No.797154

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第048話

今回の投稿は、久々にギャグを書いてみました。
読者の皆さんは、一体どんな反応をするのでしょうか?
苦手なオチモ頑張って付けてみました。
書き込みまっていますww
それではどうぞ...

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2015-08-19 15:39:17 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1061   閲覧ユーザー数:1028

新・戦極†夢想 三国√・鬼善者を支える者達 第048話「一刀の涙ともんじゃ焼き」

葵と紅音が影村邸にて一泊した後。彼女達は自身に降された命を行なうためにそれぞれ長安を出立した。

葵は西涼の最北端に位置する西平に向かい。紅音は皇帝である劉協……白湯(パイタン)に会いに重昌の使者として洛陽に来ており。

白湯(パイタン)に重昌の手紙を渡すと、彼女は皇居を後にして、洛陽に一泊して長安に帰る予定であった。

曹操はまず白湯にひっそり会い、手紙はどういう内容かどうか確認を取った。

そこに書かれているのは特に変わったことではなく。

良く言えば日常報告、悪く言えば顔色伺いのような内容であった。

向こう側がこちらの行なおうとしていることについて知らぬ筈も無く。何故今になりこのような手紙が送られてくるのか判らなかったが。彼女はもう一つ探りを入れるべく皇甫嵩にも会ってみることにもした。

 

「これは大尉殿直々のご足労痛み入ります。何も無い場所ですがどうぞお入り下さい」

曹操は護衛に夏侯淵を引きつれ夕方に皇甫嵩が宿泊している宿を訪れた。

「……殺風景な宿屋ね。影村軍の重鎮なんだからもう少し良い所に泊まれば?」

紅音が泊まっている宿屋『忠休(ちゅうきゅう)』は彼女が近衛部隊に属していた時によく利用していた。今は洛陽の中心街にあるが、昔はもっと中心街の外側にあったらしい。

彼女の駆け出し時代。店の主人も当時は紅音と同じく駆け出しで宿屋を始めたらしく、そんな二人は気が合い主人も紅音がこの宿屋の近くで酔いつぶれたりした際は安価で泊めていたりしていた。

そんな紅音が出世するに連れてやがて『近衛隊オススメ宿』として知れ渡り、売り上げが伸びて二号店三号店と店舗を増やしていった。

今では忠休の四号店は洛陽一の宿屋として名が知れて連日予約が入っており。四号店に泊まれなかった客が三号二号へと流れるのだとか。

一号店も今では内装や外装もしっかり補強され、商店”外”一の宿屋となっており宿泊寮も高いのだが、近衛部隊の兵士だけは当時の安価で宿泊出来るのだとか。

「まぁ確かに二号店や中央の四号店に比べれば豪華ではありませんけど。私としては今でもここが一番落ち着きます」

現在も紅音は洛陽に遊びに来たときはこの忠休一号店を利用し、近々店の主人である趙昂は結婚するらしく。その結婚に先立って恋人の故郷がある西の国に五号店を開くのだとか。

曹操は紅音に出されたお茶を飲みながら話し出す。

「これから起こる重昌との戦い。楽しみにしているわ」

彼女は敵である紅音に向けて、堂々と宣戦布告する。

「今回私が戦をしかけるのは、決して彼が憎いからとかではないわ。まみえるべくしてまみえた。……ただそれだけよ。どちらが上で、どちらが下か。そこには善も悪も無い。ただ互いの技量を測りあうだけ」

彼女は悪戯に微笑みながらそう言うと、紅音は頭を下げて「主に伝える」と一言言った。

「ところで皇甫嵩。……貴女、私に仕えてみる気はない?」

突然の曹操の勧誘に、紅音は燻し傾げる。

「………それはいったいどういうことでしょうか?」

「貴女の高名は常々聞いているわ。将としての素質。そしてなんと言ってもその美貌。その力私の為に使ってみる気はない?」

この世界の曹操は女性でありながら美しい女性を愛でることが大好きであり、彼女の重鎮の半数以上はそんな彼女とそういった関係を結んでいる。

勿論優れている者であれば男であり女であり自分の物にしようとはするものの、この世界のパワーバランス的に、名を挙げている多くは女性であるために、世間ではどうしても男性を女性より下に見てしがいがちであり。実力主義を最とうする彼女も、どうしてもその固定概念からは抜け出せていない。

話を戻して。紅音は丁重に曹操の案を却下する。

「私が仕えるべき主は重昌様のみで。この身も心も全てあの人の物です」

淡々とお辞儀をしながら答える紅音は、まさに武人の鑑の様な存在であった。

「………冗談よ。言ってみただけ。美しい人物と優れた素質の人物を見るとどうしても言いたくなるのよ。……気分を悪くしたならごめんなさい」

曹操は思った。この人物は本当に自身に興味が無いのだと。

何故なら自身を部屋に招きお茶を出しこうして話し出すまで、一度も笑顔を見せず、記憶を探る限り目の前の氷のような表情をする女性の笑顔を見たのは、洛陽復興作業の際に重昌と共にいる時だけであった。

曹操と夏侯淵は皇甫嵩と軽く世間話をした後に帰路に立とうとしたが、その夏侯淵から質問が出た。

「それにしても。皇甫嵩殿はただ手紙を送る使者だけの為にこの洛陽に足を運んだのか?」

夏侯淵が口を開き質問をすると、皇甫嵩は表情を変えずそのまま答える。

「そうですね。以前よりこの宿のことを主に話しておりましたので、恐らくたまの羽伸ばしにという意味も含めて私が選ばれたのではないのでしょうか……」

こうして曹操達は宿を後にすると、城の曹操の部屋にて夏侯淵と二人になる。

「………秋蘭。皇甫嵩の目的は、いったいなんだと思う?」

やはり今回の議題はそれである。

このような時期にわざわざ重昌が何故顔色伺いをするのか。何故皇帝と面識のある皇甫嵩を寄越すのか。

彼女との会話の際にそれを探れれば良かったのだが、皇甫嵩の表情からは何も伺えなかった為こうして悩む羽目になった。

「………ひょっとすると。我々のわからない何かがあるのでしょうか?」

「………それは十分にあり得るかもしれないわね……」

以前の官渡での一戦以来、曹操達は一際慎重に行動するようになっていた。

袁紹との一戦で曹操は多くの部下を犠牲にしたに留まらず、父の代から仕えてくれた夏侯惇と夏侯淵の叔父の夏侯廉も失う痛手も負ったのだ。

次は国力・技術・知略全てにおいて袁紹を凌駕する相手。慎重に慎重を重ねても足りない程でもあり。彼女は西涼への軍事的進行を一時停止させるが、その停止は長く続くことはなくなるのであった。

 

その日一刀は重昌と共に仕事終わりに街へ飲みに繰り出しており、仕事のストレスを忘れる様にひたすら飲みまくったのだが、普段重昌に潰される一刀が珍しくシラフを保っており。重昌が千鳥足な状態であった。

「ほら重昌さん。もうすぐ家に着きますよ。倒れないで下さい」

「………う~~ん。もう飲めないですよぉ~~」

「飲む必要なんてないんですよ。……ほら、しっかり」

そう言いながら重昌の片腕を掴み背負う様に引きずる一刀。バランスを整える為に重昌の体を上下に揺らしてなんとかしようとした行動が、彼に地獄を見せる。

「……………ダメだ………」

突然重昌の顔の色は赤色から血の気が引くような青色に変わる。一刀は「どうした」と尋ねると、突然空いた片手で口を押さえだし、最悪のケースが一刀の頭に浮かんだ。

「ダメですよ。重昌さん!!ダメですよ!!今貴方がやろうとしている行為は、貴方の沽券にも関わります!!そんなことをすれば明日からこの街を歩けませんよ!!間違っても”もんじゃ焼き”を作る行為だけはしないで下さいね!!」

「………も、んじゃ……焼き……?」

影村軍参謀北郷一刀颯馬は策に溺れてしまった。

直接的なことを言ってソレを想像させるより。もっと遠まわしの表現をしてソレを忘れさせようとした。

しかしその食べ物を関連させた行為は、よりソレを誘発させる行動に代わりうる行為であったことに気づき。

判ったときには後の祭り。

一刀の黒いズボンはもんじゃ焼きを作り出す黒い鉄板へと変わるのであった。

「ぎゃあああああああああああああっ!!ズボンがああああああああああっ!!」

 

やがて一刀が影村邸に着いた頃には、重昌は一刀のおぶられる形になり。それを出迎えた恋歌は鳩が豆鉄砲くらったように目を丸くして驚き。

一刀の表情は、何か悟りを開いた僧の如き穏やかな表情だったという。

「ごめんね一刀君。重昌がとんだ迷惑をかけてしまって」

「いえ。慣れていますから」

現在一刀は風呂を借りた後、恋歌より重昌の服を借りている。

実を言うと一刀がコンナ目に合うのは今回が初めてではない。

重昌と二人で飲みに行った際、数十回に一度の割合で一刀より先に重昌が潰れることがあり。そして潰れれば半分の割合にて先ほどのもんじゃ焼きが製作されるのだ。

「それにしても。今回、重昌さんはどうしたのですか?」

“今回どうした”というのは、大体重昌が酒で潰れてしまうケースが何通りかあるらしい。

一つは恋歌の父親である為景の辛み酒。今でこそ身内では酒豪で知られる重昌も飲めない時期もあり。それが為景との酒の席であり、飲めようと飲めなくても無理やり呑まされてしまうことが多くあった。そうした経験が今の酒強さを作り挙げたのだとか。

二つ目。それは恋歌と喧嘩した時。殆ど争いがなさそうな影村夫妻も、勿論喧嘩することもある。そうした時は内容が小さいことでも大きなことでもとにかく当たり障り無く目に付いた身内を誘っては酒につき合わせ。終結するのは酔いつぶれて寝てしまった重昌を、喧嘩相手本人がそっと介抱した時に喧嘩はようやく終結する。

最後の一つは、何か哀しい体験を思い出し、尚且つ聞き手が一刀であった時。影村軍の重鎮は一刀を除くと殆ど女性で占められており。彼は苦い体験を思い出して弱気になっている時は、極力それを女性人には見せたくない男の性が働く為に、そういった鬱憤は一刀に回ってくるのだ。

「そういえばこの間、葵と紅音ちゃんが来てね――」

恋歌は先日二人が影村邸に来た話を出し、その日は月が綺麗だったことを言った。

「おおかた三人で風呂に入って、話題に困った紅音ちゃん辺りがポツリと呟いた墓穴を掘った話題が発端となって。そこから重昌が月語りでもしながら哀しかったことを思い出して弱気になっているんじゃないの?」

「………恋歌さん。まるで見てきた様に言いますね」

「見なくても判るわよ。重昌と夫婦になって○○年よ。あいつの次の一頭一足から一週間後の晩御飯は何を食べたいかまで当てる自信があるわ」

何故我らに結婚年数が見えないかは判らないが。自宅にいるためか、恋歌はいつもの畏まった『出来る人妻』では無く、『隙の無い母ちゃん』に雰囲気は変わっていた。

その当事者である重昌は、自室の自分の部屋にて寝具に倒れこむようにいびきを掻いて寝ていた。

「重昌も重昌で心配事は多く抱えているだろうし。カッコつけなあいつのことだから、私達に弱みは見せたくないでしょうよ。そういう意味では唯一愚痴を溢せる一刀君には感謝しているのよ」

「………嬉しい限りです。そう言っていただければ何よりです」

一刀は感慨深く頭を下げると、突然間を指す様に近くにいた恋歌と柑奈の子供が同時に泣き出した。

現在柑奈は一刀より汚れたズボンを預かり洗濯をしている為にその場に居らず。恋歌が一言断りを入れると二人の子供をあやしに向かった。

恋歌は両腕に赤子を抱えて子守唄を歌いながら体を揺らす姿は、一刀の目から見ればまるで天女の様な錯覚を覚え。その姿を暫く見た瞬間彼の目からとめどなく涙が溢れ出た。

突然の行動に恋歌は子供が再び寝静まることを確認すると、慌てて一刀に駆け寄った。

「か、一刀君!?一体どうしたの!?」

一刀は恋歌が気をかけてくれているにも関わらず、その涙をどうしても止めることが出来なかった。

「い、いえ……自身より年齢の高い重昌さんは、恋歌さんや柑奈さんの為にこうして子を設けているにも関わらず。それに比べて俺、は……俺を慕ってくれている人達に対して子を設けてやることも出来ない。特に愛紗に関しては7年以上の付き合いになるにも関わらず。未だ子供を宿してあげられない。………そんな自分が不甲斐無くて――」

『種馬』や『ち○こ太守』と言われている一刀も常々悩んでいたのだ。

彼も年齢が25を過ぎるかぐらいに差し掛かっていた時より常々考え続けていた。

愛紗との閨が一息ついた時に、彼女は妖艶な雰囲気でお腹を擦り呟くのだ。「子は出来ますかね?」と。

彼女の性格からして、決して一刀を困らせるという意味で言った訳では無く、彼と愛し合えた喜びを表現する為にそう言い。

一刀もそんな愛紗に再び欲情を催し、いつもの様に二回戦は開かれるのだが。彼は心の何処かで焦り続けていた。

【もし、子に恵まれなければどうしよう】っと。

この外史に来て修行中の二年間の間にも、人目と空いた時間をついては愛紗達とソウイッタ行為に及んだが、結果は芳しくなく。

遂に子宝に恵まれなかったのだが、二年越しに再開した重昌は齢50を既に越えているにも関わらずしっかりと妻達に証を残した。

一刀はそんな重昌に嫉妬を覚え、密かに苦しんでおり。決して誰にも悟られずに過ごしていたのだが、ある日その事を愛紗に打ち明けてしまったところ、愛紗は笑顔で言った。

「子は要らぬと申せば嘘になります。しかし焦る必要はありません。仮に子が出来なくとも、私にはご主人様がいればそれで満足です」

苦しい時も嬉しい時も一番近くにいた愛しい人の言葉であるから、一刀はその言葉の隠された意味はよく判っている。

彼女自身もあれほど愛し合って子が出来ない事実に焦っていることに。しかし愛紗は一転の曇りも見せずにそう応えてくれた事実に一刀はまた勇気を貰った。だが目の前の恋歌を愛紗に重ねてしまうと、どうしても今の自分の不甲斐無さに怒り涙を流さずにいられないのだ。

恋歌は一刀の頭をそっと撫でると、彼に語りだす。

「……一刀君。私は重昌と出会って子宝に恵まれるのにそれほどかからなかったから、貴方達の気持ちを全て共感出来るわけではないわ。………でもね、子供が出来たからといって幸せになるとも限らないのよ」

「………」

恋歌のその言を、一刀は黙って聞いた。

「世の中には親の身勝手で捨てられる子供が数多くいる。育てきれずに子を山に捨てに行く親もいる。親に愛情を注がれない子もいる。そんな世情の中で、一刀君の様な気持ちを持つ者は数少ない。その気持ちを忘れなければ、いつか子宝に恵まれるわよ」

「……恋歌さん」

少し目を赤く腫らした顔を一刀が上げると、恋歌は彼の頭を抱きしめる。

「……一刀君。泣くのは今日で最後にしなさい。その涙は愛紗ちゃんとの喜びまで取っておくこと」

「………はい………」

静寂した部屋の中で、聞こえてくるのは赤ん坊の寝息のみで。一刀は恋歌の抱擁に甘えてその頭を素直に埋めるが、そんな中に、一つ『カチャリ』という音が聞こえる。

「あら?重昌、起きたの?」

先ほどの悲観は何処へやら。一刀の熱くなった目元も、昂ぶった感情も一気に冷めていく感じが判る。

何故なら部屋の入り口にて重昌が愛銃を片手に弾込めを行なっていた。

以前もこんなことがあったのは一刀も覚えている。

それは日ノ本時代のこと。一刀は風呂の入浴時間を間違えたときに、裸体の恋歌と遭遇。そのことが重昌の耳に入ったとき、彼は弾込めを終わらせると同時に一刀めがけて銃を連射。その時の重昌は冗談抜きで本気で一刀を殺しにかかっていた。リボルバー6発分の弾が込められている間の一秒の遅さは、あたかも人間が死にそうなときに見る走馬灯の様に流れ。銃のシリンダーが『カシャッ』と収まった瞬間からの記憶は、本人も覚えておらず。如何にことが収束し、いつ目覚めることが出来たかも遠い記憶となってしまった。

重昌が4発目の弾込めを終わらせた瞬間に、一刀は既に部屋の窓から飛び出していたが、やはり一刀の記憶は無くなっていた。

 

 

一方その頃、風呂場にて一刀のズボンを洗っている柑奈はというと……

「もんじゃ焼きハァハァもんじゃ焼きハァハァ、重昌様のもんじゃ焼きハァハァ」

一刀のズボンから綺麗に取り除かれたもんじゃ焼きを、その後美味しく頂きましたとさ………え?……………え?!―――

 


 
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