「はっ!」
「きゃあ!」
スルトは走りながらレーヴァテインを振るい、バイオレットを斬りつけました。
バイオレットは体を逸らしたためまともに受けませんでしたが、
刃がかすってしまい、熱を受けてしまいます。
「熱い、なんて熱さなの!」
「あらゆるものを焼き尽くすこの剣、かすっただけでも火傷を負うぞ?」
そう言い、スルトは追撃を受けないように移動しました。
「シャープネス!」
「ありがとうございます、ゲール! テンペスト!」
ゲールから力を授かったジャンヌは、強力な嵐を呼び起こしました。
「効かぬ」
ですが、スルトは纏う炎によって、ジャンヌの嵐を打ち消しました。
「そんな!」
「所詮は下級神だな」
「そんな事はありません!」
スルトに下級神と見下されたジャンヌは、思わずスルトに突っ込んでいきましたが、
スルトはそれをかわしレーヴァテインによる攻撃を叩き込みます。
レーヴァテインはジャンヌの急所に命中し、彼女に大きなダメージを与えました。
「無謀は死を呼ぶぞ、大人しく降伏しろ」
「誰が降伏するものですか!」
「お姉様、傷を癒します! ヒールライト!」
ゲールの能力によって傷が癒えたジャンヌは、
さらにシャープネスの援護を受けて攻撃力が上がりました。
「今度こそ当てます! テンペスト!」
「ぐぅぅぅっ……!」
ジャンヌの両手から凄まじい嵐が吹き荒れると、スルトに命中して彼を大きく吹き飛ばしました。
「この程度で、我を止められるとでも思っていたか!」
「きゃああああ!」
スルトは大きくのけぞりましたが、まだ余裕らしく、
高速でゲールに向かって走り、その勢いでレーヴァテインを振るいました。
レーヴァテインから放たれる熱により、ゲールは大きなダメージを受けてしまいます。
「ヒールライト!」
ゲールは自分を回復して何とか倒れないようにしました。
「シャドウバインド!」
「エアリアルブラスト! エアリアルブラスト! エアリアルブラスト!」
バイオレットは影の能力を使ってスルトの足を縛り付け、
その隙にジャンヌは風の能力を連続で使用してスルトを攻撃しました。
エアリアルブラストはテンペストより威力は劣りますが、消耗も小さく、連発しやすいのです。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「かなり疲れますね……」
「これが戦いというものだ……」
切羽詰まった状況であるため、スルトも三女神も激しく消耗していました。
経過した時間は、僅か3分でありながら。
「訪れる運命が悪いものだったとしても、あたしが絶対に打ち破る!」
「私が自ら、行動して!」
「そして、この戦いに、必ずや勝利して見せます!!」
その頃、ヴァルキリーはというと……。
「こちらゲイレルル! 巨人の討伐を完了した!」
「こちらスケッギョルド! ゲイレルルと同じく!」
ゲイレルルとスケッギョルドが、敵となる巨人を全て討伐したところでした。
「しかし、この戦いで我々の戦力も削られた」
「シュヴェルトライテもヴァルトラウテも、巨人に討たれた……」
この戦いにおいて、多くのアインヘリアルが討たれました。
アインヘリアルを率いていたヴァルキリー、シュヴェルトライテとヴァルトラウテも戦死しました。
「ヴァルキリーはアース神族も支援する役割を持つ。
だが、我々が動かなければ一体誰が動くというのだ?」
「独り言を言っている暇があったら、次の敵を討て!」
「無論!」
そう言い、スケッギョルドは斧を振るってアインヘリアルと共に前衛の敵を、
ヴァルトラウテは弓で彼女や彼女が率いるアインヘリアルを援護するように攻撃しました。
スルトと三女神の戦いは激しくなりました。
「イグニート!」
スルトのレーヴァテインから炎が放たれ、バイオレットはダメージを受けて火傷してしまいました。
「あ、熱い……! 助けて!」
「今、わたくしが治します! キュアライト!」
ゲールの手から光が放たれ、それがバイオレットに命中すると彼女の火傷は治りました。
「ありがとう! よーし、いっくよー!」
バイオレットは闇の力を手に纏わせながら、スルトにそれを叩きつけようとしました。
「効かぬ」
「っきゃあ!」
しかし、スルトの熱に阻まれ、それが届く事はありませんでした。
「我の熱に耐えられるのか……?」
「ならば、これでどうです! テンペスト!」
「ぐぅ!」
ジャンヌは遠くから嵐を放ち、スルトを大きく吹き飛ばしました。
この一撃によって、スルトの体力が大きく削られたようです。
ふと、スルトはバイオレットにこう言いました。
「貴様は悪い運命を打ち破る、と言っていたな?」
「えっ?」
「確かに、強大な力さえあればそのような運命など容易く打ち破れるだろう。
……だが! 大が小に敵うはずがないのだ!」
そう言うと、スルトはレーヴァテインを振り上げ、それにさらなる強い炎を纏わせました。
どうやら、必殺技を発動させる準備のようです。
まずい、と思ったジャンヌはバイオレットを庇おうとしましたが、
「マグナムファング!!」
あと一歩間に合わず、レーヴァテインの攻撃の軌跡が灼熱の炎となってバイオレットを襲いました。
バイオレットは両腕で防御しましたが、熱は完全に防げず、
バイオレットは焼き尽くされてしまいました。
「……ふん」
「バイオレット!!」
ジャンヌは、バイオレットがいたところに行きました。
しかし、そこにバイオレットの姿はなく、彼女の魂が浮いていたのみでした。
神は倒されても肉体が滅びるだけですが、戦闘不能である事に変わりありませんでした。
「よくも……よくもバイオレットを! ライフドレイン!!」
妹を倒された怒りから、ゲールはライフドレインでスルトの生命力を奪いました。
「ジャンヌ、今癒します!」
ゲールは奪った生命力でジャンヌの体力を回復させました。
「スルト、覚悟!」
ジャンヌは、神力を溜め、神技を発動する準備をしました。
「神技……ゼピュロスジャッジメント!」
「ぐあああああああああああああ!!」
ジャンヌの神技「ゼピュロスジャッジメント」により、
スルトの肉体は浄化され、跡形もなく消滅しました。
残ったのは、炎のように燃え盛るスルトの魂のみでした。
「さあ、もう一度聞きますよ。この惨状を起こしたのは、あなたですか?」
「この惨状を引き起こしたのは我だ……。だが、我は『引き起こした』のみだ……」
「えっ? どういう事……ですか?」
「……」
ジャンヌはスルトの魂に問いますが、スルトの魂は無言でした。
そしてしばらくした後、スルトの魂は口を開いてこう言いました。
「貴様らは我に勝利した。故に、この先に進むがよい……。そこで、全ての真実が待っている……ぞ……」
その言葉と同時に、スルトの魂はムスペルヘイムへと去っていきました。
「ラグナロクの元凶は……スルトじゃなかったんですか……?」
「じゃあ、一体誰が……」
「こんな事を、起こしたんだろう……」
呆然としながらも、三女神はこの先へ進んでいきました。
ちなみに、バイオレットの肉体は、既にゲールの能力によって蘇っています。
現在、戦力的にはアース神族側が有利になっています。
しかし、ラグナロクは鎮まるどころかますます激化していっています。
アース神族とヴァン神族、巨人と人間は、敵対勢力を削るために、戦い続けているのです……。
この戦争を起こした元凶を知らずに……。
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炎の巨人との戦闘が始まります。