No.777071

リリカルなのはZ 第十二話 『傷だらけの獅子』の呪い(笑)

たかbさん

第十二話 『傷だらけの獅子』の呪い(笑)

2015-05-13 18:53:11 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2054   閲覧ユーザー数:1914

 ウナギ型の使徒を倒してから三日が過ぎた。

 使徒が通過した道沿いに爆撃の獣道となったその進路上に自衛隊隊員が重機や自らの手足を使い戦場跡地に散らばった瓦礫の撤去を行っていると大きな影が彼等の上にかかった。

 

 「・・・お前、本当に器用だな」

 

 「ランボルト・レオンはガンレオン(修理用)の兄弟機ですから」

 

 影の正体は今にも崩れ落ちそうなビルから崩れそうな部分をチマチマと回収するガンレオンによく似た全体的に丸い作業用ロボ。

 グランツ研究所から出される企業用ロボ第一号であるロボットを操りながら作業をしている高志だった。

 コクボウガーに関する技術は前もって自衛隊に格安で提供している。ランボルトもこれから売り出されるだろう世界中に売り出すロボット技術の先兵になるのだ。

 自衛隊の彼等が復旧作業に入る前からいるその巨大ロボットに別段驚くことなく作業を再開する。

 未知の生物から発生したケルビム。原理解読不能な光線。死後に起こす大爆発。

 それによって生じた放射能の恐れもあるかもしれない為、自衛隊はおろか調査団を出すかどうかも悩んでいる所に海の向こう側から黒い騎士兜を片手に文字通り飛んできたガンレオンがやってきてただちに瓦礫の撤去、破壊された路面の地ならしを行い始めた。

 沖縄での一件もあったおかげか、これといった文句は言われず、またガンレオンから送られたデータにケチをつけることなく使徒襲撃から二日後には自衛隊と共に復旧作業に写っているガンレオン。そして、その翌日に交代するように運ばれてきたランボルト・レオンだった。

 ガンレオン、ランボルトには小さな居住機能もある為、殆ど一日中復旧作業を行い続けるロボットに文句を言うのはごく少数だ。

 その文句を言うのがNERVとあちこちの国家。

 使徒がエヴァやコクボウガー。魔導師達の手によって倒された時を同じくして、マグナモードを駆使して襲い掛かって来た二体のメディウスを撃破したガンレオン。

 その光景はガンレオンの背中に生やした炎の翼が描いた赤い軌道。その進路上にいたメディウスを粉砕。

 マグナモードの速さ、力。そして、この世界に降り立つ前に経験した技術が炸裂。

 大した抵抗もなく粉砕されたメディウスは機密保持の為か、大破の状態からも自爆を敢行。

 鹵獲しようと考えていた高志とアリシアが手に出来たのはメディウスの残骸。頭部の部分だけだった。

海上でガンレオンが手にした鎧兜。メディウス・ロクスの頭部を縦に割りその片方を自衛隊の皆さんに、もう片方はグランツ研究所に持っていくようにお願いしたガンレオン。

 NERVの科学者からもそのサンプルを提供してくれという言葉もあったが、高志はゲンドウに良いイメージを持たなかっただけでなく、メディウスの残骸を寄こせととても友好的な言葉ではなく、命令口調なので断った。

 文句があるならプレシアとグランツさんの科学力を越えてからにしろ。

 回収した残骸のデータはこっちで調べ終えたらそっちに送ってやると反抗的な言葉を返した高志。

 それが嫌なら自衛隊の人達に渡した物を自衛隊の皆さんと一緒に調べればいい。

 エヴァに関わらず、NERVはエヴァの事のみならず、殆ど情報をこちらに寄こさない。

 人類の存亡が関わっているにもかかわらず、だ。

 無論、スフィアを持つ高志。アリシアの事を世間の目やNERVはもちろん。魔導師サイドの管理局にも知らせていない。

 知らせばすぐにでも自分達を捕まえて実験動物のように扱われる可能性があるからだ。

 それでも、ガンレオンを元にした機動兵器コクボウガー。

 身に纏うだけで飛行できるD・エクストラクター。

 この二つの存在が一つの研究所で。しかもどこの国の支援も受けずに個人の研究所で生まれた技術だと世界に知られ、世界中から大使が来ている。

 それこそ先進国から発展途上国まで。

 一応、イベント用だと銘打って公表しているD・エクストラクター。

 アミタ・キリエの両名に渡されたD・エクストラクターは最低出力のみ動くことが出来ている。リミッターをすべて外せば、実際ビームが出たり、大剣モードでコンクリートくらいの壁なら両断できるが、それをするには幾つものプロセスを了承・認証を重ねて行わなければ起動しない。

 そう説明してもガンレオンとD・エクストラクターを「危険だっ!我々が管理するっ!」と言ってぶんどろうとしてくる奴等もいるが、そこまで言うなら、使徒を相手に戦ってくれと言い返す。第一、彼等ではDエクストラクターを発動させるのは難しい。何故ならば・・・。

 

 D・エクストラクターはスフィアを元にして稼働するもの。

 スフィア同様に感情や感覚で発動させることが出来る。つまり、思い込みが激しい人間。

 俗にいう『廚二』な人間か、魔法を扱うのが普通だと考えている管理局の人間とその関係者でなければ動かせられない。

 それは日本というサブカルチャーが豊富な場所で育った人間でないと発動しないだろう。

 あなたは想像できますか?手からビームが出る。これは余裕だろう。

しかも、自分の後ろから魔法の剣が出たり、ロボットが動いたり、それを行うには様々なプロセスをこなさなければいけなかったり、技名を叫ぶ事は出来ますか?

 そもそも、魔法と科学を合成した物がD・エクストラクターだ。

 

 「しかし、なんであのロボットで来なかったんだ?」

 

 「ガンレオンも定期的にメンテナンスしないといけないんですよ」

 

 自衛隊の一人がランボルト・レオンを操る高志に話しかける。

 ちょうどお昼時で高志もランボルトから降りて、その横で一緒に持ち込まれたディアーチェ特製の弁当を食べようとしていた。

 本当なら、ランボルトの中で食べて、誰の目にも触れられないうちに研究所へと帰還するのが望ましいのだが、グランツさんの研究員からの指示で、パイロットの情報を公開して、少しでも印象をよくしようという案が出た。

 これにより多方向への印象がよくなることを信じて・・・。

 というか、エヴァを大量に作ればいいと思う。

 だが、エヴァには『暴走』という敵味方区別なく襲うシステムがある。

 そもそもこの世界は自分が知っている世界とは異なる。

 エヴァがあり、魔法があり、自分達スフィア・リアクターがいる世界だ。

 この世界に転移する前に取り逃がした『尽きぬ水瓶』『偽りの黒羊』。更にはアサキムが二つのスフィアの暴走で時空震。その世界全体を揺るがす現象が起こった際にそれを沈める手段を伝えた後、『・・・これでいい』と呟き、シュロウガと共に爆散していった。

 不死身である彼が言ったのは、もしかしてこの『エヴァと魔法がある世界』への道が開き、俺とアリシア。リニスにプレシアが転移すると思ったから、あんな台詞を・・・。

 と、なると、この世界にもスフィアがあるのか?

 あの時、撮り損ねた二つのスフィアが、それともまだ見ぬスフィアが・・・?

 だとしたらシンジがスフィア・リアクターか?

 あの内気なシンジだと無償の愛を鍵とする『尽きぬ水瓶』よりも、嘘で自分を守ろうとする『偽りの黒羊』が適正かもしれない。

 これでも『傷だらけの獅子』のスフィア・リアクターとしては二段階目に到達していると思う。

 アリシアの方もシンジと直に会った時にはスフィアの感じはしなかったと言う。

 もし、この世界が自分の知る『エヴァンゲリオン』の世界に関係しているなら、他のエヴァのパイロット。綾波レイ。そして、まだ見ぬツンデレ娘。

 

 ~あんた馬鹿ぁ?~

 

 ふむ、見知らぬ電波を受信したようなしていないような。

 まあ、これ以上難しい事はプレシアに任せよう。

 所詮体を使う事しか出来ない自分だ。頭脳労働が主のご主人様。じゃなかった、彼女に任せよう。

 そんなことを考えながらも弁当を橋でつつこうとした時、隣にいた自衛隊の人が半笑いで話しかけてくる。

 

 「・・・なんか、凄いな。お前の弁当」

 

 「俺もそう思います。」

 

 なんという事でしょう。

 ただの卵焼き、グリーンピースにウインナー、海苔をお弁当箱に綺麗に敷き詰めると粗不思議。

 ガンレオンのキャラ弁になったではありませんか。

 出張中のリニスを除き、ディアーチェとキリエちゃんが研究所関係者の食事当番を担ってくれている。

 その匠の一人。ディアーチェの手により、彩り豊かなお弁当箱になったではありませんか。

 ランボルトがこちらに運ばれ、それに乗り換える時に『翌日の昼飯にするがいい』と、一日三食分の弁当と、一週間分の缶詰と野菜ジュースにミネラルウォーターの入った水。

 野菜不足まで考慮する、細かい所まで気の利くディアーチェは絶対良いお嫁さんになる。

 

 「・・・ところで、模擬戦で見たサブパイロットの美人ちゃんは何処に?」

 

 「研究所に帰りました。あと、あいつは俺の恋人なんでちょっかい出さないでくださいね」

 

 まあ、プレシアさんに半分だけ公認された何とも言えない関係なんだけどね・・・。

 し、仕方ないんや。

 スフィア関係で戦々恐々な子供時代を過ごしてきたから学歴が低くて収入が少ないだけなんやっ。

 むしろグランツさんに元の世界に戻る為の研究費としての借金が多くて誰かとの交際なんて身の程を知れと言われそうだ。

 その当人であるアリシアには「私が養ってあげるから」と、からかう要素なんて微塵にも感じさせない感じに真面目に言われた。

 男の沽券が微塵に砕かれた瞬間でもあった。

 これでも、男の意地というのがある。

 ちゃんと自分で喰っていけるだけの金策はちゃんとするしっ。

 この世界にも前の世界にもジャムプロジェクトの歌が無かったからその歌を売り出してアイドル?ロッカー?のような事をしてお金を稼ぐしっ。

 それでも借金に比べれば、焼け石に水というか・・・。

 元の世界でも向こうのアリサとすずかの家に借金をしているし・・・。

 あれ、おかしいな。

 どんなに頑張っても借金が付きまとってくるような?

 しかもお金を出してくれる人たちは皆いい人だから夜逃げなんてもってのほかだし・・・。

 こういう借金キャラって、『揺れる天秤』のリアクターの定めじゃなかったかな・・・。

 

 

 

 どの世界でも物を言うのは金。

 そんな世知辛い状況にいる『傷だらけの獅子』のリアクター。高志は少しだけ塩っ気の効いたキャラ弁に手を付けるのであった。

 

 


 
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