第55話:マグマの中の古代
「ここがマグマ団のアジトか」
洞窟の隙間にあった入り口に入ったはいいが外装の岩肌に似合わぬ機械的なアジト内の作りにリクガは圧倒されていた。
以前、ここが怪しいと踏んで少し調べてみたことはあるがその時はこの山のどこにアジトがあるのかわからず惜しくも入ることができなかった。
「・・・今ならいける」
その後旅を続け、とある街でマグマ団と対立した時にこのアジトの鍵を発見し今に至る・・・。
「よし」
ちなみにリクガは今、ひったくったマグマ団の装束を使い変装中だ。
「そこのお前!
もうすぐマツブサ様のお話があるんだぞ!
大広間へ急げ!」
「はっ!」
下っ端のふりをしてマグマ団の中に溶け込むことに成功したリクガ。
何故少しも怪しまれないのかといえば、そういったドラマや映画が大好きなリクガが「軍隊に変装し潜入するミッションのシーン」を完璧に覚え実行してるからであろう。
完全に溶け込んだとき、部屋の奥から一人の男が姿を現した。
その顔に見覚えのあるリクガはピクっと眉を動かした。
「(あいつは・・・!)」
以前のことを思い出す。
「みなの者聞いてくれっ!
ついに我々は発見したのだ!!!
大地の化身と伝えられる伝説のポケモン、グラードンを!!」
「オオオオオオッ!!」
「・・・グラードン・・・」
「これよりマグマ団は二つの軍に分かれよ。
私と共にルネシティの目覚めの祠へ向かう者、ここに残りグラードンの復活の瞬間を見届ける者!
かの祠にて渡しはこの「紅色の珠」を用いてグラードンを今このホウエン地方に呼び覚ます!
諸君らもその奇跡の瞬間を見届けて欲しい!」
「オオオオオッ!」
「・・・・」
首領・マツブサの指揮したとおり、マグマ団は二つの隊に分かれる。
マツブサの隊はヘリコプターでルネシティへ向かい幹部・ホムラの隊はアジトの奥へ向かった。
リクガはどうやらホムラの隊らしい。
「・・・」
しばらく紛れ込みつつ先へ進んでいくとふいにホムラが立ち止まり、こちらへ向かってきた。
「おいそこの小さいお前」
「ちっ・・・!?」
「ちょっと話しておきたいことがある。
こっちへこい」
「は・・・」
「お前達はここに残ってろ」
ホムラに少し不信感を抱きつつ後をついていくリクガ。
他のトコよりもやや湿気や湿度がだんだん高くなっていきやがてホムラは少し広いところにきて立ち止まると振り返り リクガの肩をつかんで地面にたたきつける。
その反動によりフードがずれ金髪が見えた。
「くっ!」
「やはり偽者か。
しかもあの送り火山やシダケタウンで見かけたガキじゃねーか」
「気付いていたのか・・・ボクが変装してたことに最初から・・・・・!」
「態度とか口ぶりなどは完璧だったがな、こちとら部下の顔とか声とかいつも見てるからな。
変声道具を使わなかったこと、顔を完全に隠さなかったことがお前の敗因だ」
「・・・なるほどな。
ただ服を拝借しただけはまずかったか・・・手早くダイレクトだと思ったんだけど物足りないようだね。」
リクガはどこからか灰色の帽子を出しかぶる。
「んで、お前はボクをどうするんだ?」
マグマ団の服を脱ぎ捨ていつもの格好に戻るリクガは赤い鋭い目でホムラをにらみ、口角をあげる。
片手にはしっかりモンスターボールを握っている。
対するホムラも睨み返しながらボールを構える。
「当然、貴様をここで・・・消す!」
「やはりな」
ホムラはダーテング、リクガはジュカインを繰り出し、お互いの技を激しくぶつけ合う。
「ダーテング、いあいぎり!」
「ジュカイン、こちらもいあいぎりだ!」
ダーテングのいあいぎりを同じ技で打ち返し相手の隙を見てジュカインはアイアンテールで攻撃する。
かまいたちでふきとばされても岩壁を蹴りドラゴンクローを食らわせ、バトルは激しくなった。
戦っていくうちに、マグマが燃え滾っている場所についた。
どうやら火山の中心部らしい。
しかしホムラとリクガはかまわず戦い続ける。
すると、台地が強く揺れ、マグマが膨れ上がる。
「な、これは・・・・まさか!?」
「くくく、そのまさかだ。
今ここでグラードンは目覚める!!」
「そんなことさせるかっ・・・!」
マグマの中から現れた巨体にリクガは息を呑む。
生まれてはじめてみる伝説のポケモンがまさかこんな超古代ポケモンだとは・・・・とリクガは驚きを隠せず立ちすくんでしまう。
グゥゥオオオオオオオッ!!!!
「うっ・・・!」
高く叫ぶ巨体は再びマグマの中へ潜り姿をくらました。
「・・・っ」
一瞬だけ見えた紅く硬質な巨体と、金色に光る目・・・。
あれを見ただけで人を一瞬のうちにすくませてしまうのだろうか・・・リクガは一歩も動けなかった。
だからジュカインが自分を抱え崖を飛び移りこえるまで自分の状況がわからなかった。
まさか、マグマの波が少しだけ腕にはねてきたことにも気付かずに・・・・。
エントツ山の火口の、安全なところに着きジュカインはリクガをゆっくりおろす。
リクガは顔をゆがませ腕を抑える。
「ジュー・・・」
「ありがとうジュカイン・・・。
トドゼルガ、頼むぞ!」
タオルを水浸しにしトドゼルガの作った氷を包み腕に巻いて応急処置をするリクガ。
その様子を心配してみてるジュカインの傍らに背後にボーマンダを控えた男が現れた。
男はジュカインを軽く撫でるとリクガの前に立ちみおろす。
「・・・!」
リクガは目を丸くし戸惑う。
なぜならその男は・・・ジンキ。
リクガの兄だった。
「・・・久しぶりだな、リクガ」
「に、兄さん・・・!?」
「勝手なことしてこのザマか」
「うぐぅっ!!」
弟の負傷した腕を強く握るジンキ。
その目はいかにも怒っているという感じで、冷たく鋭いものだった。
「この馬鹿がっ・・・何故こんな無茶をしたんだ!!
下手すればお前、死んでいたんだぞ!!?」
「・・・・」
「こういう事は俺に任せろよ・・・リクガ・・・お前を失いたくないんだ、俺は・・・・・!」
「兄さん、それはボクも同じだよ」
「お前っ・・・」
リクガは怪我したほうの腕を、そして長年憧れを抱いていた兄を見た。
時々ジンキは何か抱え込みふけこむことがある。
誰かを失うことに恐怖することもあった。
人命救助という任務には必死になり命をかけることもある。
そんな兄の姿を見てたからこそリクガの中にある思いが生まれた。
「あなたと同じようにボクにも守りたいものがある。
全部抱えているのはあなただけじゃないんです」
「・・・」
「言葉で言うだけでなく行動しなきゃ意味なんて成さないんだ。
だからボクは守ると言うだけじゃなくてそれを行動に移して本当に守りたいとおもっているんだ・・・。
友達もポケモンたちも・・・家族も」
「・・・・・」
「勝手なことしてすまないとは思う。
でも、ボクは・・・」
「リクガ、わかったよ」
ジンキは自分の気持ちを正直に話す弟の顔を見て静かに頷きさっきより穏やかで優しげな目つきになりそっと彼の頭を撫でた。
「お前もそう思い行動するようになったのか・・・」
「兄さん・・・」
「あいつも言ってたな。
『子どもは人が思うほど子どもではないように大人は自分で思うほど大人ではない』
・・・って」
まさにそれなのかもしれないな」
「・・・」
「リクガ、マグマ団と思いっきり戦え。
ただし命を捨てるような無茶だけはするなよ」
「・・・了解!」
「よし、もうじき決着をつけることだろう。
あいつらの首領が向かったというルネシティへ行くぞ!」
「うんっ!」
ジュカインとトドゼルガをボールに戻しオオスバメを出す。
そしてボーマンダとジンキの後をついていった。
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