北郷一刀13歳
「一刀も大きくなったわね。」
声の方に向くと俺の母さんが考え深そうにそんな事を言っていた。
「まぁ、もう13だからね。今年から中学生だよ。」
「そうね。・・・でも一刀。本当にやめちゃうの?スポーツクラブ監督さんも残念がってたわよ。」
「うん。やりたいとは思うけど、中学生になったら勉強は難しくなるし部活動もあって忙しくなるからね。」
そう、俺は中学生になるにあたって通っていた剣道や空手、柔道などのスポーツクラブを辞めることにした。
学校生活との両立は難しいし、部活動で出来るからだ。ちなみにクラブ時代大会には出場していない。
クラブの掛け持ちが多すぎて大会の日と練習の日が重なってしまうことが多かったからだ。だから
部活動で出場する大会がデビュー戦ということになる。
「わかった。でもまたやりたくなったらいつでも言うのよ。」
「うん。ありがとう母さん。」
そしてクラブをやめる申請や準備をしていると入学式当日になった。
「以上をもって入学式を閉式とします。」
「終わった〜。」
やっぱりこういう式典は長いな〜」
周りの人達も終わったーとか、疲れたなど思い思いなことを口にしていた。
「この後部活見学あるんだろ。何見ようかな〜」
誰がそんなことを言った。そうかこの後は部活見学で自由に部活が見れるんだった。何を見ようか。
そう思いながらも気がつけば武道場に来ていた。
「我ながら単純なものだな。取り敢えず入ろう。」
中に入ると柔道部と剣道部がいた。本当はもう一つ空手部があったようだが部員不足で廃部になったらしい。
うむ、どっちを見ようか。・・・剣道にしようかな。剣術が一番得意だし、実戦もやっておきたいしな。
よし!
「すみません!見学したいんですが・・・」
こうして俺は剣道部を見学し、そのまま入部した。
数ヶ月後
「ありがとうございました!」
今日の練習も終わった、終わった。早く帰って家で他の練習しよ。
そう思い片付けをしていると先生に声をかけられた。
「おう北郷、もう帰えるのか?」
「はい。帰って家で自主練しようかと。」
「帰ってまだするのか!?流石入って一ヶ月でエースになった天才だな」
「やめてください。俺はエースでも天才でもないですから。」
「はっはっは!入って一ヶ月でうちの三年生18人全員をボコボコにした奴が何言ってるんだ。」
「それはそうですけど、あれにはちゃんと理由があって」
「わかっている。あのことについては、気づけなかったこちら側が全面的に悪い。」
現在剣道部に三年生がいない。それは入部して一ヶ月の時に三年生全員と、俺が勝ったら部活をやめてもらうという賭けをして勝ったのでやめてもらったからだ。勿論この賭けをしたのにも理由がある。それは三年生全員が二年生をいじめていたからだ。それもお金を脅し取ったり、殴る蹴るの暴行などを加えるなど、
犯罪といってもいいほどのいじめをしていたのだ。先輩といえどそれは許せないと、文句を言いに行った
のだが、話も聞いてくれずに殴りかかってきた。・・・まぁ素人丸出しのパンチだったのでカウンター気味に
顎に拳を入れたけど。そんな事をしてしまったので周りの人達も襲いかかろうとしてきたのでお互いの退部をかけた賭けを提案した。だが相手はそれじゃやらないと言ってきたので、追加で俺が負けたら金を払って、
このことも黙っておくと言ったら喜んでOKした。本当にクソだな〜と思いながら勝負の内容を提案した。
勝負の内容は剣道での代表戦で三本先に取った方が勝ちというだ。相手は意外にもこの勝負に乗ってきた。
やっぱりクソでも武道家かと思いながら準備を終え武道場に行くと、三年生全員が竹刀と防具をつけて待っていた。・・・ああ、もう本気で潰そう。その考えに至ったので本気で面や胴に打ち込んだり、喉を思いっきり
突いたりした。結果全員立てなくなるまでボッコボコにした。すると騒ぎを聞きつけた先生に捕まり
職員室に連れてかれた。その後三年生によるいじめが発覚し全員自宅謹慎処分となり、処分中に退部届けを
提出したようだ。・・・でだ、そんな事があった為に俺が三年生18人病院送りにしたヤバい奴という噂が
流れてしまい、剣道部のメンバーに避けられ現在友達ゼロというのが今の現状だ。なのでその事についてはあまり触れて欲しくはない。
「まぁ、とりあえず気をつけて帰れよ。明日は試合なんだからな。」
そういって先生は帰っていった。
「・・・はぁ〜、帰ろう。」
そう思いながら俺は帰途についた。
次の日
今日は試合当日、つまり俺のデビュー戦になる。一応同じ学校の部員内では負け無しなので多少の
自信はあるが、どんな強敵がいるかわからないので油断は出来ない。
そう思いながら試合会場に入り、開会式も終え準備をしていると先生が話しかけてきた。
「北郷、お前は初出場だが緊張することはない。いつも通りで行けば大丈夫だから落ち着いていけ。」
「はい!」
そうだ。俺だって努力してきたんだ。あまり固くならずに自信を持って行こう!
先生のおかげで気持ちもほぐれ、ついに一回戦が始まった。
「始めぇー!」
審判の掛け声と共に始まった。相手は県内でも上位に入る三年生だ。どうやら相手はこっちが一年生だと
いう事で一気に決めにくるらしい。
「面!」
そう思っていると上段から面打ってきた。こういう時は・・・
スカッ
あえて竹刀で受け止め、ずすり足だけで避けて相手の攻撃を外させる。
そして・・・
「面!」
バシン!
避けたと同時に上げておいた竹刀を相手の面向かって振り下ろす!
「一本!」
よし!上手くいった。二本先取で勝ちだからもう一本取れば俺の勝ちだ。だけどこれで相手も気を引き締めてくるだろうからここからが本当の勝負だ!
「始めぇ!」
二本目が始まった。案の定相手はさっきの様な、隙だらけの攻撃はしてこない。・・・ならこっちからいく!
上段に構え相手に突っ込んだ。すると相手はこっちのがら空きの胴を狙って打ってきた。
「胴!」
でも、それはこっちの狙い通り!打ってきた瞬間に急ブレーキをかけ後ろに飛び、相手の胴が外れた所で
無防備な相手の面に打つ!
「面!」
バシン!
「一本そこまで!」
よし!よし!デビュー戦を勝利で飾れた!次の二回戦もこの調子で勝ってやる!
「ありがとうございました!」
挨拶も済み次の試合の準備をしようとしていたら、対戦相手がこちらを睨みつけてきた。何だ?
「ちっ!」
こちらに舌打ちをしてきた。幾ら負けたからって舌打ちはマナー違反だろ。
そう思っていると相手は行ってしまった。・・・まぁいいか。よっぽど悔しかったんだろうし、このぐらいで
怒るのもなんだしな。
「二回戦出場選手は準備をお願いします。」
っと、もうか。早く準備しなくちゃ。
急いで準備をして試合会場に戻った。
戻った後少し待ち時間があったので座って待っていると、こちらを見ながらヒソヒソ話している人が何人か
いた。何なんだ?
そんなことを考えていると自分の試合の番が回ってきた。
とりあえず気持ちを切り替えきなきゃ。
気合を入れ直して、試合場に入る。
「よろしくお願いします!」
この試合も勝ってやる!
「始めぇ!」
・・・
「一本!そこまで!」
「ありがとうございました!」
ふぅ、とうとうここまで来たか。次はついに決勝だ。ここまでは何とかストレート勝ちで来たが、
決勝の相手は全国にも出場している強敵だ。気を引き締めていこう!
そう思っていると一回戦で試合をした先輩がニヤニヤしながらやってきた。
「・・・なんですか。」
「いやなに、やっとお前の化けの皮が剥がれると思うと嬉しくてな。」
「何ですかその化けの皮って。」
「何って、おかしいだろ!一年であるお前に三年の、しかも県内でも上位に入る俺が負けだなんて!」
・・・は?何言ってんだこの人。勝負がどうなるかなんてわからないし、一年と三年だから何?年の差なんて武術においては関係ないだろ。
「・・・はぁ〜。何で一年が三年に勝ったらおかしいんですか?」
「はっ、一年は三年にやられるのが普通だからだよ。」
はぁ〜。本当にいるんだな〜こんな人。
そんなことを考えていると
「決勝戦を行います。出場する選手は準備をして下さい。」
アナウンスで呼ばれた。
「・・・それじゃあ先輩俺行きますんで。」
「はん!精々やられてくるんだな!」
そう言って先輩は去って行った。
全く面倒くさい人だったな。・・・さて切り替えて決勝の準備しよ。
準備を終えて会場に向かった。会場に行くと相手の先輩が待っていた。
「両選手揃ったのでこれより決勝戦を始めます。両選手礼!」
「「よろしくお願いします!」」
挨拶をし中に入り、もう一度礼をし構える。
俺は確かに一年生だけど、ここまで来たら負けたくない。この決勝、絶対に勝つ!
「始めぇ!」
決勝が始まった。相手は様子見のようだ・・・ならこちらからいく!
上段からの面!
かなり強めに打ったが剣先で上手くいなされる。なら!
いなされた竹刀の軌道を力づくで変えて
「小手!」
小手に振り下ろす!しかし、相手が読んでいたのか後ろに飛んでいた。
さすが全国出場者読んでたか。
すると相手が小手返しをしてきた。
「小手!」
危ない!横に飛んで避けた。
チャンスと思ったのか相手がそのまま突っ込んできた。
「面!」
上段からの面、うまいこのタイミングでやられたら普通は無理だ。・・・普通ならね読んでいたなら
話は別だ!
「やぁ!」
バシン!
相手の竹刀を上に押し返した。押し返したことで竹刀と腕が上がり胴体がガラ空きだ。その胴体に向かって
全力の胴打ち!
「胴!」
バシン!
「一本!」
よし!一本だ!でもやっぱり強い。最後まで油断できないぞ。
「両者礼!」
二戦目が始まる。出来るなら焦って攻めてきてほしいが。
「始めぇ!」
二戦目が始まった。・・・どうやら相手は待ちの姿勢らしい。流石に焦って攻めてはこないか。
なら手を出させるまで!
「面!」
バシン!防がれるが想定通りだ。攻め続ける!
「面!小手!胴!面!面!面!」
休まず攻め続ける。すると相手が誘いに乗ってきた。
バシン!最後の上段打ちが弾き飛ばされた。そのまま追撃で胴を打たれる。
「胴!」
バシン!間一髪竹刀て防げた。危なかったが狙い通り。
もう一度胴打ちの構えで突っ込む!
すると相手は上段からの面打ちをしてきた。
これで決める!
お互いの竹刀が合わさる。
バシ!「面!!!」バシンッ!
「一本!そこまで!」
お互いを見比べる。相手は呆然としておりその手には竹刀がない。そして俺の竹刀は相手の面に叩き込まれている、
・・・よっしゃぁぁ!勝った!
俺が最後にした技それは巻き上げからの面。説明すると相手が上段から振り下ろした竹刀に、俺の胴打ちの軌道の竹刀をぶつけ、手首をひねって巻き込み俺の後方に相手の竹刀を吹き出し、最後に上段からの面を入れたということだ。かなりギリギリだったけどできてよかった。
「両者礼!」
「「ありがとうございました!」」
挨拶も終わり 着替えようとして戻っていたらさっきの先輩がやってきた。
「今度は何ですか?」
「・・・んでだよ。」
「はい?」
「なんでだよ!なんで一年のお前が優勝してんだよ!そこは負けて三年生を立てるもんだろ!」
「何でだって言われても真剣勝負の結果俺が勝ったってだけですが。」
「真剣勝負だ〜!?まぐれだろうがこの天才野郎が!。ろくに努力もしていない一年坊主のお前が三年間必死に努力してきた俺たちに勝てるだなんて才能か運が良かっただけだろうが!!」
・・・今のは頭にきた。
「ふざけないでください!俺だって今まで必死に努力してきました。それを馬鹿にすることはいくら
先輩だからって許しませんよ!」
胸倉を掴む。俺がこれまでどれだけ頑張って来たと思ってるんだ!その努力を才能やら運やらでまとめようとしてんじゃねーよ!
「ちくしょう!なんでだよ。なんでお前はそんな才能持ってるんだよ!そんな才能があるなら俺に
分けてくれよ!」
だから!・・・はぁ〜落ち着こう。ここで俺がキレたら収拾がつかなくなる。ここは先輩をなだめよう。
「先輩。確かに結果俺が勝ちましたが先輩方から学ぶこともたくさんありました。俺は先輩方と試合ができて
楽しかったです。また今度試合をしてくれませんか?」
先輩に向かって手を差し出した。すると
パンッ!
「うるせえんだよ才能ばかりの天才が!お前とやっても楽しくも参考にもならねんだよ!」
「えっ。」
「試合が楽しい?ふざけるな!俺たちは勝つために必死なんだよ!そんな凡人の気持ちも分からないから
テメーは天才なんだよ!その言葉努力してから言えるかやってみろ!」
そう言って走り去って行った。
試合が楽しくないか・・・俺にはあまりわからない。だって武道とはいえスポーツだ。武術のような
殺し合いとは違う。純粋に自分の実力を試せるものだと思っていた。
周りを見ると今日戦った人が何人かいたがその全員がさっきの先輩と同じ目をしていた。
・・・ああそうなんだ。俺だけなんだ楽しいの。みんな俺のせいで楽しくないんだ。
そう思いながら表彰式に行った。初出場初優勝。本当は嬉しいはずなのに素直に喜べない。
俺が手を抜けば喜べるかな。次からそうしてみよう、そうすればみんな楽しく出来るかな。
・・・でも俺だって本当は
ぱち。そこで 目が覚めた。くそ!またこんな夢かよ!・・・はぁ忘れよ。
でも 俺はあの時なんて思ったんだっけ?・・・まぁいいか。
今俺は趙雲さんたちと一緒の宿に泊まっている。昨日郭嘉さんを医者に診せて問題はないと言われたので、
町をぶらぶらしていると趙雲さんと再会し、今日はこの町に泊まるとのことなので宿を取り今に至る。
勿論部屋は別々だぞ!・・・ちょっと期待したけど。
まぁそれはいいとしてそろそろ起きるか。
そう思いベットから出ると扉の前から声がした。
「一刀殿起きてますか?」
どうやら郭嘉さんのようだ。ここは明るく明るく
「はい、今起きました。」
「起きてましたか、おはようございます。我々は朝食を食べに行くのですが一刀殿はどうしますか?」
朝食か・・・
「いえ、少しこの町を見て回りたいので俺はいいです。」
「わかりました。それでは行ってきますね。」
「はい、行ってらっしゃい。」
スタスタと歩いていく音がした。さて、俺も準備するか。
出かけるために 着替えているとある事に気がついた。
「そういえばこの服目立つな〜。」
この服で外を歩いていると珍しいのか視線が痛い。これから旅をするとなるとこの時代の服も買って
おいた方が良さそうだな。
ということでまずは服屋に向かうことにした。町は人と活気に溢れていた。いいな〜こんな雰囲気、さてさて
服屋はどこかなと探していると見つけたには見つけたんだが、
「190?」
何処かで聞いた気がする名前だか今はスルーしよう、とりあえず服を見なきゃ。どう思い中に入ると
「うぁ!結構種類あるな。」
思っていた以上に種類があってどれを買えばいいかわからない。どうしよう・・・
そう思い途方に暮れていると
「お兄さん!その服どこで買ったの〜!」
誰だ?後ろを振り返ってみると眼鏡をかけた三つ編みの女の子がいた。この時代にも眼鏡あるんだな〜と
思っていると女の子からさらに質問が続いた。
「この服、阿蘇阿蘇でも見たことないなの〜!沙和にも欲しいから教えて欲しいなの!」
阿蘇阿蘇?なんだそれは?色々疑問はあるが今は質問にこたえなくちゃ。
「すみません。この服は俺の故郷のものでして、お店などには売っていないと思います。」
取り敢えず未来の事が悟られないように当たり障りのないことを言っておいた。
「そうなの!?残念〜。」
女の子は落ち込んでしまったようだ。・・・なんだか悪いことをしてしまった気分だ。話を変えなきゃ。
「え〜と、ここにはよく来るんですか?」
「違うの。沙和達は旅をしているからここに来るのは初めてなの。」
「ここにはって事は他にもこんなお店があるんですか?」
「あるなの〜!でもお兄さんみたいな服は初めて見るの〜!」
まぁ現代の化学素材だからな。・・・そうだ!この子に頼んでみよう。
「あの、実はお願いがありまして。」
「なんなの?」
「実は俺田舎の方から出てきたばかりで、どのような服がいいのかわからないんです。よろしかったら
見繕ってくれませんか。あなたはとても服がお好きなようですし色々な服を知ってそうなので。お願い
できますか?」
「ええ!そ、それはとても光栄なことだけど沙和が選んでいいの?」
「はい。貴方のような可愛らしい方に選んでいただけるなんてむしろこちらが光栄ですよ。」
「か、可愛らしい・・・わ、わかったなの!全身前例を持って選ばせてもらうなの!」
「あ、ありがとうございます。」
いきなりどうした。テンションがすごく上がったみたいだけど俺何かしたか?
「そういえば名前を聞いてなかったなの。沙和の名前は于禁っていうの〜。気軽に于ちゃんて
呼んでほしいの〜。」
「于ちゃんですか?」
「そううなの〜ほらお兄さんも自己紹介してほしいなの〜。」
「え〜と。・・・俺の名前は北郷一刀と言います。北郷でも一刀でも好きな方で呼んで下さい
于き、・・・于ちゃん。」
于禁さんと呼ぼうとしたら目が恐かったので諦めた。
「よろしくなの!それじゃあ早速服を見に行くなの一刀さん。」
そう言って于き、于ちゃんは俺の手を引っ張ってお店に連れて行く。
「ま、待って下さい于ちゃん。あるきずらいですって。」
「于ちゃん今日はありがとうございました。おかげで笑われずに済みます。」
「いいのいいのなの〜。沙和も服選びで楽しかったし、服も買って貰ったからむしろこっちが
ありがとうなの〜。」
そう。今日服選びに付き合ってくれたお礼として欲しい服を買ってあげた。ちょっと値が張ったけど
喜んでくれたなら買った甲斐があった。
「じゃあ于ちゃん、今日はありがとうございました。俺は行くよ。」
「ええ〜!もう少し一刀さんと一緒に遊びたいなの〜!」
「俺もそうしたいですけど・・・あれ于ちゃんのお仲間ですよね?」
さっきから于ちゃんの真名を呼ぶ声が聞こえている。真名を呼べるくらい親密だとすると家族か仲間以外かんがえられないからだ。
「ああ!ほんとなの!凪ちゃん達に怒られちゃう。一刀さん沙和もう行かなきゃなの。今日は本当に
楽しかったなの〜!またどこかで会ったら遊んでなの〜!」
「ええまたどこかで会ったら遊びましょう。」
「うんなの!じゃあまたね〜なの!」
「はい。それではまたどこかで。」
そう言い于ちゃんは走り去って行った。
「さて俺も当初の目的を達成するか。」
そう。俺の当初の目的はバイト先を見つけることだ。今日の朝、郭嘉さんに朝食に誘われたが
自分で稼いだない、しかも貰い物のお金でご飯を食べるのが申し訳なかったので断ったがご飯を食べなければ
腹が減る。でも人のお金で食事を食べるのは申し訳ない。とういことでバイトだ。
「なんのバイトしようかな〜」
そんなことを考えながら歩いていると、
「きゃ!」
何処かから声がした。気になり声のする方に向かうと女性がうずくまっていた。
「大丈夫ですか!?」
驚いて声をかけると
「痛たたた。あ、ご心配ありがとうございます。実は買い出しを終えて帰っていたら足を捻ってしまって。」
確かによく見ると脚が赤く腫れている。
「少し見せて下さい。・・・ああこれは治るのに少しかかりますね。」
「わかるんですか!?」
「ええ。俺もよくやってたもんで。」
「へぇ〜意外とおっちょこちょいなんですね。」
「あはは、そうですね。」
まぁ本当は武術の修業中によくやってたってことだけどね。
「とりあえず送っていきますよ。どこまで送ればいいですか?」
「そんな!悪いですよ。」
「いえむしろ送らせて下さい。怪我をした女性を一人にしておくことなんてしたくないですから。」
「でも少し遠いですし・・・」
「いいですからほら!」
そう言って背中を差し出した。
「そ、そうですか。じゃあお言葉に甘えて。」
素直に応じてくれた。
「っしょっと。じゃあ行きますか。道を教えていただけますか?」
「あ、それでは・・・」
こうして女性を送り届けるために女性が働いているお店に向かった。話を聞くとどうやら女性はお店の店長さんらしく飲食店を経営しているらしい。働かせて貰おうかと思ったがそのために助けた訳ではないのでやめておいた。仕事は他にもあるさ。
女性と話していると目的のお店に着いた。
「ここのお店で合ってますか?」
「はい、この店です。本当にありがとうございました!よろしかったらお店に寄っていきませんか?」
「いえ俺は」
やる事があるので、と言おうとしたら
「て、店長大変です!」
お店から人が飛び出してきた。
「どうしたの?そんなに急いで。」
「それがお店の子が倒れてしまったんです!」
「ええ!大丈夫なの!?」
「とにかくこっちへ!」
そういい二人ともお店の方に走っていった。関係ないかもしれないけど心配なので俺も付いて行った。
お店に入ると中で店長さんたちが話していた。
「それでその子は大丈夫なの?」
「はい。なんでも過労による体調不良で倒れてしまったらしくて。」
「ええ!私そんなになるまで働かせてたの!?」
「あ、いいえ。店長のせいではなくこのお店以外にも何個か掛け持ちしてたらしくてそれの無理が
出てしまったそうです。」
「そうなの?言ってくれれば少しぐらい時間や増やしてあげたのに。・・・でもよかった、
大事にならなくて。でもどうしましょう。あの子配膳と調理の両方の担当だったから、一気に二人もお休みしたようなものだし。誰か代わりに働いてくれる子いないかしら。」
う〜んと頭を悩ませているようだ。すると奥の方にいた小さい女の子が俺の方にやってきた。何だ?
「あのすみません。このお店で働いてくれませんか?」
「えっ!」
いきなりの事だったので驚いてしまった。すると店長さんが
「典韋ちゃんどうしたの?」
「店長さん、この人を雇った方がいいです!多分料理出来ますよ!」
・・・え!え!え!待て待て色々な情報がごちゃ混ぜになってきたぞ。え〜とまずこの店の女の子が過労で
倒れた。そしてその子はキッチンとフロアの両方の担当だったから二人分の穴が開いてしまったようなもので
困っている。するとこの女の子が俺が料理が出来るから雇ったほうがいいと言っている。よし!ここまでは
いい。でだ、今飛んでもない名前が出てきたぞ。典韋。典韋といえば悪童の名で知られる典韋か!?この子が
!?
典韋の名前で頭がこんがらがっていると、店長さんが話しかけてきた。
「先ほど助けて頂いたのに申し訳ありませんが、少しの間でいいのでここで働いて頂けませんか?」
「えっ!俺ですか!?」
「はい!典韋ちゃんは料理の腕も凄いですが人の料理の力量を見極める力もすごいんです。その典韋ちゃんが
料理が出来ると言うんですから信じるほかありません!私達を助けると思ってどうか働いて頂けませんか?」
・・・なるほど。典韋さんは店長さんが信頼するほどの料理の腕前を持っているらしい。そしてその典韋さんは相手の料理の力量がわかる。そしてキッチンとフロア担当の子が休んで困っていた店長さんは典韋さんが
料理ができると言った俺に働いて欲しいと言うことか・・・いや〜すごいな。ただ単に人助けをしたつもりが巡り巡ってこんなことになるなんて。
ちょうど働き口を探していた俺はもちろん
「・・・俺もちょうど働ける場所を探していたので願ったり叶ったりです。」
「じゃあ!」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
こうして俺は当初の目的であるバイト先を見つけたのであった。
その後店長さんと自己紹介をした後、俺の料理の腕を確かめたいとのことなので簡単な料理をすることになった。
「じゃあお願いね一刀君。」
「わかりました。」
とは言ったものの何を作ろうか。・・・よし!
作るものを決めた俺はまず豚肉とキャベツ、人参などの野菜類を一口大に切り分ける。その後中華鍋に
火をかけ鍋があったかくてきたら油をいれる。油が弾けてきたら肉、人参、キャベツの順番で炒める。
ある程度火が通ったらオイスターソース・・・と言いたいところだが無いので塩胡椒で味を整える。ここで
少し味見・・・香りが欲しいな。なんかないかな・・・お、いい物があった。香りはこの八角を入れよう。
八角を入れてすぐに取り出す。八角は入れすぎると苦味がでらからである。そして味見・・・うん。いいかな
「できました。回鍋肉です。」
そう俺は回鍋肉を作っていた。調味料がなかった割には上手くできた。
「美味しそう!いただきます!」
店長さんが食べた。
「どうですか?」
「うん!美味しいです!これならお店で出しても大丈夫ですよ!」
「良かった。」
どうやら気に入ってもらえたようだ。
「じゃあ一刀さん早速ですけど今日から入ってもらえますか。後のことは典韋ちゃんに任せてあるので」
「わかりました。典韋さんよろしくお願いします。」
「はい。よろしくお願いします。え〜と」
「あ!すみません、自己紹介がまだでしたね。俺の名前は北郷一刀と言います。北郷とでも一刀とでも好きに呼んで下さい。これからよろしくお願いします。」
「はい。私の名前は典韋と言います。これからよろしくお願いします一刀さん!」
こうして俺は典韋さんとの自己紹介を済ませ仕事にかかった。このお店はかなりの人気店らしく食事時で
なくてもお客さんが入り賑わっており食事時になると満席になるほどお客さんがきた。初日だったので慣れないところもあったがなんとかやり切れた。
「ふぅ〜。疲れた。」
「お疲れ様です一刀さん。お水どうぞ。」
「あ、典韋さんありがとうございます。」
疲れたので座ってグダッとしていると典韋さんが水を持ってきてくれた。気がきく子だな〜。
「横、失礼します。」
そう思いながら水を飲んでいると典韋さんが横に座って話しかけてきた。
「一刀さんは何で働き口を探していたんですか?」
「うん?ああ。ちょっと人のお金で生活するのが申し訳なくてね。それで働こうかなと思ったからさ。」
「そうなんですか。私は友達を探すためにこの町に来たんです。友達はこの町にいるはずなんですけど
見つからなくて、お金も少なくなってきたので働いてるんです。」
「そうなんだ。俺も探すの手伝おうか?」
「ありがとうございます一刀さん。でもその内会えると思うので大丈夫ですよ。」
「そっか、手伝って欲しかったらいつでも言ってね。」
「はい!そのときはお願いします!」
へぇ〜友達を探すためか、大変だな。それにしても典韋さんの友達か。どんな子だろう。
「一刀君、典韋ちゃんお疲れ様。はい、これ今日のお給料ね!」
「「ありがとうございます!」」
こっちにきて初めて自分で稼いだお金だからやっぱり嬉しいな。さてと
「じゃあ俺は帰ります。また明日来ればいいですか?」
「うん、また明日来ればいいよ。」
「わかりました。それではまた明日です典韋さん、店長さん。」
「また明日ね一刀君!」
「はい!また明日です一刀さん!」
挨拶を済ませ帰路につく。
「そういえば朝からご飯食ってなかったな。・・・どこかで食べてくか。」
こっち来てからの初給料だし何処で食べようかな。
「うわ〜〜ん!秋蘭聞いてくれ!華琳さまがな!華琳さまがな!」
「よしよし、姉者は可愛いな〜。」
そんなことを考えていると二人の女性の声が聞こえた。
「なんだ?」
どうやらあの屋台から聞こえてくるようだ。いつもなら気にしないのだが、何故だか気になってしまい
その屋台でご飯にすることにした。
中に入ると二人の女性だけだった。どうやらおでん屋のようだ。
「いらっしゃい!何にしますか?」
へぇ〜珍しい。女性が屋台やってるんだ。
「じゃあ、適当に盛り合わせお願いします。」
「はーい。」
そういえば二人の女性はどうしたんだ。
「わ〜ん!華琳さま〜!」
「よしよ〜し可愛いな〜姉者は」
・・・なんだかとってもカオスな状態になっている。綺麗な人たちなのに勿体無いな〜と思っていると
「ほらぁ〜お前も飲め!」
酔っている方の美人な女性に酒を差し出された。
「いや、俺未成年なんで・・・」
「なんたとぉ〜、わたしの酒が飲めないて言うのか〜!表に出ろ〜!」
がしっ!ぽい!
「なんでぇー!」
いきなり外に投げ出された。
「ちょ、ちょっとなんですか!」
「なんだとはなんだー!」
そう言いこちらに突っ込んできた。
不味い会話になっていない!こうなったら隣にいた女性に助けを!
そう思い女性の方を見ると
「姉者は可愛いな〜。」
駄目だ!トリップしてる!そうだ屋台の女性は!
「死なない程度にがんばってね〜。」
駄目だ!こんなことに慣れっこなのか冷静だ。
やばい!・・・ええいもう!
向かってきた女性を優しく投げとばそうとする。が、
パシッ
「なっ!」
掴まれた!?
「こんの〜!」
ブンッ!殴ってきた。
「危なっ!」
腕を掴まれた状態でなんとか避ける。このままじゃまずいな。
「ごめんなさい!」
「うわぁ!」
掴まれていた腕を引き相手を投げ飛ばした。
「痛い!」
体勢を立て直し構える。次はどうくる?
そんなことを考えて構えていると
「うわぁ〜ん!痛いぞ〜!」
泣かれてしまった。
「す、すみません!大丈夫ですか!」
慌てて駆け寄る。あぁどうしよう!
パニックになっていると
「大丈夫だ。姉者はその程度じゃ、傷一つないからな。」
隣で飲んでいた女性がやってきた。
「ほら姉者帰るぞ」
「うぁ〜ん!痛いぞ秋蘭!」
「よしよし、帰ったら華琳さまに慰めてもらえ。」
「・・・うん。」
そういうと肩を貸して立たした。
「すまなかったな、いきなりこんな事になって。お詫びに次会ったら何か奢らしてくれ。」
「あ、いいえ。大丈夫ですよ。」
「それではこちらの気が済まない。次会ったら無理矢理にも奢らしてもらうぞ。」
「・・・はぁ〜、わかりました。次会ったら奢られます。」
「ああ、よろしく頼む。それでは私は姉者を送るのでな。」
そう言い歩き出そうとしたが、いきなり止まりこちらに振り返った。
「そういえばまだ名を言ってなかったな、次会った時に名も知らぬのではお互い呼びにくいからな。」
「あ、そうですね。俺の名前は北郷一刀と言います。」
「そうか、私は名は夏侯淵 妙才という。こちらは夏侯惇 元譲という。それではな北郷。」
そう言うと今度はそのまま歩いて行った。
・・・えっ!夏侯淵に夏侯惇!?三国志の超有名武将じゃないか!まさかこんな屋台で出会うなんて。
と言うことはここの領地を治めているのは・・・
その考えに至った所で誰かに肩を叩かれた。振り返ると笑顔の女性がいた。屋台の人か、
何か用か?と思っていると
「あの二人お代払ってないので三人分払ってください。」
「・・・まじですか?」
「はい!」
・・・あの二人〜!
夏侯淵視点
「ほら姉者そろそろ着くぞ。」
「・・・むぅ?ここはどこだ秋蘭?」
「我々が住む城の前だ。」
「そうか、うぅ〜頭が痛い。」
「姉者は飲み過ぎていたからな。」
「だってそれはな華琳さまがな!」
「わかったわかった、華琳さまが最近素っ気ないのだな。」
そう。今日姉者に付き合わされた理由は、最近華琳さまが姉者に対して素っ気ないということだった。
まぁ今は仕方あるまい。最近賊の動きも活発になってきて忙しくしておられるからな。
「わぁ〜ん!華琳さま〜!」
「ふふ、はやり姉者は可愛いな〜。」
そんなことを話しながら城の中に入ると
「あら、二人共とも随分遅かったじゃない。」
「華琳さま!?まだ書類整理があったのでは?」
「ええ。でもひと段落ついたから貴方達とお茶でもしようかと思っていたのだけれど二人して出掛けて
いたようだから待ってたのよ。」
「申し訳ありません!華琳さまがいらっしゃるなら出掛けなかったのですが。」
「いいのよ秋蘭。別に暇な時間まで貴方達を縛るつもりはないから。・・・それよりも春蘭が土だらけなのは
どうしてなのかしら?」
「はっ!実は・・・」
私はついさっき起こった出来事をありのまま話した。
「・・・なるほど大体分かったわ。でも、酔っているとはいえ春蘭を投げる男ね。」
「はい。私も最初姉者が向かって行った時には危なくなったら止めようと思っていたのですが、結果は姉者が
投げ飛ばされているというものでした。」
「少し興味があるわね。で、そのものの名は?」
「はい。北郷一刀と言っておりました。」
「北郷一刀か。・・・欲しいわねその男。」
北郷一刀視点
ぶるっ!なんだいきなり寒気がしてきたぞ。まぁそれもそうかこんな夜更けだし。
ご飯を食べるだけのつもりが、何故か酔った夏侯惇に絡まれて、何故か夏侯淵と次会ったら飲む約束をして、
何故かお代を付けられた。そしてお金が足りなくて今の今の今まで働かされていた。・・・次会ったら
取り立ててやる!
グゥ〜。
・・・腹減ったな〜。本当朝から何も食べていないからな〜。
そんなことを思っているとなんだかいい匂いがしてきた。
なんの匂いだ?匂いの元に行ってみると小さな女の子が肉まんを大量にほうばっていた。
「な、なんだあの子は!?」
こんな夜更けにしかも自分の背丈よりも高く積み上がった肉まんを凄いスピードで食べている。
凄い!凄いけど、・・・あの肉まん美味しそうだな〜。
色々驚くところはあるがそれ以上にあんなに美味しそうに食べられると余計に腹が空いて驚きよりも空腹が
勝ってしまう。
そんなふうに思いながら見ていると女の子がこっちに気がついた。
「兄ちゃんどうしたのそんなにこっちを見て?・・・もしかしてこの肉マンが欲しいの?」
欲しい!と大声で叫びたいがそんなマネできるはずなく。
「い、いいやあんまりにも美味しそうに食べてるからつい見ちゃっただけだよ。」
強がりを言ってしまう。しかし、
グゥ〜。
は、腹が鳴っちゃった。かっこ悪い!
「やっぱりお腹空いてるじゃん!はい!」
そういい、肉まんをひとつ差し出してくれた。
「・・・いいの?」
「うん!本当はボクが食べるつもりだったけど、お兄ちゃんお腹減ってるみたいだし一人より二人で食べた方が美味しいもん!」
・・・な、なんて優しい子なんだ〜!こんな子が本当にいたなんて俺は嬉しいよ!
「ありがとう、ありがたく頂くね。隣座ってもいいかな?」
「うんいいよ!一緒に食べよう!」
こうして俺は女の子の優しさで一日ぶりの食事をとった。
「う、うまい!」
ああ〜肉まんってこんなに美味しかったんだ。
「兄ちゃんいい食べっぷり〜。よーし僕も負けないぞ!」
女の子の食べるペースが上がった。
一個食べるのに1秒弱だと!?なんてペースだ!
心の中でそうツッコミでいると女の子があっという間に食べきってしまった、
「あ〜美味しかった! さて、次は何食べようかな。」
「まだ食べるんかい!」
「当たり前だよ!ボクまだまだ食べられるよ。」
「・・・どんな身体構造してるんだ?」
この小さな体にどれだけ入るんだ。
「でももう帰んなきゃいけないんじゃないの?」
「なんで?」
「だってもうこんな暗いし、ご両親心配してるんじゃないの?」
「え〜とね、ボクのお父さんとお母さんねもういないんだ。」
「あ、ごめん・・・」
「大丈夫だよ!ボク新しい家族が出来たから寂しくないもん!」
「・・・そっか。」
そういい頭を撫でる。
「あっ。」
「あ、ごめん嫌だった?」
「ううん嫌じゃないよ。」
「そっか。」
嫌じゃないらしいのでそのまま撫で続ける。
「・・・何だか兄ちゃんの手、気持ちいいや。」
そのまま頭を撫で続けた。・・・しばらくして
「・・・あ、ボクもう帰らなきゃ。」
言われてみれば辺りはもう真っ暗だ。
「あ、じゃあ送ってくよ。」
「大丈夫だよ!ボク強いし!」
「そういう問題じゃなくて、こんな時間に女の子を一人で帰らせる事が駄目なの!」
「?どういうこと?」
まぁまだ分からないか。
「とりあえず送らさせてくれってこと。ほら危ないから手をつなごう。」
女の子に、手を差し出した。
「・・・わかった。兄ちゃんに送られてあげるよ!」
そういい手を繋いでくれた。
「はは、ありがとう。ところで家はどっちだい?」
「えっとね。こっち!」
言われた通りに進み、その後も同じように言われた通りに進んだ。
「あ、兄ちゃん着いたよ!」
「え!ここ!?」
着いた場所はお城の城門前だった。・・・女中でもしてるのかな?
「じゃあ兄ちゃんボク行くね!」
「ああ。じゃあ最後に名前を教えてもらってもいい?なんて呼べばいいか分からなくて。」
「そういえばそうだったね。ボクの名前はね許褚って言うんだ!じゃあね兄ちゃん!」
「じゃあな許褚!」
手を振りそのまま見送った。そっか〜許褚っていうのか。許褚か、・・・うん?許褚?許褚って
あの許褚か!?
「・・・何だか今日一日は驚きすぎて疲れた。帰ろ。」
今度こそ本当に帰路に着いた。
「はぁ〜疲れた。」
今日だけで色んな人に会ったな。于ちゃんに典韋さん、夏侯淵、夏侯惇、そして許褚ちゃん。
なんだかんだ珍しい体験だったな〜。
そんなことを思いながら歩いていると宿の前に龍牙を担いで酒を飲んでいる趙雲さんがいた。
「ん、一刀殿か。今までどこに行っておられたのですかな?」
「いや、まぁ色々と・・・」
「ほう、興味がありますな。酒のつまみ代わり話して頂けませんかな?」
そういい趙雲さんは自分の横の石をポンポン叩いた。・・・座れってことか。
「はぁ〜、分かりました。」
趙雲さんの隣に座り、今日あったことを話した。
「はははは!なるほど、そんなことがあったのですな!」
「笑い事じゃないですよ。」
全く人ごとだと思って。
「ふふ、すみませぬ。しかし一刀殿は面白い日々を送っているようだ。」
「・・・まぁそこは否定しませんが。」
結構楽しかったのは事実だし。
「ふふ、そうですか。・・・気は紛れましたかな?」
「えっ」
「稟が朝、一刀殿を朝餉に誘ったのだが元気がなさそうだったと言っていましたのでな。」
「・・・そう、なんだ。おかしいな、そんなことなかったのに。」
「・・・顔、引きつってますよ。」
「っ!」
咄嗟に顔をそらした。・・・なんで俺は顔をそらしたんだ。
「おやおや、その反応は図星ですかな?」
「ち、違いますよ!ただお、驚いただけですから!」
なんで俺はこんなにテンパってるんだ!これじゃ本当に図星みたいじゃないか!
「・・・訳を話して頂けませんかな?」
っ!
「い、いやだな〜趙雲さん。なんにもありませんよ〜。」
そうだ何にもなかった。・・・何にもなかったんだ。
「そうですか。・・・一刀殿、私達は信用できませんかな?」
「えっ」
「一刀殿私は短い、本当に短い期間といえ貴方を共に旅をする仲間だと思って信用しております。しかし・・・一刀殿はそうではないのですか?」
「違います!」
パシっ!趙雲さんの手を掴んだ。
「それだけは絶対に違います趙雲さん!確かに趙雲さん達と一緒にいた時間は短いです。
ですが貴方達は見ず知らずの俺を助けてくれた、信じてくれた。その事がどれだけ嬉しかったか、
どれだけ救われたか。そんな貴方達を信用しないなんてこと、絶対にありえません!」
初めてこの世界に来たとき正直不安だった。だって起きたら見慣れない景色が広がっているんだから。
そんなとき趙雲さん達に出会った。最初真名のこと知らないで怒られたりもしたけど、そのことも
許してくれた。そして何より俺が未来から来たことを信じてくれた。そのことが本当に嬉しかった。
そんな人達を信用せず疑うことなんて絶対にありえない!
「・・・一刀殿はなかなか積極的ですな。」
「へっ!?」
趙雲さんが顔を赤らめてそう言ってきた。 よく状況を確認してみると、手を握って顔を近づけている。
・・・は!
「す、す、すみません!」
そう言い手を離した。何やってんだ俺!
「・・・一刀殿、貴方のお気持ちは大変嬉しいです。だからこそ我々を信頼し話していただけませんか。」
趙雲さんが微笑みながら言ってきた。・・・そうだよな。本当に信頼してるんなら話してもいいはずだ。
それなのに俺は心のどこかで彼女達のことを疑っていた。情けない、本当に情けない!
「・・・わかりました趙雲さん訳をお話しします。でも本当にくだらないことですから聞き流してもらって構いません。」
そう言い趙雲さんに今日見た過去の夢の話をした。
「まぁそんな訳で俺は他の人の気持ちがわかったということです。くだらないでしょう?」
「・・・」
趙雲さんが黙っている呆れちゃったかな?そんなことを考えていると
「一刀殿、少し歩きませんか?」
趙雲さんが散歩に誘ってきた。
「あ、はい。いいですよ。」
こうして趙雲さんとともに散歩をすることになった。何でだ?疑問に思ったので聞いてみた。
「あの、趙雲さんどこにむかってるんですか?」
「・・・」
聞いてみたんだが答えてくれなかった。一体どうしたんだ?
そんなことを考えながらついて行くと森の中に着いた。
「・・・この辺りでいいでしょう。」
そういい趙雲さんは立ち止まった。
「趙雲さん一体なんの目的でっ!」
ビュン!話している最中に趙雲さんの龍牙が俺の胸めがけ飛んできた。あっぶね!
もうちょいで刺さってたぞ!
「趙雲さん!いきなり危ないじゃないですか!」
「ほぉ、あの一撃を避けますか。やはり一刀殿はかなりの武の持ち主でしたか」
「そうじゃなくて危ないじゃないですか!」
「なに、人の顔色ばかり伺っている弱虫にお灸を据えようとおもいましてな。」
「よ、弱虫!?」
「そうでしょう。相手が恨み辛みを言ってきたからといって手を抜くようにするなど、弱虫の考え方でしょう!もしもその程度の覚悟で武をやっているならいっそやめてしまえ!」
・・・そのていど?・・・その程度だと!
「ふざけるな!」
「ッ!」
・・・はっ!つい怒鳴ってしまった。落ち着け俺、相手は仲間しかも女の子だぞ。なにムキになってるんだ。
「す、すみません。怒鳴ってしまって。でも趙雲さんも人が悪いですよ〜、いきなり武をやめろなんて。」
「・・・冗談のつもりはないんですがね。その程度の覚悟で武を行われると、見ているこちらが不快になります。」
くっ!耐えろ、耐えるんだ。俺はいつだってそうしてきたじゃないか!
必死に趙雲さんの罵倒に耐えていた。しかし次の趙雲さんの言葉は我慢できなかった。
「本当はそのものに言われた時に安心したのではないですか?どうせ武人としての誇りなど持ち合わせていないでしょうから。」
・・・ブチッ!
「はぁ!」
バンッ!
「くぅ!」
ザーッ。趙雲さんを思いっきり蹴っ飛ばして吹き飛ばした。
「・・・俺だって」
・・・ああ思い出した。あの時俺は悔しかったんだ。
「俺だって!自分の武には誇りを持っています!それ踏みにじる行為はいくら趙雲さんでも許せません!」
「・・・なら、掛かってこい北郷一刀!私にその誇りというものを見せてみろ!」
趙雲さんが龍牙を突き出してくる。俺はその槍を掴もうとするが
「あまい!」
スカッ。龍牙を咄嗟に引っ込められ掴み損ねてしまう。そしてもう一度龍牙の突きがくる!
「ちっ!」
体をひねり突きを避け、距離を取る。
「残念、当たりませんでしたか。貴方が私の槍を掴めることは重々承知しています。ですので少し小細工をさせてもらいました。」
小細工だってあのフェイントが、やはり趙雲さんは強い。
「やはり強いですね趙雲さん。俺も本気でいかしてもらいます!」
趙雲さんとの距離を一気に詰める。
「ッ!はぁ!」
趙雲さんも驚いたようだが、一瞬で判断し龍牙で突いてくる。
「流石ですね趙雲さん。でも俺はそれを待ってたんですよ!」
「なに!?」
突いてきた趙雲さんの手を蹴飛ばし龍牙を弾く。そして趙雲さんに足払いをし倒した後に空中にある龍牙を掴み趙雲さんの首元に押し付けた。
「俺の勝ちですね。」
これで終わりだ。そう思っていたのだが。
「何をしているのですか、とどめをさしてください。」
「えっ!な、何を言ってるんですか!」
「当然でしょう。武人にとって最も大切な武を私は貶し、勝負をしました。例えそれが誰かの悩みを解決するためだとしても最低な行為です。」
「・・・まさか趙雲さん!?」
「ふふ。どうでしたかな久しく本気で戦った感想は。まぁ私では力不足でたった数秒でこの様ですがね。」
「俺の為にこんなことを・・・」
「申し訳ありません一刀殿、私は貴方の武を貶めました。武を貶されることは武人にとって最も屈辱的なことです。例えそれが貴方を助けることでも許されることではありません。たがらここで私にとどめをさして下さい。」
確かに武をバカにされて怒ったがそこまでじゃないし、そのことが俺のためにしたって言うのなら尚更怒ることなんてありえない。
「趙雲さん、俺にはできません。」
「一刀殿・・・しかし私が許せないのです。他人の武を貶しておきながらのうのうと生きることが許せないのです。ですから一刀殿、私に償わさせて頂きたい。」
・・・困ったな。趙雲さんは引く気がないようだ。何かないか趙雲さんが助かりながら気がすむようなことは・・・あ!
「・・・わかりました趙雲さん。貴方に罰を与えます。」
そういい、趙雲さんに手を差し出した。
「俺と友達になって下さい!」
「・・・へぇ?」
ふふ、驚いてる。まぁそうだよな罰と言っておきながら友達になってからなんて言うんだから。
「し、しかし一刀殿、それで罰に」
「当然それだけではありません。」
「ッ!なるほど。友になり、えろえろな事をするのですな!」
「違います!!」
全くこんな時までおちょくってくるんだから。
「はぁ〜。・・・俺と友達になって真名を教えて欲しいんです。」
「・・・」
あ〜やっぱり駄目だったかな。真名を教えてくれなんて
「・・ふふ!」
うん?
「ははははは!そう来ましたか!成る程、確かにそれは罰になりますな。」
「じゃあ!」
「ええ、私の真名を貴方に預けましょう。」
趙雲さんの手を握り、立たせてあげる。
「ふぅ、それでは受け取っていただきたい。私の真名は 星 といいます。改めてよろしくお願いします一刀。」
「えっ、今一刀って」
「ふふ、友であり真名を預けたのならこれぐらい許して下さいな。」
「ああ!すっごく嬉しいよ星!改めてよろしく!」
「おや、一刀も敬語を外しましたか。成る程なかなか嬉しいものですな。」
「そうなんだ。じゃあこれからは星に対してはこの口調でいくね。」
「おや、風達にはしてあげないのですかな。」
「う〜んしてもいいんだけど、失礼じゃないかな?」
「むしろ喜ぶと思いますよ。」
「う〜ん、じゃあそのうちするよ。」
「全く臆病なんですから。」
「う、うるさいな!」
「ふふ、冗談ですよ。」
「全く、星は性格悪いな。」
「一刀ほどではないと思いますよ。」
「「・・・ぷ!ははははは!
この日俺はこの世界に来て初めての友達ができた。
こんにちはこんばんはアリアです!
最近暑くなってきましたが皆さん元気にお過ごしでしょうか。暑さに負けずに元気にいきましょう!
さて今回で6話目になります。かなり急に進んだので駄文だったかもしれませんが暖かく見守って頂けると幸いです。今回は魏のメンバーとの対面と一刀の過去、そして星から真名を受け取りました。物語も段々進んできました。これから盛り上げていきたいと思うので応援して頂けるとありがたいです。
それでは今回はここまでまた次回会いましょう!それでは再見!
次回、軍に所属したいな〜。
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皆さんのおかげで6話目です!
支援、コメント、読んでくださった皆さんに感謝です!