No.838814

ロイヤルガーデン if ~非・御子神ハルルコ√~ 『カーテンコール』

DTKさん

DTKです。
普段は恋姫夢想と戦国恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI(仮)という外史を主に紡いでいます。

今回は、恋姫を製作しているBaseSonと同じネクストンブランド、あざらしそふとの作品『ロイヤルガーデン』の二次創作を投稿します。

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2016-03-23 23:22:59 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:2476   閲覧ユーザー数:2250

 

 

 

休日。

 

私は灯花と連れ立って、今日もお爺さまがいるであろう別荘に赴いた。

 

 

 

 

 

 

「お爺さまー!」

「お邪魔します」

 

後ろから入ってくる灯花を感じながら来意を告げる、が…

 

…………

 

「…あら?」

 

反応がない。

 

「お留守、でしょうか?」

「いえ、そんなはずないわ」

 

スリッパが一足ないし、何よりお爺さまの大きな靴がある。

上がっていいわよ、と灯花に言い残し、私はいつもどおりズカズカと中へ。

 

「お爺さま?」

 

リビングに入れば適温の空調、デスクの上には散らばった書類。

そして、お爺さまの形にへこんだソファー。

今の今までこの場にいたことは明白だ。

 

「…お爺さま、出ていらっしゃい」

 

少し語気を強める。

案の定、ガチャリと音を立てて隣の部屋の扉がゆっくりと開く。

 

「お、おう…ハルか。なんじゃまたサボりか?うん?」

 

ひょっこりと顔だけ出して、一気にまくし立てる。

そのくせ、私と目を合わそうとしない。

なんとも滑稽な格好だ。

 

「お爺さまこそ何?その浮気現場に踏み込まれた間男みたいな様は。それと、きょう学園は休みよ」

「どうも、おじ様。ご無沙汰しておりますわ」

「え゛……うぉっほん!これは灯花くん。お恥ずかしい姿を。よく来たね。ゆっくりしていきなさい」

 

灯花がいると分かるや、すぐに部屋から出て姿勢を正すお爺さま。

さすがに世間体は気にするみたい。

 

「それで、何の真似だったのかしら?」

「な…なんのことじゃ?」

 

私に対して顔を直角にしながら、ダラダラと脂汗をかいている。

 

「惚けないの」

 

さらに上から圧をかける。

久々の圧倒的優位に、私のS心がメラメラと熱くなる。

お爺さまは私と灯花をチラチラと見比べていたが、ややあって観念したように肩を落とすと、重そうに口を開いた。

 

「その……この前、ハルにその…すまんことを、言ってしまったと思うての……」

 

大きな身体を小さく窄めながらモジモジしている姿は、灯花から見たらそれは奇怪に映っていることだろう。

 

「神狗郎くんのことを諦めるな、という気持ちに嘘偽りはないが、金で…家の力でどうにかしようと口走ってしまったのは、完全に儂の間違いじゃった。

 ハルを傷つけたこと、そして神狗郎くんを愚弄してしまったことを…どうか謝らせて欲しい。申し訳なかった」

 

大きな身体を二つに折り曲げるように深く、深く頭を下げるお爺さま。

 

「……なに?そんなことでウジウジしていたの?」

「なっ…」

 

私の言葉に、ガビーンとでも効果音が出そうな顔になる。

 

「ハルルコさん。お爺さまにそんな物言いはどうかと思いますよ」

「……分かってるわよ」

 

いちいち口に出す灯花が煩わしい(ありがたい)

 

「…ありがとう、お爺さま。私のこと、真剣に考えてくれて」

「ハル…」

「でも、私はもう大丈夫。お爺さまの言葉もあったし、何より…私には、最高の友達(デュオ)が、いてくれるから」

「ほ?」

「今日は改めて紹介に来たのよ」

「ハルルコさんのデュオ兼ライバルを務めております、秋月灯花です。改めて、お見知りおき下さいませ」

「…素直に友達って言いなさいよ」

「友達は友達でも、喧嘩友達のようなものですから」

「言うわね…」

 

私と灯花の間にチリチリと小さな火花が散る。

 

「ホッ…フォッフォッフォ!そうか、そ~かっ!」

 

急にお爺さまが笑い出す。

 

「灯花くん。見ての通り、ハルは跳ねっ返りのじゃじゃ馬で引きこもりじゃが、根はとても良い子なのじゃ。どうか、末永く仲良くしてやって下され」

「えぇ、跳ねっ返りのじゃじゃ馬で引きこもりなのに寂しがり屋なのは、重々承知しておりますわ。こちらこそ、重ねてよろしくお願い致します」

「あなたたち……ずいぶんとエッジの利いた挨拶してくれるじゃない?」

「あら、そうでしたか?申し訳ありませんね」

 

棒読みで優雅に微笑んでみせる灯花。

慇懃無礼、ここに極まれりだ。

 

「……ふふっ」

 

だが、それすらも全てが心地よい。

 

「ねぇ、お爺さま。前に私言ったわよね、お金で買えないものはないと思ってたって」

 

心が軽い。だから口も軽い。

 

「でもね、気付いたの。そんなモノでどうにかならないからこそ、この気持ち…喜びも悲しみも、恋する乙女の特権、なのよね」

「ハルルコさん…」

「それにね……御子神の女は欲張りなの。お金で買えるモノも買えないモノも、欲しいモノは全て手に入れてみせるわ」

「ハル……立派になって…」

 

目を潤ませるお爺さま。

やっぱり、ちょっと柄に無かったかしら?

 

「さて、お金で何でも解決できると思ってるお爺さまは、ひ孫の顔を見てくれるのかしら?寿命も健康も、お金じゃどうにもならないみたいだけれど?」

「わぁーっはっは!なぁに心配するな。ひ孫の顔を見るまでは、例えお迎えが来ても力尽くで追い返してみせるわぃ!」

 

お爺さまは莞爾として笑うと、丸太のように太い両腕に力瘤をグッと作ってみせた。

この人ならやりかねないわね。

天界は毘沙門天を派遣しなくてはならないだろう。

そんなお爺さまの様子に、私と灯花は顔を見合わせて苦笑いを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………

…………

……

 

 

 

「それじゃお爺さま、また来るわね」

「お邪魔致しました」

 

その後、軽くお茶をして別荘を辞した私たち。

 

「ん…んん~~~!!あぁ…暑いわね」

「本当、良いお天気ですね」

 

微妙に噛み合わない会話。

だけど、灯花の言うとおり。

 

雲ひとつ無い青い空。

それを映し出す碧い海。

そして、それらを照らし出す真っ白い太陽。

 

世界はこんなにも美しかったんだ。

こんなにも胸がときめくのは、生まれて初めてかもしれない。

 

隣には友がいる。

 

「さぁ、ハルルコさんが溶けてしまわないうちに、早く帰りましょうか」

 

例えどんなエピローグになろうと、きっとあそこには、素晴らしい毎日が待ってるに違いない。

 

「えぇ、そうね。帰りましょう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロイヤルガーデンへ!」

 

 

 

 

 


 
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