No.848171 九番目の熾天使・外伝 ~短編???~竜神丸さん 2016-05-17 11:56:26 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:3789 閲覧ユーザー数:1361 |
絶望の未来…
人々が希望を失った地獄のような世界…
偉大なる悪の秘密結社の侵略を受け、世界は恐怖と絶望に包まれていった…
弱き人間は滅ぼされ、強き人間は心なき怪人へと改造された…
かつては人々の希望と成り得し存在、仮面の戦士の存在があった…
仮面の戦士の活躍で、悪は滅び、一時は全てが解決したかのように思われた…
しかし、仮面の戦士が仲間の裏切りに遭うと…
その仮面の戦士は、世界からその姿を消してしまった…
悪の首領は地獄の底から蘇り…
世界は再び、地獄のような世界へと変わり果てた…
人々が願いし時、仮面の戦士は再びその姿を現すという…
しかし、人々が願う事をやめてしまった今…
一体誰が、世界に希望を取り戻す事など出来ようか…
悪の秘密結社―――ショッカーによって支配された世界。
「「はぁ……はぁ……!!」」
荒廃した町、エリアG。
住民一人いないボロボロの町を、必死に走っている親子がいた。母親は時折後ろを振り返りながら走り、娘の方は走り過ぎで今にも体力が切れそうな状態だった。しかし、立ち止まる余裕は無い。どれだけ疲れようとも、両足が痛くなろうとも、嫌でも走って逃げなければならない理由があった。
「くそ、何処に逃げやがった…?」
「こっちに逃げたのは間違いない、よく探せ」
「「ッ!!」」
親子がボロボロの小屋の中に隠れてから数秒後。親子が走っていた道に、二体の怪人―――ラットファンガイアとスパイダー型ロイミュードが通りかかった。どうやらこの二体の怪人達は親子を探しているらしく、隠れている親子は見つからないように必死に自分達の声を押し殺す。
(お願い、早くここからいなくなって…!)
母親は娘を抱きしめながら、怪人達がいなくなってくれるのを待ち続ける。その思いが通じたのか、怪人達は親子が隠れている小屋とは別の建物へ探しに行き、怪人達がいなくなった事で母親は安堵し、不安そうな表情を浮かべている娘に優しく語りかける。
「ママ、怖いよ…」
「大丈夫よ、ミィナ……絶対にあなたを死なせはしないわ」
娘のミィナを抱きしめつつ、母親のカリーナは恐る恐る小屋の窓から頭を覗かせ、小屋の外に怪人がいないかどうか確認する。壊れた自動車や倒れた電柱などが原因で、道のイマイチ見通しは良くなかったが、幸いにも怪人の気配は感じられなかった。
「行きましょう、ミィナ…!」
「うん…」
カリーナとミィナは勇気を出して、小屋の扉から音を立てずに外へ出て行く―――
「見 つ け た ぞ」
「「―――ッ!?」」
―――事は出来なかった。
いつの間に忍び込んでいたのだろうか。カリーナとミィナが見上げた天井には、スパイダー型ロイミュードがその名に違わぬ動きでピッタリと張り付いていたのだ。カリーナとミィナは一瞬で青ざめた表情になる。
「俺達から逃げられるとでも思ったか? 愚かな…」
「ミィナ、走って!!」
カリーナは小屋の扉をタックルで押し開け、ミィナの手を掴んで外へ走り出す。しかしそんな二人の前にはラットファンガイアが姿を現した。後方はスパイダー型ロイミュード、前方はラットファンガイア。
「逃がさねぇぜ、お二人さんよぉ…♪」
「ッ……私はどうなっても構わないわ…!! だからお願い、娘には手を出さないで!!」
「そうはいかん。我々のいた第5支部から食料を盗もうとする盗人共は、たとえ女子供だろうと徹底的に排除しなければならん」
「そういう事だ、諦めて死にな。ケケケケケケ…♪」
下品な笑い方のラットファンガイアは、自らの体細胞から長剣を生成し、その構えた長剣の刃先をカリーナとミィナに向ける。
その時…
-カランカラァン…-
「「?」」
-プシュウゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!-
「「ッ!?」」
突如その場に投げ込まれた、一個の発煙弾。それは地面に落ちると同時に煙を噴き出し、ラットファンガイアとスパイダー型ロイミュードの視界を遮り始めたのだ。
「な、何だこりゃ……ゲホ、ゴホッ!?」
「くそ、誰だ…『ズドォン!!』グワァッ!?」
煙の中に苦手な成分が含まれていたのか、ラットファンガイアは煙の中で苦しそうに咳き込み始めた。機械生命体のスパイダー型ロイミュードは特に何ともなかったが、そんなスパイダー型ロイミュードの顔面には一発の弾丸が命中。怯んだスパイダー型ロイミュードは顔面を押さえて膝を突く。
「急げ、こっちだ!!」
「あ…!?」
何が何だか分からずにいたカリーナとミィナだったが、そこにバイクヘルメットを被った謎の青年が現れ、彼女達の手を掴んですかさず走り出す。そして煙が晴れる頃には、その場にはラットファンガイアとスパイダー型ロイミュードの二体しか残っていなかった。
「くそ、また逃げられたか…!!」
「うし、ここらへんなら大丈夫か…」
かつては小学校だったと思われる廃校舎。その内部に逃げ込んだバイクヘルメットの青年と親子は、ひとまず理科室と思われる教室で足を休めていた。親子が走り過ぎで疲れている一方、バイクヘルメットの青年はボロボロの机の上に座り込んだまま、所持している拳銃のマガジンから取り出した弾丸をジックリ眺めていた。
「この特殊弾丸の威力も、進化前のロイミュードを足止めする程度……まだまだ改良が必要か」
「あ、あの……あなたは一体…」
「ん? …あぁ、そっか」
カリーナが問いかけようとしている事を何となく察したのか、青年は頭のバイクヘルメットを取り外す。バイクヘルメットの下から露わになったのは、首元から右頬にかけて彫られた赤い入れ墨、ボサボサの黒髪などが特徴的な若い青年の容姿だった。
「俺の名はエヴァン。ちょいと人助けをさせて貰ってる」
「わ、私はカリーナと言います。この子は娘のミィナです……先程は危ないところを助けて下さって、本当にありがとうございます」
「どうって事ないさ。あの程度の敵なら、俺も慣れっこだし……あ、そうだ」
青年―――エヴァンは背中に背負っていたバッグを床に置き、その中からいくつかの携帯食料と水の入ったペットボトルを取り出し、カリーナとミィナに渡す。
「お腹すいてるだろ? それ食べながらで良いから、ひとまず俺の話を聞いてくれ」
「え、ですが…」
-グゥゥゥゥゥゥゥゥ…-
「「……」」
どうやら、カリーナの腹の虫が鳴った音のようだ。エヴァンはそれを聞いてニコニコ笑い、カリーナは恥ずかしそうに顔を赤くする。
「ママ、お腹すいた…」
「…と、娘さんは言ってるぜ? 安心しな、食料はまだあるから」
「…では、お言葉に甘えます」
結局、親子はエヴァンから食料を分けて貰う事にするのだった。
「ひとまず、この地図を見てくれ」
カリーナとミィナが携帯食料を食べてお腹を満たした後、エヴァンは取り出した町の地図を二人に見せた。
「このエリアGから出た少し先の町に、生き残った人間達で結成されたレジスタンスの隠しアジトがある。あそこはまだショッカーの連中にも見つかっていないし、ここらに比べて食料も豊富だ。ひとまず、アンタ逹をそのアジトまで案内しようと思う」
「で、ですが……敵に見つからずにそこへ向かうのは難しいのでは…」
「大丈夫。流石に俺も、一人でここまで来るほど馬鹿じゃないさ。ちゃんと仲間と一緒に来てる」
「仲間と…?」
「あぁ……か~な~り強い、仲間達がな」
「「…?」」
「とにかく、まずはその一緒に来てる仲間達と合流しなきゃ話が進まない。合流する地点はここだし、そろそろ来ても良い頃だとは思うが…」
しかし、そう簡単に話が進むほど―――
-ガシャアンッ!!-
「「「ッ!?」」」
―――現実はそう甘くなかった。
「「「「「イィー!」」」」」
「見つけたぞ、愚かな人間共よ!!」
「さぁ、大人しく捕まって貰おうかしら…?」
「ッ……嗅ぎつけんのが早過ぎだろ…!!」
理科室の窓ガラスをぶち破り、複数のショッカー戦闘員達が一斉に乗り込んで来たのだ。更には理科室の壁を破壊してギリザメスとバタフライオルフェノクまで出現し、エヴァンは舌打ちしながらもバイクヘルメットを頭に被り直し、ホルスターから抜いた拳銃を右手で構える。
「エ、エヴァンさん、どうしましょう…!?」
「走れ、こっちだ!!」
「イィーッ!?」
エヴァンは理科室の入り口側に立っていたショッカー戦闘員に数発の弾丸を浴びせて転倒させ、その隙にカリーナ逹と共に理科室の入り口から廊下へ飛び出す。
(ここだと狭過ぎて捕まる……まずは広い運動場に出て、囲まれる事だけは避けねぇとな…!!)
前方から走って来るショッカー戦闘員を片っ端から銃撃で退けつつ、エヴァンは二人を連れて校舎の下駄箱付近まで到着。そこの出入り口から外の運動場へ出ようとするが…
「「「フッ!!」」」
「!? チッ!!」
出入り口から飛び出した三人の前に、三体のレオソルジャーが同時に出現。エヴァンは即座に銃撃するが、レオソルジャー逹はそれぞれの武器で銃弾を防いでしまう。
「くそ、駄目か…」
「!? 危ない!!」
「え―――」
-バキャアッ!!-
「が…!?」
ミィナが叫んだその直後だった。
左方向から振り下ろされて来たモーニングスターの一撃が、エヴァンのバイクヘルメットに命中。バイクヘルメットのシールドが砕け、露わになった顔の左半分は少量の血が流れる。
「お兄ちゃんっ!」
「鬼ごっこは終わりだ、人間共」
「ッ……んの野郎…!!」
モーニングスターを振り下ろして来たのはアルビノレオイマジンだった。アルビノレオイマジンはレオソルジャー逹を従え、更にエヴァン逹の後方からギリザメスやバタフライオルフェノク逹も追いついて来た。
「諦めろ、人間共!! お前達をショッカーアジト第5支部まで連行する!!」
(ッ……発煙弾は後一発分のみ……せめて二人だけでも…!!)
まさに万事休すだ。何としてでもカリーナとミィナは逃がそうと、懐から発煙弾を取り出して投げようとした……その時だった。
「その人達に……手を出すなぁっ!!!」
-ザバァァァァァァァァァァァァンッ!!-
「「「「「イィィィィィィィィィィッ!?」」」」」
「「「ッ!?」」」
「「…え?」」
「…お」
エヴァン逹に襲い掛かろうとしたショッカー戦闘員達が、いきなり発生した謎の水流に飲み込まれて一斉に押し流されてしまった。これにはギリザメス、バタフライオルフェノク、アルビノレオイマジンも驚きの反応を示す。
「い、今のは…?」
カリーナとミィナまでもが唖然とする中、エヴァンはニヤリと小さく笑みを浮かべる。
「たく……あんの真っ直ぐ馬鹿、来るのが遅ぇんだよ」
エヴァンが振り向いた先。その先に立っていたのは……青いボディに黄色い複眼を持った、女性らしい体型をした仮面の戦士。ギリザメス逹も仮面の戦士の姿に気付き、その姿を見て驚愕する。
「き、貴様……まさかぁ!?」
ギリザメスが叫ぶ中、仮面の戦士は名乗る。
「アタシの名前は……マリン」
「…仮面ライダー、マリンだっ!!!」
かつて人々の希望だった戦士―――“仮面ライダー”の名前を。
「仮面ライダーだとぉ……小癪なぁ!!」
「「「「「イィーッ!!」」」」」
仮面の戦士―――仮面ライダーマリンは両腕を広げ、水の流れを表現するかのような構えを取る。そんなマリンに対してギリザメスは声を荒げ、ショッカー戦闘員達をけしかけるが…
「…ふっ!!」
「イッ!?」
「イィィィィィッ!?」
「イィー!?」
「…す、凄い…!」
殴りかかって来たショッカー戦闘員のパンチを右手で受け流し、左手で繰り出した掌底でショッカー戦闘員を弾き飛ばす。続いて二体目、三体目も攻撃を受け流しつつパンチやキックで次々と叩きのめしていく。攻撃を繰り出すたびに水飛沫を放つマリンの姿は、カリーナとミィナからは美しい姿で映っていた。
「おのれぇ!!」
「はぁ!!」
「な…ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ショッカー戦闘員達が蹴散らされていくのを見て、ギリザメスは怒った様子で口から火炎放射を繰り出す。しかしマリンは右手から放出した疑似水流をぶつけて火炎放射を相殺し、大きく跳躍してからギリザメスの鋸状の鼻に飛び膝蹴りを炸裂させ、その鋸状の鼻をへし折ってしまった。その光景を見ていたバタフライオルフェノクもギリザメスに助太刀しようとする。
「ふん、図に乗ってんじゃないわよ…!」
-ボフゥゥゥゥゥゥゥンッ!!-
「!? 何…!!」
しかし、エヴァン逹から目を離してしまったのが失敗だった。エヴァンの投げた発煙弾が煙幕を発生させ、バタフライオルフェノクの視界を奪ってしまった。
「俺がいるの忘れてただろ?」
「チィ、人間の癖に生意気なマネを…ッ!?」
そしてそれが、バタフライオルフェノクの命運を決める事となる。
「ストリィィィィィム、ブレイクッ!!!」
「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」
煙の中から飛び出したマリンが、疑似水流に乗りながらスライディングキックを繰り出した。その一撃がバタフライオルフェノクを大きく吹き飛ばし、バタフライオルフェノクは悲鳴を上げながら廃校舎の壁に叩きつけられて灰化してしまった。必殺技ストリームブレイクが決まったマリンはエヴァン逹の目の前で着地する。
「エヴァン、大丈夫!?」
「俺の傷なら大した事ないさ。それより、アイツは?」
「うん、彼もアタシと一緒に…」
-ドガガガガガガガ!!-
「「「ガァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」」」
「!? こ、今度は何だぁ!?」
「ぬぅ…!!」
ギリザメスはまたしても驚きの反応を示した。運動場の方から装甲車型マシン―――ランチャーギャリーが弾丸を連射しながら、猛スピードで突っ込んで来たのだ。発射された弾丸はレオソルジャー逹を纏めて粉砕し、アルビノレオイマジンはランチャーギャリーの突進を喰らって大きく後退させられる。
そして…
≪ネクスト!≫
ギリザメスの真上から、別の仮面ライダーが急降下して来た。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「!? 何…グギャァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」
胸部にタイヤを装備した黒い仮面の戦士―――仮面ライダーダークドライブ・タイプネクストは、長剣ブレードガンナーを振り下ろしてギリザメスを真っ二つに両断。ギリザメスが呆気なく爆散した後、ダークドライブが指を鳴らすとランチャーギャリーが移動し、エヴァン逹の傍まで移動する。
「エヴァン、ヒカル、早くその人達を乗せて!!」
「OK!!」
「二人共、急いで乗れ!!」
「は、はい!!」
ランチャーギャリーのボディが左右にスライドする形で展開され、そこにエヴァン、カリーナ、ミィナ、マリンが順番に乗り込んでいく。その間に、アルビノレオイマジンは体勢を立て直そうとしていた。
「やってくれるな……ハァッ!!」
「でやぁ!!」
アルビノレオイマジンが口から放った火炎弾を、ダークドライブがブレードガンナーで一閃。斬られた火炎弾が左右に分かれて爆発する中、走り出したランチャーギャリーにダークドライブも乗り込み、ランチャーギャリーは展開していたボディを閉じてから猛スピードで走り去って行ってしまった。
「…逃げられたか」
そして…
「おーい、生存者が二人見つかったぞー!!」
「大丈夫、ここは安全だよ!」
ランチャーギャリーに乗せられたカリーナとミィナはその後、無事にレジスタンスのいる隠しアジトまで送り届けられる事となった。隠しアジトの警備をしていた兵士達が二人を保護する光景を、エヴァン逹は遠く離れた位置にある崖の上からしっかり見届けていた。三人の後方にはランチャーギャリーが停車している。
「あの二人、無事に保護されたみたいだね」
「ま、苦労して助け出した甲斐があったってもんだ……今回は結構ギリギリだったけどな」
「あははは……ごめんねエヴァン。思ってた以上に敵の増援が多くてさ」
「分かってる、別にお前達を責めてる訳じゃないさ。エイジ、ヒカル」
エヴァンのその言葉と共に、ダークドライブとマリンは同時に変身を解除して人間の姿へと戻る。
ダークドライブの変身者は、右腕に赤いネクタイを巻いた白服の少年―――
マリンの変身者は、年齢に不相応なスタイルをしたボーイッシュな少女―――ヒカル・N・マクダウェル。
「…けど、これで良かったのかよ? 本当に」
「僕達があそこに行って、ショッカーに勘付かれたりしたら大変だからね。ネクストライドロンを失った事で歴史改変も出来ない。そうなった以上、もう僕達だけで戦うしかない」
「うん。ショッカーを倒すまで、私達は決して折れる訳にいかない。私達を救ってくれた
ヒカルは首にかけていたペンダントの蓋を開く。そこに映っていたのは、かつて孤独だった自身を拾ってくれた命の恩人にして、自身を娘として受け入れてくれた愛する父親の姿。
(見ててね、お父さん、皆……私は戦う。仲間達と一緒に……この世界を、ショッカーから救う為に…!!)
確かに人々は、助けを願う事をやめてしまったかも知れない…
それでも新たな世代の戦士達は、決して諦めようとはしなかった…
どれだけ過酷な戦いになろうとも…
人間の自由と平和を守る為に…
命尽きるその日まで、彼等はショッカーと戦い続けるのだ…
そんな彼等が、再び人々の希望と称される日が来るのは…
もう少し先の話である…
END…?
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