6月、『あじさい祭り』真っ最中の天空稲荷神社。
「ふぅ、それにしても祭りの時期となると参拝客が多くなるわね」
あふれかえる人の波にもうろたえず、巫女として一生懸命働く愛。
彼女が娘の名を呼んだそのときである。
「ねえ唯。唯…?…はっ!これは唯じゃない!!いつの間に!?」
稲荷山公園・屋台街。
「いやー、イリーナ博士に作ってもらった『等身大リアル唯ちゃんドール』がまさか役に立つとはw」
「ホントよねえ。お祭りといえば食べ歩きが定番なのにお仕事なんて、ねえ」
相変わらず懲りない様子の唯と和美。
「でも詩穂ちゃんと歌穂ちゃんはどうしたのよ?」
「それがねえ…なんか新天空駅前からの参拝客の案内係なんですって」
「じゃあ優奈ちゃんとかは…」
「それがね、彼女もパトロールだから来れないって。新奈ちゃんも同じよ。ユーニスちゃんとキャリーちゃんじゃ一発でバレちゃうし…」
「なるほど、それで等身大ドールを。考えたわね唯ちゃんw」
「ふっふっふ、屋台マスターは常に作戦を考えておくものよ。さて、どこから回りましょうかね」
「ねえ、じゃあまずはあそこの団子屋さんで食べていかない?」
「賛成ーw」
で、団子屋台の前。
「すみませーん、あたしと和美ちゃんでみたらし団子10個ずつください!」
「はい、みたらし団子10個ずつで…あーーーーっ!?」
突然、唯と和美を指差して大声を上げる店員。
無理もない。その屋台はきつね屋の屋台で、店員は唯の姪にあたる玲だったのだから。
「ど、どうして玲お姉ちゃんがここにいるのよ!?」
「こっちの台詞よ唯ちゃん!あなたこそなんでここにいるのよっ!」
「え、いや、その…ねぇ和美ちゃん、どうしよう…」
「いや、あたしに振られたって…」
と、どもる唯と和美をよそに、玲はスマートフォンを取り出す。
玲が電話を掛けたのは愛。唯にとっては母親だが、玲にとっては姉である。
「もしもしお姉ちゃん?あ、うん、唯ちゃんったらまた抜け出してたみたい。うん。すぐ連れ戻しに来て…え?もう適役が行ってる?」
と、電話の話が終わろうとしていたとき、唯の背後に白い影。
「げっ…お、お天さまっ!?」
そう、現れたのは天空稲荷の祭神・天洸だったのだ!
「唯…仕事サボって何してんのかと思ったら、案の定こんなところで油売ってるたぁね」
「いや、あの、これはその…」
慌てふためいている唯の手を引く和美。
「唯ちゃん、逃げるわよ」
「え、え…」
まさにその場から逃げ出そうとした、その時だった!
「雪歩キィィィックッ!!」
「ごげぇ!?」
今度は和美の顔面に雪歩の跳び蹴りが炸裂!!
「い、痛い…いきなり何するのよ雪歩!」
「何するもあるか!今日はばあちゃんの店の手伝いだって言ったろ!!ほら帰るぞ!」
「あっ、ちょっと待って、いやぁぁ!唯ちゃぁぁぁん!!」
雪歩に引きずられて、和美退場。
「そんな、和美ちゃぐえっ」
和美を追いかけようとする唯の尻尾を掴む天洸。
「ほら、もう帰るよ!ウチの神社の巫女なんだからキリキリ働く!」
「そ、そんなぁぁぁぁぁぁ…」
天洸は唯を抱えたまま、神社へと飛び去っていった。
「あ、うん。なんとか連れて行ってくれたみたいよ。あとできっちり叱ってあげて。それじゃ」
と、電話を切った玲の目の前には、見慣れた青い影が。防犯パトロール中のドラゴ郎だ。
彼はちょうど休憩時間らしく、ここに団子を買いに来たというわけである。
「あ、いらっしゃいませドラゴ郎さん」
「えーと、みたらし団子15個」
「はい、みたらし団子15個ですね」
「…ところで何かあったの?唯ちゃんと和美ちゃん、なんか凄い勢いで連れ戻されてたみたいだけど」
「あー…あの子たちったらお祭りのときはいつもこうなんです…」
「…へぇ…」
…ちなみにこのあと唯は母親・愛に、和美は祖母・寧子にこってりしぼられたそうな。お後がよろしいようで。
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どんな工作をしてもダメなものはダメですw
■出演
愛:http://www.tinami.com/view/744298
唯:http://www.tinami.com/view/742179
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