第54話:2つの敵
義理の兄・セイとバトルすることになったクウヤ。
一度は動揺するも、すぐにアーチとヒーンでセイのロゼリアとネイティオ相手に戦う。
「アーチはかえんほうしゃ!
ヒーンはみずのはどう!」
持ち前の勢いで押すクウヤだが、頭の良いセイは技を受け流し的確な指示を出して攻防のバランスを保っている。
「ロゼリア、ネイティオ、まもる!」
「なにっ」
「そのままロゼリアはマジカルリーフ!」
「かえんほうしゃでうちけせ!」
「サイコキネシス!」
そんな戦いの最中、クウヤはなんとか彼から事情を聞こうとするがセイはその隙を与えずただ技を指揮しクウヤを追い詰めるのみだった。
「セイッ・・・セイ!」
「ロゼリア、しびれごな!」
「ッアーチ!かえんほうしゃでなぎ払え!
ヒーンはれいとうビームだ!」
「ネイティオ、ひかりのかべからサイコキネシスだ」
技と技が激しくぶつかり合い、バトルは激しさを増す。
なんとしてでもセイと話がしたいクウヤはここで大勝負に出る。
「アーチはだいもんじ!ヒーンはふぶき!」
「・・・!」
二つの大技は2匹にヒットした・・・が、先程放った光の壁が技の威力を和らげたため戦闘不能にはならなかった。
しかし、相性がいいので結構なダメージにはなったようだ。
体勢を立て直している隙にクウヤは思い切ってセイに声を上げる。
「セーイッ!
いい加減オレの話を聞けよ!」
「・・・クウヤ」
ようやくセイはクウヤに返事をした。
「どうしちまったんだよ!
オレを旅立たせて、あの一家から抜け出させてくれたのはお前だろ!?
なのになんでいきなり戦わなきゃいけねーんだ!
お前はそんなヤツじゃねーだろ!」
「僕はっ」
「何をぼやぼやしてるの、セイ?
そんな汚らわしいもの、とっととこのルネシティから追っ払いなさい」
「おばちゃん!?」
いきなり姿を現したのはセイの母親だ。
さらに別のところから父親も姿を現す。
「セイ、お前がこのバトルに負ければ自分はどうなるかわかってるだろうな」
「・・・・」
「私達に必要なのは優秀な存在だけ。
それ以外のゴミクズはいらないの。
だからそんなのに負ければ貴一ではないわ」
「・・・・それがどうした?」
「「「!!」」」
今まで目の前で両親に向かって口答えするのを見たことがなかった
本人達とクウヤはあっけにとられる。
セイはクウヤと、アーチ、ヒーンに視線を向け鋭く、それでいて凛々しく清々した顔で両親を見る。
「僕は本気で戦い、あなた達の提案したこのバトルは続ける。
でもそれは、血とか家柄には関係ない!
貴一静ではなく、ポケモントレーナーのセイとして!」
「貴様・・・!」
「もう僕はあなた達に臆しない。
ポケモンたちがいてくれるからね!
さぁクウヤ、続けよう・・・ポケモンバトルを!
この旅で強くなったことを・・・僕たちに証明してくれ!」
「お、おお!」
両親がまだ何か言ってるのを無視して二人の義兄弟はバトルを続けた。
ネイティオのエアカッターに耐え抜いたアーチはブレイズキックをロゼリアに放ちその反撃としてロゼリアはヒーンに向けてマジカルリーフをぶつける。
「ヒーン!」
そして、それに堪えたヒーンの体は海を巻き込み輝きを放つ。
「・・・ヒーン!?」
「ついにこのときが来たようだね。」
「まさかっ」
「そう、ヒンバスは進化する」
ヒーンの体は、ヒンバスのころとは桁違いに大きくなっていき海水はその周りで竜巻のように体を包む。
渦が消え海の仲から姿を現したのは、まるで竜のような姿をしたとても美しいポケモンだった。
「!」
「おめでとう、ヒンバスはミロかロスに進化したよ。」
「・・・よーし!ヒーンいくぞ、みずのはどう!」
「ミロゥ!!」
ミロかロスの一撃は強力で、セイのポケモンをダブル・ノックアウトした。
おつかれ、と声をかけロゼリアとネイティオをボールに戻すとセイはクウヤに歩み寄る。
その顔は、とても優しいものだった。
「強くなったね、クウヤ。
これならもう、誰かに馬鹿にされ虐げられることもない。
ホントの自由が手に入る。」
「セイ・・・オレがここまで来れたのはお前がきっかけをくれたからだ。
オレとアーチだけじゃあの時何もできなかった。
お前と、アダンおっちゃんの力があったからだよ!」
「じゃ、もう大丈夫だよね・・・一人じゃないから」
「おぅ!」
セイは両親に向き合い、言い放つ。
「これで僕もクウヤも、貴一家ではない。」
「!」
「クウヤはとても強くなった。だから僕は負けたんです。
誰かに負けることは、恥でも侮辱対象でもない・・・優劣を分ける必要なんてない・・・それを知り心情として僕はセイとして今、独立させていただきます!」
「子供無勢が、いい気になるな!」
「僕はあなた達を大人としてみませんので、お好きにそうお呼びくださって結構です」
まだ何か言ってる夫婦をまた無視して、セイはクウヤの腕を引きどこかへ向かって歩き出した。
引っ張られつつアーチとヒーンをボールに戻し彼の後をついていくクウヤだった・・・。
「ここは?」
セイにつれてこられたのは、なにか祠のような場所だった。
ルネの岩場は度々遊び場にしてたこともあったがこんなのあったっけ?とクウヤはまじまじ祠を見る。
「目覚めの祠。伝説が眠るといわれてる場所だよ。」
「でんせつ?」
首を傾げるクウヤに対しセイは言葉を続ける。
「このホウエン地方には多くの「伝説のポケモン」がいるんだ。
特に有名なのは、海のカイオーガ、大地のグラードンだ」
「カイオーガ・・・グラードン・・・」
「その2つの神は自然を大きく動かすといわれている」
「自然を大きく動かす!?」
「そう。
カイオーガはその力で大雨を降らせ海を広げグラードンはその力で日照りを呼び陸を広げる・・・」
「海・・・陸・・・あっ!!!」
クウヤの脳裏をよぎったのは海と陸に関係するもの・・・・・あの二つの組織だ。
それを察したのか、セイは驚くべきことを口にする。
「・・・・キミが旅の最中戦ったという二つの組織・・・アクア団やマグマ団とかいう連中がこの街のこの祠にいるのを僕は見たよ。」
セイの話によると、およそ1週間前・・・アダンに会いに行った帰りに偶然この祠へ立ち寄ったとき青い囚人服の小隊と赤いフードの小隊がなにか争っているのを目撃したのだという。
以前クウヤからポケナビ越しで聞いた話ですぐにその二つがアクア団、マグマ団だと理解した。
海の世界を望むアクア団と、陸の世界を望むマグマ団・・・。
その両軍がここ、目覚めの祠に現れたことが意味するものは・・・。
「お、おい・・・どゆこと!?」
「・・・僕の推測が正しければ・・・。
海と陸を増やすその方法を見つけ出した両者は必ずそれを実行し既にその目的に動き出してる可能性が高い。」
「その方法は・・・グラードンとカイオーガを目覚めさせることか!?」
「そうだ。
その二つの神が・・・どちらかだけでも目覚めてしまえばこのルネシティは崩壊する。」
「!」
「しかもルネシティだけでなく・・・ホウエン全体が大変なことになってしまうだろう」
「そんなっ・・・!」
セイのこの推測はクウヤに驚愕とショックを与えた。
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