「チリングボルト」
水のナッツォは、凍てつく矢を魔法防御力が低いトールに向けて放ちました。
「はっ!」
しかし、トールはミョルニルを振るい、その矢を吹き飛ばしました。
「そっちが策で来るってんなら、こっちも策で行くぜ!」
「いや、それ策じゃないんですけど」
武闘派のトールが「策」と言ったため、ゲールは思わずツッコミを入れました。
「ふふふ……あなたには策が向いていないと見ました。ポイズン!」
水のナッツォの手から黒い光が放たれると、それはジャンヌに命中しました。
ジャンヌの体は、毒に侵されてしまいました。
「ぐ……っ!」
「大丈夫ですか、お姉様! アンチドート!」
その毒はゲールの魔法によりすぐ治りましたが、ゲールの下に魔導陣が現れました。
ゲールはその魔導陣から現れた闇に絡め取られ、動けなくなってしまいました。
「しまった!」
「ゲール!」
「う、動けません……!」
「ふふふ……動けなければ、戦力が減るでしょう」
「ならその減った戦力分を補えばいいよ! シャドウエッジ!」
バイオレットは水のナッツォに黒い刃を放ちました。
「そんなもの」
水のナッツォはすぐにそれを打ち消しました。
「隙ありぃ!」
「がはぁっ!」
しかし、彼の頭上から、ミョルニルが振り下ろされました。
実はバイオレットの放ったシャドウエッジは、囮だったのです。
「策には策で、立ち向かいます!」
「卑怯な手にかかって負けたら、戦士の名が廃るからな!」
「スリープクラウド」
水のナッツォが杖を振ると、白い煙が現れました。
これは、煙で相手を包み込んで眠らせる呪文で、
相手を無力化させる呪文としては最も一般的なものです。
「かわせ!」
「はい!」
「チリングボルト」
ジャンヌは素早く飛んでかわしましたが、
水のナッツォがジャンヌの回避を読んだのか、その地点に凍てつく矢を放ちました。
「ウィンドバリア!」
しかし、それもジャンヌにはお見通しだったらしく、風の能力で防御しました。
「相手の考えを読んだ方がよさそうですね……シャープネス!」
ゲールは強化魔法を自分にかけて突っ込んでいきました。
能力タイプのゲールにとってこの行動は一見すると無駄に見えますが、
これは水のナッツォに対抗するためのものです。
「せいっ!」
ゲールは拳を真っ直ぐ突き出し、水のナッツォを殴りました。
「ぐおぉ!」
「はっ!」
次に、水のナッツォを蹴って浮かせました。
ゲールもそこからジャンプして、かかと落としで水のナッツォを地面に叩き付けました。
「相手の裏も読むのが、策ってものなんですよ」
「く……っ、ならばこうしましょう! グラビティ!」
「!?」
水のナッツォが呪文を唱えると、突然、三女神とトールを過重力が襲いました。
三女神は耐えきれずに膝をつき、トールもミョルニルに支えられて何とか立ち上がっている状態でした。
「う、動けない!」
「周りを重力で覆うとは……アンタらしい卑怯な魔法だな……」
「ふふふふふ」
「だがよ……これくらいでくたばるオレじゃ、ねぇんだ、ぜ……!」
トールは、ミョルニルを天高く投げつけました。
「そんなもの、私には効きませんよ?」
水のナッツォはバリアを張り、ミョルニルの攻撃をガードしようとしましたが……。
―ガシャーン!
「うわぁぁぁっ!?」
ミョルニルはバリアを貫通し、水のナッツォに命中して大ダメージを与えました。
「トールさん……!」
「へっ、重力を利用したのさ。重力で勢いがついたミョルニルの威力は高まる! ってね」
「よ、よくもこの私に傷をつけましたね……。許しませんよ! ポイズンクラウド!」
水のナッツォは過重力を解除した後、毒の霧を放ちました。
「あぁ、もう! なんでこんなのばっかりなの……!」
「とにかく相手に近付け! 話はそこからだ!」
「は、はい!」
水のナッツォが放つ毒の霧や眠りの霧に悩まされつつも、
三女神は何とか水のナッツォに近付こうとしていました。
「こんなに補助魔法が飛んでくるなんて……」
「だがよ、本体を叩けばこれでおしまいだぜ、とおっ!」
トールはミョルニルを強く握りしめ、水のナッツォに突っ込んでいきました。
「食らえっ!」
トールのミョルニルが、水のナッツォの頭部を狙いました。
しかし、バリアによりいとも簡単に弾き飛ばされました。
「くっ!」
「私は攻めるより、守る派なのですよ」
「守りを崩すためには……どうすればいいのでしょう……」
ジャンヌは、水のナッツォの弱点を探していました。
どんなものにも必ず弱点はある、とジャンヌは思っているからです。
「……! ありました!」
そして、ジャンヌは弱点を見つけました。
「バリアの右端を狙ってください!」
「右端……? そこを狙えばいいのか?」
「はい!」
「……やってみるしか、ないようだな! どぉりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
トールはバリアの右端目掛けて、ミョルニルを振り下ろしました。
すると、水のナッツォが張っていたバリアに、ひびが入りました。
「なんと!」
「よし! 後はそこを狙うよ!」
そう言うと、バイオレットはひびの入った場所に闇の刃を放ちました。
すると、バリアは砕け散りました。
「なっ! わ、私のバリアが……!」
「よーし! 後は総攻撃だ! いっけぇーーーーー!!」
「ウィンドストーム!」
「ライフドレイン!」
「ダークブレイズ!」
「ミョルニル・ブロウ!!」
ジャンヌ、ゲール、バイオレット、トールは、水のナッツォに向かって一斉攻撃を放ちました。
神の攻撃に人間が耐えられるはずもなく、水のナッツォはあっという間に倒されました。
「よ、よくも、この私を……」
「逃がすものか!」
水のナッツォはテレポートで去ろうとしましたが、バイオレットの影の能力により縛り付けられました。
「さようなら……これで、とどめよ!」
バイオレットは影の能力を使い、水のナッツォを切り刻んでとどめを刺しました。
―ブゥン
水のナッツォが死んだと同時に、空間が元に戻りました。
「よし、これで四使徒も二人くたばったな」
「はぁ……嫌な相手だったです」
あまりにも陰険すぎたため、ジャンヌやゲールは
彼のような存在を二度と相手にはしたくありませんでした。
しかし、これで四使徒は「火」と「風」の残り二人となりました。
「……帰ったらゆっくり休みましょう」
「そうだな……」
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VSナッツォ。かなり難しい戦闘シーンでした……。