
スモモとルカリオの実力を目の当たりにしたクウヤはただ、ぽかんとしていた。
「ふぅ・・・これで大丈夫だな」
「はい、捕まってたポケモンは全員逃げることができたようです!」
「そっか、よかった」
ギンガ団のトラックに乗っていた檻を次々に破壊して中に閉じこめられていたポケモン達を次々に外に逃がしたクウヤとスモモ。
一匹残らず逃げていったのを確認した後で二人はトバリシティに到着した。
「ここがトバリシティかぁ・・・」
「そうですよ」
「こりゃまたでっかい町だな!」
広い町をみてクウヤは目を丸くしていた。
「ここは夜の方がにぎやかなんです、出店もたくさんでててゲームコーナーも一気に盛り上がるんです。
・・・あたしは、そういうの好きじゃないんですけどね・・・」
「ふぅん?」
出店やゲームコーナーの話をしているスモモはどこか元気がない。
きっと他人には話しにくい事情があるのだろうと察したクウヤは、それ以上のことをスモモに聞くことはしなかった。
「あ、そうだスモモ!」
「?」
「出店は好きじゃないみたいだけど・・・ちょっと待ってろよ!」
クウヤはある出店に向かうとなにかを購入していて、それを自分で一つ持ち、スモモにも同じものを出した。
「これって、おでん?」
「ああ、おでんだよ!
今日お前に助けられたからさ、そのお礼におごるぜ!」
「・・・」
スモモがおでんを受け取るとクウヤはへへ、と無邪気に笑って自分のおでんを食べはじめる。
うめぇといいつつおでんを食べるクウヤをみて、スモモも同じようにおでんを食べると、思わずおいしいっと声を漏らす。
「だろだろ、うまいよなー!」
「はい!」
「実はポケモンのぶんにも、買ってあるんだここに。
だから後でポケモンセンターでポケモン出して、そいつらにも食べさせるつもりだぜ!」
「そうなんですか」
そんなこんなで、楽しい会話を入れつつおでんを食べ終わった頃に、クウヤはスモモに対して抱いていた疑問を投げかけた。
「なぁ・・・スモモ・・・。
あのときお前が持ってたのって・・・スーパーボールだよな?」
「はい」
「じゃ、じゃあやっぱ、お前が・・・そうなのか?」
クウヤの言いたいことがなんなのか、だいたいわかったスモモはにこっとほほえみ改めて自己紹介した。
「はい、あたしがかくとうポケモンの使い手であるトバリシティジムのジムリーダー、スモモです!」
ジムリーダー、スモモは強く笑った。
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3人目のジムリーダー登場です