No.79232

真・恋姫†無双~江東の花嫁達~(参)

minazukiさん

新婚旅行編第三話。

今回もオリジナルキャラが一人増えました!

そして朱里達の趣味がとうとうばれました!

2009-06-15 20:27:15 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:22527   閲覧ユーザー数:15882

(参)

 

 馬を使って蜀の山道を行くことにした雪蓮達。

 

 道も整備され行く先々の街や村の風景を見ては平和なのだと改めて感じられた。

 

「ところで、雪蓮さん」

 

「どうかしたの?」

 

「俺としては嬉しいんだけど、どうにかならない……よね」

 

 一刀は言っても無駄だと分かっているだけに、ほとんど諦めたように言う。

 

 なぜならば一頭の馬に二人が乗っていたからだった。

 

「一度こうしてみたかったの♪」

 

 手綱を一刀に持たせてその間に座っている雪蓮。

 

 そしてその横を同じように手綱を持った太史慈と腕の中で本を手に座っている魯粛。

 

「それにしても本当に益州って山ばかりだよな」

 

 長いこと呉にいると長江が見慣れると同じで蜀にいればこの山々が当たり前に見えてくるものだろうかと思う一刀。

 

「まぁオイラは山よりも長江の方が好きだな……おっと」

 

 馬上が揺れて魯粛は太史慈にしがみ付く。

 

 それを見て笑みを浮かべる雪蓮はわざと足で馬を軽く蹴った。

 

「キャッ♪」

 

 あからさまにわざと悲鳴を上げて一刀にしがみ付く。

 

「し、雪蓮!?」

 

 片手で雪連の背中を抱きしめる。

 

「(雪蓮ちゃん……絶対にわざとだよな……)」

 

「(そう思うでしゅ)」

 

 二人の予想通り一刀に見えないように笑みを浮かべていた。

 

「はぁ~……本当に雪蓮ちゃん、旦那のことが好きなんだね」

 

 一緒に行動を共にし始めてそう思うことばかりの太史慈と魯粛。

 

「当然でしょう♪」

 

 見ているほうが恥ずかしくなるぐらいに雪蓮は嬉しそうに答える。

 

「でも羨ましいかも」

 

「どうしてでしゅか?」

 

 太史慈の意外な言葉に少し驚く魯粛は彼女を見上げる。

 

「あの雪蓮ちゃんがあそこまで心を許す相手だよ。昔の雪蓮ちゃんはそういうのが無かったからね」

 

 今の雪蓮は心から楽しんでいる笑みを浮かべている。

 

 そして同じ武将だからこそ些細な違いにも気づくことができた。

 

「オイラ達ではできなかったことを旦那がしてくれた。嬉しい反面、羨ましいって思うわけ」

 

「子義ちゃん……」

 魯粛もそれについては同じ意見だった。

 

 新参者として孫呉に参加した時、誰とも隔たり無く接してきた雪蓮のことを尊敬していた。

 

 彼女のために自分の力を貸す喜びを感じながらも、本当の笑顔を見せてくれない雪蓮に不安を感じていた。

 

 だが今の雪蓮はそんな影をどこにも見せていない。

 

 当たり前のように笑い、当たり前のように拗ねる。

 

 たったそれだけなのに自分達の知らない雪蓮がそこにいた。

 

「これも天の御遣いの力なのかな」

 

 そう言ってしまえば簡単に片がつく。

 

 つくからこそ自分達ではどうすることも出来なかったという気持ちになってしまう。

 

「子義ちゃん」

 

「どうしたの、子敬さん?」

 

 いつになく真面目な表情を浮かべる魯粛に太史慈は不思議に思った。

 

「かずさまに真名を授けてもいいかもしれないでしゅ」

 

「……」

 

 自分達にはできなかったことを成した一刀ならその資格があるのではないかとここ数日、魯粛は考えていた。

 

 酒によって数々の暴言をしたと思い、謝りにいくと何でもなかったように自分のことを気にしてくれていたことが、小さな魯粛は嬉しかった。

 

「子敬さんがそういうぐらいなら問題ないだろうね」

 

「子義ちゃん……」

 

「オイラも旦那のことは嫌いじゃあないし、別にいいかなあっては思ってたんだ。ただ子敬さんのことを考えたらね……」

 

 真名を授ける事に僅かな抵抗を感じさせる理由が二人にはあった。

 

 特に魯粛は雪蓮ばかりか冥琳ですら真名を授けていなかった。

 

 冥琳もその辺を察してか、自分から真名を魯粛に授けることなく、周瑜と魯粛で今までを過ごしてきた。

 

「まぁもう少し様子を見てみようか」

 

「……そうでしゅね」

 

 旅の間にもっと一刀のことを知っていけば自分達が納得できると思った。

 

「旦那♪」

 

「うん?」

 

「雪蓮ちゃんをしっかり捕まえておかないとだめだぞ」

 

 満面の笑みを見せる太史慈。

 

「当たり前だろう」

 

 一刀も太史慈に負けない笑みを見せる。

 

「嬉しいわ♪」

 

 そして喜ぶ雪蓮だった。

「ようこそです~♪」

 

 蜀の都、成都で四人を出迎えたのは蜀王の劉備こと桃香だった。

 

「久しぶりだね、桃香」

 

「はい、お久しぶりです、一刀さん」

 

 結婚式が終わるとすぐに益州に戻った桃香は嬉しそうに二人を見る。

 

「魯粛ちゃ~ん!」

 

 桃香の後ろから朱里がやってきた。

 

「こ、孔明先生!」

 

 馬から飛び降りてテテテッという感じで朱里の元に行く。

 

「諸葛亮ちゃんと知り合いなのかな?」

 

 雪蓮を先に降ろして、馬から降りた一刀は魯粛と朱里を見てそうつぶやいた。

 

「先生、この前の本はまた素晴らしかったでしゅ」

 

「そうですか。魯粛ちゃんに喜んでもらえて嬉しいです」

 

 ちみっこ同士が手と手を取り合って喜び合っている。

 

 なんとも微笑ましい光景だった。

 

「これがお借りしていたものでしゅ」

 

 後生大事に持っていた本を朱里に差し出す。

 

 そしてその表紙には一文字、

 

「八百一本」

 

 と書かれているのを見た一刀。

 

「ろ、魯粛さん、それって……」

 

 念のため確認をする一刀に笑顔だった魯粛が何かに気づ身体を振るわせた。

 

「あ、あう!」

 

 すると手渡す寸前の本が地面に落ち、その拍子で中が開いた。

 

「どれどれ」

 

 誰よりも早く雪蓮がその本を拾い上げて中身を見る。

 

「「はわわ(あう)……」」

 

 慌てる二人を他所に雪蓮は真剣に見ている。

 

「雪蓮さん?」

 

 桃香も気になったのか雪蓮の傍から本の中身を見た。

 

 次第に顔を紅くしていく桃香。

 

「し、朱里ちゃん……これって?」

 

「はわわ……」

 

 天才軍師の面影などもはやどこにもなくただ顔を真っ赤にして動揺しているちみっこがいるだけだった。

 

「なるほどね~」

 

 そう納得して雪連は自分の荷物の中からあの本を取り出した。

「孔明ちゃん、一つ聞きたいんだけどいいかしら?」

 

「は、はわわ……」

 

 まるで処刑台に立つ囚人のように震える朱里と両手で顔を隠している魯粛。

 

「この本の最後に伏竜、鳳雛作って書いてあるけれど?」

 

 雪蓮の満面の笑み。

 

 それは朱里が晩年に書いた自伝にこう書かれていた。

 

『北郷雪蓮様のあの時の笑顔ほど泣きたいと思ったことはありませんでした』

 

 それほどまでに朱里は印象に残った笑顔にもはや言い逃れができなかった。

 

「朱里ちゃん……」

 

 顔を紅くしながらどうしたらいいのか分からないまま、とりあえず朱里に同情の視線を向ける。

 

「魯粛ちゃんがまさかねぇ~」

 

 今度はまだ両手で顔を隠している魯粛を見る雪蓮。

 

「あう……」

 

「雪蓮ちゃん、その辺にしてあげなよ」

 

 さすがにこれ以上、痴態を晒させるのは不憫に思った太史慈は助け舟を出す。

 

「そうね。可愛い二人をこれ以上、意地悪したら可哀想ね♪」

 

 本を二冊、さっきから「はわわ」と繰り返している朱里に渡した。

 

「し、失礼します!ろ、魯粛ちゃん、行きましょう!」

 

 ようやく正気に戻った朱里は魯粛の手を掴んで慌てて中に入っていく朱里だが、少し先で躓いて二人揃って地面に扱けた。

 

「はわわ……ろ、魯粛ちゃん大丈夫ですか!」

 

「あ、あう……大丈夫でしゅ、孔明せいせん!」

 

 服についた汚れを気にすることなく二人は走っていってしまった。

 

「あ、子敬さん~。まだ挨拶終わってないよ!」

 

 太史慈が叫んだがすでに遅かった。

 

「いったい何が……?」

 

 一人状況についていけなかった一刀。

 

「まぁあれだ。女には秘密の一つや二つあるってことで、これ以上の詮索は無用だよ、旦那」

 

「そうしておいた方がよさそうだな」

 

 そう言いつつも表紙に書かれていた文字が気になって仕方なかった。

 

「それじゃあ劉備さん、オイラはあの二人のところに行ってきます。後ほど正式に挨拶させてもらいますね」

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 太史慈はそう言って二人が去っていった方に歩いていった。

 

「ところでお二人はこれからどうするのですか?」

 

「魯粛ちゃん達と一緒に南蛮軍の視察に行こうかと思っているわ」

 

「美以ちゃん達ですか~。私も行こうかな~♪」

「あら、一緒にくる?」

 

 元王と現王はそう計画をしようとするところを咳払いされた。

 

「桃香様、最近、遊びすぎですよ?」

 

 そう言ってきたのは黒髪の少女、関羽だった。

 

「そんなことないもん」

 

「いいえ。そんなことあります。お二人の婚儀にも参列しましたし、帰ってからもその話ばかりでほとんど政務をしておりません」

 

「でもでも、朱里ちゃんや雛里ちゃん達がしてくれたから大丈夫だよ」

 

「あの二人の分の仕事は大丈夫ですが、王としての桃香様の仕事は山積みです」

 

 いくら平和になったからといっても王がいつまでも遊んでいるわけにはいかないことを愛紗は言っている。

 

 それに対して桃香は何かと言い訳を考えていくがことごとく反論されて最後には半泣きになっていた。

 

「関羽さん、少しぐらいならいいんじゃないかな?」

 

 見かねた一刀がそういうと桃香は満面の笑みを浮かべ何度も頷く。

 

「北郷殿、そうやって甘やかすと桃香様のためにもなりません」

 

「でも、桃香だって王として一生懸命頑張っているんだろう?」

 

 三国の一角を支えるという重責を考えれば少しぐらいの息抜きは必要だと一刀は愛紗に言う。

 

「しかし……」

 

 愛紗も分かっていた。

 

 そして今のところ急を要する案件もないので結局、自分は甘いなと思いながら桃香を許した。

 

「ただし、戻られたら当分の間、お休みはないと思ってください」

 

「うん。一生懸命頑張るよ♪」

 

 桃香の持ち前の明るさに愛紗も苦笑いを浮かべる。

 

「大丈夫だよ。桃香はいざとなればやる子だから安心しなさい」

 

「……そうですね」

 

 雪蓮の言葉で愛紗は肩の力を抜いた。

 

「そういえば諸葛瑾殿も今、おいでですよ。何でも朱里と雛里に教えたいことがあるとか申されて先日からいます」

 

「そういえば長期休暇の申請が出ていたな」

 

 自分達よりも先に休暇をとり蜀で何をしているのだろうかと一刀は思った。

 

「確か諸葛瑾って孔明ちゃんのお姉さんよね?」

 

「うん。俺も初めて会ったときは驚いたよ。姉妹でもこんなに違うんだなって」

 

 一刀が病から回復して政務に復帰した頃に辺境から戻ってきた諸葛瑾と初めて会った。

 

 妹の朱里は子供のように可愛いがその姉は正反対だった。

 

 一刀よりも僅かに背が高く、灰色の長い髪を束ねながら二本の髪を方の前に流し、半分寝ているのではないかと思われるほど細い目に黒斑眼鏡をかける諸葛瑾。

 

 普段から落ち着いた口調で話をしてくるため、一刀も初対面から好印象を持っていた。

 

(何よりも驚いたのが諸葛亮ちゃんとは比べ物にならないほど胸が大きいんだよな)

 

 おそらく雪蓮より大きいだろうと正直な感想だった。

 

「それじゃあ、私達も魯粛ちゃん達のところにいって何をしているのか見に行きましょう」

 

「あ、それはいいですね。私も何度もこないで欲しいって言われていたので気になっているんです」

 

 自分達の王に来るなという軍師もいるんだなとある意味感心する一刀だった

 四人は朱里と雛里の部屋の前にやってきた。

 

「だからそこは違うでしょう?」

 

 一番初めに聞こえてきたのは諸葛瑾の声だった。

 

 それもいつもの落ち着いた口調ではなくどこか怒っているように聞こえてきた。

 

「はわわ~……。す、すみません」

 

「あわわ……。もう一度やりなおします」

 

 朱里と雛里の謝る声。

 

「何しているんだろう?」

 

 何か兵法でも教えているのだろうかと思った四人。

 

「子瑜ちゃん、先生達に怒ったらだめでしゅ」

 

 魯粛の諌めることまで聞こえてきた。

 

「子敬さん。これは姉として妹の不始末を注意しているだけですよ」

 

「で、でも、先生達も凄く頑張っているでしゅ」

 

「そうだよ、瑾ちゃん。こういうのは楽しくするものんだよ」

 

 太史慈も魯粛に賛同するように言う。

 

「(ねぇあの子達、何していると思う?)」

 

「(何でしょう?)」

 

「(兵法を教えている……ようにも聞こえますが)」

 

「(でも、なんか変じゃないか?)」

 

 そう肩を寄せ合っていると、突然部屋の入り口が開き、そこから諸葛瑾が出てきた。

 

「何をなさっているのですか、アナタ達は?」

 

 呆れるように息を付く諸葛瑾に苦笑いを浮かべる四人。

 

「久しぶりだね、諸葛瑾さん」

 

 一刀がとりあえず挨拶をすると諸葛瑾は軽く驚いた。

 

「なぜ一刀くんがここにいるのですか?それに雪蓮様まで」

 

「え~っと……」

 

「一刀と新婚旅行中よ♪」

 

 言い訳を考える一刀とは違って雪蓮はそう言った。

 

「しんこんりょこう?ああ、そういえばそう言っていましたね」

 

 一人納得する諸葛瑾。

 

「ところで一刀くん」

 

「な、なに?」

 

「私のことは『悠里』と真名で呼んでくださいとお願いしていたはずですよ?」

 

「ご、ごめん、悠里」

 

 一刀の返答に満足したのか悠里は穏やかな笑みを浮かべる。

「そういえば、瑾。貴女達さっきから何をしているの?」

 

「ちょっとした戯れですよ」

 

「「「「戯れ?」」」」

 

「ええ。これです」

 

 そう言って手に持っていた本を雪蓮に渡した。

 

 と、同時に、

 

「はわわ……お姉ちゃんダメです」

 

「あわわ……」

 

「子瑜ちゃん、ひどいでしゅ……」

 

「あ~あ。オイラし~らない」

 

 四人の反応に何となく嫌な予感がした一刀。

 

 本の中身を見ると、そこに書かれていたのは男なら物好き以外ならドン引きしそうな内容だった。

 

「最近、朱里達が送ってくる八百一本の質が悪いのでその改善のために私が来たのです」

 

 何事も無いように平然と話す悠里。

 

「あ、あのさ悠里」

 

「何ですか?」

 

「悠里もこういうのには興味があるの?」

 

 一刀のイメージしている悠里とはまったくかけ離れたものなだけにそれを確認しなければならなかった。

 

「何をいっているのですか。八百一本を朱里達に教えたのは私ですよ?」

 

 とんでもないことを平然と言い放つ悠里に一刀だけではなく雪蓮達も驚いた。

 

「今度、私の屋敷においでください。たくさんありますのでお見せしますよ」

 

「え、遠慮しとくよ」

 

 あの悠里がそんな趣味を持っていたとは思いもしなかっただけに、一刀はショックが大きかった。

 

「ちなみに陸遜さんがあのようになったのも瑾ちゃんのせいだよ」

 

 太史慈はやれやれといった感じで言った。

 

「失礼ですね。あれは穏さんの生まれつきです。私のせいではないと思いますよ」

 

 冷静に反論する悠里。

 

「でもひどくなったのって瑾ちゃんが貸した本を読んでからだよ?」

 

「おかしいですね。それほど変な本ではないと思いますが」

 

 十分変ですと一刀達は思った。

 

「まぁそういうことですのでもうしばらくここにいますので、何かありましたら来てくださいね」

 

 そう言って礼儀正しく頭を下げて部屋の中に戻っていった。

 

 朱里達以上につわものがまさか自分達の国にいたとは思わなかった一刀だった。

(座談)

 

水無月:というわけでオリジナルキャラ第三弾~♪

 

悠里 :初めまして。

 

水無月:私は拝見するSSの中でたまに諸葛瑾さんが出ているのがありまして、このお話にも出演していただきました。

 

悠里 :オリジナルキャラは大変でしょう?

 

水無月:物凄く大変です。なるべくイメージに合うようにしていますが、なかなか難しいです(泣)

 

悠里 :何事も経験です。頑張ってください。

 

水無月:ありがたや(><)

 

雪蓮 :ところで次回は動物園の話って聞いたけど?

 

水無月:雪蓮さん、それ違うって。

 

桃香 :そうですよ、雪蓮さん。次回は南蛮レンジャーですよ。

 

水無月:桃香さん・・・・・・それも違うような・・・・・・。

 

悠里 :とりあえず、南蛮の方が出てきます。

 

水無月:(いい人だ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朱里 :はわわ~。お姉ちゃんの本は凄いです!(八百一本を読みながら)

 

雛里 :コクコク。(以下同文)

 

魯粛 :さすが子瑜ちゃんでしゅ。(以下同文)

 

太史慈:三人とも鼻血出てるよ?


 
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