No.823865 遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-第一章・序幕月千一夜さん 2016-01-08 23:09:20 投稿 / 全5ページ 総閲覧数:2917 閲覧ユーザー数:2596 |
≪さよなら・・・寂しがり屋の女の子≫
頭の中
声が、聴こえる
この声・・・知ってる
聴いたこと、ある
でも、思い出せない
いつ、聞いたのか
誰の、声だったのか
何も思い出せない
ただ、ひとつだけわかるのは・・・これが、“夢”だということ
覚めることのない、繰り返してきた夢の中
その夢の中
“■■”から聞かされた物語に、よく似ている
月の下
訪れた別れ
そして・・・物語の終わり
≪さよなら・・・愛していたよ、■■≫
溢れ出す光
その光りに包み込まれるように、“彼”は目を閉じた
“行かなくちゃ”
心の中
何度も繰り返してきた言葉と共に・・・
≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫
第一章 序幕【物語は、今再び】
ーーー†ーーー
晴れ渡る空の下
一人の少女がその空を見あげ、草むらに寝転んでいた
美しい金色の長い髪に、黄色を基調とした立派な衣服を身に纏う少女だ
彼女は先ほどからずっと、ここでこうして寝転がっていた
その理由は、至極簡単だ
「あ~・・・退屈なのじゃ」
これである
退屈という理由で、少女はここでずっと空を見あげていたのだ
「何か、面白いことでも起こらないかの~・・・」
言って、少女は苦笑する
“そんな都合よく、起きるわけがない”
そう思ったからだ
幼い頃の自分ならばきっと、“何か面白いことをしろ”と無茶なことを誰かに言っていただろう
そのような我儘だって、当たり前に言っていたはずだ
「はぁ・・・帰るかのう」
呟き、彼女は立ち上がる
それから体についた草を払い、もう一度空を見あげた
瞬間・・・彼女は我が目を疑った
「な・・・っ!?」
彼女の視線の先
青く澄み渡る空
そこに・・・白い流星が流れた
その流星は彼女の視線の先・・・近くにある森に向かい落ちていったのだ
「な、なんじゃ今のは!?」
彼女は慌てて、己の目を擦った
見間違い・・・そう思うが、彼女はその考えを即座に否定する
見間違いなんかじゃない
何故なら・・・
「今の光・・・温かかったのじゃ」
温かかった
何故かはわからなかったが、あの流星を見た時
彼女は自身の胸の奥に、温かな“何か”を感じたのだ
それが何かは、彼女にはわからない
だがしかし・・・
「“七乃”・・・それと“夕”と“祭”に手伝ってもらうのじゃ!」
彼女は、走り出した
たった今見た、あの白き流星
その光りを、もう一度見るために
「うははははははは!
久しぶりにワクワクしてきたのじゃ!!」
言って、見あげた空
相変わらずの青空に、少女は頬を緩める
何かが待っている
そう思い、彼女は知らずのうちに微笑んでいたのだ
「待っておれ流星よ!
今、妾が迎えに行くからな!!」
ーーー†ーーー
「はぁ・・・これは、見事にやってくれましたねぇ」
手に持っていた真っ二つになった銅鏡を見つめ、男は苦笑する
その言葉に、隣にいた男は溜め息を吐きだした
「直せそうか?」
「時間がかかります
それに・・・それまで待ってくれるとは思えません」
“だろうな”と、聞いていた男はまた溜め息をつく
「おい貴様ら!
そのようなワケのわからないことを話していないで、早く我々にわかるよう説明をせんか!!」
そんな二人の会話に割って入ったのは、かの魏武の大剣・・・夏候惇、真名を春蘭だった
彼女は二人のことを睨み付け、今にも斬りかからんという程の怒気を放っていた
その様子に、二人の男は顔を見合わせ苦笑していた
「やれやれ・・・せっかちですねぇ」
「事情ならば、貂蝉・・・あの筋肉達磨に聞いてくれ
俺たちは忙しいんだ」
「あの筋肉達磨なら、先ほど何処かへと飛び出していったぞ」
「あの野郎・・・面倒事を押しつけやがった」
春蘭の言葉に、男は表情を歪める
それから腕を組み、“仕方ない”と零した
「説明、といっても俺たちが話せることには限りがある
故に、聞かれても答えることができない場合もある
そこのところを、まずは理解してくれ」
この一言に、春蘭は一度体を大きく震わせた
それから剣を構え、男へと突きつけ叫ぶ
「なんだとっ!?
貴様、これだけ待たせておいて・・・」
「姉者、落ち着け・・・!!」
そんな彼女を止めたのは、彼女の双子の妹である夏侯淵・・・秋蘭だった
いや、彼女だけではない
よく見ればこの部屋には、魏国の主だった将達が皆集まっていた
その主だった者達が皆、彼女のことを止めていたのだ
「秋蘭、離せ・・・!」
「落ち着いてくれ姉者!
今は、僅かでも情報が欲しいのだ!!」
「ぐ・・・!」
そこで、彼女はようやく剣を下した
その表情は、未だに納得がいっていないという感じではあったが
秋蘭はそんな姉の様子に苦笑しつつも、すぐにキッと表情を引き締め男たちを見据えた
「それで構わない
お主らが話せないと思ったら、答えなくてもいい」
「わかった
答えられることなら、答えてやる」
頷き、笑みを浮かべる男
そんな男の言葉に、秋蘭は顎に手を当て思案する
何から聞くべきか
そう思い見つめた先・・・この部屋にある寝台の上
そこに眠る少女の姿に、彼女は表情を歪めた
「ならば、一つ聞こう」
「ああ、構わない」
“華琳様は・・・何故、目を覚まさないのだ?”
ーーー†ーーー
「残念ながら、見つけることは出来ませんでした」
「そう・・・」
薄暗い部屋の中
二人の少女が向かい合っていた
一人は黒い外衣を身に纏った、メガネの女性
もう一人は黒衣を身に纏う、金色の髪の少女
そのうちの一人・・・眼鏡の女性の報告に、少女は溜め息を吐きだした
「やはり・・・私たちで探すことは、困難なようね」
「申し訳ありません」
“構わないわ”と、少女は笑う
それから、自身の背後へと振り返る
そこには・・・一人の少年がいた
部屋の中
淡く光を発しながら、浮かぶその少年を見つめ・・・彼女は無邪気な笑みを浮かべる
「手段なら、他にあるわ」
「と、言いますと?」
「“心”と“体”は、互いに引き寄せあうものなの」
そこまで聞き、眼鏡の女性はハッとなる
そしてすぐに、未だ少年を見つめる少女に問いかけた
「つまり、“彼”を使うのですね」
「そうよ
本当なら一時でも一欠けらでも手放したくないのだけれど・・・仕方ないわ」
言って、少女は手を伸ばす
その瞬間、少年の周りの光はさらに強くなった
「心は抜け殻を求め、抜け殻もまた心を求める
そうして互いに探し見つけ集まった時・・・私達が、手に入れればいい」
“そうでしょ?”と、少女は女性を見つめ呟く
女性は眼鏡をクイとあげ、無言で頷いた
その様子を見つめ満足げに笑う少女・・・その手が、スッと下ろされる
「さぁ、行きなさい」
瞬間、光が飛び出していった
白く温かな光が・・・6つに分かれ、部屋を飛び出していく
その光りを見送ると、少女はクッと小さく笑いを零す
次第に小さかった声は、大きくなっていく
「我は“魔王”、曹孟徳
全てを手に入れる者・・・さぁ、私たちの“復讐”を始めましょう!」
言って、彼女は狂ったように笑い続ける
その瞳に浮かぶ“狂喜”に、彼女は身震いした
「復讐、か・・・」
“そうだ・・・”と、彼女は嗤う
少女の言葉に間違いはなく
少女の目指すものこそ、自分の目指すもの
彼女はそう思い、表情を歪める
「そう・・・これは復讐」
呟き、彼女は眼鏡をあげる
それから見つめた手を、力強く握りしめた
その手に込められた力は、とても強い
「長かった時を経て、今こそ始めましょう」
本当に長かった
彼女はそう思い、表情をまた歪めた
だがしかし・・・それはすぐに、笑顔へと変わる
それは少女と同じか、それ以上の“狂喜”
ああ、本当に長かった
その分、今のこの気持を・・・彼女は、隠すことが出来ないでいたのだ
だからこそ、彼女は嗤う
「我々から“一刀殿”を奪った世界への・・・我々の復讐を」
薄暗い部屋の中
狂った嗤いは響き続ける
彼女達の復讐は、ようやく始まったのだ
それは深淵よりも深く、どのような闇よりも暗い
ーーー†ーーー
「む~・・・確かにこっちに落ちてきたんじゃが」
薄暗い森の中
少女は頬を膨らませながら、辺りをキョロキョロと見回していた
そんな少女の後ろには、三人の女性の姿もあった
そのうちの一人・・・息を切らせた女性が少女に声をかける
「はぁはぁ・・・美羽様、ちょっと、休憩しませんか?」
「何を言っておるのじゃ!
折角ここまで来たのじゃぞ!
頑張って探すのじゃ!!」
「そんな~~・・・」
この様子を、二人の女性は苦笑しながら見つめていた
その瞳には、どこか優しげな光が宿っているようにも見える
「全く・・・武はろくに上達もせんのに、体力だけはついていきおる」
「どっかの酔っ払いが、鍛え方を間違ったんじゃないのか?」
「少しキツくすると、すぐに逃げていきおるんじゃ
中々、難しいんじゃぞ?」
「ああ、酔っ払いの部分は否定しないんだな」
「これ二人とも~!!
真面目に探してたも~!」
「あ~、はいはい
わかったわかった」
呼ばれ、彼女は苦笑いを浮かべたまま答える
それに続くよう、もう一人の妙齢の女性も返事を返した
「しかし“美羽”よ
本当に、ここらに落ちたのか?」
「うむ、確かに見たのじゃ!
白く輝く流星が、こっちの方に落ちていくのを!」
言って、美羽と呼ばれた少女は無邪気に笑う
その笑みに頬を緩めながら、隣にいた少女は“だけど”と困ったように声をあげる
「白い光、ですかぁ
そんなの見たことがないから、イマイチ想像がつかないといいますか・・・」
「む~・・・そうじゃなぁ、例えば・・・」
キョロキョロと、辺りを見回す少女
そんな少女の肩を叩き、一人の女性がある方向を指さした
「なぁ、あんな光か?」
「おお!
そうじゃ、あのように白く温か・・・な・・・」
言われ、見つめた先
その光景に、四人は言葉を失ってしまう
視線の先・・・見えた、温かな白き光を見つめたまま
そのまま、しばし流れる沈黙
やがてその沈黙を破ったのは、美羽と呼ばれた少女の声だった
「あ、あの光なのじゃっ!!!!」
「ええええぇぇぇ!!??」
「なんだと!!?」
「なんと!!?」
驚き、四人は一斉に声をあげる
それから、光に向かい駆けだしていた
「というか、こっちはさっきから祭が見ていたんじゃないのか!?
何故、気付かない!!?」
「いや、すまん!
酒が切れて、視界がボヤケテしまって・・・」
「お前、もう酒やめろ!!
なんかもう、色々と危ないぞ!!?」
「な、儂に死ねと!?」
「いや、そのままだと死ぬぞ!?」
「これ、二人とも真面目に走らんか!!」
少女に怒られ、2人はバツが悪そうな顔のまま黙った
そんな彼女達を追い越し、少女はさらに足を速める
向かうのは・・・遥か前方の、白き光
「待っておれ~~!!
今、ゆくからな~~~~~!!!!」
手を伸ばし、少女は叫んだ
その光りの向こう
何が待っているのか
何もわからないままに・・・少女は駆けて行った
その先に待つ、物語の始まりに向かって
物語は、今再び
さぁ・・・外史への扉を開きましょう
≪遥か彼方、蒼天の向こうへ-真†魏伝-≫
第一章【真夜中の虹】
開†幕
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