No.79765

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第8話

ささっとさん

朝っぱらから強制ループの危機に瀕した一刀君。
街に出ても3人の勢いは留まる事を知らず、ついに……

2009-06-18 15:17:04 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:37981   閲覧ユーザー数:26367

恋のうっかり? を切欠にして俺は服屋から無事生還を果たした。

 

しかし華琳と風の2人は依然として予断を許さない状況のままであり、

またいつ強制ループの危機に瀕するか解ったものではない。

 

そんな戦々恐々しつつ街を歩いていると、不意に後ろから服を引っ張られた。

 

両腕をガッチリと固められている俺は首だけを動かして後ろにいる恋の方を向く。

 

 

「ご主人様……」

 

「お腹がすいたんだな、恋。よし、それじゃあ昼ごはんにするか」

 

 

昼食にはまだ少し早いが、お腹が空いてしまったのなら仕方がないな。

 

確かこの近くには華琳が珍しく文句をつけなかった点心屋があったはずだし、早速行くとしよう。

 

 

「……見つめ合うだけで意思の疎通が出来るなんて、随分と見せ付けてくれるじゃないの」

 

「……風達に対しては鈍感って言葉じゃ足りないくらいなのに、恋ちゃんは特別なんですね~」

 

「うぎっ?!」

 

 

メキメキメキッ、という嫌な音を立てて軋む両腕の骨。

 

2人の華奢な身体からは想像もつかないくらいの凄まじい怪力だ。

 

というか華琳はともかく何故に風までがこんなパワーを……ぐおっ、これはヤバイ?!

 

 

「……ご主人様?」

 

「あ、ああ、何でもないよ、恋」

 

 

しかし恋を不安がらせないよう、額に脂汗をかきながらも笑顔で誤魔化す。

 

次の瞬間、俺の両腕の骨はさらに豪快な音を立てて軋み…ボキッ!!!…あっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、さっさと行くわよ」

 

「ちゃんと歩いてくださいね、お兄さん」

 

「いや、少しは謝るとか心配するとかしてくれてもいいんじゃない?」

 

「「自業自得です(よ)!」」

 

「………………ぐすっ」

 

 

 

 

恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

 

第8話 20週目 その6

 

 

目的の点心屋に到着した俺達は空いているテーブルを見つけて腰を下ろした。

 

さすがに華琳が高評価を下した店だけあって、店内の賑わいもかなりのもの。

 

もう少し時間が経てばすぐに店内は満員になるだろう。

 

 

「それじゃあ、適当買ってくるから待っててね」

 

 

俺は華琳達にそう告げて席を立ち、特に賑わっているカウンターの方へと向かう。

 

普通の料理屋と違い、この店は現代のファーストフード店に似たセルフスタイル。

 

カウンターに並べられている様々な種類の点心をその場で購入し、店内のテーブルで食べると言うものだ。

 

もちろん店内で食べずに持ち帰りも可能である。

 

 

「あれとあれと…あと、こっちのとこれも。ついでにそれもお願いします」

 

「へい、まいど!」

 

 

とりあえずテーブルに乗せれるであろうギリギリの量の点心を購入。

 

なるべく種類をばらけさせ、色々な味を楽しめるようにする。

 

もっとも、恋の食欲を考えればあと3往復はしないといけなくなりそうだけどな。

 

そんな事を考えながら両手に大量の皿を抱えてテーブルに戻ったんだけど……

 

 

「では、早速いただきましょうか」

 

「はい、そうですね~」

 

「……いただき、ます」

 

「………………え? なに、この状況?」

 

 

いざ食べ始める直前になって、俺は自分の置かれている状況の異常さに気がつく。

 

ついさっきまで自分の席に座っていたはずの華琳と風が、いつの間にか俺の膝の上に乗っていたのだ。

 

いや、乗られた時に気づかない俺も俺なんだけどさ。

 

 

「あの、お2人共?」

 

「「何ですか(何かしら)、お兄さん(一刀)」」

 

「どうしてさも当然のように俺の膝の上に乗ってらっしゃるんですか?」

 

「「お兄さん(一刀)は気にしなくていい事ですよ~(いい事よ)」」

 

 

いやいやいや、当事者に対して気にしなくていいも何もないだろう。

 

おかげでさっきから店中の視線独り占めじゃないか。

 

こんな事で注目されても全然嬉しくないぞ!

 

しかも俺の対面に座っている恋がさっきから微妙に不機嫌というか寂しそうというか、

とにかくそんな感じの構って欲しそうな顔で俺の方をチラチラと見てくるんだ。

 

心が抉られんばかりに痛いです。

 

そのためにもまずは膝の上に2人をどうにかしないと。

 

 

「お兄さん、お兄さん」

 

「ん、どうした、風……むぐっ!?」

 

 

顔を向けると同時になんか口の中に突っ込まれた?!

 

程よい熱さのそれを噛むと同時に口の中に広がっていくこの味は……シュウマイ?

 

 

「今のままではお兄さんは自分で食べられませんからね。だから風が食べさせてあげますよ~」

 

 

確かに風の言うとおり、この体勢では料理まで手が届かない。

 

 

「もぐもぐ……でも、出来れば膝の上から降りてくれた方が…」

 

「……一刀、こっちを向きなさい」

 

「華り……むぐっ?!」

 

 

今度は華琳の方から何かを口に突っ込まれた。

 

さっきのシュウマイよりも皮が厚い気がするこれは小さめの饅頭……って、熱ッ?!

 

物凄く熱い汁が皮の内側から溢れてくるこれは小龍包?! 口の中が火傷する!!!

 

 

「お兄さん、お水ですよ~」

 

「おほ、風、たふかっ……んぅ?!」

 

 

一刻も早く水を求めて振り向いた俺を待っていたのは、風の柔らかな唇の感触だった。

 

 

「んく、んん……」

 

 

そして口移しで俺の口内へと注がれる水。

 

だけど、俺は小龍包の熱さなどに既に忘れてしまっていた。

 

それ以上に熱く、また蕩けるように甘い風とのキスに意識の全てを奪われていたから。

 

 

「………ん、はぁ~……もう熱くないですよね、お兄さん?」

 

 

水を飲ませるだけにしては明らかに長い口付けの後、

風はその幼さを感じさせる容姿からはとても想像がつかないほどの妖艶な笑みを浮かべた。

 

その笑みに俺はただただ魅せられ、そして自然に引き寄せられていく。

 

 

「そこまでよ」

 

 

が、あとホンの数cmで触れ合うというところで止められてしまった。

 

 

ゴキッ!!!

 

 

もう一方の膝の上に乗っかっている華琳に、文字通り物理的な力で。

 

 

「ぐあっ?! か、華琳? く、くび、首が……」

 

 

斬られたり殴られたりした時とはまた質の違った激痛が全身を駆け抜ける。

 

幸い180°以上捻じ曲げられたわけではないため致命傷にはならないだろうが、

そんな気休めなどどうでも良くなってしまうくらいに痛い。

 

しかし華琳はのた打ち回らんばかりの痛みを訴える俺の現状など軽く無視。

 

そして俺の顔に添えた両手をそのままに自身の顔を寄せ……

 

 

「一刀」

 

「えっ……ン?!」

 

 

……そのまま唇を重ねてきた。

 

 

「ン……んぅ……っ……ちゅ……」

 

 

一旦合わさってしまえば、そこからはまさに華琳の独壇場。

 

顔に添えていた手を俺の頭の後ろに回し、さらに密着してキスを続ける。

 

思い返せば、こんな公衆の面前で華琳とのファーストキスを迎えることになったのは初めてだ。

 

などと暢気な事を考えながら俺はなすがままに華琳を受け入れていた。

 

 

「………ん………男には、これが初めてなんだからねッ」

 

 

風とのキスよりも少し長い時間を経て唇を離した華琳は、そんな台詞と共にそっぽを向いてしまった。

 

自分から仕掛けておきながら恥ずかしかったらしい。

 

普段は尊大でSッ気全開な女王様なのに、こんな可愛らしい一面もあるのだから卑怯である。

 

だがそれがいい………って、萌えてる場合じゃないだろ、俺!

 

 

「ふ、2人ともいい加減に膝の上から…」

 

「………恋も、する」

 

「へ…んむぅ?!」

 

 

そんな俺の行動を阻止したのは、対面の席から身を乗り出してきた恋の唇だった。

 

 

 

 

風と華琳に加えて恋までもが暴挙に及び、いよいよ収拾のつかなくなった昼食会。

 

もはやいつ18歳未満お断りな展開に突入してもおかしくはなかった。

 

しかしながらそれは色々な意味で問題があるため、俺は苦渋の決断を下して最後の手段を取る。

 

すなわち三十六計逃げるに如かず、である。

 

多分城に戻った後で地獄を見るだろうが、少なくともこの場でイタしてしまうよりはマシなはず。

 

そう無理やり思い込んだ俺は一瞬の隙を突いて点心屋からの脱出に成功した。

 

 

「………それにしても、一体どうなってるんだろうな」

 

 

人目を避けるために街を出た俺は、近くにある森の中を歩きながら一人考えていた。

 

それはこの20周目の世界についての疑問だ。

 

これまでの19回にも及ぶループ世界とは明らかに異なっている世界の流れ。

 

しかしそんな大局的なもの以外にも確実に変化が起きている。

 

その最たる存在と言えるのが風、華琳、恋の3人。

 

他の皆に関しては俺の接する態度と立場による違いだと言う理由でまだ説明がつくが、

この3人だけは明らかに理由が不足している。

 

そして、そんな3人の変化を自然に受け入れている俺にもまた何らかの変化が起きているのだと思う。

 

俺はこれまで繰り返したループの記憶は4周目以外全て憶えていた。

 

だからこそ今回のループにおける風達の変化は間違いなくおかしいと言える。

 

そう頭では解っているはずなのに、何故かそれを当然だと感じている自分が………ん?

 

 

「………動物?」

 

 

ふと気付くと、俺はいつの間にか動物達に囲まれていた。

 

犬や猫といった一般的なものからそこいらではちょっと見かけないような動物までより取り見取り。

 

さながら動物園にいるような感覚である。

 

まぁ、ともかくコイツらは野生ではないな。

 

 

「お前達、俺に何か用でも…「隙あり! ちんきゅーきーーーーーーっく!」…っ!」

 

 

とりあえず一番近くにいた犬(多分ウィッシュコーギー)の頭を撫でてみようと手を伸ばしたその時、

脇の草むらから突然一人の少女が飛び蹴りを繰り出してきた。

 

刹那、俺の意識は戦闘時のそれへと切り替わる。

 

 

「遅いッ!!!」

 

「ななっ…うぐっ?!」

 

 

この世界に来た当初の俺ならともかく、

今の俺は自分や華琳達に対して明確な敵意を向けてくる者に容赦などしない。

 

それが例え女子供であろうが、年老いた人であろうが例外は無い。

 

不用意に甘さを見せることが自分や仲間の死に繋がる事を身をもって知ったからだ。

 

最小限の動作で少女の攻撃を回避すると、そのまま空中で捕縛し地面へと押し付ける。

 

抵抗出来ぬよう相手の両手をまとめて頭上に抑えつけ、

声を出す事と咄嗟の自害を防ぐためにもう一方の手を少女の口の中へと突っ込む。

 

さらに覆いかぶさるようにして身体ごとにしかかり、足の自由も封じる。

 

ホンの数秒も経たぬうちに相手の少女を完全に無力化した。

 

 

「ふっ、ふぐぅ~~~!!!」

 

「黙れ。黙らんと舌を捻り切るぞ」

 

「ふぐっ?!」

 

 

口の中に突っ込んだ指を動かし、少女の舌を強めに掴む。

 

気絶しない程度の殺気も併せれば脅しの効果は抜群だ。

 

先程までの反抗的な表情が見るも無残に崩れ去っている。

 

これで素直に情報を聞き出せそうである。

 

ちなみに周りの動物達は俺の殺気に押されて服従の姿勢を取っていた。

 

 

「今から俺の質問に答えて貰うが、貴様に許された意思表示は2つだけだ。

 肯定ならばうなずき、否定ならば左右に一度ずつふれ。

 それ以外の動作は一切許さん。

 余計な真似や偽証は即死に繋がると思え……わかったな」

 

(コクッ、コクッ!!!)

 

 

目に涙を浮かべながらうなずく少女。

 

そんな様子の少女に俺は淡々と質問を浴びせていく。

 

 

「では聞こう。貴様は他国が放った暗殺者、もしくは間者か?」

 

(ふるふるっ……)

 

「違うだと? 偽証は許さんと言ったはずだが…」

 

(ふるふるっ!…ふるふるっ!…)

 

「……本当に違うようだな。なら、貴様がここにいるのは貴様自身の意思によるものか?」

 

(コクッ…)

 

「目的は俺の暗殺か?」

 

(………ふるふるっ…)

 

「……貴様、死にたいらしいな」

 

(ッ!!! ふるふるふるっ…)

 

「死にたくなければ真面目に答えろ。暗殺目的で無い奴がどうして俺に襲い掛かってくるというんだ」

 

(………………)

 

 

その後も質問を続けたが、どうにもこの少女の意図が解らない。

 

本気で怯えている様子から嘘をついているわけではないのだろうが、ハッキリ言って支離滅裂だ。

 

これ以上はイエスとノーの2択では無理だろう。

 

それはそれとしてこの少女、何処かで見た事があるような気がするんだが……

 

 

「……ねね?」

 

 

そんな恋の声で、記憶の底に存在していた一人の少女の影が浮かび上がってくる。

 

この世界ではまだ一度も会っていなかったからすっかり忘れていた。

 

そう、この子は恋の副官の陳宮だ。

 

と言う事はやはり劉備のところのスパイ。

 

でも、確かこの子は軍師だったはず。

 

万が一の時に自分の身を守れない者をスパイとして送るだろうか。

 

いかん、余計に混乱して………ん? そう言えば何で恋の声が聞こえたんだ?

 

 

「あっ、恋…」

 

 

ふと視線を上げると、いつの間にか傍に恋が立っていた。

 

どうやら3人で俺を探していたらしく、その後には華琳と風が………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾワッ……!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人を見た瞬間、俺は全身の毛が逆立ったような感覚に陥った。

 

今朝部屋で恋と寝ていたのを見られた時の比ではない。

 

もはや言葉で言い表せる領域を飛び越え、それでもあえて言うのならばただ恐ろしいの一言。

 

本能レベルで刷り込まれた原始の恐怖を引きずり出されていた。

 

 

「………私たちを拒んでおきながら、よもや他の女に手を出すなんてね」

 

「………それも相手の意思を無視し、欲望のままに陵辱の限りを尽くそうとするなんて、ホントに最低ですね~」

 

 

まるで一言一言に呪いでも込めているのではないのかと錯覚するほどに冷たい声。

 

思わず意識が飛びそうになるのを根性で堪えるが、長くはもたない。

 

しかし同時に2人が激昂している理由も解った。

 

何を見てそう思ったのかは謎だが、2人はとんでもない誤解をしている。

 

今の俺の状態を正しく説明して早急に誤解を解いて貰わねば………今の俺の状態?

 

 

「………………」

 

 

3人から視線を外し、再び俺の下にいる陳宮を見る。

 

俺の脅しによって反抗の意思を完全に喪失し、涙を流しながら本気で怯えていた。

 

さらに覆いかぶさられた体勢で両手両足を拘束されており、

口の中に手を突っ込まれているため自由に喋る事すら叶わない。

 

もちろん覆いかぶさって彼女を拘束しているのは俺。

 

これが今華琳達に見えている、正しい現実。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺オワタ\(^o^)/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この一週間後、生死の境を彷徨いつつも何とか生還した俺は陳宮が魏に下った事を華琳から聞かされた。

 

さらに陳宮と一緒にいた動物達が恋の家族であり、

その分の生活費が俺の給料から天引きされる事も無理矢理承諾させられた。

 

そして最後、陳宮に対して俺が行った非道な行為(誤解だが認めてもらえず)に対する制裁が執行された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな危険なモノは、しっかりと管理しておかないと……ね」

 

「本当は風専用なんですけど、華琳様と恋ちゃんならまだ許容範囲内ですかね~」

 

「………ご主人様の、セキトより大きい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………詳しくは言わんが、まぁそういう事なので察してくれ。

 

ちなみに華琳と恋はハジメテだったとだけ言っておこう。

 

 

 

 

あとがき

 

 

どうも、前回予告しておきながら早速投稿が遅れてしまった『ささっと』です。

 

さすがに萌えてばかりもいられないので、本編の謎について軽く触れてみた8話。

 

結局最後はアレなオチですが、意外にも重要な部分だったりします。

 

もっとも、一刀君の疑問が解決するのはまだまだ先の話なんですが。

 

とりあえず陳宮も出てきたし華琳様や恋ともイタしたし問題無いってことで(ぇ

 

 

一応次回で20周目の世界は終了になります。

 

ストーリー的に言えば序章に続いて『第1章 完』になりますね。

 

ちなみに構想では第3章まであったりしますが、詳しくはまた次回でお話しましょう。

 

 

大きな変化を見せた20周目の世界で一刀が最後に見るものは……

 

 

コメント、および支援ありがとうございました。

 

次回もよろしくお願いいたします。

 

 

PS.年齢制限による投稿規制さえなければ……チクショウ!

 

 


 
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