「何だって!?」
龍翠は今し方届いたばかりの手紙を読んでいるのだが、その手紙の内容が、とても信じられないでいた。
その手紙には、こう書かれていた。
《龍翠よ、この手紙が届く頃には朕はこの世におらんだろう。
我が朋友(とも)よ。私の息子と、義兄を助けてやって欲しい。
死に逝く朕では、如何する事も出来なかった。
だから、龍翠、お前に我が最後の命として、我が子を護る義兄八雲の事をたのむ。
御主が、協と八雲を導く事を願って居るぞ。
乃守》
朋友と呼ばれて久しい帝からの手紙。
その内容に、龍翠は悲痛な表情を浮かべるばかりだった。
「時は、一刻を争うな……。」
そういうと龍翠は、二通の手紙を書き、一通は洛陽にいる親友の八雲の元へ
そして、もう一通は―――。
―天水の城内―
私は今驚き過ぎて、何でこの手紙がこんな所に来ているのか分からなかった。
「詠ちゃん? どうしたの?」
「月……。実は、この手紙がね。」
その問題の手紙を、私は―詠―は、月と呼んだ少女に渡した。
《董卓殿、賈駆殿
突然の手紙を許して欲しい。だが時は一刻を争うのでこの手紙を贈ったしだいです。
この手紙が突いて数日後にそちらに、洛陽から逃れた劉協様と劉協様の伯父の何進将軍が参ります。
どうか、ご内密にお願いしたい。
もしかすると、十常時の者達の刺客が、そちらにきかねませんので。
最後に、貴嬢たちを巻き込んでしまい、真に申し訳ありません。
では。 曹朋錬鳳》
「え、詠ちゃん。是って……。龍翠さんの……。」
「うん。 あの魏の龍、曹錬鳳――龍翠が月と僕にあてた手紙。恐らく、もう何進将軍は此方に向かっているでしょうね。」
彼女等が何故、龍翠と面識があるかと言うと、龍翠が陣留に帰る途中
丁度、二人を乗せた馬車が盗賊に襲われ、馬が暴れて手綱を握っていた人物ごと何処かに行ってしまい、
さらにその拍子に馬車の軌道がずれ馬車だけが、坂を転げ落ちていた。
勿論中に居た二人も唯ではすまない。
二人は死を覚悟したはずだったが、突然馬車の動きが止まったのだ。
如何いうことかと、思ったが二人は先ずは此処からでなければならないと思い、何とかその馬車から這い出る。
すると、其処には片腕が変な方向に曲がっている龍翠と、
赤いアホ毛が二本立っている女の子と、
肌の白い水色の髪の女の子の三人が居たのだ。
二人は、龍翠に感謝するとともに怪我の原因であると、彼女達は自分達の城に招いた。
そこで養生しているうちに、彼に引かれていき、真名を許す中にまでなった。
そして龍翠は分かれのとき、一緒に居た女の子達に働き口を上げてくれないか?と言って彼女達を残し、(ご丁寧にも、食べ物に睡眠薬を入れて、おきてくるのが遅くなるように。)早々に城を後にしたのだ。
後に残った彼女達は、悲しみはしたが、龍翠が自分達に宛てた手紙に此処を任せたと書いてあったので自分達は信頼されていたのだと思いここに残った。
なお、彼女達は今は、董卓軍の立派な将軍だとだけ言って置く。
詠―賈駆の真名―は何度も、手紙を読み返している月―董卓の真名―を見る
「(此方に送ったのは、洛陽から其処まで遠くなく、かつ何進将軍と結びつかない場所。 そして何より信頼の置ける場所で、ウチには猛将が二人いる。 そして―――。)」
詠はもう一度月を見る。
「(野心が殆どなく、平和を第一と考え、帝を傀儡としない人物。 流石、魏の龍ね。慌てていても、冷静に周りを見れてる。)」
詠は頭の中で、あの龍翠がするであろう行動、考えを想定した結果、月を選んだと言う事にたどり着いた。
月の顔を見たら分かる。
手紙に書かれている内容はとても、信じれるものじゃなかった。
だがその内容は、今起こっているそして、今後起こるかもしれない事が書いてあった。
信頼に値する人物が、何の知らせも無く唯、手紙を出すとは相当慌てていた事が見て取れる。
「じゃあ、直ぐに準備しなくちゃ!」
そう言って、月はパタパタと走って行った。
私も、その後を追うように走って、色々と準備をして回った。
―――手紙が届いてから二日後、何進将軍が劉協を連れてやってきた。
初めての遠出だったのだろう、劉協の顔には疲労がありありとうかがえる。
月は、ほとぼりが冷めるまで此処で、暮らして頂く様にと劉協に言い、
それに劉協も、感謝の意を示しそれを受けた。
しかし、それから半月後、洛陽で十常時の連中が好き勝手な政治をしている。と言う、話を聞いた。
だが、今は皇帝が居ないので、正式に討伐に行く事も出来ない。
もし討伐に向かえば、それは帝の居る場所に攻撃を仕掛けたと言う逆賊殲滅の言い訳をあたえてしまう。
だから劉協が「自分が今立たねば誰が立つのだ!」と言い、洛陽に戻ると言い出した。
当然、全員が反対したが劉協が頑として譲らなかった。
そこで、月は自分が行方不明だった劉協を保護したと言って都に入り、
劉協が帝に就任後、自分を太守にして護衛として付くと言う案を出した。
用は、自分達の軍が護衛として一緒に行くと言う条件を出したのだ。
この提案に、渋々だが了承した。
是も、龍翠の思惑通りと思わずに――。
そして、董卓軍は、天水から洛陽へその拠点を移し、
劉協も『献帝』と名乗り、十常時のしてきた事について民に全て還元した。
龍翠も、この噂が流れてきたときは、思わず安堵した。
こうして、洛陽の平和を護る事が出来たかに思えたのだが―――。
龍翠は忘れていた。
自分の知り合いの、名家の御馬鹿2人の事を―――。
~SIDE御馬鹿その1~
「袁紹~様~。都の覇権争い、どうやら、今まで行方不明だった帝の子供を保護した天水? だったかな、の董卓って太守が勝っちまったんだって。しかも、都の太守にだってさ。」
「なんですてぇぇぇ!? 何で、天水の田舎太守ごときが都の太守になれるんですの!? こうしてはおれませんわ!」
そう言って、部屋から出て行き、間諜経ちを呼び、洛陽で董卓が暴政をしていると言う、噂を多くの国に言い触れて回るように言った。
「そ、そんな~……猪々子、なんで一々そんないらない事するんですか~。 袁紹殿も他では頭回らないくせに、どうしてこんなときだけ……。」
「もう、諦めよう……巴ちゃん。」
と、部屋の端で泣いていた軍師と将軍が居たとか居なかったとか……。
SIDE御馬鹿その2
「美羽さまぁ~、都の覇権争い、どうやら、今まで行方不明だった帝の子供を保護した天水の董卓って太守が都の太守に任命されてしまいましたよ?」
「だから如何したのじゃ?」
「都の太守ですよ? 田舎太守が今の美羽さまより上の位になっちゃったんですよ~? それに、都の太守なら蜂蜜買い占められちゃうかもしれないですよ~?」
「な! それは一大事なのじゃ! よし! こうなったら、諸侯にその、董卓が暴政していると噂を流すのじゃ!」
蜂蜜の一言で、先ほどまで他人事だった彼女の目に闘志が宿る。
「おお! さっすが美羽さま! 悪巧みさせたら天下一品ですね! よ! この悪巧みの天才!」
「わははは! もっとほめるが良いのじゃ!」
その部屋の外では、
「ダメだこいつ等早く何とかしないと……。」
と、途方にくれる兵士が居たと甲斐ないとか……。
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今回相当短いです。
反董卓連合に至るまでの過程しか書いていませんので。
次回から、反董卓連合戦始まります!