No.827200

艦隊 真・恋姫無双 100話目

いたさん

後一回だけ宴が続きます。 次回で何とか終わりに………

2016-01-27 22:09:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1163   閲覧ユーザー数:1023

【 軍師達の疑問 の件 】

 

〖 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

一刀の目の前には、食事を素早く済まして、話を聞こうと訪れた軍師達。

 

董卓軍……詠、音音音

 

孫策軍……冥琳、穏

 

曹操軍……桂花

 

一刀は、磯風に荷物を準備させ、別の円卓に案内した。

 

ーー

 

一刀「席は何処でもいいからね。 普通の四角の卓だと、上座の場所を気にしなければならないけど、円卓なら始りも終わりも無い。 誰でも平等で座って貰える。 俺は、説明があるから、このまま立ったままでいい」

 

 

穏「ま、まさか………ここの卓が円卓になっている理由、それを見越して準備されたんですか~? もし、そうなら~冥琳様、この考え使えますよ~!?」

 

冥琳「まったく……穏よ、そういう事は思っていても秘める事だ。 でなければ、その考えが逆に、自分の首を絞める証拠になってしまうぞ?」

 

ーー

 

円卓の席には、椅子が五つ。 各々が着席して一刀に顔を向ける。 どの顔も白波賊の策に疑問を抱いているらしく、眉間に皺を寄せ難しい顔をしながら、発言を待っている。 

 

ーー

 

詠「さあ………話してよ? か……アンタが分かったって言う策、ボクの疑問を解消できるのか──聞いてみたいの!!」

 

冥琳「私もだ。 ある推測をしているが、決定的な証拠が無い。 実証のできる証拠が無ければ、私の考えなど……ただの臆測に過ぎんのだからな。 ならば、北郷の話に活路を見出だすのみ!」 

 

ねね「しかし、このヘボ主人に………どこまで解明できたのでしょうな? 幾ら頭が回ると言っても、ねね達は専門職ですぞ? それに比べて、ヘボ主人の専門は管理職なのです! ねね達の疑問に応えられるか、怪しいものですな!」

 

冥琳「ふっ──だからさ。 私達とは違う視点で見れば、隠されている真実に辿り着くかも知れん。 それにだ、深海棲艦と直接対峙するのは、北郷だけ。 ならば、我らの気付かない物を、見つけ出した可能性がある!」

 

詠「ねねが大陸屈指になるかは……疑問だけど。 そうね………執金吾の罠を次々と破った手腕は間違いないわ。 それに、本人からの申し出だから、それなりに自信があると思うの! ならば、その内容を聞いてみたいじゃない!」

 

桂花「……………………」

 

ーー

 

軍師達の言葉を聞いた一刀は、磯風に命じて預けた荷物を、円卓の上に伸ばして開く。 それは、縦に細長い約2mぐらいある『牛の皮』、しかも……真ん中に丸い穴が空いている。 大きさは、人の頭が楽に入る程の物。

 

ーー

 

桂花「こ、これは………何なの?」

 

一刀「これは、牛の皮を加工した『貫頭衣』という物だよ。 これを真ん中の穴に頭を突っこみ、服として着用する。 簡単な服の作りさ」

 

詠「だけど、牛の皮にしては……黒くて硬い。 これって、何か加工でも施してあるんでしょ? それに、牛って……ボクらのところなら、重要な財産なのに、何でこんな簡単に消費する物に変えちゃうのよ!」

 

一刀「黒くなってるのは膠(にかわ)で煮詰めて加工してあるんだ。 それに、これは俺達が加工したわけじゃない。 白波賊から奪った戦利品だよ」

 

ーー

 

一同は驚きながら、その牛皮製の貫頭衣を見詰めた。 軍師達は一刀より許可を得ると、見た目や感触、重さや着用した場合の形状を確かめる。

 

ーー

 

穏「ほんと~硬いです~! ああ~、このような興味深い物に触れていると、つい身体が………熱くなってきます~!」

 

冥琳「……………思春、居るか?」

 

思春「───はっ」

 

冥琳「………穏を連れて行け………」

 

思春「……………御意」──フッ!

 

『あ、ああ~! ああぁぁぁぁ~!』

 

 

詠「い、意外と軽いわね………」

 

ねね「詠殿、着用してみましたが、首周りは柔らかで違和感は無いようですな。 しかし、ねねには些か長い服ですぞ!? 足まで全部、うぐぅ……隠れてしまい……動きに難くて……」

 

詠「そりゃそうでしょ、大きさが違う───ねね、アンタ……今なんて言ったの!?」

 

ねね「へっ? ねねには、合わないと………」

 

詠「───その後!」

 

ねね「あ、足まで全部、隠れてしまい…………と」

 

詠「───それよ!!」

 

ーー

 

桂花「……………表面には、無数の斬撃で出来た擦過傷。 だけど、裏に達した物は皆無に等しいなんて……皮なのに何て防御力なの? 春蘭、貴女の見解──当たったわよ!」

 

ーー

 

軍師達は確認し終わった後、目の色を変えて一刀が口を開くのを待った。 

 

一人だけ、目が白目になり回収されて行ったが、それはその………お国の事情柄って事で、無視して頂こう。 

 

ーー

 

一刀「うん………俺の言いたい事が理解できたみたいだね。 さすが、諸侯を代表する軍師達だ。 この品物が、白波賊が行った策の要になる物なんだよ!」

 

 

◆◇◆

 

【 記憶 開放 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

一刀からの任務を、秋蘭と陸奥の働きで無事に完了した、如月と菊月の二隻。

 

大鍋を円卓に置いて貰った後、秋蘭達に礼を述べた。

 

ーー

 

菊月「………菊月のせいで………要らぬ面倒を掛けた。 …………済まぬ」

 

如月「もう~、菊月ちゃん! もっと真剣に謝罪と礼をしなきゃ──」

 

秋蘭「いや、此方も助けて貰った礼を言わせて貰っていない。 あの行動が、礼として認めて貰えれば、私も助かるのだが………」

 

ーー

 

秋蘭としては、あの後……軍勢の被害状況の把握、治療要請、兵装の点検等を行っていて、その足で都城内に報告へ向かった。 

 

つまり、礼を言う暇さえもなかったのだ。

 

だからと言って、礼を行わないというのは………主である『曹孟徳』の名折れとなりかねない。 秋蘭は、その事を重視して居たからである。

 

しかし、仲間である陸奥が笑いながら、やんわりと断った。

 

ーー

 

陸奥「うふふ……だけどねぇ、提督は気にしするのよ。 私達も、そこまで求めてないんだけど、何か失礼な事をしたと思うと……直ぐに謝罪するの。 だから、上が行うのなら、下が見倣わないと………失礼でしょ?」

 

秋蘭「…………確かに、勇将の下に弱卒無し。 だが……腰が低い上の者など、なかなか居らぬ者だが………」

 

陸奥「それも……土下座でね? 私達って、そんなに怖いのかしら……もう爆発なんてしないのに……」

 

秋蘭「…………………??」

 

ーー

 

陸奥の言いたい事が、よく判らない秋蘭。 その横より如月が廻り込み感謝の言葉を述べた。

 

ーー

 

如月「夏侯妙才さん……菊月の姉として『睦月型 2番艦 駆逐艦 如月』、正式に礼を述べさせて頂きますね。 …………誠にありがとうございました!」

 

秋蘭「………お互い様……とも言えんな。 私達の方が遥かに助けて貰った者が多いのだ。 ならば、報いれる最大の礼として、私の真名を預けさせて貰う。 ───我が真名は『秋蘭』、以後この名で呼んで頂きたい!」

 

陸奥「──あらあら。 ……………では、私は陸奥と………」

 

如月「如月は、如月と呼んで下されれば………ねっ?」

 

菊月「…………わ、私は……『睦月型 9番艦 駆逐艦 菊月』だ。 菊月の失態、そして……援助を受けた身だ。 こ、こと、断る選択など………あるまい! い、いい、以後………宜しく………頼む!」

 

ーー

 

秋蘭が真名を預けると、三隻が各々が了解する。 菊月は、未だに正式名称を名乗って居なかったため、慌てて秋蘭に名乗る不始末!

 

ーー

 

秋蘭「…………承知した。 陸奥、如月! 此方こそ、宜しく頼みたい!  そして……菊月! 再度、無理を起こすなよ………?」

 

菊月「こ、これでも………古強者の身! 子供扱いなど───っ!!」

 

陸奥「そうよ? 危なくなったら頼ってくれなきゃ……ねぇ? 前の世では助けを求める事も、助ける事も出来なかったけど、今度は大丈夫。 私達や提督が、最後の最後まで守り抜いてくれる。 ──諦めなければね!」

 

如月「菊月ちゃんばかりが、司令官を守っている訳じゃないの。 如月や陸奥さん、他の艦娘も……陰日向で守っているのよ? だから、司令官も……どの子も平等に見てくれてるわ。 もっちろん、一番は如月に釘付けだけどね~?」

 

菊月「…………もう………好きにすればいいさ…………」

 

秋蘭「ふふふ、ん────!?」

 

───その時、秋蘭の頭には、ある光景が!

 

★☆★

 

『秋蘭、??──これで、三国は華琳様の下に帰された! だがな、これからも、華琳様は大変な日々を向かわれる! 古参の将たる我らは、そんな華琳様に、最後の最後まで忠誠を捧げ、手助けしなければならない!』

 

『そうだな。 だけど、華琳配下で最も古株の春蘭、秋蘭は分かるけど……なんで、拾われた俺が此処に居るんだ?』

 

『……………?? お前は、私の次に古株だぞ? それに、お前は華琳様や私達の為に、数々の大功を立てた立役者だ。 そんな??より、誰を先に華琳様と共に歩む誓いを成そうと、我らが考えると思うのか?』

 

『貴様ぁ───華琳様が三国統一を成し遂げ、更なる苦労を担う覚悟をなされているのに、天の国へ戻る算段を考えていたのかぁ!?』

 

『ば、馬鹿を言うな! 俺だって、最後まで華琳を守り抜く! も、勿論──俺の関係ある大事な女の子達も! 絶対に!!』

 

『………さすがは、魏の種馬だけあって、その言葉の重みが違うな。 ならば、我らは最後の最後まで、華琳様を守り抜こう! それと、その言葉を忘れるなよ、私達がしっかりと聞いたからな───』

 

 

 

 

 

『─────北郷一刀!』

 

 

★☆★

 

 

秋蘭「──ほ、北郷? あ………あの北郷なのか………?」

 

如月「ど、どうかされました?」

 

秋蘭「い、いや………済まない! 急用を思いだしてな、自分の席に戻らせて貰う! それでは楽しませて貰った。 また──近い内に会えればいいな?」

 

陸奥「ええ…………私も楽しみにしてます!」

 

如月「秋蘭さん──本当にありがとう。 だけど、司令官は渡しませんからねぇ♪」

 

菊月「…………今度の時は、戦場での共闘するかも知れん。 その時こそ、この菊月の活躍を見せてやる! …………楽しみにしていてくれ!」

 

秋蘭「うむ、私も………その時は夏侯妙才の神弓、思う存分披露させて貰うぞ!」

 

ーー

 

こうして、秋蘭の記憶が甦り、桂花の下へと向かう。

 

しかし、その先には───

 

 

 

◆◇◆

 

【 策謀の正体 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

一刀「それでは、白波賊の状況を先に整理しようか?」

 

一刀が最初に話したのは、この二つ。

 

 

① 白波賊は、少人数で暗闇で宴席を開く。

 

② 近付いたら暗闇になる。 そして、相手が攻めて来る。

 

 

一刀「これで、気付く事は?」

 

ねね「暗闇になれば、敵も味方の判別など……出来ませんな?」

 

冥琳「周囲が暗くて、伏兵が準備しやすい……か」

 

詠「灯りを急に消されれば、目印も消えるから………行動も不可能ね」

 

桂花「……………そ、それって……… 『釣り野伏せ』………」

 

一刀「そう、 『釣り野伏せ』だよ。 だが、この戦術は、応用範囲を更に広めた夜戦型。 俺の家では『呼び火伏せ』と言っている戦術なんだ。 夏の虫が、自分から灯火に突っ込み焼け死ぬ。 その様から編み出されたと聞いていたけど……」

 

「「「「 ──────! 」」」」

 

一刀「しかも、相手はまだ……複雑な手を使っている。 それが………この皮で出来た貫頭衣だ!」

 

 

 

③ 膠で煮詰めた牛皮の貫頭衣

 

 

 

一刀「それを報告する前に、君達の陣営で分かった事があれば、教えてくれないか? 確認している時、ほぼ全員が納得した顔をしていた。 それは、何か掴んだと見ていいだろう。 ならば、教えて貰えば説明もやり易い!」

 

桂花「まず、私から話すわ。 春蘭からの検分だと……殺された洛陽側の兵装、特に武器がおかしいと報告があったの。 実際に戦えば、相手の武器、人体の骨などに当たり、刃毀れがあるそうだけど……何も無かったのよ!」

 

詠「それなら、ボクにも別の情報が入っているわ! 洛陽兵は白波賊を攻撃したけど、斬っても突いても……死ななかったそうよ? 情報源は訳あって伏せるけど、近くで見た目撃だから間違いないわ! それに……子供だから………」

 

ねね「ねねには、情報が来ておりませんぞ─っ!?」

 

詠「五月蝿いわねぇ! 恋が面倒みていてくれたから、恋に聞きなさいよ!」

 

ねね「れ、恋どのぉぉぉぉぉ………………!!」

 

冥琳「最後に私だな。 私は思春と共に、死体の検分を行った。 そして、白波賊の襲われた者には、共通点があったのだ。 ほぼ全員が、下半身……特に足首から膝に掛けて、裂傷が多数見付かったのだよ………」

 

一刀「…………なるほど。 じゃあ、この貫頭衣を使用した策で間違い無い!」

 

桂花「だけど、どう納得できる説明をする気なの?」

 

一刀「まず、最初の二人については、この貫頭衣の防御力で説明できる。 実は天の国でも、鎧の材料に使用される材料なんだよ!」

 

桂花「天の国………でも?」

 

一刀「ああ……膠で何回も煮詰めて作られた鎧は、斬られるぐらいなら破損はしない。 剣で刺せば、流石に破れて致命傷を負う事になる。 そこまで、皮の防御力は強くはないからね………」

 

ねね「で、では………なぜ、破れた様子が無いのです!? 詠殿の話では、目撃者は剣で突いた攻撃を───」

 

一刀「その説明は、冥琳の話で証明できる」

 

冥琳「私の…………か?」

 

一刀「白波賊の攻撃姿勢は、立っていたんじゃない。 『うつ伏せ』の状態だったんだよ! 攻撃される箇所を最小限にする事、敵の動きを下から見上げれば、地面より目立つから、分かりやすいという利点の為にもね」

 

詠「………そ、それで………」

 

一刀「それに、混乱している人間が、当たる面が小さい刺殺を狙うより、斬殺を狙う方が効率が良いと考えると思うよ? それに、剣を刺せば相手の筋肉により、抜けなくなる可能性もあるんだ!」

 

ねね「…………ふむぅぅぅ」

 

一刀「後、これは俺の推測だけど……貫頭衣の前を伸ばして、待機していたんじゃないかな。 身体に密着してるから前方に乗られると、振動で相手が何処に居る筈。 そこを『足』を中心に凪ぎ払う、そして……立てなくなり倒れる!」

 

桂花「そして、相手は痛みで反撃できず、止めを刺される訳ね」

 

一刀「①、②だけでも、かなり難しい策なのに、③を入れて更に複雑怪奇な策に変えたんだよ。 だから、白波賊の軍略は、ただの賊と同じ考えだと痛い目に遭う。 俺と同じ轍を踏まないで貰いたいんだ!」 

 

ねね「………う~ん、この策とは違うのですが………一つだけ分からない事が。 ついでに、尋ねても宜しいですかな?」

 

一刀「分かる範囲ならば…………」

 

ねね「では、奴等の最後の天と地を焦がす火計、一見敵味方を殲滅するかのように見えた、あの攻撃ですぞ! あれは、どうやって敵味方を判別して攻撃を行うのでしょうな?」

 

詠「ねねにしては、良い着眼点じゃない! ボクも疑問に思っていたの!」

 

冥琳「……………于吉から聞いた話に適合すれば…………」

 

桂花「………私も左慈より………でも、本当なの?」

 

一刀「……………深海棲艦の目的は聞いているだろう。 この世界の崩壊、つまり大陸に住む者達全員の抹殺。 敵味方区別無く………だ!」

 

詠「…………じ、じゃあ………敵味方諸とも、全滅させる気………で」

 

一刀「…………俺の仲間である川内が、直接問い質して聞いた答えも………同じだった。 相手は、大将軍何進の元側近『鬼灯』、今の名は……深海棲艦『南方棲戦鬼』だ!」

 

「「「「 ─────!? 」」」」

 

ーー

 

一刀は、その後に自分達の受けた攻撃を語る。 

 

一刀の思惑を、悉く外した白波賊に不審を懐く桂花。

 

深海棲艦の攻撃により、艦娘に被害が出たと聞いて、驚く詠とねね。

 

神通の照明弾、探照灯を白波賊や深海棲艦に防がれた話をすると、冥琳が唸る。

 

そして、全員が新たな疑念を一刀に吐露した!

 

ーー

 

冥琳「北郷、これらの話で我らの疑問点は解消した。 だが、これにより、新たな問題も浮かんだのも、また事実。 もし、深海棲艦が……我らの国に攻めて来た場合、どのような心算を持っているのだ?」

 

ーー

 

詠「艦娘の強さは、直に見て知っているわよ。 だけどね、深海棲艦が各個撃破でボク達を狙ったら……どうするの? 戦力を分散させざる得ないけど、ただし、それをやれば、必ず強弱の差が激しい部隊が現れる事になるわ!!」

 

ねね「そうですぞ? 深海棲艦に対抗する手段が皆無のねね達に、艦娘の力こそ唯一の対抗手段。 もし、そうなればぁ、ねね達の内、誰か他の国に負担が掛かるのは間違いないですな。 これを、どう考えていやがるのです!?」

 

ーー

 

桂花「…………一刀、私達は………誰も自分達の国を、深海棲艦という訳の分からない奴等に蹂躙なんかされたくない。 皆が皆……貴方とまた出逢える事を信じて、一刀に見て貰いたくて頑張って来たの! だから、だからっ──!!」

 

ーー

 

冥琳「知っての通り、私達は御遣いの力に期待している。 北郷達が出し惜しみしている力を使えば、深海棲艦など物の数では無いだろう。 勝てれば英雄、負ければ北郷達どころか、漢王朝の失墜にも繋がるぞ?」

 

ーー

 

言い方は色々だが………結果論的には………

 

『自国が心配だから、大陸を守る役目のアンタ達に来て貰いたい。 だけど、私達は弱いから、戦うも手伝うのも無理っぽい。 強い艦娘で編成して、来てちょうだいね。 負けたら、どうなるかわかるでしょ?』 

 

一刀の拳が………小刻みに震える。

 

その顔は、目深に被った帽子のため、よく見えなかったが───耳が真っ赤になっていた。

 

ーー

 

一刀「………………俺の……」

 

『─────ちょっと、待ちなさいよ!』

 

「「「「 ─────!? 」」」」

 

ーー

 

曙「クソ提督…………アンタ、こんな奴等を助ける気なの?」

 

漣「ごめんなさい、ご主人様。 漣達、料理を運んでいたら……偶々聞こえてきたので、第七駆逐隊、みんなで参上しちゃいましたぁ☆」

 

潮「ごめんなさい、ごめんなさい!」

 

朧「提督、朧からも………話をさせて下さいませんか?」

 

ーー

 

突如、話に割って入ってきたのは………険しい顔して冥琳達を睨みつける、第七駆逐隊の漣、朧、曙、潮……だった。

 

 

◆◇◆

 

【 一刀の立ち位置 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

詠「今は、貴女達の主と話しているの。 貴女達は口出し無用──」

 

曙「あのねぇ、アンタ達の話に出てきたのは……曙達の事でしょ! 関係どころか当事者の曙達を置いといて、ふざけた言い分なんてするんじゃないわよ! 曙達が轟沈した『アノ日』から…………どれだけぇ───!」

 

朧「朧達は、毎回毎回……出撃の度に敵の壊滅、味方の無事と勝利を願い、覚悟を決めて行きます。 だけど、こんな言われ方された後で………この人達を守るなんて───したくありません!」

 

冥琳「だが、貴女達以外で深海棲艦に勝てる者など、居ると言われますかな? 天の武器を用い、天の軍略を操り、我らの武器が通じるか……分からない相手に、貴女達より完全に劣る我らが、挑めと言われるのですかな?」

 

潮「わ、私達は──そんな事を言いたくて来たんじゃ……ありません! 私達は艦娘達は、どんな時でも皆さんをお守りします! だけど、それなのに……責任を私達に全部押し付けて、貴女達は不平だけ言われるのですか?」

 

ねね「ふふん……そう言って実力が劣るのを、ねねに責任転嫁するつもりですかな? これだけの実力差を見せられて、ねね達が対抗すれば皆殺し、汚名が更に増える事になりますぞ?」

 

曙「な、なんて………奴! クソ提督! こんな卑怯で嫌みな奴等の為に、曙や他の艦娘が……背で守りながら戦うの!? 曙は嫌よ、誰が、誰が──こんな奴等に───」

 

一刀「……………いや、俺は……そのような話があれば、君達に命じなければならない。 それが、俺達の役目だからだ!」

 

曙「─────!?」

 

ーー

 

第七駆逐隊が、自分達の命懸けの行動を、当然のように扱う冥琳達の言葉に反論した。 彼女達自身も、前の世で上から命令に無理して動き、一隻を除き大海に沈んでいった『艦』だったから。

 

しかし、一刀は曙の願いを冷酷に却下した。 驚く曙に、一刀はユックリと説明を行う。

 

ーー

 

一刀「………俺達の役目は、深海棲艦を倒し、この大陸の秩序を回復させる。 それに、左慈や貂蝉の皆を救ってくれた恩義を返すのも、今しかないんだ! だから、頼む───納得できない事は多いが、俺の為に戦って欲しいんだ!」

 

曙「だ、だからって………クソ提督『モミィモミィ』──な、何やってんのよ! 漣──っ!!!」

 

ーー

 

一刀に怒鳴り散らさんと、前に出る曙。

 

しかし、曙の背後に一隻の艦娘が音も無く近付き、曙の胸部装甲を強く揉みほぐした。 

 

ーー

 

漣「いやぁー、胸部装甲の小さい子ほど気が短いからね? 漣が大きくしてあげようかなっと………急に思ったの。 うん、手のひらに収まるサイズって……何っていうか───安心する?」ニッ!

 

曙「な、なんで………そんな馬鹿な行動、す、直ぐに実行するのよっ!」

 

漣「そりゃあ……『思い立ったら海路の日和あり』って言うじゃない?」

 

朧「『思い立ったら吉日』『待てば海路の日和あり』を足して割った状態? でも………意味が真逆同士だけど………」

 

潮「さ、漣ちゃん! どうして曙ちゃんに、そんな酷い事するの!?」

 

漣「え~、これって慣れて来ると面白いんだよ? 潮のは掴むと癖になるしぃ……朧は、漣と同じだから詰まんないから。 やっぱ、こう~『ムフッ』て呟きが漏れるくらいの大きさが………ねぇ?」

 

曙「は、早く………ぁん…………や、止めなさいっ!」

 

漣「まあまあ………ご主人様の様子、よく見てなさいって………」

 

曙「わ、わかったらぁ………ぁふぅ、は、早くぅ──この手を止めなさいよぉ!!」

 

 

★☆☆

 

一刀は冥琳達に向き直り、腰を曲げて謝る。 

 

部下の責任は、上の監督責任。 

 

それ故に謝罪をしたのだ。

 

ーー

 

一刀「………貴女達に謝罪させて頂く。 自分の仲間達が、失礼な口をきいて申し訳ない………」

 

桂花「……………………」

 

詠「……………確かに口が悪かったわね?」

 

冥琳「私達の出来る事は、あまりにも少なすぎる。 手出しを出さない方が、そちらも戦い易いと判断したまでだ」

 

ねね「全くですぞ………天の御遣いとしての自覚が足りませぬな?」

 

ーー

 

桂花を除き、口々に文句を言い出す。 謝罪を当然の態度と思っているように。 第七駆逐隊は、漣以外は顔を悔しそうに歪めた。

 

すると、姿勢を直した一刀が、急に第七駆逐隊の前に立つと、冥琳達に言い放つ。 何の迷いも無く、堂々とした態度で!

 

ーー

 

一刀「だが───俺の仲間は、この俺にとって………最高の艦娘達だ! 誰『一人』とも劣る者など居ない! もし、今度───この仲間達に根も葉もない中傷を加えようなら、俺は貴女達の預かりし『真名』を返す!」

 

「「「「───────!」」」」

 

一刀「俺は『北郷一刀』だ。 だが、その前に──俺を信じて付いてきた子、俺を選んで降りてくれた子達を率いて、深海棲艦に挑む鎮守府の長だ! 誰であろうと、この子達を蔑むような者を赦さない!!」

 

★☆☆

 

第七駆逐隊は、唖然として見るしかなかった。 

 

何時もの一刀とは思えない、女性に対して怒りの感情を見せる様子を!

 

…………一隻を除いて。

 

ーー

 

漣「ふふふっ………あれが、ご主人様の本気なのです!!」

 

曙「いい加減に………ぁ、ぁ……離れなさいっ!!!」

 

漣「曙のいけずぅ~! だけど、ご主人様はご主人様なのよ。 同姓同名の英雄豪傑じゃなく、漣達を大事にしてくれる『ご主人様』って事ね!」

 

曙「~~~~~~~」

 

ーー

 

潮「提督───っ!」

 

朧「………………」

 

曙「…………なんで、クソ提督は………そんなこと言えんのよ! 曙達、第七駆逐隊は、この大陸で建造されているのに! 曙達の活躍なんて見たことなんて無い『実は……見た事あるんだ』───はっ?」

 

一刀「君達の実力は、よく知っている。 勿論、君達自身じゃないが、他の鎮守府で何回か第七駆逐隊の演習を拝見した。 連帯感が取れた良い動きの艦隊だったよ! 仲が良くて、暇な時は何時も四隻で、お喋りしていたけどね?」

 

曙「そ、それだけで───」

 

一刀「だから、俺の艦隊にも来て欲しいって………待っていたから、こうして逢えるのは、本当に物凄く………嬉しかったんだよ……!」

 

曙「な、なな、何よ……ホント、冗談じゃないわ。 か、『一刀提督』」

 

潮「は、恥ずかしいの……です。 だけど、潮──頑張ります!」

 

朧「提督、朧は貴方に誓います。 提督が見られた第七駆逐隊より、朧達の方が活躍、献身、武勲も………遥かに上回る隊だって……御覧にいれますので! 絶対………!!」

 

漣「いつもふざけていると思われがちですが、やってる本人は大真面目なんですけどね。 だけど、ご主人様の反応……ふぐぅ……どっちらけなのは、何もいえませんけど。 まあ……期待を無駄にしないよう頑張りますって!」

 

ーーー

 

そう言って、第七駆逐隊は───笑顔で敬礼を行う。

 

この提督の下ならば………と、新たな決意を込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

【 裏事情 の件 】

 

〖 洛陽 都城内 予備室 にて 〗

 

 

第七駆逐隊と一刀が、和やかに対面しているのを、苦笑しながら眺める軍師一同。 いや、桂花だけ……この世の終わりのような顔で、落ち込んでいる。

 

ーー

 

冥琳「やれやれ………北郷を怒らせてしまったようだ………」

 

詠「仕方ないわよ。 ボク達、軍師としての職業柄、相手を疑い、騙し、謀を巡らすのが主な仕事。 だから、アイツの想い、艦娘と呼ばれる子達との絆を確めないと、いざと言う時に破綻されても困るもの……」

 

冥琳「そうだな。 私達の事を覚えてないのなら、尚の事、見極めねばなるまい。 私達の双肩には、この大陸の民達の平和が掛かっているのだから!」

 

ーー

 

桂花「……誰かが、この汚れ役をやらないといけないのは……分かってたわ。 多分……私に回って来るのも……予想できていた………」

 

ねね「主から信任される軍師が、一番適任でありですからな~」

 

桂花「………それが、一刀の為にもなるって事も理解してる………」

 

ねね「まあ、ねねは……恋殿のお側に入れれば……充分なのです!」 

 

桂花「………だけど、私の心は……途中で折れそうだった! 一刀から睨まれた目が、私を責め苛む(せめさいなむ)のよ! 前の世界の私も、あんな目で見てたと思うと………!!」

 

ねね「…………本当に……『あの』桂花………なのですか? 性格が豹変していて、何か別人の様に感じますな?」

 

ーー

 

詠「ねね、あの娘だった? か、一刀に反抗的な態度だった艦娘は……」

 

ねね「そうですぞ! ねねが外で見ていましたら、かなり横柄な口答えしていましたからな。 普通憚るような言葉を使って、返事をしておりましたが………『クソ提督』やら何やらと………」

 

桂花「~~~~~~!」

 

冥琳「ふむ、同族嫌悪か? だが、お前の方が遥かに酷かったと思うぞ? 思い付く限りの悪態を言い放っただろう………」

 

桂花「……………ちょっと───文句を言いに行ってくるわ!」

 

詠「ま、待ちなさい! せっかく綺麗に収めたのに、また拗れたらどうするのよ!? だいたいアイツが覚えていないのに、桂花が口出しなんかしたら、ボク達が悪者になった理由が無いじゃない!」

 

桂花「──それが嫌なの! あれだけ待ち望んだのに、また私は………一刀を蔑ろにする馬鹿な女にするつもり!? 嫌っ、もう嫌なの!!」

 

ねね「桂花…………」

 

冥琳「…………………………」

 

磯風「ふむ………御苦労な事だ。 この磯風からも礼を言わねばなるまいな? 司令と仲間の真意を探る為とは言え、自ら悪者になる奴はおらんぞ?」

 

詠「なっ!?」

 

桂花「な、ななな───何よっ!?」

 

ねね「──へっ!?」

 

冥琳「───な、何だとぉ!?」

 

磯風「………心配するな、悪いようにはせん! ただ、司令には報告させて貰うぞ? 試すのも、試されるのも……司令も磯風達も嫌なのでな………」

 

ーー

 

後に磯風から、一刀と第七駆逐隊に報告が入り………事情が判明する事になった。

 

 

 

 

ーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 

結局、また延びてしまい申し訳ないです。 今度こそと……思うのですが……要の部分がまだ出てない物で。

 

後、桂花を描写すると、何故か原作と……どんどんかけ離れて行く。

 

………………おかしいな。

 

 

 

 

 


 
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