一刀「朱里先生に質問です。論理的に考えて過去へ行くことって可能なんですか?」
朱里「はわわっ。突然どうしたんですか、ご主人様?」
一刀「いや、今日の俺は何となくそういう役回りなんだ。だから気にしないでくれ」
朱里「はぁ……役回りなんですか……?」
一刀「そうそう。だから話を続けて」
朱里「はわっ。……コホン。では……」
一刀「おっと、その前にお願いなんだけど、ここからは“過去に戻ること”を“タイム・トラベル”って言ってね」
朱里「ご主人様がいた、天界の言葉ですね」
一刀「そっ、じゃないとみんな混乱すると思うから」
朱里「みんな……? ここにはご主人様と私の二人しかいませんけど……?」
一刀「いいからいいから。そういう“お約束”なんだ」
朱里「はぁ……わかりました。では改めて。……コホン、タイム・トラベルの大前提ですが、旅行者(タイム・トラベルをした本人)は現在の記憶を有したままで過去に行くのでなくてはいけません」
一刀「なるほどなるほど」
朱里「例えば、今夜0時に“私たち全員”の“記憶も含めた”全てが10年前に戻ったことにしましょう。ですが、記憶も過去に戻った、つまり10年間の記憶も失われているのですから、誰も10年前に戻ったのだとはわからなくなっちゃいます。これでは、また10年前の出来事に同じ状態で対面しているのと同じことです」
一刀「ところで朱里。10年前は何さ……」
朱里「はわわっ!? それ以上はダメです、ご主人様! 当・然、私も雛里ちゃんも、今は18歳以上ですよ。それに、私はもう大人の女の子ですもん!」
一刀「……いや、大人の“女の子”って……」
朱里「はわっ! 今のは失言でした……」
一刀「いや、今のは俺の失言だ。そうだもんな、朱里はもう18歳以上の“大人の女の子”だもんな。じゃないと俺が捕まるし……」
朱里「……わかっていただけたのならいいんです……。何か引っかかりますけど……」
一刀「それで、どこまでいったんだっけ?」
朱里「そうでした。えっとですね、旅行者自身は現在(出発時点まで)の記憶を有していることが、タイム・トラベルの条件になってきます。つまり、ある過去の時点“甲”にいる人たちはそのままなんですけど、旅行者だけが未来のことを知っているという状態です」
一刀「だけど朱里。それっておかしいんじゃないのか? だって、ある過去の時点“甲”には、本当は旅行者の存在はなかった。なのに、タイム・トラベルをしたことで、新たに旅行者という存在が加わった……」
朱里「そうなんです。“甲”には旅行者の存在がなかったんです。にもかかわらず、今はある。ということは、旅行者が行ったのは過去の時点“甲”ではなく、旅行者を加えた新しい別の時空ということになってしまうんです」
一刀「だからタイム・トラベルは不可能、か。それならわかったぞ!」
朱里「はわっ。何がですか、ご主人様?」
一刀「天才軍師・諸葛孔明が、はわわっ、って言ってたり、“大人の女の子”だったりする理由がさ」
朱里「……ご主人様、そこにこだわらないでください……」
一刀「俺が今会ってるのは、(新しい時空の)孔明であって、(過去の)孔明じゃないわけだもんな。だったら“大人の女の子”だったとしても、何の不思議もない!」
朱里「だからこだわらないでくださいってばぁ~!」【了】
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一話完結です。
学参にありがちな形式で書いてみました。
内容に関しては、あまり深くつっこまないでいただけたら助かります……。
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