No.78018

真・恋姫無双after~蜀の日常・その5(後編)~

後編です。
まずい・・・そろそろ手詰まりになった感じです・・・

2009-06-08 21:24:19 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:10349   閲覧ユーザー数:8068

「む、無念・・・です」

姉と熾烈な鬼ごっこを行った弟の関興は、親友たる皇子と異母姉を逃がすために姉の前に立ち塞がって戦ったものの捕らえられ、簀巻きにされたまま白帝城の一室に放り込まれていた。

「姉上」

「なんだ、興」

「なぜ僕は縛られたままお尻を出しているのでしょうか?」

その言葉通り、現在の関興は両手を縛られたままお尻をむき出しにしているという奇妙な格好にさせられていた。

「父上の住んでいた天の国に風邪を治す方法にな、『お尻の穴にねぎを突っ込む』という治療方法があるらしい」

「あ、姉上、まさか・・・」

ここで関興は姉の右手に握られているものに気がついた。それは―――ねぎ。

「実験をしてみようか。耐えて見せよ、関興」

「うう~、伯母さまの意地悪~!」

馬承は大きなたんこぶを頭にこさえ、猫のように襟首を掴まれながら連行されていた。その襟首をつかむのは―――

「なーにが意地悪だよ。ご主人様じゃあるまいし、仕事抜け出して『こんさぁと』に行くなんて生意気なんだよ」

蜀が誇る『五虎大将軍』の一人にして馬承の伯母である翠こと馬超だった。

「てゆーか、平姉さまってば、五虎大将軍を動かすなんてどういうつもりなの!?」

「五虎大将軍以前にお前の伯母として仕事抜け出すなんて許すわけにはいかねぇんだよ」

「お母様は許してくれたのにー」

「やかましい!」

ゴン、ともう一つ馬承の頭に落ちる拳骨。馬承は思わず泣き声を上げる

「いった~い・・・」

異母兄姉であり悪友である2人が捕らわれたことでついに最後の1人となってしまった劉永であるが、彼は巧みに追手から逃げ回っていた。

「劉永様~!どちらにいらっしゃるのですか~!」

「逃げても無駄だよ、劉永ちゃん!出てらっしゃい!」

屋根の上に身を伏せている劉永の眼下にはお守役の董白と、異母兄弟姉妹の教育係である璃々がきょろきょろと探し回っていた。

(しつこいなぁ・・・)

こっそりと身を伏せたまま後ずさりし、劉永はその場を去った。

「そう簡単に捕まってたまるかってんだ!」

眼下の2人に向かって舌を出しながら、劉永は屋根の上を駆けて行った。

「まったく・・・私としたことが、寝坊してしまうとは!」

白帝の町を、銀髪をポニーテールにした少女が疾走する。少女は魏軍楽進隊の兵であることを示す『楽』の字が書かれた旗印(鉢巻のようなもの)を頭に巻いているが、手に甲を装備しているので武道家である事が窺える。

少女の名は楽仁(がくじん)。字は子文(しぶん)。魏の英傑の一人・楽進こと凪の姪である。彼女は幼いころから伯母に師事し、氣の使い手としては三国間でも一流の域に達していた。

(ああ、早くしないと伯母上に怒られる~!)

焦る彼女は全力疾走で曲がり角を曲がろうとするが、同じく全力で同じ曲がり角を曲がろうとする人物がいることに気がつかなかった。

そこで2人が激突するのは必然なことで。

ドシーンッ!

「うわっ」

「きゃっ」

楽仁は勢い余って相手を押し倒してしまう。自分の体が相手の体に覆いかぶさる感触、そして―――自分の唇が、何か柔らかいものに一瞬触れてしまう感触。それに楽仁は閉じていた目を慌てて開くと、そこには―――

栗毛の髪をした楽仁より1つ2つくらい少し年下の男の子が「いてて・・・」と打った頭をさすっていた。彼はかなりの美少年で、首から下げている首飾りからかなり高貴な家の子であることが窺えた。

楽仁はその少年の手を引っ張って助け起こす。唇が重なってしまったことを意識してしまっているためだろうか、少年の顔をまともに見ることができない。

「キミ、無事か?すまない、急いでいたんだ」

「は、はい。大丈夫です。ごめんなさい」

少年もまた白磁のように白い頬をほんのり赤く染めて目線を逸らす。

「あ、あの・・」

「す、すまない!私は少し急いでいるので!失礼するよ!」

楽仁は彼の顔を見ていられず、脱兎のごとく駆けだした。

「あ・・・」

逃げるように駆けだした銀髪の女性の後ろ姿を茫然と見送る劉永。

(綺麗な人だったなぁ・・)

はぁ、と人差し指で唇をなぞる。

(また、会えるかな・・・?)

物思いに浸っていた劉永だが、むんず、と襟首を掴まれて背筋を凍らせる。

「劉永ちゃん、捕まえた♪」

「もう逃がさないよ~♡」

「げっ、璃々姉さん、白姉さん!?」

驚愕する劉永の隙を突いて、董白が手早く彼を縛り上げる。

「あっ、なにすんの!?」

まるで罪人のように後ろ手で縛られて連行されそうになり、思わず抗議の声をあげるが董白はすねた様子で、

「劉永様はこうでもしてないと逃げ出しちゃいますから、この扱いで十分です!あ、ちなみに桃香様とお父様には許可を頂いてますから」

連行されながら、劉永はこれから我が身に訪れるであろう苦難を想像し、深く、深く溜息をついた。

ちなみに捕らわれた3人から没収したVIPチケットは―――

「ほぁぁぁぁぁ!・・・う~ん、楽しいなぁ♪」

「・・・うう、恥ずかしいです」

「関平、折角招待してもらったんだから楽しまないと・・・ほぁぁぁぁぁぁ!」

それぞれ璃々・関平・一刀に贈呈され、彼らは十分に楽しみましたとさ。

オリキャラ紹介

楽仁

劉永にも恋をさせてみたいなーと思って出してみたキャラです。個人的に凪が好きなので、容姿はほぼ凪そっくりです。名と字は曹操の一族・曹仁、字を子孝からとりました。

 

 


 
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