No.89753

涼州戦記 "天翔る龍騎兵" 第2章5話汜水関攻防(1)

hiroyukiさん

第2章5話です。いよいよ汜水関の攻防が始まります。
後、最後の方で翠の秘密が少~しでます。

2009-08-14 16:20:06 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:11146   閲覧ユーザー数:8344

第2章.反董卓連合編 5話 汜水関攻防(1)

 

集合地を発った連合軍は5日後汜水関が見えるところまで来ていた。

 

当然、汜水関からも連合軍が見える訳で、連合軍現るの報を聞いた一刀、趙雲、馬岱は城壁の上へと集まった。

 

「……ついに来たな。……」

 

目の前には辺り一面を覆いつくすような人の群れと乱立する旗がこちらに向かって進軍していた。

 

「ふふふ、中々壮観な眺めですな。」

 

「ふぇ~、20万って頭ではわかってるつもりだったけどこうして見るとなんかあきれちゃうな。」

 

趙雲は平然と眺めつつも闘志を掻き立て、馬岱は余りの多さに唖然としていた。

 

一刀も大軍の威圧感に圧倒されそうになっていたが、そこをなんとか押さえ込み平然を装っていた。

 

「星はやっぱり度胸があるな~、一身これ胆なりってとこだな。それと蒲公英、怖気図いたのか。菖蒲さんが聞いたら説教されるぞ?」

 

「きゃー、お兄様ぜったい伯母様には言わないでよ。それに怖気図いてなんかいないよ。唯あきれていただけなんだから。」

 

説教を喰らうのは絶対いやとばかりに必死の形相で言い募る馬岱をなだめながら一刀は後ろに振り返る。

 

「よし!全軍戦闘準備に入るぞ。趙雲隊は城壁上へ、馬岱隊は下で趙雲隊の補佐。北郷隊は待機。副官、隊の方は任せる。俺はここで全体を見ているから。」

 

一刀は周りに指示を出しつつ内側の端まで歩き下を見た。

 

「皆、聞け!いよいよ帝を、洛陽の民を、そして仲間を守る為の戦いが始まる。連合は大軍、不安があるかもしれない。だが安心しろ、この汜水関は堅牢だし策は十分に練ってある。なにも恐れることはない。各自、将の指示に従い全力を尽くせ。この戦い勝つぞ!皆に天の加護のあらんことを。以上だ。」

 

「「「応!」」」

 

下で整列していた兵達は一刀の檄に答えると準備にと走り出した。

 

それを見ていた趙雲と馬岱は

 

(ほう、普段は頼りなさげな御仁なのにいざとなると中々凛々しいところを見せる。天の御遣いというのも強ち嘘ではないな。)

 

(きゃっ、お兄様かっこいい。惚れ直しちゃった。)

 

と一刀の評価を改めていた。

 

……………

 

 

しばらくして連合軍の様子を伺っていた一刀の元に趙雲がやってきた。

 

「一刀殿、全ての準備が整いましたぞ。」

 

一刀は趙雲の方を向くと親指を連合軍の方に向けた。

 

「うん。星、どうやら先陣が出てきたよ。」

 

「ほう、んー旗から見るに陶謙 劉岱 王匡 張燕 鮑信の混成軍というところですかな。まあ、袁紹、袁術はいきなり出てはこないでしょうが曹操、孫策も出てきませんか。」

 

「蒲公英に言って奴らの斥候を徹底的に潰したからな。こちらについての情報が余りない状態なら曹操や孫策というかその軍師の周瑜は様子を見たいだろうからな。彼女達には余り早い段階から出てきてほしくないんだ。」

 

「しかし一刀殿はその2人をかなり警戒しておられるようですな。」

 

「はは、星も言ってたじゃないか警戒するのはこの2人だって。よし!じゃあ奴らに脅しをかけて来るかな。星付き合う?」

 

というと一刀は城壁を降りる階段へと歩き出す。

 

「ふふ、どれ付き合いますかな。」

 

超雲はそういうと一刀の後を追って階段を降りて行く。

 

下に降りた2人は馬に跨ると城門へと移動する。

 

「城門を開けよ。」

 

ギギギーーー

 

軋む様な音を立て城門が開いていく。

 

「よし、行くぞ。星、仕掛けにかからないようにな。」

 

「だれに言ってるのですかな?」

 

2人は軽い駆け足で馬を走らせると敵軍先陣の前へと躍り出る。

 

「さて、やるとするか。」

 

「ほう、一刀殿。意外に落ち着いてるではないか。」

 

「はは、開き直ってるのさ。」

 

 

一刀は馬から下りると数万の軍勢の前に歩み出ていった。

 

「洛陽に押し寄せんとする賊徒共よ、我は天の御遣いにして皇帝の使者、北郷一刀也。皇帝陛下と天の言葉を伝える、心して聞け!袁紹如きの虚言に乗せられて帝都洛陽を攻め余の民を苦しめようとは不届き極まりない、大逆の罪である。」

 

先陣の兵達は数万の大軍の前に2人で現れ、自分達を弾劾し始めた一刀に呆気に捕られていた。

 

「されど汝らも余の民である。ここより引き返すのなら袁紹に謀られたものとして罪には問わぬ。しかし飽くまでも攻め寄せるなら自らの意思で刃向かうものとして処罰致す。董卓は洛陽を混乱から救った忠臣であり、袁紹は我欲により諸侯を糾合し洛陽に攻め込まんとする逆賊である。どちらが正しいか各々よく考えてみるがよい。」

 

まだ兵達は呆気に捕られていた。

 

「それと天の言葉だ!天は皇帝を見捨てず助力するもの也。ここより先に進もうとするものには天罰が下るであろう。努々疑うことなかれ。以上だ。」

 

それだけ告げると一刀は馬に乗り引き換えしていく。

 

その頃後方に居た袁紹からは一刀の姿は見えず何が起こっているのかわからずに居たが様子を見に行かせた兵より一部始終を聞くと

 

「キーーー、名門袁家の当主であるこの私、こ・の・私に逆賊とは何たる言い草ですの!斗詩さん、さっさと攻撃を始めさせなさい。」

 

と烈火の如く怒り出した。

 

顔良(真名:斗詩)はやれやれとばかりに兵を呼ぶと攻撃開始の銅鑼を鳴らすよう指示を出した。

 

ジャーン、ジャーン、ジャーン

 

まだ呆気に捕られていた先陣の混成軍は銅鑼の音に我に返ると怒声を上げつつ突撃してきた。

 

うおおおおおおおおおおおおぉぉぉ

 

「星、来たぞ。持ち場に戻れ。」

 

「応、では。」

 

既に関に戻っていた一刀と超雲は銅鑼の音と怒声で攻撃が開始されたのを知ると互いに声をかけると自分の部隊へと走っていった。

 

城壁上への階段を駆け上った趙雲は自分の隊に戻り弓隊に矢を番えさせると混成軍を見ながら放つ時期を見計らっていた。

 

わあああああああ

 

まだまだ。

 

わあああぁぁぁぁ

 

もう少し。

 

わああああああ。

 

今だ!

 

「よし!放て」

 

ヒュンヒュンヒュン。

 

わああああ……えっ?…ドスッ…ぎゃあああ

 

「うわああ、落とし穴だ!止まれ。……うぐっ」

 

突撃していた混成軍はあちこちで落とし穴に落ちていた。落とし穴に気付き止まろうとしたものも後ろから押されドンドン落ちていた。その上なんとか止まった者達に次から次へと矢の雨が降り注ぐ。

 

こうして汜水関を巡る戦いの火蓋が開かれた。

 

……………

 

 

2日後、汜水関を巡る戦いはまだ続いていた。

 

2日目ともなると落とし穴はそれなりに処理され城壁への接近を許していたがそこまでだった。

 

はしごをかけ城壁をよじ登ろうとするも上から岩や煮えたぎった油を巻かれ怪我人続出。

 

しからば城門を衝車で突き破ろうとするも掘ってあった溝に衝車の車輪が捕られ動くことが出来なくなっていた。

 

本来であれば井欄を大量に投入して十分な援護の下で行いたいのであるが混成軍は小勢力の集まりである為攻城兵器を余り持っていないのである。

 

持っていた攻城兵器は使い切ってしまい、どうにもならなくなり袁紹や袁術に貸してくれるよう頼みに行ったものの貸してくれる訳がなくその上早く関を落とせと叱咤される有様。

 

混成軍の士気はかなり落ちていた。

 

「一刀殿、うまくいってるようですな。」

 

「ああ、さっきあきらめて退却していったからな。ここ数回の攻撃において新しい攻城兵器が出てこなかったのを見ると混成軍の攻城兵器は尽きたようだな。」

 

「ねえ、お兄様。奴ら次どう攻めてくると思う?」

 

「そうだな………」

 

 

一刀達が汜水関防御について意見を交わしていた時、洛陽では馬超が廊下を走っていた。

 

ドドドドド……キー

 

馬騰の部屋の前で急停止すると扉を開け入って行った。

 

「母様、準備は整ったよ。一刀達が待ってる、早く行こうよ、早く。」

 

いきなり入ってきたかと思うと急かしまくる娘に苦笑いしていた馬騰だがある事に気が付いたようでニヤニヤした顔に変わった。

 

「翠、そんなに一刀君のことが心配?星ちゃんや蒲公英がいるんだから大丈夫よ。あっ、それとも一刀君が星ちゃんや蒲公英に手を出さないか心配してるの?安心しなさい、一刀君にちゃんと釘を刺しておいたから。」

 

「ななななななー、なっなに言ってんだよ母様。べべべつにあいつのことなんて………」

 

茹蛸のように真っ赤になった馬超を微笑ましく見ていた馬騰だが真顔に戻した。

 

「陛下に出陣のご挨拶をしてからよ。翠、あなたもついてきなさい。」

 

馬超に告げると馬騰は部屋から出て行き、馬超はあわてて後を追った。

 

玉座の間、玉座には献帝(劉協)が座っておりその前には文武百官とはいかないものの多数の文官、武官が並んでいた。

 

当然のことながら董卓、賈駆もいた。

 

馬超を従え献帝の前へ進み出た馬騰は片膝を着き拱手した。

 

「陛下、拝謁を賜り恐悦至極にございます。これより陛下の安寧を乱す賊を討伐しに出陣致します。」

 

「うむ、見事賊どもを討ち取って参れ。吉報を待っておるぞ。して、後ろの者は?」

 

「はっ、必ずや勝利を。この者は我が娘、馬超にございます。」

 

「!そうか、その者が……」

 

献帝はそう呟くと沈黙し複雑な顔で馬超を見つめ、馬騰は拱手のまま静かに俯いていた。

 

馬超は馬騰と同じように拱手していたものの皇帝が自分を知っていたことについて驚き混乱していた。

 

このまま沈黙が続くのかと思われたが馬騰が顔を上げた。

 

「陛下、そろそろ失礼させて頂きます。」

 

「うむ、そうじゃな。馬騰、馬超よ、そなたらは余にとって大切な忠臣じゃ。無事帰って来い。」

 

「はっ、有り難き御言葉。肝に銘じます。では。」

 

馬騰と馬超は立ち上がると礼をし玉座の間を退出していった。

 

それを見ながら賈駆が隣の董卓にかすかに聞こえるくらいの小さな声で呟いた。

 

「………あの噂は本当だったんだ……」

 

玉座の間を辞し外へと向かって歩く馬騰に早足で並びかけ馬超は問いかけた。

 

「母様!なぜ陛下があたしのこと知ってるんだ?陛下のあの感じからすると何かありそうな気がするんだけど。」

 

「……翠、今は戦いのことだけ考えなさい。そのことは落ち着いてから話すから。いいわね。」

 

無言の圧力で馬超を黙らせると馬騰は歩みを速めていった。

 

……………

 

 

<あとがき>

 

どうも、hiroyukiです。

 

ついに汜水関の攻防が始まりました。

 

今回ちょっとだけ戦闘シーン入れてみましたがやっぱり難しいですね。

 

なんか参考になるようなものって無いものでしょうか?

 

後、最後の方で翠の秘密を少~し出しました。

 

第3章の始めで明らかになる予定です。

 

それから作者の近況で申し訳ないのですが、引越しの為途切れていたネットがやっと繋がることになりました。

 

やっぱりネットがないとね~、こういう歴史小説みたい?なものを書いてると史実はどうだったけ?というのがよくありましてそんな時ネットがあるとすぐ調べられますからね。

 

おかげで第3章が中々進まず困ってたんですがこれでなんとかなりそうです。

 

次回で汜水関の攻防は終わりますが、一刀の仕掛ける罠が始動し始めます。

 

では、また次回をお楽しみにしてください。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
116
15

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択