No.849473

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

響鬼の世界へ

2016-05-25 00:06:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:5309   閲覧ユーザー数:1625

楽園(エデン)の食堂にて…

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

 

支配人は今、果てしないレベルで落ち込んでいた。その理由は何かと言うと…

 

「あっちゃあ、根元からポッキリ逝っちゃってるねぇ~こりゃまた」

 

「あぁ、だからそんなに落ち込んでたんですね…」

 

「どんまいとしか言いようが無いわねコレは…」

 

そう、前回の任務中に折れてしまった支配人の音撃用武器……音撃弦・烈撃にあった。食堂のテーブルの上に置かれているそれは、根元部分からポッキリ折れてしまっており、もはや修復自体が不可能な状態だった。これにはフィアレス、ディアーリーズ、ハルカも苦笑いせざるを得なかった。

 

「この状態から直すんだったら、流石に私達の技術だけじゃ無理だね。本業の人達に頼まないと」

 

「まぁ、やっぱそうなるよなぁ……はぁ」

 

「? 支配人さん、本業の人達って…?」

 

「あぁ……俺達に音撃用の武器やディスクアニマルを提供してくれた組織がいるんだ。その組織には魔化魍を退治する者、武器を開発してくれる者などで構成されている」

 

「魔化魍退治専門の組織……確か、名前は“猛士(たけし)”だったかしら?」

 

「“猛士”?」

 

「そうそう、そゆ事……それじゃレイ、せっかくだから向こうに行って修理して貰おうよ。うちもちょうど、修理に必要な鬼石(きせき)が底をついちゃってるからさ」

 

「まぁ、そうなるよなぁ……仕方ない、ちょっくら行って来るとするか」

 

「お二人共、お気を付けて」

 

「大変よねぇ二人共。こんな暑い中、よくマジメに働けるもんだわ」

 

「僕はレグルスのおかげで涼しいですけどね!」

 

「自慢か、自慢なのかこの野郎…………ん?」

 

破損した烈撃を修理に出すべく、椅子から立ち上がって出掛けようとした支配人だったが……ふと、彼はその足をピタッと止めた。

 

「…ハルカ、さっき何て言ったよ?」

 

「? よくマジメに働けるもんだわって…」

 

「あぁ~違う違う、その前だその前」

 

「その前? こんな暑い中って言ったんだけど…………あ」

 

「…あっちゃあ、そういえばすっかり忘れてたね」

 

「? え、何? 何の事ですか?」

 

支配人の言葉に、ハルカとフィアレスはその意味を理解したようだ。ディアーリーズだけは三人が何の事を言っているのかサッパリな状態だったが。

 

「…予定変更。ディア、ハルカ、お前等も一緒に来い。どうせ今日は他に任務も無いだろう?」

 

「へ? え、何故に僕達まで?」

 

「俺の予想が正しけりゃ……時期的に、向こうも人手を欲しがってる頃だろうからな」

 

「けど良いのかしら? 私達、音撃用の武器なんて使った事ないわよ?」

 

「ディアはウォーロック、ハルカはヒートの能力もあれば何とかなるだろうよ。さ、早いところ行くとしよう」

 

「? ? ? ? ?」

 

現時点でのディアーリーズは、まだ全世界の仮面ライダーについて把握し切っている訳ではない。それ故……というより支配人が説明を省略したのもあり、ディアーリーズは何が何やらとチンプンカンプンな状態のまま、ハルカと共に支配人逹に同行する事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某次元世界、とある山岳地帯…

 

 

 

 

 

 

 

「く、くそ……くそぉっ!!」

 

不正転生者のみで構成された集団が、必死に逃げ延びているところだった。その内、魔導師のバリアジャケットで見に包んだ男性―――赤巻竜二郎(あかまきりゅうじろう)は後ろを見ながら必死に飛んで逃げ続ける。

 

「何なんだよ……何なんだよアイツ等…!! 俺達の完璧な計画が、何であんな奴等なんかに…!!」

 

彼もまた、女性を洗脳してハーレムを築き上げようとする欲望まみれな性格だ。転生の際に神からチート級の能力も貰った事で、彼や他の不正転生者達は完全に有頂天になっていた……あるモンスターに出くわすまでは。

 

『キュオォォォォォォォォォォォォッ!!!』

 

「ひぃっ!?」

 

必死に飛んで逃げていた赤巻。その後方から、四つ目と青い翼を持った巨大な鳥の怪物―――“覚醒空魔鳥(かくせいくうまちょう)コルニグイス”が、甲高い鳴き声を上げながら猛スピードで飛んで来たのだ。それに気付いた赤巻は青ざめた表情で拳銃型デバイスから魔力弾を放射する。

 

「や、やめろ、来るなぁ!! 俺は転生者の中で最強の魔導師なんだぞ!? そんな俺が、こんなところで死ぬ筈が無いんだ!? お前なんかに殺される俺じゃ…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

『キュオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』

 

赤巻がどれだけ叫ぼうと、彼を獲物と見なしているコルニグイスからすれば知った事ではない。コルニグイスは鋭利な牙の生えた嘴を開いて突撃し、魔力弾など物ともせずに赤巻に向かって突っ込んでいく……その時。

 

-ズズウゥン…-

 

『!? キョオォォォ…!?』

 

「へ……は、え?」

 

突然響いて来た地響き。その地響きを起こした存在(・・)を見たコルニグイスが一度空中に制止し、それを見た赤巻も間抜けな声を出しながら、恐る恐る自身の後方へと振り向くと…

 

 

 

 

 

 

「グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

 

 

 

 

 

黒いボディ、その上に赤く燃え上がるような体色をした巨大恐竜―――ブラックティラノサウルスが、まるで怪獣のように高い咆哮を上げながら、木々を薙ぎ倒しつつ迫って来ていた。

 

「…な、何じゃこりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

『キョオォォォォォォォォォォォッ!!?』

 

これには赤巻だけでなく、コルニグイスまでもが驚いたような鳴き声を上げる。そんなコルニグイスに、ブラックティラノサウルスはその口元に黒い炎を収束させ始める。するとブラックティラノサウルスの目の前に、球状に燃え上がる巨大な黒い炎―――“地獄死炎(デスファイア)”が形成され…

 

「―――ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」

 

-ボゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!-

 

『キュアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?』

 

その地獄死炎(デスファイア)を、コルニグイス目掛けて放射してみせた。いかなる相手も地獄へと導くという黒い炎は、苦しむコルニグイスの全身をどんどん焼き尽くしていく……そして数分後には、黒水晶の欠片を残して跡形も無く焼き滅ぼされてしまった。

 

「グルルルルル…」

 

「ひっ!? こ、今度は俺を狙うのか…!?」

 

ブラックティラノサウルスは唸り声を上げながら、今度は空中に留まっていた赤巻に狙いを定める。コルニグイスが一撃でやられる光景を目の前で見ていた赤巻は完全に及び腰になり、急いでこの場を逃げ出そうとするが…

 

「安心しなよ、転生者さんや」

 

「!? ぁ、が………ぁ…」

 

そんな赤巻も、地上から見ていたFalSigの“直死の魔眼”により、その生命を絶たれる事となった。絶命した赤巻の身体が地面へと落下していき、落下地点でグシャッと肉の潰れる音が響く。

 

「…しっかしクロメちゃん。よくもまぁ、あんなデカいのを骸人形にする事が出来たね。お兄さんビックリだよ」

 

「うん。たまたま寝てるのを見つけたから、寝てる隙に八房で刺したの」

 

FalSigの近くに生えている大木から、クロメがひょこっと顔を出して歩み寄って来た。クロメ曰く、どうやらこのブラックティラノサウルスは満腹状態で眠っていたところをクロメに発見され、寝てる隙を突かれて八房の能力で骸人形にされてしまったらしい。その為か、ブラックティラノサウルスの両目はよく見ると白目を剥いたままになっており、既に絶命している事が分かるようになっている。

 

「FalSigさん。師匠(ミロシュさん)逹は?」

 

「awsさんとウェイブ君、セリューちゃんならそれぞれ二手に別れて、他の逃げた不正転生者達を追いかけて行ったよ。セリューちゃんの方はそんな遠くまでは行ってないだろうし、たぶんそろそろ戻って来る頃だとは思うんだけど…」

 

「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!?」

 

「「!」」

 

「グルルルルルルル…!!」

 

そんな時、二人の耳に女性の悲鳴が聞こえて来た後、不正転生者と思われる一人の女性魔導師が二人の近くまで勢い良く吹き飛ばされて来た。更にそこへ巨大な犬型の怪物―――コロが唸り声を上げながら出現し、ズシンズシンと足音を立てながら女性魔導師へと迫って来ていた。

 

「わ、分かった、私の負けよ!! だからお願い、命だけは助け―――」

 

「悪党は私達が断罪する!! コロ、捕食ぅっ!!!」

 

「グルォォォォォォォォォォォッ!!!」

 

「ひっ……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

-グシャッボキッムシャムシャッボリボリボリ…-

 

「…うっへぇ、エグいねぇ相変わらず」

 

「セリューはあれでいつも通り」

 

大木の枝の上に立っていた女性―――セリュー・ユビキタスは、周囲が見ればドン引きするであろう醜悪な笑みを浮かべながらコロに命令。それを聞いたコロは大口を開けて女性魔導師に襲い掛かり、女性魔導師は成す術なくコロに喰い殺される末路を迎える事となった。肉を食い千切る音、骨を噛み砕く音が遠慮なく響き渡る中、FalSigは口元を押さえ、既に慣れているクロメは暇潰しに手持ちのクッキーを食べ始める始末。

 

「む、そちらも終わったか」

 

「はぁ、はぁ、人数が多いとなかなか疲れるな…」

 

「あ、ウェイブ…!」

 

そこに、不正転生者達を仕留め終えたawsとウェイブが戻って来た。ウェイブの姿を見たクロメが、嬉しそうな表情でトコトコ彼に歩み寄って行く。

 

「awsさん、そっちも終わったんすか?」

 

「あぁ。私とウェイブで挟み撃ちにして仕留めたよ……セリュー、そちらはどうだ?」

 

「はい、aws隊長! 世界を歪めし不正転生者は、このセリュー・ユビキタス&コロが退治しました!」

 

「キュイー!」

 

「仕留められたのなら結構。そして誰が隊長だ誰が、私は別にお前の上司ではない」

 

「え? でもカンナ隊長からは、awsさんを隊長格に任務を遂行するようにと命じられましたが…」

 

「またあの腹黒女か、いつもいつも面倒な事を…」

 

師匠(ミロシュさん)、カンナ隊長の事を凄く嫌ってるっぽいですけど……何があったんですか?」

 

「何があったか? 私が傭兵だった頃、私の遂行しようとしていた任務に勝手に割り込んで来るわ、私の予定を勝手にキャンセルして無理やり私を自分の任務に同行させてくるわ、いつも私をパシリ扱いするわ、奴の繰り出した攻撃に危うく巻き添えにされそうになるわ、私が貰う筈だった資金を強引に巻き上げるわ、無理やりにでも管理局へ勧誘されそうになるわ、出会い頭にいきなり蹴り飛ばされるわで……これであの女を嫌わない者がいたら、私はその者を心の底から聖人と崇めている事だろうな」

 

「「何かすみませんでした!!」」

 

(んな事やってたのかよカンナさんよぉ…)

 

「?」

 

awsの話を聞いた直後、ウェイブとクロメが即座に謝罪をしたのは言うまでも無いだろう(セリューだけはよく分からない様子で首を傾げていたが)。

 

「…はくちゅん!」

 

その話の中心となっている人物が、他の任務中に可愛らしいクシャミをしていたのはここだけの話。

 

「…まぁ良い。クロメ、FalSig、黒水晶の欠片は?」

 

「既に確保済みでっせ」

 

「良し、このまま次の任務に映る」

 

FalSigが持っている小型カプセルには、黒水晶の欠片が封印状態で保管されていた。awsはそれを見て満足そうに頷く。

 

「調査班の報告によれば、この近くにある次元世界フロリアにも、黒水晶の欠片が落ちたらしい。すぐに調査班と合流して、二つ目の黒水晶の欠片を確保しに向かう。管理局の魔導師部隊に先を越される前にな」

 

「「「了解!」」」

 

「はいよ~っと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり…

 

 

 

 

 

「響鬼の世界、とうちゃーくっ!」

 

支配人、フィアレス、ディアーリーズ、ハルカの四人は『響鬼の世界』へと到着していた。しかし…

 

「ほえぇ、ここが響鬼の世界ですか…」

 

「…って、何でよりによって山の中に転移したのよ」

 

「その方が都合が良いからだ」

 

現在、四人がいるのは山の中だった。ちょうど夏の時期だからか非常に蒸し暑く、セミの鳴き声があちこちからミンミンと聞こえて来ている。

 

「さっきも言ったように、僕は暑いの平気ですよ~」

 

「何で私までこんな暑い外に出なきゃいけないんだか……ウル、ちょっと私を涼ませなさい」

 

「はいはーい」

 

「バカップルかお前等は……んで、たぶんこの辺りの山にいそうなもんだが…」

 

冷気魔法のおかげで、熱い中でもピンピンしているディアーリーズ。そんなディアーリーズに抱き着く形で涼しんでいるハルカを他所に、支配人が周囲をキョロキョロ見渡していたその時…

 

「ん~…………ッ!? 皆、下がって!!」

 

「「「ッ!!」」」

 

『ヌゥン!!』

 

-ドスゥンッ!!-

 

何かに気付いたフィアレスが声を上げ、他の三人が同時にその場から後退。その直後、三人が先程まで立っていた場所に、赤い甲冑を装備した人間サイズの魔化魍―――火焔大将(かえんたいしょう)が勢い良く降り立って来たのだ。火焔大将の着地した地面は大きく陥没し、火焔大将は唸り声を上げながら四人を睨みつける。

 

『ヌゥゥゥゥ…』

 

「ッ……早速お出ましって訳ね…!!」

 

「確かコイツも魔化魍でしたよね? ならばさっさと倒すに限ります!!」

 

≪チェンジ・ナウ≫

 

『ヌォォォォォォォォォォッ!!』

 

ディアーリーズはすかさずウォーロックに変身し、ウォーロックソードを構えて火焔大将と対峙。火焔大将は口から火炎放射を放つが、ウォーロックは跳躍してそれを回避し、跳躍しながらリングをベルトに翳す。

 

≪ジャイアント・ナウ≫

 

「よいしょお!!」

 

『!? ヌ、グゥゥゥゥ…!!』

 

魔法陣を通じて巨大化したウォーロックの左手が、すかさず火焔大将を掴み上げる。火焔大将は持ち前のパワーで脱出しようとするが、ウォーロックはそれより前に別のリングを翳していた。

 

≪ブリザード・ナウ≫

 

『ヌゥ!? ウ、オァ……ガ…………カ……』

 

「ほっと」

 

ウォーロックの巨大な左手に掴まれたまま、冷気であっという間に凍りついた火焔大将。そのままウォーロックは凍っている火焔大将を地面に叩きつけ、火焔大将は無惨にも粉々に砕け散って倒されてしまった。

 

「はい、終了」

 

ウォーロックは一仕事終えたかのように一息つく中、支配人はだんまりのまま一部始終を見届けていた。

 

(妙だ……いくらディアがウォーロックに変身出来るとしても、こんなアッサリ倒せるものなのか…?)

 

「? 支配人さん、一体どうし…」

 

その時、ハルカは気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

粉々に砕け散っていた氷の欠片が、少しずつ着火し始めていた事に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ……ウル、下がって!!」

 

「え? けど、もう魔化魍は倒し…ッ!?」

 

そしてウォーロックも気付いた。周囲に散らばっていた氷の欠片が次々と着火し、それぞれ二ヵ所に集まり始めていた事に。そして…

 

『『ヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!』』

 

「ふ、増えたぁーっ!?」

 

なんと倒された筈の火焔大将が、二体に分裂して復活を遂げてしまったのだ。これにはウォーロックも驚いてすぐに後退して構え直す。

 

「レイ、コイツやっぱり…!!」

 

「あぁ間違いない……コイツ、夏の奴(・・・)だ!!」

 

『『フンッ!!』』

 

「うわ、ちょ…痛っ!? こんの…!!」

 

≪ゲイザー・ナウ≫

 

「あ、馬鹿!?」

 

『『グゥゥゥゥゥゥゥッ!?』』

 

二体の火焔大将に同時に殴られ、ウォーロックはすかさず魔法陣から複数の氷槍を放出して反撃。支配人が止めようとするが時既に遅し、二体の火焔大将に氷槍が次々と命中し、二体が同時に凍りつく。しかし氷柱で凍らされてから数秒後、二体の火焔大将はすぐに氷が解けて復活し…

 

『『『『ヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…!!』』』』

 

「また増えたぁーっ!?」

 

そこから更に分裂し、火焔大将は合計四体に増えてしまった。

 

「ちょ、一体どうなってんですかコイツ等…!?」

 

「下がれディア!!」

 

『グォアッ!?』

 

その時、音撃棒(おんげきぼう)炎天(えんてん)を両手に構えた支配人がウォーロックを押し退け、一番前に立っていた火焔大将に向かって炎天を二本同時に叩きつける。

 

「支配人さん、コイツ等は一体…」

 

「お前は下がれ!! 今のお前の装備じゃ、何度やってもコイツ等を倒せない!!」

 

『『『『ハァァァァァァァァ……フンッ!!』』』』

 

その時、火焔大将逹は四体同時に口から赤い炎を噴き出し、その赤い炎から豪炎魔剣(ごうえんまけん)という長剣を生成。その長剣を右手に構え、四体同時に支配人に斬りかかって来た。

 

「チィ、武器なんざ装備しやがって…!!」

 

その時…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「音撃打・爆裂水晶(ばくれつすいしょう)の型!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ズドンズドンズドォンッ!!-

 

『『『ヌガァァァァァァァァァァァァッ!!?』』』

 

「「「!?」」」

 

突如現れた謎の戦士が割って入り、両手に構えていた白い音撃棒・氷河(ひょうが)を三体の火焔大将に一発ずつ叩きつけた。氷河による打撃を受けた火焔大将は凍りつき、次々と爆発して砕け散っていく。

 

「…お? 来たか」

 

その謎の戦士を見て、支配人はニヤリと笑みを浮かべる。

 

女性のように細いスタイルをしている白いボディ。首回りにかかった襟状の金管のような装飾。紫色で配色されている手足や仮面の隈取。頭部に生えている二本の銀色の角。そして額部分に浮かび上がっている、鬼のような顔をした金色の紋章。

 

それらの特徴に、ハルカはその正体に気付いた。

 

「…もしかして、猛士の鬼?」

 

「そう。あれこそが、この東北地方で活動している鬼の一人……吹雪鬼(フブキ)

 

現れた鬼の戦士―――仮面ライダー吹雪鬼(フブキ)は両手に持っていた氷河をクルクル回し、残る一体の火焔大将に狙いを定める。残る一体の火焔大将も、長剣を構えて吹雪鬼に向かって突撃していく。

 

『ヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……ハァッ!!』

 

「はっ!」

 

『ヌ、ガァッ!? グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!』

 

そして火焔大将が長剣を振り下ろした瞬間、吹雪鬼は左手の氷河で長剣を防ぎ、そこに右手の氷河を振り下ろして長剣を地面に叩き落とした。武器を失った火焔大将は、吹雪鬼が同時に振り下ろした氷河を両手で掴む……が、これが吹雪鬼の狙いだった。

 

「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!」

 

『!? グ、ガ……ガァッ!?』

 

吹雪鬼は仮面の口部分がカパッと開き、そこから強力な冷気を噴き、火焔大将の手足を凍らせてしまった。その間に吹雪鬼は腰にベルトから音撃鼓(おんげきこ)氷柱(つらら)を取り外し、それを火焔大将の胸部に押しつけてから再び氷河を構える。

 

「音撃打・絶対零度(ぜったいれいど)の型!! ハァァァァァァァ……フッ! ハァ! タァッ!」

 

『ヌ、ガ、ォア…!?』

 

吹雪鬼は楽器の太鼓のように、両手の氷河で火焔大将に取りつけた氷柱を叩き始めた。一回、二回、三回、四回と一定のリズムを置いて叩いていくたびに、火焔大将は苦しそうに呻き声を上げ、その全身に清めの音が叩き込まれていく。それが数十秒に渡って続き…

 

「ハァァァァァァァァァァァァァ…………タァッ!!」

 

-ドォンッ!!-

 

最後に一回、氷河を二本同時に叩きつけた。清めの音を徹底的に叩き込まれた火焔大将は凍りつき、最期は粉々に砕け散って消滅していった。

 

「おぉ…」

 

「あれが鬼の戦い方……直接見るのは初めてね」

 

ディアーリーズが純粋に感動し、ハルカが冷静に分析する中、吹雪鬼は手元に戻った氷柱をベルトに戻し、頭部だけ変身を解除。黒髪の女性としての素顔を露わにしてから、支配人達の方へと歩み寄って行く。

 

「お久しぶりです、フブキさん」

 

「フブキさんお久~♪」

 

「レイ君にフィアちゃんこそ、元気そうで何よりね……あら? 今日は初めての顔もいるわね」

 

「えぇ。今のこの時期、そろそろ手伝いが必要かと思いましてね……さて、二人共。改めて紹介しよう。この東北地方で活動しているフブキさんだ」

 

「初めまして、フブキさん。ウルティムス・F・L・マクダウェルです。ウルと呼んで下さい」

 

「私は三千院晴香。ハルカで構わないわ」

 

「初めまして、二人共。レイ君が先に紹介してくれた通り、この東北地方で魔化魍退治の活動をしているわ。よろしくね♪」

 

吹雪鬼―――もとい“フブキ”はニコッと笑みを浮かべて挨拶する。

 

「さてと、レイ君がわざわざここまで来たという事は……目的は武器の修理かしら?」

 

「えぇ。実は先日、俺の愛用してきた烈撃が破損してしまいまして。こんな風に…」

 

「あらあら……それなら“ゆきかぜ”に連絡して、修理を頼まなくちゃね。すぐ準備するから、少し待ってて」

 

「うす。ちなみに、今日は誰がサポーターを?」

 

「三川君よ。今なら、この近くに停めてある車で待ってる筈よ」

 

支配人とフブキがそんな会話をしていたその時、ディアーリーズはフブキにある質問をした。

 

「あのぉ、フブキさん。話に割って入るようで申し訳ないんですが……何で頭だけ変身を解いてるんですか? もう魔化魍の気配が無いので、普通に解いても良いと思いますけど」

 

「「え…」」

 

その発言にハルカとフィアレスが反応するが、ディアーリーズはそれに気付かない。

 

「あらあら。ここで解いちゃっても良いのかしら」

 

「? えぇ、問題ないと思いますけど…」

 

「そう? じゃあ遠慮なく」

 

(…あぁ、こういうパターンか)

 

支配人が嫌な予感を察知する中、フブキはディアーリーズに言われた通り、頭部以外の変身を解除する事で一糸纏わぬ姿を露わにした…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう一度言おう。一糸纏わぬ姿を露わにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――んなぁっ!!?」

 

「えぇ…」

 

「わぉ!」

 

「…はぁ」

 

「ん~♪ 今の時期だと、やっぱりこの恰好が一番涼しいわねぇ~」

 

ディアーリーズが思わず顔を赤くし、ハルカが唖然とした表情になり、フィアレスが楽しそうな声を上げ、支配人が呆れたように溜め息をつく。それぞれ違った反応を示しているのに対し、フブキは涼しそうな様子で大きく背伸びをする……その際、たわわに実った果実をたゆんと揺らしながら。

 

「え、ちょ、な、いや、あの…………そぉいっ!!」

 

≪ドレスアップ・ナウ≫

 

「あら」

 

赤面状態のまま見かねたディアーリーズが、すかさずドレスアップの魔法を発動。半袖の白いTシャツと青色の短パン、そして二足のサンダルがフブキの全身に着衣された。

 

「ちょっとフブキさん!! 何でいきなり裸になるんですか!? びっくりしましたよ!!」

 

「あら。変身を解いても良いんじゃないかって言われたから、その通りにしただけよ?」

 

「…言い忘れていたがディア。フブキさんを始めとする鬼達は全員、鬼に変身する際に服が破れちまう。だから変身を解いた後は、誰もが必ず全裸になっちまうんだよ」

 

「早く言って下さいよそういう大事な事は!?」

 

「あらあら、赤くなっちゃって。可愛らしいわねぇ♪」

 

「うぷっ!? ちょ、フブキさ……顔に胸が当たって…!!」

 

「…あの人もあの人で、流石に羞恥心が無さ過ぎじゃないかしら?」

 

「まぁ、フブキさんはいつもあんな人だからねぇ」

 

「…やれやれ、これはこれでまた騒がしくなりそうだな」

 

フブキがディアーリーズを抱き締めて可愛がっているのを見ながら、もはや何度目かも分からない溜め息をついてしまう支配人だった。この後、更に色々な意味で苦労する羽目になる事も知らないまま…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ『響鬼の世界』の、とある洞窟にて…

 

 

 

 

 

 

-グチャ、ムシャ、ボリボリ…-

 

「グルルルルル…」

 

一体の火焔大将が、育ての親である筈の童子(どうじ)(ひめ)を捕食していた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To be continued…

 


 
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