No.90461

桜雨天風(おううあめのかぜ)その12〜放った言葉〜

華詩さん

どこかで起きていそうで、でも身近に遭遇する事のない出来事。限りなく現実味があり、どことなく非現実的な物語。そんな物語の中で様々な人々がおりなす人間模様ドラマ。

2009-08-19 09:01:36 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:683   閲覧ユーザー数:654

 文の家へと向かう、車の中で昨日の事を思い返していた。文は色々悩んだ結果、生まない事を選んだと言った。生むという選択肢もあった。でも、子どもの事あと自分のことを考えると生むという選択肢は選びたかったけど、選べれなかったと言った。

 

 亜輝に相談してある程度の決意した後、両親にもこの事を打ち明けた。両親は子どもができていた事に特別驚きはしなかった。

 

 文と太一との交際は中学校以来しかも家族での付き合いもあった。そろそろ結婚なんておもっていたぐらいだったらしい。それに文も太一も一応は大人だったからそう事も容認していた。その矢先にあの出来事が起きた、おろすという文の選択を受け入れ、賛成したらしい。

 

「それがいい。文のためにも、文が彼を忘れるためにも」

 

 親としては当然と言えば当然の答え、娘の将来を考えたらそうなるでも、文の話を聞く限り文は選んでなんかいなかった、消去法で残った選択肢が一つしかなかったのを選んだと自分自身をごまかしているようだった。

 

 そもそも文の前に選択肢は一つしなかったんじゃないかと思った俺は話を聞き終わった直後、文を傷つけるとわかっていてたが本心を確認するためワザとこういった。

 

「無責任だな」

 

 これが文の話を聞き終えて最初に口にした言葉だった。今思うと本当に最低はセリフだ。

 そのときのそれぞれの表情を思い返す。

 

 最初に目のあった亜輝は案の定、怒っていたというよりキレられたが無視をした。そのつぎに目線をずらして佳織に視線を向けると嫌な笑みを浮かべていた。

 

 そして、肝心の文は下を向いていたため表情は見えなかったが、でも体が少しだけ震えていたっけ。それからいくつか会話をしていく中で、予想通りの反応を文はしてきた。

 

 そのやりとりから、俺は文は自分の意志をどこかで置いてきた事を確信した。文らしいと言えば文らしいけど、なにもこんな時までそうでなくてもよいのにそう思った。

 

 これ以上の話は何の意味ももたないと感じたため、言うべき事を言い俺は伝票を鷲掴みにして席をたち、階段付近まで歩いた所で、肝心の言葉をかけてない事気づき振り返り声をかけたのだ。

 

「ほんと俺だよなあの言葉」

 

 今思うと、何かに操られていたような気もする。

 たぶん、この体の埋め尽くしている半分の遺伝子だろうな。厄介なもんだ、いつまでもこの中にいる。

 何の躊躇もなくスラスラと口から放たれ文に伝えた言葉。

 常識のある人なら、間違いなく躊躇するような内容だった。

 いや、常識の欠片でもある人でも同じか、そうすると俺は非常識なのか。全力で否定したもんだ。

 

 まぁ、お袋が知れば「誰に似たのやら」そう言うな。人と違う事するたびに言われたっけ。

 姉貴なら「バカだねアンタ、でもやっぱりアンタだよ」かな

 親父は、考えるまでもないね。たぶん俺と同じだ。

 

 そんな事まで考えていたら、いつの間にか文のマンションについていた。さて、ちゃんと交通法規に則って運転していたよな。いささか不安を残しながら駐車場に車を止める。

 

 マンションの玄関に向かい、文の部屋番号を押しインターホンを鳴らし、繋がった音を確認ししゃべる。

 

「よう文、今ついた。ロック開けてくれ」

「わかった。ちょっと待っていてね」

 

 そしてマンションの玄関があき、俺はエレベータホールに進みエレベータにを呼び文の部屋がある8階へと向かった。

 


 
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