孫権伝第10話
『薄幸の少女』
俺達は今洛陽の南部に来ている。正直な話洛陽に入る事は憚れた。と言うのも洛陽は大分荒れていて、街に入るのですら金を取る始末なのだと言う。唯一ついい事と言えば、最近になって董卓と言う人物が上洛し、税を軽くしたり、賄賂などの犯罪を事前に取り締まる事を行っているようだ。
一刀「董卓が善政ね・・・やっぱりあの時の反董卓連合は諸侯の、袁紹の嫉妬からだったのか。」
雛里「ご主人様?どうしましたか??」
一刀「ん?何でもないよ。洛陽を良くしようとする董卓さんってどんな人なのかなって。」
輝理「噂ではぽよぽよのオジサンであるとか、よぼよぼのお婆さんだとか、まだ幼い子供だとか言われてますね。」
情報が漏れないようにしてるってことか。そんな事をする必要があるのか?
一刀「君主の姿かたちを隠して得する事はある?」
雛里「あわわ、おそらく知られるとまずい外見をしてるのではないでしょうか?」
一刀「知られたくない外見か。・・・・・・だめだ、想像できない。」
はっきり言って、いけ好かない連中は腐るほど見て来た。そいつらを使って想像したが・・・それだと圧政を敷いてるようにしか見えなくなるので止めることにした。
一刀「それにしても此処からでも嫌な感じがひしひし感じるのは問題だよな?」
輝理「少女もこの匂いは嫌いです。」
輝理の言う通り、僅かに腐臭が漂ってくるのだ。風下に居るのも原因の一つなのだろう。
雛里「それで、どうしますか?ご主人様。このまま洛陽に?それとも西ですか?東ですか?」
一刀「そうだな・・・もう少し近づいてみようか。そこから東へ向かって許都(この時点では許昌では無い)に出よう。そこから汝南、江夏、柴桑の道順だな。」
雛里「分かりました。」
輝理「了解です、一刀様。」
そうして俺達はもう少し洛陽に近づくことにしたのだった。そこで出会う少女に、俺は驚愕する事になる。
一刀「うへぇ・・・空気が淀んでるなぁ。」
基本この世界で一般人以下の俺でも分かるぐらい空気が淀んでいた。腐臭と言って差し支えないのかもしれない。
輝理「これ以上は近付きたくないですね。」
雛里「あわわわわわ。」
輝理も顔をしかめ、雛里に関しては気を失いそうだ。
一刀「ひとまず洛陽は酷いって事が判ったな。このまま許都にむかおう「きゃああ!!」・・・なんだろう、俺は今輝理を思い出したぞ?」
輝理「落ち着いてる場合じゃありませんよ一刀様!」
雛里「どどど、どうしましょう!?」
一刀「放ってもおけないな。行くぞ、輝理、雛里。」
二人「「はい!!」」
そのまま俺達は馬をその悲鳴があった方に走らせる。しばらくすると少女が兵士に見える奴等に連れて行かれようとしていた。
一刀「貴様ら!何をしている!!」
兵士1「あん?何の用だよ。」
一刀「悲鳴が聞こえた。この少女が何をした?」
兵士2「おまえには関係ねえだろうが!!」
一刀「いやある。不当に連れ去られようとしている少女ならこの北郷、たとえ天にそむこうとも剣を抜くぞ?貴様ら・・・覚悟はできているか?」
兵士3「逆賊になるって事だな!お前ら、やっちまえ!!」
そう言って全部で6人の兵士は腰に付けた剣を引き抜いた。
一刀「・・・抜いたな?ならば覚悟しろ。輝理!雛里を守れ!!」
輝理「御意!」
そう言って、輝理は腰に在る一つの鞘に収まった二つの剣を抜き放つ。その剣は細く尖った剣、刺剣、エストックだった。
一刀「さあ、踊れ。死の演武を!!」
6人の兵士はすぐに俺では無く、雛里の方へと走り出していた。と言っても視線がそっちに向いていたのでさして虚は突かれなかった。
一刀「目線があからさまなんだよ!!」
一突き。黒天槍に二人の人間の串刺し、すぐに引き抜いてボトリと地面に転がした。
一刀「ほらもう一つ!!」
ドシュ!
また一人その場で屠る。しかし三人が輝理と雛里の方へと抜けてしまった。
一刀「ちっ!輝理!!」
輝理「問題ありません!はああああ!!!」
ヒュヒュヒュヒュン!!
兵士2「ぎゃああああ!!」
兵士3「ぐふ!?」
輝理のエストックの刺突は目にとまらぬ速さで二人の兵士をハチの巣にした。さすが文武両道の徐庶元直。だがそこで残った兵士は雛里へとその魔手を伸ばした。
一刀「雛里!?」
雛里「あ、あわわわわわわわわ!!!!!!!」
ゴッガッバギッドゴッ!
その魔手は雛里には届かなかった。って言うか雛里さん?その特大の巻き物は何処から出したんでしょう?チラッと見えた巻物の題名は孫氏兵法写本中編と書かれていた。中編でその大きさなのですか?と言うかもうやめてあげようか?もうその人可哀そうなことになってるよ?
雛里「あわわわ、わ、わ?あわわー!!」
自分でやってて驚いてるよ。雛里たんマジかわゆす。おっとわき道にそれた。
兵士1「う、う~ん。」
一刀「さてと・・・ひとまずこいつを縛り上げてっと。さて、大丈夫?お嬢さん。」
??「は、はい。助けていただいてありがとうございます。でも、大丈夫なんですか?この人達は禁軍の方々なんですけど。」
輝理「禁軍!?」
雛里「あわわわわ!?」
一刀「・・・で?」
三人「「「え?」」」
兵士が禁軍と聞き慌てる二人を余所に俺はなんじゃそりゃと言う感じで返答をした。だってそうだろう。女の子一人を寄って集って追いかけるやからをどう敬えと?それに一人残して全滅だからばれる事もない。この一人だって無事に帰す気は毛頭ないのだから。
一刀「こいつら悪い人。俺達いい人。それで万事解決!」
ドン!と背景に文字が出るぐらいに俺は胸を張る。だって真理だもん。
輝理「まあ、間違ってはいないです。」
雛里「ででででもご主人様。指名手配になったらどうするんでしゅか!?」
一刀「あはは、無い無い。だって・・・なあ、気付いてるんだろう?さて、どうしてくれようか?まずは舌か?文字もかけないように腕もいらんよなぁ?」
兵士1「むぐぅ!?」
どうやら気が付いていたようだった兵士に俺は向き合い、悪い顔をして近づいて行く。兵士は縛られた状態で器用に後ろへと下がって行った。
一刀「生き延びらせる条件をやろう。この子を狙った理由を言え。そして、禁軍なんてやめて何処か静かな場所で暮らせ。もしもそれが受け入れられない、もしくは嘘をついた場合・・・」
そう言って俺は懐から銃を取りだすと(事前にアタッシュケースから取り出した物。強度はまだ無い)そこらへんの石に向けて引き金を引く。
ガゥン!
一刀「あの石のように頭が吹き飛ぶぞ?いいな??」
兵士1「(コクコクコクコク)」
見慣れない技を使う得体のしれない者。そう言う印象を強く与えて猿轡を取ってやると兵士は席を切ったように話し始めた。
兵士1「俺は十常侍の方々に命じられて、勅命だからとお忍びで外出した董卓を殺すように言われたんだ!皇帝陛下を影で操ろうとしている疑いがあると聞いてる!!」
詰まる所なんだ?この子が董卓だとこいつは言いたいのだろうか。
一刀「ばっか野郎が!!!」
バゴ!!
兵士1「ぐべ!?」
一刀「よく見ろ。あの子が皇帝陛下を影で操る悪党?馬鹿か?あんな可愛らしく愛おしい存在が?お前、あの子が娘や妹だったらどう思う?あり得ないと思うだろう?」
兵士1「そ、それは・・・」
一刀「お前の愚かさで彼女のような麗しい女性が失われる。なんと嘆かわしい。逃がしてやろうと思ったが変更だ。俺がお前を粛清してやる、矯正してやる、調教してやる。可愛いは正義と天に逆らっても叫ぶ紳士に俺が叩き直してやる。秘儀『黒○テイム』!!」
俺はそのままそいつの縄を解き、正座させ、延々と可愛いについてを語り続けた。教育、調教、洗脳だ!可愛いは神ですら侵す事の出来ない神聖な領域なのだ。可愛いを穢す者は例え天であろうと刃向え、立ち向かえ。それを徹底させた。後ろで輝理と雛里と董卓と言われた少女がどん引きして俺を見ていた。
一刀「分かったか、愚か者!」
信徒「はい、北郷様!」
一刀「肯定する場合はイエス、否定はノー。そしてその言葉の前と後ろにサーを付けろ駄目信徒が!」
信徒「サー、イエス、サー!!」
一刀「よろしい、肯定の場合は特別にイエス、サーの略称のイエッサーを使う事を許可する。分かったか?」
信徒「サーイエッサー!!」
一刀「ならばお前は可愛いの伝道者として大陸を旅するんだ。任務失敗で戻ったらお前の命も危ないからな。返り討ちに合ったと思わせておけ。そして可愛いは正義を大陸中に広めるんだ。ついでに董卓は可愛いも広めておけ。分かったか?」
信徒「サーイエッサー!!」
一刀「ならば行け!!」
信徒「サーイエッサー!!」
そして、元禁軍兵士は可愛いの伝道者として旅だったのだった。めでたしめでたし。
董卓「か、かわいい・・・へぅ。」
雛里「あわわ、私も可愛いって言われてみたいでしゅ。」
輝理「うらやましい・・・」
一刀「ん?雛里も輝理も可愛いぞ?何を言ってるんだ。」
二人「「/////////」」
・・・おぉ。俺ってばまた無自覚になんてことを口走っているんだ。と、とにかく此処は話を進めなければ。
一刀「えっと、董卓さん、でいいのかな?一人で戻れるかい?」
董卓「あ、は、はい。」
一刀「すまないな。本当は送って行ってやりたいが、さすがに今十常侍に目を付けられる訳にはいかないんだ。」
董卓「い、いえ。こちらこそ助けていただいてありがとうございます。えっと、貴方様は?」
一刀「俺は北郷。見ての通り旅の武人さ。こっちの銀色の髪の美少女が徐庶。こっちの魔女っ子美幼女、もとい美少女は鳳統だ。」
輝理「び、美少女!?」
雛里「あわわ、幼女じゃないですよぉ。」
董卓「改めまして。董卓仲穎です。真名を月と言います。」
一刀「真名を預けてもらっても良いのかい?」
月「はい、命を救っていただいた方に何のお礼も出来ないのは董卓軍の長として示しが付きませんから。」
一刀「ならば俺も真名の一刀を預けよう。」
輝理「少女は輝理と言います。」
雛里「ひ、雛里でしゅ!」
月「一刀さん、輝理さん、雛里さん・・・本当にありがとうございました。」
そう言って月は深々と頭を下げて礼を尽くす。正直このままだと話が進まない。後ろ髪を引かれる気持ちだが、此処はすぐに立ち去るとしよう。
一刀「本当に良いんだよ。真名まで預けてくれて・・・それじゃあ俺達はこれで。月、気を付けて帰るんだよ?」
月「はい。」
そう言って月はにっこりとほほ笑むと洛陽に向けて駆けだした。正直彼女の命を狙ってる奴等が他にも居たら目も当てられないのだが、俺自身大っぴらに行動する訳にもいかなかった。雛里と輝理の時はだって?そこはほら・・・種馬スキルを発動させたからさ。言ってて悲しくなってきた。
雛里「ご主人様、ぺったんこ好きなのかな輝理ちゃん。」
輝理「それだったら少女たちにも希望が有りますね。」
うん、後ろの二人の会話は聞こえない、キコエナ~イ!
一刀「さ、長居は無用。許都に向かうぞ、二人とも。」
二人「「はい!!」」
そのまま俺達三人は後の許昌、許都に向けて馬首を向けた。
あとがき
帯裏四コマ
一コマ目
蜀の嫉妬神、アイシャゴン
アイシャゴン「ゴォォォォォシュジィィィィィンサマァァァァァァァァ!!!!」
二コマ目
呉の病王、ヤンファドラ
ヤンファドラ「カアアァァァァァァァァズトォォォォォォォォ!!!!」
三コマ目
魏の独占欲、カリンサマー
カリンサマー「カズトハワタシノー!!!!」
四コマ目
三国のチン帝、北郷一刀
一刀「・・・え?何か言わなきゃ駄目なの!?鳴き声!?!?・・・・・・あっーーーーー!!!・・・・・・ぐすん、こんなんしか思いつかない。」
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ついに一刀は我らの天使に出会う。
そして一刀はその事実に何を思う?
なんて大層なことを言っておいて特に何もないのですが・・・
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