No.766305 リリカルなのはZ 第九話 ガンガン行こうぜ!たかbさん 2015-03-22 21:03:14 投稿 / 全3ページ 総閲覧数:1877 閲覧ユーザー数:1740 |
誰かを守る為に自衛隊に入ったはずだ。
セカンド・インパクトが起こった時、日本のみならず世界中で地震や津波が起こり、場所によっては暴動が起こり、秩序が乱れた所もあった。
その一年後。何とか平穏を取り戻した世界だが、それは当時の警察や自衛隊の皆がいたお蔭で訪れた物だ。
皆が守って来た物だ。だからこそ、自分はそれを守りたかった。
だが、目の前にある現実は甘くなかった。
少し前にも突如現れた怪物。使徒と呼ばれる。そして、その使徒から生み出されるケルビムという骸骨兵が自分達の街に襲い掛かる。
ケルビムは自衛隊の船に搭載されている大砲や機銃。爆撃機でも対応できる。
だが、破壊の原因となっている使徒には通用しない。
オレンジ色に光るバリアのような物が邪魔して攻撃が通らない。
使徒の進行は止まらない。
自分達などまるでそこにはいないように悠然と頭上を越えていく。
使徒自体はあまり動かないがケルビムの方は沖縄を襲撃した時と同じように町を。そしてそこに住む人間を潰して回るだろう。
それを、止めることが出来ない。
自分達はこんなにも無力なのか。自分達の町は守れないのか。と、嘆く艦長や自衛隊員。
「・・・我々のしているのは無駄なのか」
艦長の呻き声にも似た声に答える人間はいなかった。
それはその言葉を肯定するものだと誰もが感じ取った感情だった。
『無駄なんかじゃないよ』
オオオオオオオオオオオ!!
鋼鉄の獅子が炎の翼を生やして現れるまでは。
巨大なウナギを模した使徒が港町に入る直前。
ガンレオンが咆哮を上げながら使徒に殴りかかった。
自分達の攻撃が何一つ通らなかったバリアが破られ、初めて使徒が町から別の物に移された。
使徒は進行を止め、自分を浅瀬の湾に叩き落したガンレオンに視線を移すと、二本の触手を威嚇するように振るう。
最初は使徒の進行が止まったことへの安堵。次に湧き上がってきたのは民間企業のロボットに使徒の相手をさせてしまったという自分達の非力さを感じ取った。だが、
『あの細かいのは素早いんでガンレオンでは対応出来ませんっ、ですから!』
『骸骨兵。ケルビムの迎撃をっ!』
一人は男性。もう一人は女性の声を聴いた船員達は状況を改める。
使徒の進行が止まったものの、未だにケルビムは使徒の体からボロボロと生み落している。
使徒の制圧が無理でもATフィールドを持たないケルビムを相手にすることが出来る。
「総員、対空迎撃用意!民間企業ロボットに後れを取るな!」
「「「了解!」」」
見せてやるぞ、自衛隊の意地という物を!
艦長を務める自衛官は使徒と対峙している鋼鉄の獅子には聞こえるはずがないだろう意志を飛ばしながら空中を浮遊するケルビムの迎撃に出るのであった。
ガキィイインンッ!と、固い金属音を立てて弾かれたライアット・ジャレンチを見て、ガンレオンの中にいる高志は舌打ちをする。
「ちぃっ、最初の一撃は油断していたからか・・・。なんかバリアの堅さが上がっている気がすんぜ。うおっ?!」
使徒から放たれた高速の鞭が自分達のいる浅瀬の海水を蒸発させながら突き進んでくる。
ガガガガガンッ!
鞭がしなりを上げてガンレオンに何度も叩きつけられる。
鋼鉄をも溶かす鞭を受けても平気なのはガンレオンが鋼鉄より頑丈だから。そして、その装甲が高志とアリシアの共有しているスフィア『傷だらけの獅子』から生み出される魔力にも似たエネルギーで構築されている。
魔法世界から見れば、ガンレオンは巨大なバリアジャケットのような物だ。
スフィアのエネルギーがある限りガンレオンという巨大な鎧は常に存在し続ける。
高志やアリシア個人ではCランクという一般魔導師レベルしかない。自衛隊の階級でいうならば軍曹レベルである。
だが、スフィアほぼ無限と言っていいほどのエネルギーを発生することが出来る。
一見するとチートな存在だが、実は『傷だらけの獅子』のスフィアだとそうでもない。
「「ずわちぃいいいいいいいっっ!!」」
ガンレオンが受けたダメージは高志とアリシアの両名に同じダメージを与える。
鋼のボディーを持つガンレオンの肩の部分が焼かれれば二人とも熱さを感じるし、右腕がひしゃげれば実際に腕を潰された痛みを感じるだろう。
ガンレオンの装甲を切断することが叶わなくても、何度も高熱の鞭で叩かれれば痛みでショック死するかもしれない。
「このやろう!こっちが手出しできない空から攻撃しやがって・・・」
「空を自由に飛びたいよ!」
「「マグナモード無しで!!」」
この海域に跳んできたのも『傷だらけの獅子』のスフィアの力で重いガンレオンを飛ばしてきた。
今は収納されているが背中に収納されている鋼鉄の翼を展開させて、炎の羽を生やしたガンレオンなら空を飛翔することが出来る。
それを今すぐやれば、使徒を海上に叩き落せるのだが、出来ない。
マグナモードの余波で海上自衛隊の船はもちろん港街にまで被害が出るからだ。
その為、高志は自衛隊に避難を呼びかけたが彼等の後ろには守るべき町がある。
「自衛隊の皆さん!もう少しここから離れられませんか!」
「無茶言うな!これ以上ここを離れたら化け物どもが上陸しちまう!」
ガンレオンごと使徒を爆撃している自衛隊。
最初こそは躊躇ってはいたが、使徒のATフィールドと同じようにガンレオンの装甲なら防げる。
それに今でこそ使徒とガンレオンを囲うように集中砲火して、使徒からボロボロと生み出されるケルビムを打ち落とせているが、その場所も町を背中にして砲撃し続けているのだ。少しでもここから離れようものならケルビムを撃ち漏らし、町への侵入を許してしまう。
一方、ガンレオンが近づこうとすれば使徒は高熱を帯びた触手で殴り飛ばし、空へと逃げる。鞭の有効射程ギリギリまで下がられると工具の武器しか持っていないガンレオンでは届かない。
ギークガンという釘打ち銃もあったが使徒のATフィールドを貫くことは出来ない。
目の前の使徒が鈍足且つガンレオンを倒そうとしてくるので、ある程度の高度で止まって執拗にガンレオンを攻撃してくる使徒。使徒がガンレオンや自衛隊を無視して上空を素通りしていたらとっくの昔に上陸され、町は壊滅していただろう。
そうしなかったのはガンレオンから感じられた危機感。
『こいつから目を離したらやられる』という危機感を感じ取ったからだろう。
「っ!」
使徒は再び触手を振るいガンレオンを攻撃する使徒だったが、不意に自分の体が下に引っ張られた。
見れば、自分が振るっていた触手がガンレオンに握られていた。
「あんまり調子に乗るな!」
触手を掴んでいた腕を振り降ろすとそれにつられて海上に落ちる使徒に馬乗りになる形でガンレオンが覆いかぶさる。
「オラオラオラオラオラオラオラオラァーッ!!」
鋼鉄の腕を振るい、何度も何度も叩きつける。
その腕が振るわれるたびに使徒のATフィールドが張られるが、その障壁と使徒の距離は目に見えて狭まっている。そして、ついにはガラスが砕けるような音共に使徒の胸部に突き刺さる。
「っ?!!!!?!」
使徒は自分のATフィールドを貫かれたことに驚いているのか触手をガンレオンではなく海上に何度も打ちつけてもがいているようにも見えた。
ガンレオンが海上に使徒を引きずり落とした頃、
NERV本部では半ば強制的に連れてこられたシンジがエヴァに乗せられながらもそこに映し出された映像を見て安堵していた。
また、ガンレオンが。高志さんとアリシアさんが倒してくれる。と、
ミサトには万が一に備えてエヴァに乗っているだけでいいと言われて乗っている。
ガンレオンが負けた時、自分が戦わされると分かっていても乗らざるを得なかった。
目の前にエヴァ零号機という青いカラーリングのエヴァに乗った綾波レイの姿を見たから。
(あんな傷だらけの女の子を乗せて戦わせようなんて、父さん達は何を考えているんだ)
シンジは自分がここに居る理由と、レイという少女が戦うのか不思議に思ってもいた。
ここから降りたら質問しようと思い、操縦桿の部分から手を離そうとした瞬間だった。
『・・・まだ、終わっていない』
「え?」
レイの声に再び画面に視線を移すとそこには黒い甲冑を模したガンレオンと同じ大きさのロボットがガンレオンを使徒から引きはがし、ガンレオン共々、水平線の向こうまで連れ去ってしまった。
あまりにも突然の事態にシンジはもちろん、中継を見ていたNERV関係者も唖然としていた。
ガンレオンがいなくなった事で使徒は再び海上から浮上して地面をはうような高度で再び陸上へと進んでいく。
ガンレオンに殴られたダメージがあるのかケルビムを生み出すことなくそのまま突き進んでいく使徒の姿に海上自衛隊は撤退を余儀なくされた。
使徒の進路上の避難は完了したとはいえ、自衛隊は現状に歯噛みをしていた。
NERV関係者の殆どがそうだった。
一部の人間を覗いて・・・。
(・・・メディウス・ロクスか)
副司令である白髪の髪を初老の男性。冬月はモニターに映し出された映像を見る。
(アレは人類補完計画に邪魔になるという事か、碇)
あれとは勿論、ガンレオンの事である。
歴史は繰り返す。どんな世界にも修正力は働く。
碇シンジを中心にした世界は少しずつだが、動き出す。
人類補完計画は少しずつだがシナリオ通りに進む。
だが・・・。
「し、使徒の進路上に浮遊物体有りっ。こ、これは人?!人が数人宙に浮いています!」
どうやら上手くいかないようだ。この世界では。
「いやー、万が一に備えて覚悟してはいたけどこうしてみると大きいなー」
白と黒を基調にしたドレスとも制服ともいえない服装の少女。八神はやては使徒を目視できる距離まで来るとそう言葉をこぼした。
「あのいきなり飛んできた黒い鎧とガンレオンはどうなっている?」
「あ、うん。アースラからの報告だと太平洋の真ん中見失ったみたい。ガンレオンの反応は消えていないし、彼等の魔力も消えてないから無事だとは思うけど、彼等がここに来る前に何もしなかったら使徒は私達の街にまで来るわね」
シグナムの言葉にシャマルが答える。
一応、自衛隊の方からもコクボウガー向かっているそうだがそれでもガンレオンより少しだけ早く到着するぐらいだという。
「まあ、ここで我々が彼等の到着まで時間を稼げばいいことだ」
「何生ぬるい事を言ってんだよザフィーラ。別にあたしらでアレを倒しちまえばいい事だろ」
ザフィーラは出撃前にリンディから可能な限りこの世界に干渉。魔法の存在を知られないようにと言われたが、隠しながら戦える余裕はない。そう、判断したはやての意思を尊重して守護騎士達総出で使徒の足止め。撃破の為に戦闘態勢で出撃した。
「非殺傷設定は外しておいてください、主はやて。アレの障壁を突破するには全力でなければ太刀打ちできませんので」
「悲しいけど、これが戦争なんやな」
避難が済んだ町の上空で使徒の迎撃を行う八神家に気が付いたのか、相手側の使徒は腹這いの状態から状態をゆっくりと持ち上げると二本の触手を生やして威嚇するように伸ばす。
「ケルビムという骸骨兵を生み出せるほど回復していないとはいえ、あの高熱の触手には絶対捕まらないでね皆!」
「そう指示するのがお前の役目だろ。まあ、あんな奴あたしとグラーフアイゼンで叩き潰してやる」
「ヴィータ、あんまりフラグたてんといてーな」
「まあ、そうでなくとも。我等八神はやての守護騎士。主はやてとその友人達に仇成す存在の蛮行を黙っているわけにもいかんだろ」
そう言いながら互いの緊張をほぐしていくはやて達。
目の前には既に完全に立ち上がった使徒。
「ほんじゃ、皆。作戦は『命を大事に!』余裕が出来たら『ガンガン行こうぜ!』や!」
「「「「承知!」」」」
そういうと一人の少女と彼女の騎士達は使徒に攻撃を開始した。
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第九話 ガンガン行こうぜ!