「いぃぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「ハッハッハッハッハッハッハッハッ!! 見事に引っかかったな、侵入者めぇ!!」
「その人工植物は捕らえた獲物を絶対に逃がさない!! この
-ビリッビリィッ-
「ッ…ふぇえ!? あ、ちょ、服を破かないで…嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「…あ、あれ?」
…が、そんなkaitoの意志とは逆に、人工植物はチェルシーが身に纏っていた衣服をビリビリに引き裂き始めるという想定外の動きをし始めた。チェルシーが下着姿にまで剥かれて悲鳴を上げている中、自分が想像していた展開とは違う展開になっていくこの状況に、思わず唖然とせざるを得なかった。
「あ、えっと……ごめんちゃい☆」
「悪いと思ってるんだったら助けなさ……あ、いや、そこは駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…!?」
「―――ぶはっ!?」
人工植物のおかしな暴走は止まらない。植物の先端がチェルシーのスレンダーな身体をまさぐり始め、kaitoはあまりに凄まじ過ぎるこの光景に鼻血を噴出してしまうのだった。
一方で他のメンバー達は、そんな二人のシュール過ぎる状況など露知らず…
「―――では、行きます…!!」
「良いぜ、来い…!!」
(さぁ、まずはどう来る…!!)
「…やぁっ!!」
シェーレのエクスタスまで、あと1メートルの距離。ロキがデュランダルでエクスタスを真上に弾き返そうとしたその瞬間、シェーレは開いていたエクスタスを突然閉じ、それを真横に振り回す。
「!? おいおい、鋏じゃねぇのかそれ…ぬぉう!?」
いきなり想定外の行動で来られた為、ロキは慌てて目の前にプロテクションを張ったが、シェーレが振るったエクスタスの刃は、そのプロテクションをいとも容易く斬り裂いてみせる。エクスタスの二つ名である“万物両断”の名は伊達ではなかった。
「あっぶねぇ……下がるのが一秒遅れてたら、真っ二つにされてたぜ…!!」
「! やはり避けますよね……ならば、これはどうですか!!」
「んな!? く、ちょ、この…!!」
シェーレは女性とは思えない腕力とスピードで、エクスタスを閉じたまま連続突きを放つ。ロキは自身の身体を逸らすかデュランダルで斬撃を逸らすなどして、シェーレの連続突きを苦労しつつもどうにか捌いていく。
「おま……ちったぁ反撃させろってぇの!!」
「!?」
このままでは埒が明かないと判断したロキは、ちょうど通路に置かれていた壺を蹴り飛ばす。もちろんシェーレはこれをエクスタスで両断するが、これで一瞬の隙が出来た。ロキは一瞬でシェーレの目の前に移動し、デュランダルを真下から振り上げようとするが…
「奥の手……エクスタスッ!!!」
「!? 何…ッ!!」
シェーレの構えたエクスタス。その金属部分が大きく発光し、ロキは想定外の目くらましに一瞬だけ動きが止まってしまった。シェーレは迷わずエクスタスの刃を開き、ロキの胴体を斬り裂こうと前方に突き出す。
≪バディ!!≫
「!? うぉわっと!!」
「!? く…っ!!」
視界を封じられつつも、殺気で方向が分かったのだろうか。ロキはわざと後ろに倒れる事でエクスタスの刃をギリギリ回避し、シェーレの腹部を蹴りつけて後退させる。その隙にロキは目を閉じたまま近くの柱を斬り裂いて破壊する事で土煙を発生させてから、通路の曲がり角まで必死に転がって退避。壁に背をつけたまま、回復魔法を発動して自身の両目の視力を回復させ始める。
(くそ……彼女、最初に出くわした時はほんわかな雰囲気を出しといて、いざ戦闘になったら想像以上に躊躇という物が無い…!! あぁいうのが、暗殺者としては最適な人材なんだろうな…)
今の攻防の中で分かった、シェーレの敵に対する躊躇の無さ。それは攻撃される側からすれば恐怖以外の何物でも無いのだが、逆を言えば味方側から見たら彼女のそれは非常に頼もしくもあり、暗殺部隊であるナイトレイドにはまさにピッタリ過ぎる人材である事も、ロキは頭の中で充分に理解していた。
(…この際、俺も手加減は無しだ。躊躇して死んだら元も子も無い)
その為には対抗策を練らなければならない。相手のエクスタスは、プロテクションのような防御魔法も簡単に斬り裂いてしまうほどの切れ味だ。回復魔法で視力が元通りになったロキはゴーグルを付けた後、自分が今いる通路を見渡して確認する。
「…どれ、罠でも仕掛けてみましょっかね」
場所は変わり、
「―――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「隙だらけだ」
「げ……どわっぷ!?」
ウェイブとクロメ、二人のイェーガーズメンバーを一人で相手取っていたaws。グランシャリオを装備したウェイブが猛スピードで特攻して飛び蹴りを放つが、awsはまるでそれが当たり前かのように彼の右足を掴み、勢いを利用してそのままプールへと投げ落とす。そこへ八房を構えたクロメが斬りかかるも、awsは後ろを振り返らないまま刀でそれを防御してみせる。
「な……あぐっ!?」
「不意打ちは悪くない…だが気配をもっと上手く隠せ」
awsは後ろを向いたままクロメの八房を刀で上方向に弾き上げ、クロメの首を掴んで高く跳躍。そのまま同じようにプールに叩き込もうとしたが、その直後にプールからウェイブが再び飛び出して来た。
「何度突っ込んでも同じだ」
「いや、同じじゃありません!!」
「何…ッ!?」
よく見ると、ウェイブは先程awsが弾き上げた八房を右手でキャッチしていた。それはすぐさまawsに掴まれているクロメの手元に投げ渡され、クロメは瞬時に八房で一閃。awsはそれを刀で防御するも、直後にウェイブが振り下ろした剣でawsの腹部を僅かにだが斬りつけ、微かに血が舞った。
((よし、当たった!!))
「…で、油断する辺りお前達もまだまだだな!!」
「げふっ!?」
「あっ!?」
awsは掴んでいたクロメを一旦離し、ウェイブの仮面を刀の柄で殴りつける。その直後、殴られたウェイブは身体が傾くと同時に右足でawsの腹部を蹴りつけ、その勢いで瞬時にプールサイドに着地する。
「ッ…人の腹を蹴るとはやってくれるな」
「さっきの仕返しですよ」
「言うじゃないか……ならばこれはどうだ!!」
awsは刀を鞘に納めた後、すぐに抜刀して複数の斬撃を飛ばす。ウェイブとクロメはそれぞれ剣と八房で飛んで来る斬撃を防いだ後、ウェイブは落下して来たawsの振り下ろした刀を防ぎ、そこにクロメが八房で素早く突きを放つが…
「おっと」
「!?」
その突きをかわし、awsは八房の上に右手を置いて逆立ち状態になり、そのままウェイブの剣を刀で強引に地面に叩き伏せ、ウェイブのパンチを左手で掴んで防ぐ。
「んな……大道芸人かアンタは!!」
「こんな事で文句を言うな。ここにはな、俺よりおかしな動きをする奴なんてしょっちゅういるぞ」
「アンタがいる旅団って本当にどうなってんだよ!?」
「そんな事、むしろ私が聞きたいわ!!」
「何故俺が怒られる!?」
awsから八つ当たり染みた発言をされ、ウェイブは思わず気が抜けて右手の力が緩んでしまった。それこそ、awsの思惑通りである事に気付かずに。
「破ァッ!!」
「え……がは!?」
「油断したなウェイブ、まだ戦闘中だぞ!!」
awsは瞬時にウェイブの右手を弾き、彼の腹部に強烈なパンチを炸裂させる。それだけでは終わらず、awsは刀を真上に放り投げてから、ウェイブの身体中のあちこちに拳を叩き込み、その衝撃でウェイブの全身にダメージを響かせていく。
「ッ……おぁあっ!!!」
「!?」
「グランフォールッ!!!」
しかし殴られてばかりのウェイブではない。彼の背中についていたジェットが噴射し、ウェイブの身体がawsの真上を飛び越えた事でawsの攻撃が外れ、ウェイブはジェットの勢いを利用して上昇し、落下しながらaws目掛けて強烈な蹴りを繰り出した。awsも手元に落ちてきた刀を素早くキャッチし、ウェイブの蹴りを刀の腹で受け、蹴りを防ごうとする。
「させない!!」
「!? しま…」
そこへまたしても、クロメが八房で斬りかかって来た。それによってawsの刀が弾かれ、ウェイブの蹴りは勢いを止める事なくawsの腹部に炸裂させた。しかしそれでもawsは吹き飛ばず、両足を使って意地でもその場で踏ん張り続ける。
「ぐ、ぬ…うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!!!」
「!? マジかよ…!?」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……俺、は…この程度じゃ、倒せんぞぉ…!!」
「ッ……
「ウェイブ!!」
「!? チィ!!」
awsがウェイブの蹴りを押さえ続ける中、クロメは先程ウェイブが落とした剣をaws目掛けて投擲。それを右手で器用に弾くawsだったが、それがマズかった。awsの気が一瞬だけ他所に向いた事で、ウェイブの蹴りを押さえていた力も大きく緩んでしまい、ウェイブは更にawsを蹴り押していく。その衝撃は凄まじく、既にプールサイドには大きな地割れが発生してしまっているくらいだった。
「…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「な…どわぁっ!?」
それでも、awsの執念には押し勝てなかった。未だ踏ん張っていたawsがウェイブの足を掴み、力ずくで彼を真上に殴り飛ばしたのだ。しかしウェイブはすぐに空中で体勢を立て直し、再び飛び蹴りを繰り出してみせる。
「もう一度……グランフォォォォォォォォォォォルッ!!!」
「来るか…ッ…ぜぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
強引に殴り飛ばした際に痛めてしまったのか、awsの右手拳からは血が流れていた。その為、拳では受け止め切れないと判断したawsは足元に落ちていた刀を足で蹴り上げてキャッチ、再びウェイブの蹴りを防ごうとする。
「ウェイブだけじゃない!!」
「!? クロメ、お前もか…!!」
そこへクロメも八房を振り下ろし、awsはウェイブの蹴りとクロメの斬撃、その両方を同時に受け止めなければならない状況に陥った。流石に二人分の攻撃は完全には押さえ切れず、その勢いに押されてawsは再び押されて後退し始める。
「ぐぅぅぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」
その時…
-バギィィィィンッ!!-
「ッ!?」
何度も攻撃を受け止め続けた事で、とうとう耐え切れなくなったのだろう。二人の攻撃を受け止めていた刀がバキンと音を立てて、木端微塵に砕け散ってしまった。その結果…
「「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」」
「ぐ…あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
胸部にはウェイブの蹴りが、腹部にはクロメの斬撃が炸裂。流石のawsも遂に血反吐を吐き、二人の攻撃で一気に壁まで叩きつけられてしまうのだった。
場所は戻り、
「……」
斬り倒された柱で土煙が舞っている中、シェーレはエクスタスを何度も振るいながらロキが飛び出して来るのを静かに待っていた。ロキは未だに出て来る様子は無い。
(恐らく、相手の視力は既に回復している。周囲には他に使えそうな障害物も無い……行くしかありませんね)
シェーレは閉じたエクスタスを右手に持ち、ロキがいるであろう通路の曲がり角まで駆け出す。するとそのタイミングを待っていたかのように、ロキも勢い良く曲がり角から飛び出して来た。チャンスと捉えたのか、シェーレは再びエクスタスを前方に突き出し、金属部分を発光させる。
「エクスタス―――」
「二度も聞かんよ!!」
「!?」
ロキは両目に付けていたゴーグルのおかげで、エクスタスの発光にも一切怯まなかった。ロキはデュランダルを構えてから素早くシェーレに接近し、シェーレも慌てずエクスタスで彼を迎撃する。
(まずは武器を斬り裂いて―――)
「―――来るところまでは想定済みだ!!」
「!? な…!!」
シェーレの考えを先読みし、ロキはユーズからもう一本のデュランダルを弾丸のように放出。猛スピードで放たれたそれはシェーレのエクスタスを横方向に弾き、そこにロキがもう一本のデュランダルを強く叩きつけ、エクスタスを床に叩き落とした。
「残念、デュランダルは折れないのさ!!」
「そんな……あっ!?」
「よっと!!」
武器を失ったシェーレの首元をロキが掴み、そのまま床に押し倒して馬乗り状態になる。そして最後はシェーレの首元に二本のデュランダルを交差させた状態でシェーレの首元に向けた。
「…
「…負けちゃいました」
勝敗は決した。
シェーレの降参宣言を聞いて、ロキはニッと笑みを浮かべてからデュランダルをユーズに収納するのだった。
OTAKU旅団No.6 ロキ vs ナイトレイドメンバー シェーレ
勝者 ロキ
そしてプールサイドでは…
「「はぁ、はぁ…!!」」
awsを壁まで吹き飛ばしたウェイブとクロメが、その場に膝を突いてから息を整えているところだった。awsが叩きつけられた壁では煙が舞っており、awsの姿は見えない。
「…やった、のか…?」
「まだ、分からない……警戒だけは、緩めないで…」
土煙の中、awsは未だに反応が無い。二人は「もしかしたら気絶している?」という考えが浮かぶも、恐る恐る土煙が舞っている壁際へと近づいていく。
「あ、あの、
「ここまで成長していたのは想定外だったよ」
「―――ッ!? が、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「!? ウェイブッ!!!」
その直後だった。
土煙の中から勢い良く飛びだして来たawsの右手が、ウェイブの仮面をガシッと掴み上げた。仮面がバキバキ音を立てて破損する事で、ウェイブの素顔が少しだけ露わになる中、ウェイブの悲鳴を聞いたクロメは八房で再びawsに斬りかかろうとしたが…
-ガキィンッ!!-
「!? 鞘で防御した…ッ!?」
クロメの振り下ろした八房を、awsは残っていた鞘を使って安全に防いだ。そのままawsの強烈な一閃がクロメの腹部に命中し、大きく吹き飛ばされたクロメはプールサイドを何度も転がった後、その意識を失ってしまった。
「クロ、メ…ッ…!!」
「ふん!!」
「ごはぁあっ!?」
「最後の最後で油断したな……その甘さがお前達の敗因だ。ウェイブ、クロメ…」
awsの右手がウェイブの頭を掴み、そのまま彼の全身をプールサイドにズドンと減り込ませた。ウェイブが口から血を吐く中、awsは口元の血を拭ってから告げてみせる。
「…だが、ここまで追い詰められたのは久しぶりだ。強くなったな、二人共」
その言葉は聞こえたか否か。
瀕死の状態だったウェイブは、その口元が小さくだが笑っていたのだった。
OTAKU旅団No.11 aws vs イェーガーズメンバー ウェイブ&クロメ
勝者 aws
一方、
「がはぁっ!?」
『グルォォォォォッ!?』
げんぶの変身したアルケーガンダムと戦っていた筈のセリューが、壁に叩きつけられ大きく減り込んでしまっていた。そこに巨大化したコロも同じように減り込まされる。
「ッ……悪鬼、め……貴様は絶対に、正義執行してくれる…!!」
「正しい正義だと? そんな物が一体誰に分かる? 分かりはしないさ、誰にも!! 人は皆、正義や価値観などがそれぞれ違うのだから」
壁に減り込んでいるセリューとコロ……そんな彼女と一体の前に降り立ったのはアルケーガンダムではなく、白と赤によるカラーリングが施された、ガンダムらしからぬ形状の機体だった。
「そうは思わないかね? セリュー・ユビキタス」
げんぶが変身している機体―――リボーンズキャノンは、傲慢な口調でセリューに言い放つのだった。
To be continued…
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ナイトレイド&イェーガーズ その3