No.90126

~薫る空~22話(洛陽編)

薫る空22話。
今回ちと短いです。すみません(、、
最後のページでちょっとしたアンケートをばしております。
よろしければご協力いただけると嬉しいです。

2009-08-17 02:20:50 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:5095   閲覧ユーザー数:4267

 

 

 

 

【一刀】「………」

 

 夜。城に戻った一刀は一つの扉の前で右往左往していた。

 

 薫とは先ほど別れ、今は昼間に繰り広げられた逃亡劇の最中に薫が言った『華琳が話があると言っていた』という言葉の通り、一刀はその華琳の部屋の前まで来ていたのだが。

 

【一刀】「朝…逃げたしな……」

 

 中に入った後の第一声を決めかねていた。

 

【一刀】「………まぁ、考えても思い浮かばんものは仕方ないか。」

 

 呟いて、一刀は2度扉を叩く。この時代にには不釣合いなノックという作法。

 

 少しの間が空いて、中から「入りなさい」と声が返ってきた。感情を読み取らせないような静かな声。

 

 その声に応じ、一刀は扉を引くようにあける。地面と扉が擦れ合い、摩擦の音と共に部屋の中が露になる。そのまま部屋の中に足を踏み入れ、中にいる人物に一刀は声をかけた。

 

【一刀】「…遅くなって悪いな」

 

【華琳】「春蘭に追われていたのでしょう?随分悔しそうな顔をしていたわよ」

 

【一刀】「なんだ、知ってたのか」

 

 意外そうに一刀は言葉を交わす。昼間の出来事を外にいなかった華琳がもう知っていることに少しの驚きを見せながらも、部屋の中の椅子に近づく。

 

【一刀】「座ってもいいか?」

 

【華琳】「えぇ」

 

 確認をとり、一刀は腰掛ける。それを見届け、華琳は言葉を続けた。

 

【華琳】「話というのはね、一刀」

 

【一刀】「あぁ」

 

 相槌を打ち、華琳の言葉を促す。わざわざ薫を使いに回すような話題なのかと体が少し緊張してしまう。

 

【華琳】「あなた、文字はどの程度読めるようになったのかしら」

 

【一刀】「文字?」

 

 予想外な華琳の言葉に、一刀はわずかに思考が止まる。

 

【華琳】「えぇ」

 

【一刀】「そうだな…。今のところ俺に回されてくる書簡に書かれているものは普通に読めるようにはなったよ。」

 

 以前より課題だった文字の読み書きはなんとか身の回りのものならば扱えるようにはなっていた。ただ、やはり書物などに書かれているような複雑な字になると少し怪しくなるが。

 

 

 

 

 

 

【華琳】「そう…。なら、もう一つ聞くわ」

 

【一刀】「あ、あぁ」

 

【華琳】「武術はどの程度会得しているの?」

 

【一刀】「武術か……」

 

 今までスルーされてきた話題だが、ここに来て華琳から聞かれるとは思っていなかった。

 

【華琳】「まぁ、今までの事を考えればあまり期待できないのはわかるけれど、実際にどの程度のものなのか、把握しておきたいのよ」

 

【一刀】「あはは…。ま、そんなに期待されてもこたえられるものじゃないしな。武術に関してはたぶんこの時代の人たちに比べたら一般人程度じゃないかな。一応剣術を習ってはいたけど、それも所詮戦のない時代のものだし。」

 

【華琳】「そう…。剣術は習っていた…ということは基礎は理解しているのね」

 

 華琳の顔が少し笑ったように見えた。あいまいなのは、華琳がこちらを向いたときにすぐに元に戻ったから。

 

【一刀】「まぁ…たぶん、な」

 

 嫌な予感を覚えつつ、一刀は自分の体と相談しながら確実な事を答えていく。

 

【華琳】「…なら、一刀。あなた明日から今まで読み書きに当てていた時間を剣に使いなさい」

 

【一刀】「……やっぱ、まじなんだよな?」

 

【華琳】「当然よ。指南役はだれでもいいから、あなたが選んで決めなさい。そのものが暇なときは教えてくれるでしょう。断るようなら私の名を使ってもかまわないわ。」

 

 嫌な予感というものはかくも当たりやすいもので、それはやはりという内容。これから先、一刀も戦にかかわっていくのだから、最低でも自分は守れるようにならなければならない。

 

【一刀】「はぁ…わかったよ。誰でもいいんだな?」

 

【華琳】「えぇ。桂花や薫なんて言い出さない限りはね」

 

【一刀】「わかってるよ」

 

 軍師に武術を習うほど、俺も馬鹿なつもりはない。それに薫はまだしも桂花になんて習ったらどうなる事か。

 

【一刀】「話ってのはそれだけか?」

 

【華琳】「えぇ、そうよ。ちゃんと強くなっておきなさい」

 

【一刀】「はぁ……。あいよ」

 

 一刀はけだるげに答えながらも、椅子から立ち上がり、華琳の部屋を出ようとする。しかし、扉の前で足を止めた。

 

【一刀】「……誰でもいいって事は」

 

 振り向くと、華琳は不思議そうな顔で一刀を見ていた。

 

【華琳】「?」

 

【一刀】「華琳でもいいのか?」

 

【華琳】「…高くつくわよ?」

 

【一刀】「はは。それもそうか。じゃ、また明日な。」

 

 一刀は再びあるきだして、部屋をでた。足音が次第に遠くなっていき、やがて何も聞こえなくなる。

 

【華琳】「………………馬鹿」

 

 静かになった部屋に一言だけが響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋を出た後、一刀は自室へ戻るために廊下を歩いていた。明日から誰かに武術を教わらなければならない。誰を選ぶかは半ば決まっているようものだが、問題は俺がその教えに答えられるのかという事だ。

 

【一刀】「………」

 

 右腕をまげて、力を込める。ほとんど変化のない自分の利き腕をみて思わずため息が出る。

 

【一刀】「筋トレでもはじめるか……」

 

 部屋で出来るようなトレーニングを考えながら歩いていると、前のほうから足音が聞こえてきた。そちらに目をやると、その足音の主は、華琳の部屋に入る前に別れた軍師見習い。

 

【薫】「………………」

 

【一刀】「お、薫。もうねるのか?」

 

【薫】「………………」

 

 一刀は声をかけるが、薫は何も答えず、一刀の横を通り抜けようとする。

 

【一刀】「おい、薫…?」

 

【薫】「………………」

 

 二度目の呼びかけにも、薫はこたえず歩こうとする。

 

【一刀】「薫!!」

 

【薫】「ひゃいいい!!!!}

 

 背中越しに思い切りさけぶと、薫は素っ頓狂な声を上げて飛び上がった。

 

【一刀】「なにぼーっとしてるんだよ。」

 

【薫】「へ?………ぁ」

 

 まだいまいち呆けているようで、薫の反応はいまいちだった。

 

【一刀】「だから、もう寝るのかって聞いたんだよ」

 

【薫】「あ、あぁ…。うんうん。部屋にもどるとこだよ」

 

 少し顔を赤くしながらも、薫はようやく意識を取り戻したようだ。

 

【一刀】「そっか。あんまりぼーっとして壁にぶつかるなよ?」

 

【薫】「あはは。そんなマヌケs………か、ずとくらいだよ!」

 

【一刀】「馬鹿、俺がそんなことするわけないだろ!」

 

 喉を詰まらせたような薫の言葉に少し気をやりながらも、反論しておく。

 

【一刀】「ったく。ほんとに気をつけろよ?」

 

【薫】「は~~い」

 

 薫はそういうと、廊下を走ってそのまま部屋へと戻っていった。

 

【一刀】「随分素直だな……。…ん、あいつ外に行ってたのか」

 

 薫が来た方向を見ると、それは外へと続くものだった。

 

 一刀は廊下の別れている場所まで歩き、薫が来た道とは逆へと曲がり、部屋へと戻っていく。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

なぜ、こんなに短くなってしまったのか。これなら21話に入れてしまえばよかったと今更後悔している和兎です。

 

華琳の話にあったように、これから一刀は勉強重視の生活から武術中心の修行に入っていきます。

その際、指南役を誰にするかです。ちょっとしたルート分岐みたいになってますが、別に話が変わるわけでもなく、ただ一刀とのその指南役のやり取りが増えるというだけです。まぁ、その分自然と物語の中での一刀に対する好感度もあがるわけですが(、、

 

というわけで、皆さんがこいつがいいよ!というキャラで行きたいと思いますので、よかったらお答えいただければと思います(`・ω・´)

 

 

1.華琳      2.琥珀 

3.春蘭      4.秋蘭 

5.季衣      6.凪

 

 

この中かな(’’;

沙和、真桜に関しては指南するというほどの武力があるかどうか疑問でしたので今回は省きます。

 

ちなみに和兎的武力序列だと

春蘭≧琥珀=華琳=秋蘭>季衣≧凪

だと思ってます。季衣と凪の武力差は正直微妙でしたので、史実の事とかも参考に入れてこうしました。

 

それでは、次回から一刀君の主人公力向上計画と都からの使者(恋と音々音)の登場をきっかけに反董卓連合への足がかりを展開していきたいと思います。

 

 

ではでは(`・ω・´)ノ

 

 


 
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