第51話 本気になるとき
「こんなところで休憩になるとは、ね」
今彼がいるのはサイユウシティ。
ポケモンリーグ本部にもっとも近い街だ。
今はちょうど黄昏時、まだくるべきでないこの街で休息をとることにしたのだった。
「じゃまずはポケモン達のごはんを・・・」
「おにいちゃんっ」
「え・・・アリカっ!」
まさか妹がいると思わなかった。
アリカは無邪気にリクガに抱きついてきた。
「アリカ、どうしてここに?」
「お父さんもいるよ!
こっそりついてきちゃったの、あははっ」
「おまえな・・・」
時折頭を抱えた、アリカのおてんばぷり。
きっと近くに父もいるんだろうと思いリクガはアリカの言葉を頼りに父を捜す。
「父さん」
「おお、リクガ!
おまえもここにきていたのか!」
「旅の途中の休憩でね。
それにしてもなんでアリカがいたんだよ?」
「うぅん・・・私も車をあけてびっくりした。
家に返そうにも私も急いでいたもんでそのまま連れてきてしまったんだ」
「やれやれ・・・」
父の仕事が終わるのは明日、それまでアリカの面倒を見てほしいと頼まれリクガはしばらくサイユウシティで足止めをくらうことになった。
「すぅ・・・」
「寝ちゃったか」
すっかり日も暮れアリカは眠ってしまった。
ポケモン達は涼しい風を浴びてくつろいでいる。
リクガも妹の相手をしていてクタクタだ、自分も休もうとした・・・そのときだった。
「うわああ!?」
「今の声・・・父さん!?」
不意に父の悲鳴を聞きそこに向かう。
とっさだったためガードをつけずにアリカをそこに残してしまったことに気づかないまま。
「お前はマグマ団の・・・マツブサ!!」
「きたか」
そこにいたのはかつて遭遇したマグマ団の頭領・・・マツブサだった。
父にまとわりつくココドラやイシツブテをトドクラーのみずのはどうで吹き飛ばし父を助けだす。
「おい、父さんになにをした?!
ここに何の用がある・・・答えろ!」
「私の狙いは貴様だ」
「なんだとっ!?」
何故自分に、と驚きを隠せないが心当たりがないとも言い切れない。
「我々はついに目的のものを発見した。
あとはそれを実行に移すのみとなったのだ」
「なにっ・・・」
「しかし、そこで不意に貴様等の存在を思い出してな。
まずはそいつらを私が直につぶそうと思ったわけだ。
部下に情報を集めさせ、この男がお前の父親だという情報を入手し貴様に苦痛を味わせようと思ってな!」
「姑息なまねを・・・」
リクガはマツブサを挑発した。
「そこまでしないとボクにたいする恐怖も拭えないか!
そうならばお前はとんだ小心者だな!!」
「・・・なるほど、貴様は余程私を怒らせたいと見た」
マツブサは自分のポケモンを一斉に出す。
リクガもジュカイン達を出す。
特にユンゲラーは父の方へ出し、すぐに指示を送った。
「ユンゲラー、父さんを安全なところへ」
ユンゲラーは頷くとテレポートした。
「バクーダ、とっしんだ!」
「コドラ、こちらもとっしん!
その隙にトドクラーはみずのはどうをぶちこめ!」
コドラとバクーダがぶつかりあい、そこにトドクラーが水技を打ち込み大ダメージを与える。
そのトドクラーをたおさんとチャーレムがつっこんできたがそれをオオスバメのつばめがえしが阻んだ。
背後から飛んでくるゴローンもジュカインが倒す。
「・・・よしっ」
「ゴルバット、エアカッター!」
「させるか! コドラアイアンヘッド!」
この状況は・・・数が多いマグマ団よりも一人で複数のポケモンに指示を出し戦うリクガが優勢だ。
「ぐぅ・・・」
「ふ、どうした・・・?」
「こうなればやむをえん、サイユウを爆破させてやる!
しかもポケモンセンターをな!」
ポケモンセンター、と聞きリクガは妹をおいてきたことを思い出す。
「・・・しまった、あそこには・・・」
リクガの不安は的中してしまう。
サイユウポケモンセンターの一部が爆発しアリカは爆風にとばされた。
彼女の真下には巨大な空洞が・・・。
「きゃああああ!!!」
「アリカッ!」
自分の手がわずかに届かず、アリカは穴へ落ちていってしまった。
「あ・・・あ・・・どうしてっ・・・!
ぼ・・・クが・・・マモレ・・・なかったから?
あいつが・・・」
「ふ・・・ははは!
どうだ・・・・最高の屈辱の味は・・・ぐほぉ!!?」
団員達も驚いた。
リクガがマツブサの腹に拳を一発入れたのだ。
そこに容赦なく蹴りを入れる。
「貴様・・・絶対に許さない!」
「マツブサさまっ!」
「邪魔するなぁぁっ!!」
団員達をトドクラーのふぶきで凍らせる。
リクガは殺意に満ちた目で彼らを見下した。
「あれは・・・リクガくん!?」
サイユウの上空を飛ぶエアームドに乗っている男、ダイゴは目に入った光景に驚いていた。
先程マグマ団の襲撃を聞きつけたのだ。
「ジュカイン、リーフブレード!」
リーフブレードがマツブサの腕をかすめる。
既にマツブサの体は服以上に赤に染まりぼろぼろでマグマ団数人もほぼ同じ状況だ。
リクガの目は据わっており殺気が伝わってくる。
このままではまずい、と思ったダイゴはエアームドから降りて彼に駆け寄る。
「やめるんだリクガくん!」
暴れるリクガの腕をつかむダイゴ。
「じゃまするなっ!!」
「・・・やむをえない、ごめんよ!」
「うぐぁ・・・」
ダイゴはリクガの腹を強くけりをいれ、気絶させる。
すぐに敵のいた方向に視線を向けたがそこには血痕しか残っておらずマツブサはすでに逃げてしまっていた。
「・・・ここは彼を押さえることを優先したからな、しかたないか。」
穴のそこから、アリカを抱えたボスゴドラがでてきた。
急いで彼女の様態を確認し、気を失ってるだけだと知ってダイゴは安心する。
「ありがとうボスゴドラ。
にしてもこの兄妹を救えてよかった・・・。
この子達に万が一何かあったら、僕はジンキに会わせる顔がないからね」
「う・・・うぅん・・・・?」
「おにいちゃん!!」
「アリ・・・カ?」
意識を取り戻したリクガにアリカが泣きつく。
朦朧とする意識の中で思い出すのは、さっきまでの自分の変貌ぶり。
「ボク、は・・・」
「気がついたかい」
「ダイゴさん?」
ダイゴは少し疲れた様子で、リクガの隣にしゃがむ。
どうやらあの後リーグ関係者に先ほどの事件を説明していたようだ。
アリカが父に呼ばれ部屋を出ていったあとでダイゴはリクガに話しかけた。
「昨日はすまなかったね。
君を押さえるにはああする他になかったから・・・」
「・・・いえ、今回はボクの方に責任があります。
あのままキレ続けてたら・・・ボクはポケモンを殺人者にしてしまうところでした・・・」
側にいたジュカインにごめん、と謝る。
その目からは涙がたまっていた。
「自分がどうなっていたか、覚えているんだね」
「・・・はい・・・。
ボク・・・とんでもないことをしようとしてたんです。
なんで、どうして・・・」
「大事な家族を傷つけられてキレない人間なんていないよ。
その思いが強ければ強いほど、我を忘れてしまう。」
「ダイゴ・・・さん・・・」
「大丈夫、キミはまだ若いんだ・・・今からでも十分感情を抑えることはできる。
そして、家族を傷つけないような強さもてに入れられるよ。」
「・・・ボク、そのくらい強くなりたいです。」
そんなリクガに大丈夫だと促すようにジュカインはリクガにすりよる。
「ジュカイン・・・ごめん、ごめんな・・・っ!
おまえのためにも、家族のためにもボク自身は強くなるから・・・だから、だから・・・これからもボクと一緒にいてほしい・・・!」
リクガはジュカインを抱きしめて大きく泣いた。
ジュカインはただリクガにすりよるだけだ。
「うぁーーーーーっ!!」
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今回はリクガ主役、内容は「おとなしい人ほど切れると怖い」です。
人格も変わっちゃってるかも・・・ちょっと閲覧注意ですね