猫を抱いて笑う人は皮肉交じりに愛を語るのだ。
そこに愛はあるのかい、とどこかで聞いた言葉をつぶやいて
人は嫌いだよ。とまた意味の解らぬことばかり
「好奇心は猫をも殺す」
猫をも…ってどういう意味なんだろうね、と笑った。
「人外にですら強力ってことなんじゃないんですか?」
「何が?」
「好奇心って凶器が。」
好奇心が凶器とは面白いことを言う。
彼は少し何かを考えるようにしてからもう一度口を開いた。
「Curiosity killed the cat…」
「は?」
「英語のことわざなんだよ。九生あると言われている猫でさえ、
死んでしまうから余計なことに首を突っ込むな。
Care kills a cat…心配が猫を殺す。っていう言葉が変わってできたとも言われてる。」
「心配が好奇心となんのつながりが?」
「さあ、心配のしすぎで他人を詮索する人もいるからじゃないのか?」
「あー…」
脈絡のない会話は永遠とくだらないまま
終着点を持たずに続けられる。
飽きて言葉を止めた頃にはきっと最初の駅を忘れていることだろう。
「まあ、僕が何を言いたいかと言うとだね。」
「わかってますよ、先生。無駄な心配も小言も今すぐやめろとおっしゃりたいんでしょうね。」
ため息混じりに俺が彼の目を見れば
むしろ彼の方が猫のように目を細めて笑っていた。
「正解だ。」
「助手ですから。」
そう返せば少しだけ不満気な顔をする。
「しかし、だ。なぜそこまで僕を理解する君は最初からそうしてくれないのかね。」
「それは、助手ですから。」
面倒な子だね。そういって抱いた猫を抱きなおしながら研究室のある校舎の方へと
歩いていく。
「君の三枚舌がやけどするくらいのお茶を頼むよ」
「おや、先生猫舌じゃありませんでしたか。」
「君は一度あの地獄のような熱さを身をもって体験するべきだと思うね。」
なあ、と腕の中の猫に声をかける。
腕の中の高貴な猫はにゃあ、と一声返すのだ。
とびきりのお茶もすぐに冷めてしまいそうな
木枯らし吹く午後のこと。
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季節はずれの設定とくだらない会話。