No.882921

恋姫OROCHI(仮) 伍章・参ノ壱 ~君の名は~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、87本目です。

今回から一刀パートです。

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2016-12-10 23:50:57 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:4165   閲覧ユーザー数:3625

 

 

 

「「「わぁ~~~!!!」」」

 

ひよところ、そして雫は目の前に広がる光景に、思わず声が漏れたようだ。

穏の『過去』に戻った俺たち。

場所は呉の都・建業。

時間は呉と長尾の戦い終結後。

戦国組の三人は、洛陽とはまた違う趣きの街並みに興味津々みたいだ。

こんな時でなければ、ゆっくり案内してあげられるんだけど…

シャオや沙和とキャッキャッしながら喋っているのを見ると、申し訳なくなる。

 

「それで穏、天和たちの足取りは?」

「二ヶ月ほど前に建業を出たところまでしか分かってませんね~」

「約半年をかけて会稽方面に出てから呉南方を周ろうとしておったのじゃったか?しかし、二月前に出たとなると道はいくつも考えられるぞぃ」

「う~ん…」

 

祭さんの言葉に、思わず唸りをあげてしまう。

呉の主要都市は北部にあるけど、呉の南方は相当広い。

どのように周るかによっても、道程はかなり違う。

まずはその特定から始めないと。

 

「それじゃ悪いけど、予定通り明命と湖衣は先行して天和たちの足取りを探ってくれ。俺たちは後から追いかける」

「「了解です!」しました」

「連絡は密に。もし見つけたとき、何事もなければ天和たちの保護を、有事の時の判断は二人に任せる」

「「はっ!」」

 

そういうと、二人は打ち合わせをしながらその場を離れた。

 

「…何事もなければ良いのですが」

 

俺の側に居た凪がポツリと呟く。

 

「そうだね。何事もないのが一番だ」

 

不安げな表情の凪の頭に手をやる。

 

「せやけど、最悪に備えるっちゅーのがウチらの仕事や。イヤな商売やで、ホンマに」

 

と、霞は台詞を吐き捨てる。

そんな霞をなだめながら、ひよたちシャオたちを回収しつつ、俺たちは遠征の準備に入るのだった。

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「ちょーっとちょっとちょっと!何なのよあれ!何なのよあれ!?」

「お姉ちゃんっ…知らないよ~~!!」

「無駄口はいいから!早く逃げる!」

 

張三姉妹は追われていた。

彼女らを追ってくる『モノ』は人のような形をしているが、その目からは知性は感じられず、獣のような牙を持ち、膂力はそれを超えていた。

今や三国一の人気者の彼女らには、個人で雇った用心棒の他に一軍が付いていたが、異形のモノによって半壊し、統制は取れておらず、混乱状態にある。

 

「グガァァァーーー!!!」

 

そんな間隙を縫って異形の一匹が逃げる天和に迫ると、

 

「きゃぁぁぁーーー!!」

 

爪と表現するには大きすぎる凶刃を、天和に向けて高々と振り上げた。

 

「「天和姉さんっ!!」」

 

そしてそれが天和の頭に…

 

「ギィヤァァァーー!!!」

 

…は、届かなかった。

 

「危なかったな」

「あ、あなたは…」

 

天和の前には、麗人が涼やかに立っていた。

手には異形のモノを真っ二つに斬り裂いた大戦斧が握られている。

 

「……誰だっけ?」

 

天和の言葉に、ガクッとずり落ちる麗人。

 

「私のことを忘れたのかっ!?」

「う~ん…ごめんね。お姉ちゃん覚えてないかも」

「確か、いつか雇った用心棒の…」

「そう!それだ!」

 

人和が思い出しそうになるのに、麗人は喜び勇んだ。

 

「あぁ。あれ…華なんとか、って名前じゃなかった?」

 

麗人は地和の言葉にズコーっとひっくり返った。

 

「あぁ、うん。なんとか雄さんだったわね」

「あれ?葉なんとかさんじゃなかったっけ?」

 

三姉妹は次々と思い出すが、いずれも断片的なようだ。

 

「お前ら…わざとやっているのではあるまいな?」

 

ジト目で三人をねめつける華なんとか(とりあえずこれを採用)。

 

「「ガァァァ!!」」

 

異形が人垣を突破してきた。

今度は二匹だ。

 

「猪口才なっ!!」

 

ブゥンと鈍い音を立て、華なんとかの大戦斧が二度舞う。

ドサッと地に伏せる異形たち。

一瞬のうちに首をはねたため、悲鳴も残らなかった。

 

「そうだ。こんなことしてる場合じゃなかった」

 

人和は置かれていた状況を思い出す。

 

「華なんとかさん、あなたにここの指揮を一任します。私たちを護って下さい」

「もとより、そのつもりだ」

 

刃についた血を払い、石突を地面に付きたてながらそう言う華なんとか。

 

「それじゃ姉さんたち、行くわよ!」

「ちゃんと給金分働きなさいよねっ!」

「よろしくお願いしまーす」

 

肝の据わった捨て台詞を残して逃げ去る天和と地和。

あの戦乱を潜り抜けた度胸は、伊達ではないようだ。

 

逃げる三人に背を向け、華なんとかは一つ深呼吸をする。

そしてもう一度、大きく息を吸い込み、

 

「お前ら、よく聞けぃっ!!」

 

大音声を発した。

 

「逃げ惑うな!足を止めろ!お前たちは誇り高き、数え役満しすたぁずの護衛ではないのかっ!!」

 

よく通るその声に、戦場中の兵たちが歩みを止めた。

 

「数はこちらが上!何を怯えることがあろうかっ!獣は数人で囲み、一匹ずつ仕留めれば良いっ!!」

 

萎んだ兵の心に、不思議とまた熱いものがこみ上げてくる。

 

「お前たちの背中には元董卓軍が将、この華雄がついている!みな、存分に戦えーーー!!」

「「「うおおぉぉぉ!!!」」」

 

華なんとか改め、華雄の檄に兵たちは奮い立った。

なにせ、自分たちが護っているのは、あの張三姉妹なのだ。

志願者から選抜された精鋭に加え、その士気はもともと高い。

虚を突かれたゆえ恐慌に陥ったが、そこから立ち直れさえすれば、相手が如何に異形の獣とはいえど、正面から立ち向かえるだけの実力も胆力もある。

人材不足ゆえ将を置けなかったが、ここに将の資質を持つ華雄が加われば、鬼に金棒。

 

ここに、烏合の衆であった兵たちは、勇敢に戦う軍へと進化したのだった。

 

 

 


 
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