No.847176

ソードアート・オンライン アクチュアル・ファンタジー STORY 38 誘拐

やぎすけさん

実に1年近く滞っていましたが、どうにか再開です・・・

2016-05-11 16:33:57 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2043   閲覧ユーザー数:2000

前回のあらすじ

銃を受け取った後もうろうろしていたデュオは昼食を摂ろうと立ち寄ったレストランで恋人であるシリカと再会する。しかしその喜びも束の間、彼らを狙っていた3人組ディフォア、ギラス、グートが攻めてきた。

必死に応戦するデュオだが一瞬の隙をつかれて負傷、続く攻撃で絶体絶命の状況まで追いやられる。それを止めたのは、かつてSAO最強と言われたキリトとアスナのコンビだった。

 

 

 

 

 

 

 

STORY ⅩⅩⅩⅧ 誘拐

 

 

 

 

 

キリト視点

突然の轟音によって、俺たちの意識は瞬時に覚醒させられた。急いで窓から様子を伺い、燃え盛る民家を見てそれが爆発によるものだと知った俺たちはすぐに剣や防具を装備して部屋を出る。

逃げ惑う人々の波に逆らい、ようやく人ごみを抜けると全力で駆ける。その先に見えたのは電撃を受けて声を上げるデュオとそれを愉快そうに眺める剣を掲げた銀髪の男の姿。

 

キリト「デュオォォォ・・・ッ!!」

 

相棒の名を叫び、背中の夜空の剣を抜剣とともに袈裟懸けに振り下ろす。

あらん限りの意識を集中して振り切られた刃は青紫の三日月となって飛翔し、目の前にいる男にぶつかった。それによって打ち消された雷撃から解放され地に転がるデュオが、少しだけ顔をこちらに向けた後に安堵したような顔を浮かべた後地面に倒れ伏した。HPは残っているのでおそらくは気を失ったのだろう。

 

ディフォア「何しやがんだてめえ?」

 

キリト「大事な相棒を失うわけにはいかないんでね」

 

剣を身体の前でしっかりと握り締め、余裕そうな笑みを浮かべている目の前の男に言い返す。しかしこの男はその表情や型の無い構えとは裏腹に、全くと言っていいほど隙が無い。

 

ディフォア「相棒?そうか、おめえこいつの仲間か?」

 

倒れて動かないデュオを見下ろした男は、途端につまらないものを見るような表情を浮かべた。

 

ディフォア「ならとんだ期待外れだな」

 

キリト「何?」

 

ディフォア「こんな弱えぇ奴の相棒程度じゃ相手にならねえって言ってんだよ!」

 

刹那、地面から土煙を上げて突っ込んできた男の攻撃を左右の剣を交差させてどうにか受け止めるが、ギリッと嫌な音を立てて左の剣が軋む。

 

アスナ「キリトくん!!」

 

キリト「なろ・・・ッ!!」

 

すぐさま剣を弾き上げてお返しとばかりに斬り返す。しかし男もなかなかのもので、右上段からの一撃をあっさりと避けると反撃を打ち込んでくる。

俺は振り切ったばかりの右手を返して相手の剣を弾くと、同時に逆の腕で左上段斬りを放つ。すると男は瞬時に後方に飛び退いた。

 

ディフォア「やるじゃねぇか」

 

息1つ荒げること無く満足そうにしている男は、犬歯を剝き出して凶暴な笑みを浮かべると狂気にも似た感情を湛えた眼でこちらを見てくる。気圧されないようにしてはいるが背中には嫌な汗が滲む。

 

キリト「アスナ、デュオの手当てを」

 

アスナ「うん!キリトくんは?」

 

キリト「あいつを食い止める」

 

互いに頷き合うと、アスナはデュオに駆け寄ってアイテムによる回復を始める。

一方でガチャリと音を立てて剣を持ち直した俺は、男と向かい合う位置に立って構えた。

 

ディフォア「へっ、格好だけは一人前だな」

 

キリト「言ってろよ。すぐにその減らず口黙らせてやるから」

 

ディフォア「言うじゃねぇか」

 

緊張感が大気を伝い、全身の感覚が痺れるほど研ぎ澄まされていく。

そして今まさに踏み込まんとしたその時・・・

 

?「捕まえてきたぜディフォア」

 

突然、後ろから声が聞こえてきた。不意に振り向いた俺たちはその光景に硬直させられることとなる。

そこにいたのは先日追い払ったあの亀男だったが、問題は奴が両手に抱えている2人の少女だ。1人は先日会ったセリアであり、もう1人は俺たちが探す仲間の1人でありデュオの恋人シリカである。シリカの方は身体中に切り傷や痣、火傷があり、見ただけで相当な大怪我だとわかるようなありさまだった。

 

キリト「セリア・・・ッ!シリカ・・・ッ!」

アスナ「セリアちゃん・・・ッ!シリカちゃん・・・ッ!」

 

俺たちは思わず声を上げるが、亀男はそれを気にすることなくディフォアと呼んだ銀髪の男のもとへと歩み寄る。

 

ディフォア「なんだグート?そのもう1人のガキは?」

 

グート「こっちのを捕まえようとしたら抵抗してきたんでな。ついでに捕まえてきた」

 

グートと呼ばれた亀男はそう言って両手に持つ2人をゆさゆさと揺さぶるが、2人が起きる気配は無い。

 

ディフォア「そんなの捕まえても仕方ねえだろうが。まぁいい、どうせ他の連中はギラスが持ってくるだろ」

 

?「流石は兄者、よくわかっていらっしゃる」

 

突如、どこからともなく聞こえてきた声が俺たちの耳に届く。だがその姿はどこにも見当たらない。

 

?「ほほほほっ、こちらですよ」

 

どこか癪に触る声が再び響き、その方向に視線を移すと不気味な笑みを浮かべた背中に猛禽類のような翼を持つ人影を見つける。中性的な顔立ちで性別は見分けづらいが、女性にしてはがっしりし過ぎている身体つきを見るにおそらくは男だろう。

 

グート「遅せぇぞギラス。何してやがった」

 

亀男が新たに現れた仲間に向かってそう叫ぶと、ギラスと呼ばれた鳥人は肩をすくめ呆れた苦笑交じりに返す。

 

ギラス「どこかの兄弟のようにヘマをしたくありませんからね。ちゃんと後始末までしていて遅くなりました」

 

グート「てめぇ・・・」

 

ディフォア「うるせぇぞおめぇら。何にしても目的は達したんだ。んなことやってねぇで、さっさと引き上げんぞ」

 

キリト「逃がすか!」

 

敵を逃がすまいと脚に力を込め、一気に駆け出す。バネに弾かれたかのような勢いで飛び出した俺が狙ったのは、2人を拘束しているグートの肩だ。如何に強靭な甲羅をまとっていても関節部は弱い。それに上手く腕を斬り落とせれば2人を回収出来る。そう思っての攻撃だったがそう上手くいくはずもなく、割り込んできたギラスの鉾が俺の剣を受け止めた。

 

ギラス「そうはいきませんよ」

 

キリト「くっ・・・!?」

 

ギラスはその細身からは信じられないような力で、俺の剣を押し戻そうとしてくる。ギリリッと嫌な音を立てて剣が軋み、どうにか堪えてはいるが剣はビクともしない。

 

ギラス「この者は私が相手をしますので兄者方はどうぞお先に」

 

ディフォア「あまり時間かけるじゃねぇぞ?」

 

ギラス「わかっていますよ」

 

ディフォアは剣を収めると、グートを引き連れて森の奥へと姿を消していく。

 

アスナ「逃がさな・・・」

 

ギラス「行かせると思いますか?」

 

突然、均衡が崩れた。それと同時に支えを失った俺の身体が前に傾き、バランスをとるために踏み込んだ瞬間、腹部に凄まじい衝撃が疾走る。

 

キリト「かっは・・・ッ!?」

 

身体が前屈みになり、架空の胃腸から逆流してきた体液が口から溢れる。見ると鉾の石突きが俺の腹に食い込んでおり、それによってダメージを受けたのだと気付いた。

 

ギラス「キェアァァァ・・・ッ!!」

 

絶叫と共に振るわれた鉾が再び俺の腹部を捉え、先ほど以上の衝撃に吹き飛ばされた。苦痛に顔が歪み、地面に叩き付けられるようにしながら転がった先で木に強く打ち付けられると、苦悶の声と共に空気と鮮血を吐き出す。

 

アスナ「キリトくん・・・ッ!!」

 

ギラス「他所見は危ないですよ?」

 

アスナの叫びを嘲笑うかの如く、飛翔して一気に距離を詰めたギラスの鉾がアスナに突き出される。ギラリと光る刃がアスナを捉える直前、咄嗟に滑り込ませたレイピアが斬撃を防いだ。甲高い金属音が鳴り響いてアスナの身体は弾かれるが、その脚はしっかりと地面を踏み締めてどうにか転倒だけは避けた。

 

ギラス「おや?やりますね。ではこういうのはいかがです?」

 

ギラスが鉾を振るうと、その軌跡をなぞるようにして噴出した炎が鳥の姿へと変貌し、火の粉を撒き散らしながら羽ばたく。それらはギラスが鉾を向けた瞬間、アスナへと突撃を始めた。

 

アスナ「くっ・・・!!」

 

迫る無数の火の鳥をステップ移動で回避し、無理なものは突きで砕いていくアスナだが、回避したものは向きを変え、砕けたものは再生して執拗に彼女を襲い続ける。

 

ギラス「ふふふ・・・そのまま踊っていなさい」

 

そう言い残すと、ギラスは仲間たちと同じく森の中に消えていった。

 

キリト「くそっ・・・!」

 

俺は悪態を吐きつつ立ち上がり、すぐさまアスナのもとへ駆ける。未だ火の鳥はアスナの周りを飛び回っており、アスナも応戦しているが徐々に表情が険しくなってきている。

 

キリト「アスナ!」

 

アスナの死角から迫っていた火の鳥を斬り裂き、彼女と合流することには成功した。しかし、俺が斬り裂いた鳥もまた再生してしまい、このままではジリ貧である。

その時、突然どこからともなく響いた銃声と共に火の鳥たちがその姿を水蒸気へと変えた。発砲音は飛び回る火の鳥とちょうど同じ数だけ鳴り響き、それが止んだ時には火の鳥の姿はなく熱気の代わりに水蒸気が周囲に立ち籠めるだけになっていた。

 

アスナ「どうなってるの?」

 

キリト「誰かに助けられたみたいだな」

 

お互いにそう言って無事を確認した後、周りに気配がないことに気付いた俺たちは剣を戻すとデュオへと駆け寄る。まだデュオは気を失って倒れていた。

 

キリト「デュオ」

 

アスナ「とにかく一度村に運びましょう」

 

キリト「あぁ!俺はデュオを運ぶ」

 

剣を1度ストレージに戻した俺はデュオを背負い、アスナと共に村へと歩き出した。俺たちを火の鳥から救った銃声の主のことを気にかけながら・・・

 


 
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