一度は十常侍が持つ強大な権力に破れた一刀だが、以前の外史で絆を紡いだ仲間達、新しく出会った信頼出来る仲間を引き連れ、十常侍の野望を打ち砕き華琳を救うべく動き出す。
しかし、大陸の有力諸侯が敵対するなど、一刀や華琳を取り巻く状況は芳しくない。
現状を打開する為には、自分達に味方してくれる勢力を増やすい。一刀が仲間に組み入れたいと考える勢力は『幽州の劉備』『涼州の馬家』『益州巴郡の桔梗』であった。
桔梗は旅をしている時に誼を結んでいるのと、以前より劉焉に敵愾心を露にしており、味方になってくれるだろう。
涼州連合の盟主『馬騰』と神威将軍と誉れ高い『馬超』と面識は無いものの、韓遂討伐戦で蒲公英と共闘しており、話し次第では味方になってくれるかもしれない。
そして、一番味方に付いて欲しいのは劉備だ。配下には万人敵と称される燕人張飛、伏龍か鳳雛のいずれかを得られれば天下を獲れると言われた諸葛亮と龐統などが存在しているのもそうだが、劉備自身の智謀、人を惹きつける才を敵に回せば最大の脅威とも成りえる存在。裏を返せば、味方になってくれれば頼りになる存在でもある
一刀「彼女達が味方に付いてくれるか否かで、救出作戦の成功に大きく影響する。作戦云々を抜きにして、彼女達とは戦いたくないってのが本音だが・・・」
そんな一刀の思いが込められている書簡を持った使者は各都市へと急ぐ。
険しい山道が続く巴郡、幽州までは日数を要するが、天水から馬家が本拠地としている武威までは距離が近く、無事に蒲公英まで届けられた
蒲公英SIDE
馬超「蒲公英、お前宛に天水の呂珂ってやつから書簡が届いてるぞ」
「え、お姉さま宛てじゃなくて蒲公英に?書簡が来たのは嬉しいんだけど、要件はなんだろ?」
馬超「さあな、お前宛てだから内容は見てねえし。気になるならさっさと見ちまえよ」
「お姉さまは、その男っぽい口調とか直した方がいいと思うよ。そんなんだから、馬超様は怖いって評判が無くならないんだよ」
馬超「余計なお世話だ!それで、内容はなんだったんだ?」
もう、お姉さまもちゃんとすれば人気出るのに。今でも”黙っていれば”とか”もうちょっと頭が良ければ”文句なしの美人とかって評価はあるんだしね。
っと、そろそろ書簡の内容見ないとお姉さまに怒られるから確認しようかな。愛の台詞が書かれてたりしてね!
「・・・・え!?ちょ、なにこれ!?」
馬超「どうしたんだ蒲公英、呂珂って奴から嫌がらせの内容でも届いたのか?」
「お兄さんがそんな性悪な事するはずないでしょ!お兄さんは優しいんだから!」
馬超「お兄さんって・・・いつからお前の兄になったんだよ。それはそうと、内容はなんだったんだよ」
「お姉さまのバカ発言に構ってられなかった!えっと、袁紹が発起人で、反曹操連合が結成されたって!」
馬超「あぁ、そのことか。それなら少し前に連合加盟の誘いがきたぜ」
「なにそれ!蒲公英初耳なんだけど!?」
馬超「仕方ないだろ。蒲公英がこの辺りに出没した黄巾党と戦ってる時に使者が来たからな」
え、そんなに前から使者が来てたの?
お兄さん達が黄巾党本隊を潰した後に、涼州までやって来た残党狩りで出陣した時かな?
お姉さまには言わなかったけど、お兄さんの本当の名前が”曹仁子孝”だった事と、洛陽で何があったのか、洛陽を追われた後、再起を図る為に大陸各地を旅してたって事を蒲公英に教えてくれた。
お姉さまはまだお兄さんと会った事ないし、頭が固い所もあるから、今は言わない方がいいよね
でも、これで合点がいったかな。黄巾党の残党にしては、やけに統率が取れてておかしいなと思ったけど…十常侍
が糸を引いてたのかもしれない。その十常侍が袁紹って人を唆して、お兄さんの妹、曹操討伐軍が結成された・・・これってかなり切羽詰まってる状況すぎない!?
「それで、その参加要請に対してなんて答えたの?」
馬超「とりあえず様子見って事で返事した。五胡の連中の動きがわからないし、母さんが倒れたばかりの状況で出兵はないからな」
「それって…もし五湖に動きが無くて、蒲公英達が動けると判断したら……連合軍に参加するの・・?」
馬超「一応そのつもりだ。発起人は漢の名族だし、帝を暴虐の徒から救い出すって大義名分もあることだし」
断ってくれてればよかったけど、これは不味いよ!万が一、お姉さまが出陣するとなれば、お兄さんの背後が危なくなる!かといって、蒲公英が無断で出撃すれば涼州が割れる事になるかもしれないし・・・
「お姉さま、蒲公英が洛陽に出陣しないでって頼んだら、出陣しないでくれる?」
馬超「お前は急に何を言ってるんだ。確かに国を空けるのは危険だけど、馬家は代々漢に仕えて禄を食ってきたんだし、要請には応じないといけないだろ?」
お姉さまの正義感は確かに尊重する所ではあるけど、ここで発揮しないでよ!
それに、普段脳筋の癖に、難しい言葉使うし!普段のアホでバカな可愛いお姉さまはどこに行ったの!!
「理由は言えないけど、とにかく出陣はしないで!出陣したら涼州内に、お姉さまはお漏らし癖がある”失禁馬超”って内容を流布するから!」
馬超「ちょ!お前何言い出すんだよ!わ、私はお漏らしもした事ないし、失禁馬超なんて呼ばれ方もしてないから!」
その後も何の言い合いをしているか解らない姉妹喧嘩?は続き、城勤めの者達は何事かと様子を見に来るが、二人が言い争うのはいつもの事なので、『なんだ、いつもの言い合いか』と騒ぎの二人を見てすぐに持ち場へと戻って行く。
そんな家臣達も止めようとしない現場に、一人の女性が姿を現した
馬騰「翠、蒲公英、なにを騒いでいるのですか」
母親である馬騰が仲裁に入った事で、騒がしかった二人がようやく静まり、なぜ騒いでいたのかを問いただすと、なぜか”お漏らし”とか”失禁”と訳の分からない単語が出てきたりと、理解出来ずに困惑気味だったが、突っ込みを入れずに最後まで聞いてようやく話しの全貌が見えてきた
馬騰「話は解りましたが・・・翠、連合の話は、私も聞いていなかったのだけど、どういう事かしら」
馬超「治ったとはいえ、母さんは病気で倒れたばかりじゃないか。だから、ゆっくりしてもらおうかなと思って・・・」
馬騰「翠の気持ちはありがたいのですが、結局貴方達が騒いでたらゆっくりなんて出来ないわ。それと、今度からは気を遣わずにちゃんと話に来なさい、いいわね?」
馬超「解ったよ、今度から・・・気を付ける」
馬騰「次は蒲公英ね。とは言っても、蒲公英が慌ててる理由は、差出人と大陸情勢からある程度の事は察しが付いているのだけどね」
「え、本当に察し付いてるの!?」
馬騰「当たり前です。これでも朝廷内の狒々爺達と腹の探り合いの日々を過ごしてましたから。曹操さんの・・・救援に行きたいんでしょ」
うわー本当にばれてるよ。
蒲公英も頭悪くないとは思うんだけど、やっぱり叔母さまには敵いそうにないな~
なんで叔母さまの知恵がお姉さまに受け継がれなかったんだろ?
馬超「おい、蒲公英!母さんの言ってる事は本当なのか!!なんで逆賊に与しようとするんだ!」
馬騰「翠、貴女は黙ってなさい。それで・・・どうなの、蒲公英。私たちや涼州の事は考えず、貴女の気持ちを素直に言いなさい」
「蒲公英は・・・曹操さんの救援に行きたい。お兄さんの力になりたい!!」
馬騰「そう。なら行きなさい。涼州騎馬軍団の力を腑抜けてる諸侯に見せつけてやりなさい。それが出来なかったらお仕置きですよ?」
「叔母さま・・・ありがと!絶対に曹操さんを連合軍から護ってみせるから!あ、脳筋なお姉さま、行ってきまーす!」
蒲公英が全部話した訳じゃないのに・・・自分の立場が悪くなるのに・・・叔母さまは蒲公英の背中を押してくれた。蒲公英の武は敵の豪傑と比べたら劣ってるかもしれないけど、騎馬と共に生きてきた用兵を見せてやるぞー!
馬騰「あの子ったら張り切ってるわね」
馬超「たく、だれが脳筋だっての」
止められると思っていた馬騰から出陣許可を得た事で、蒲公英は放たれた矢のように部屋から飛び出し、軍備を整える為に走り去った蒲公英の姿を、馬騰は嬉しそうに眺めていた
馬超「随分と嬉しそうだよな。なんでそんなに蒲公英に甘いんだよ」
馬騰「あら、蒲公英に甘いのは私だじゃなく、翠も十分甘いと思うわ」
馬超「そんなんじゃないっての。それより、母さんがさっき言ってた事情ってなんの事だ?」
馬騰「蒲公英同様に学問を教えてきたつもりだったのに、なんでこう差がついたのかしら。だから蒲公英に脳筋と言われるんですよ?」
馬超「母さんまでそれ言わないでくれよ!本気で……へこむから」
馬騰「ふふ。ならその辺りを説明しながら勉強しましょうか。そうすれば、蒲公英がなぜ貴女に言わなかったのか解ります」
馬超「ぅぅ、遠慮したいところだけど、蒲公英が帰って来た時に、何も事情知らないままだとまた馬鹿にされそうだし…お願いします」
こういう素直な所、学ぼうとする姿勢があるのは翠の良い所ね。これを機にもう少し勉学に励んでくれればいいのだけれど。
それにしても、蒲公英が私に対して我を通して来たのは初めてかしら?すべての出来事が落ち着いたら、呂珂さんには涼州に来てもらいましょうかね。
頑張りなさい、蒲公英
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西涼の雄・馬騰