ある日の昼下がり、劉禅は異母妹の関平と一緒に街に繰り出していた。
「そろそろ父の日だね、関平ちゃん」
劉禅が露天に並んだアクセサリーを手に取りながら関平に話しかける。関平は絶えず周囲に気を配りながら、「そういえばそうですね・・・」と相槌を打つ。
「統ちゃんとか璃々お姉ちゃんは料理を作るみたいだけど・・・」
「・・・悔しいことですが、私たちはなぜか厨房長と星様達から厨房に入ることを禁じられていますから、料理で父上を喜ばせてあげることはできません」
非常に悔しがる劉禅と関平だが、これには正当な理由がある。
昨年の一刀の誕生日に劉禅と関平は独学で愛紗から学んだチャーハンを作ったのだが、なぜかチャーハン一つ作るのに厨房および食堂を壊滅させてしまい、それ以来彼女らは厨房に入ることを厨房長から禁じられているのだ。
「そうだ!いいこと考えたよ、関平ちゃん!」
「みんなっ、せーのっ・・」
『お父さん(父上)(父ちゃん)(父者)(お父様)(父さん)(親父)(パパ)、父の日おめでとう!』
桃香の掛け声とともに玉座に響き渡る元気な子供たちの声。そして鳴るクラッカーの音。
その音とともに、一刀のもとにプレゼントが届けられる。その中で、劉禅は一枚の紙を一刀に手渡した。
「禅、平、これはなに?」
「これは―――」
「おとーさんへの、感謝状だよっ!」
今回のプレゼントを作るにあたって、2人は武勲をあげて桃香や父から感状(戦功証明書のようなもの)を渡されていた将軍や、街のために貢献した人や素晴らしい品を作りだした職人達が感謝状を貰って誇らしげにしていたのを思い出し、自分たちも父に感謝状を贈ろうと考えたのだ。ちなみに草案は皆で考えた。
「『お父さんは私たちにとって太陽のような存在です。いつも優しく温かく見守ってくれてとっても嬉しいです。これからも私たちの優しいお父さんでいてください。お父さんを大好きな子どもたち一同より』」
皆を代表して劉禅が読み上げ、「はい、お父さん」と一刀に手渡す。
「劉禅~!」
「わっ、お父さ~ん♪」
感極まってか、一刀は劉禅を思いっきり抱きしめる。劉禅も満更ではなさそうで嬉しそうな声を上げる。
「あっ、劉禅様!ズルイです!・・・私も、父上に・・・」
「おやおや?関平姉者、本音が駄々漏れだぞ?」
「うるさ~い!趙統、そこに直れ~!」
羨ましそうに見つめていた関平を趙統がおちょくって追いかけっこがスタートし、他の子供たちが劉禅に負けじと一斉に父に抱きついた。それはそれは幸せそうな絵だったが、一刀は周りにいた妻達のことをすっかり忘れて―――
北郷一刀は晩年、孫の一人にこう語ったと記録に残っている。
『あの日の翌日は、妻達に搾り取られて足腰立たなかった』と―――
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前回登場した厳封と呂紹はオリキャラです。厳封の『封』は史実で劉備の養子であった劉封から、呂紹の『紹』は張飛の次男張紹からとりました。
今回は父の日スペシャルです。