雷神マグナ=トールを仲間にした三女神は、土のミリオーネを探すために各地を歩きました。
「それで、お前らが探してる土のミリオーネってのはどんな奴だ?」
「けばけばしいメイクをした、悪魔を操るオカマです」
「なんとなく予測はつくぜ」
トールはゲールの言葉を聞いて、土のミリオーネがどんな人物なのかをイメージしました。
「んで、どこにいるか知りたいか?」
「ええ、知りたいです」
「じゃあ、オレが勘で調べるぜ!」
「「「え」」」
勘で調べる、という言葉に三女神は固まりました。
「安心しなよ、オレの勘は8割当たるからさ」
「……」
トールの言葉を、ゲールは信用できませんでした。
ゲールは外見相応に、慎重な性格だからです。
「何だよ、その顔は信用してないのか?」
「いやぁ、勘っていうのはあんまり当たらないって……」
「何ぃ!? どういう意味だそれは!?」
ゲールの言葉にトールは怒りました。
自分の事がよほど信用できないのか、と思ったからです。
「やってみなきゃ分からねぇだろ! やってみなきゃ!」
「って、先に行かないでくださいよー!!」
信用しない三女神を置いて、トールは先に行ってしまいました。
「……はあ、追いかけるしかないようですね」
「そうだね……」
三女神はそう言い、トールを追いかけました。
トールにはすぐに追いつきました。
彼が、下界を回るために「ゆっくり歩いた」(人間が走った時の速度とほぼ同じ)からです。
「勘で探すという割に、寄り道してるじゃない」
「これは、どういう事ですか?」
「だって、いい観光スポットが……」
「土のミリオーネを探すんじゃなかったんですか?」
ジャンヌは凄みの利いた顔で、トールを脅かしました。
それを見たトールは竦み、本来の目的を思い出しました。
「あ、ああ、そうだったな! あいつを探すんだったな! じゃ、じゃあ、早く急ごうぜ!」
そう言い、トールは真っ直ぐに土のミリオーネがいそうな場所に向かいました。
「……今度はちゃんと探してくださいよ?」
「まあまあ、お姉様……とにかく、彼を追いかけましょうよ」
「……分かりました」
こうして、三女神はトールを全速力で追いかけました。
そして5分後、辿り着いた先が……。
「どこですか、ここは」
それなりに広い、土の洞窟でした。
しかし、入り口からは凄まじい瘴気が溢れ出ていました。
「分かるか? こっからすげー瘴気が出てるんだぜ。明らかに悪魔のそれだ。
って事は、この中にお前らの探してるミリオーネがいるはずだぜ」
「あっ!」
トールは、三女神から情報を聞いた時、恐らくはここにいるだろう、とこの洞窟を選びました。
何故なら、悪魔を操るという事は、瘴気の濃い場所にいると睨んだからです。
「中は瘴気で歪んでるかも知れねぇが……。まぁ、入るしかなさそうだな!」
「ええ!」
「分かった!」
そして、三女神とトールは、瘴気が溢れる洞窟の中に入りました。
「……うわあ」
洞窟の中は、トールの言う通り、瘴気で歪んでいて、まるで迷宮のようです。
しかし、ここを通り抜けなければ、ボスに会う事はできません。
「ケーケケケケ!」
「ひゃっ!」
ジャンヌが歩いていくと、下級悪魔のレッサーデーモンに遭遇しました。
レッサーデーモンが爪でジャンヌを攻撃しましたが、彼女はかすり傷しか負いませんでした。
「ウィンド!」
しかも、レッサーデーモンは一体しか出なかったので、風の能力で楽に倒す事ができました。
「こんな下級悪魔が一体だけですか」
「でも、奥には中級悪魔とかがいるぜ。気をつけろよ」
「はーい」
トールの指示で、三女神は洞窟の奥へと進んでいきました。
洞窟の中を歩いていると、
「あっ!」
バイオレットが、宝箱を見つけました。
彼女がそれを開けてみると、そこにはたくさんの石が入っていました。
「ただの石か……まぁ、攻撃用のアイテムにならなるが」
「そうですね。持っていきましょう」
その後、三女神とトールにレッサーデーモン達が襲い掛かってきましたが、
投石によって全員を無力化させる事に成功しました。
「石の力……恐るべし、ですね」
「一つでは無力だが、無数では強力、といったところだな」
「ひゃあん!?」
「お姉ちゃん!」
途中、ジャンヌが罠にかかって小ダメージを受けたり……。
「ライトニング!」
「ウィンド!」
「ギィヤアアアアアアアアア!!」
中級悪魔が襲い掛かってきたり……。
「どうやら、ここにはインキュバスという淫魔がいるらしいぞ」
「うわぁ、それは嫌ですね」
冒険者から男性の姿をした淫魔、インキュバスがいる事を教えてもらったりして、
洞窟の中間地点に辿り着きました。
「ふぅ……ここでしばらく休みましょうか」
「そうだな。万全の体制は怠ってはならない」
「大ボスに備えて、しっかり準備はしなければいけませんね」
「頑張って悪魔をやっつけよう!」
そして、休憩が終わり、先に進もうとした瞬間。
―止まれ。
突然、ジャンヌ達の頭の中に、悪魔の声が聞こえてきました。
「悪魔!?」
ジャンヌが能力で風の剣を作り出した、その瞬間。
テレポートで、ジャンヌ達の目の前に悪魔が現れました。
その悪魔は、デーモンを一回り大きくしたような、筋骨逞しい大柄な体躯をしていました。
魔界における悪魔の騎士、グレートデーモンです。
「我が名はグレートデーモン。主を守る騎士なり」
「主? なるほど! そこにあなたを召喚した奴がいるという事ですね!」
「左様」
どうやら、このグレートデーモンは悪魔でありながら正直な性格のようです。
悪魔にも様々な性格の者がいるという証です。
「私達はここを通りたいんです」
「駄目ですか?」
「……ならば、我を倒せ! さもなくば、ここは通さぬ!」
そう言い、グレートデーモンは戦闘態勢を取りました。
「……なんだかんだで、この悪魔は正々堂々としてるのですね」
「ならば、こちらも正々堂々といきましょう」
「ああ!」
トールは愛槌のミョルニルを構え、三女神と共にグレートデーモンに戦いを挑みました。
「やぁーっ!!」
神々と悪魔の戦いが始まりました。
彼らの動きはめまぐるしく、人間の目ではとても追えません。
「ウィンド!」
「シャドウエッジ!」
「ミョルニルアタック!」
「ふん……」
ジャンヌ、バイオレット、トールの攻撃を、グレートデーモンは軽くあしらいます。
「ライフドレイン!」
「ぐぅ!」
しかし、ゲールのライフドレインは避けられず、その生命力を奪われました。
「闇の者には、正の生命力をぶつけなければ」
「そうですね。ゲール、いきましょう!」
「あたしも能力でサポートするよ!」
「オレはみんなを守るぜ!」
そう言い、ジャンヌとバイオレットは能力でグレートデーモンを牽制しつつ、
ゲールをサポートする事にしました。
トールはミョルニルを構え、三女神を守る事にしました。
「食らえ」
「危ない!」
グレートデーモンの攻撃がゲールを狙いましたが、トールがミョルニルで守りました。
「うぐぉあっ!」
トールはいくらかダメージを食らいましたが、アタッカーとなるゲールはダメージを受けませんでした。
「アンタが倒れたらこの悪魔を倒せないからな。遠慮なくいっとけよ!」
「分かりました、トールさん!」
ゲールは杖を構えてやる気を出しました。
自分が回復役である事を忘れて……。
神々と悪魔の攻防は、何分も続きました。
人間では1時間もかかるこの戦闘を、神々は数分でこなせてしまうのです。
「砕けろ!」
「はあっ!」
ジャンヌはグレートデーモンの攻撃を風の能力でかわしつつ、
風を叩き付けてグレートデーモンを攻撃しました。
グレートデーモンはその一撃が致命傷となったようで、腕を押さえました。
「ぐ……うっ……!」
「今ですよ、ゲール!」
「分かりました! 清浄なる生命よ、悪しき魔のものに制裁を与えよ! エインセル・ブレイズ!!」
「ぐぎゃあああああああああああ!!」
ゲールの杖から、凄まじい熱量の光線が放たれました。
それを食らったグレートデーモンは、肉体の末端から徐々に消滅していきます。
瘴気を力の源とする悪魔は、正の生命力を受けると瘴気が散ってしまい、肉体を保てなくなります。
そのため、やがては消滅していくのです。
そして数分後、グレートデーモンは完全に消滅しました。
「……これで、中ボスは倒せましたね」
「うん」
「……少し休んだら、洞窟の奥に行きましょうか」
「ああ、そうだな。立ち止まってはいられないぜ」
そして、四柱はしばらく休憩した後、再び洞窟の奥へ進んでいくのでした。
それを、一つの影が見ているとは知らずに……。
(……神々が地上にいる、だと……!? これは面白いな……)
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三女神の四使徒(四天王)探しが本格的に始まります。