No.762138

Spirit World -04-

たりまさん

前回の続きです。

今回は少し、複雑な物語となっていますが

後々、それは物語に大きくかかわるような話に

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2015-03-04 03:45:37 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:554   閲覧ユーザー数:546

 

Spirit World -04-

 

 

その殺気は昼間感じるものそのものであった。

 

彼女にどんな過去があり、ここまで強くしたのか。

 

とても、普通の生活を送りながらこんなに精神的にも強くなるのは衛生教育など特別なものを除いて

 

不可能だと思う。

 

 

それなら。

 

――なぜ彼女はこんな強くなれた?

 

 

このジェルドってやつの、教育か…?

 

そういえば、お嬢様とか呼んでいたな…

 

執事?どこかの金持ちの令嬢なのだろうか。

 

 

いや、それでもおかしいことが多すぎる。

 

なぜ小さくなったり、大きくなったり

 

魔法みたいなことが使えるのであろうか。

 

 

未来人?

 

それなら、すべて納得がいくかもしれない。

 

俺は、未来この国の王になるのか…

 

 

――無理だ。

 

 

「え…?」

 

この思考を脳内で展開していると男の声が頭の中によぎる。

 

 

――今のお前では無理だ。

 

 

「今の…俺?」

 

いきなりすぎて、思考が追いつかなかったがそれがすぐにこの奇妙なやつらの

 

関係者だということを理解した。

 

 

「お前らは何者なんだよ!?何で、俺を巻き込む?」

 

 

――今は、答えられない…。

 

 

「今は、って…」

 

 

「危ないのじゃ!カナタ!」

 

 

「皇帝…!!」

 

 

カナタの正面に、風が形になったものが脳で理解する速さより速く迫る。

 

 

「やっべ…!」

 

 

脳で理解したときにはそれは遅かった。

 

 

「く…まさか、このような形でわしが負傷するとは…」

 

 

その刹那、それは何度も何度も起こった。

 

カナタの目の前で、血飛沫は何度も何度も舞った。

 

 

「・・・。」

 

 

カナタの口から何も言葉は出なかった。

 

 

「カタリナ様っ!!!」

 

 

あれほど、落ち着いていたジェルドが連想できないほど乱心していた。

 

何度も何度もカタリナ様カタリナ様と揺さぶりながら叫んでいた。

 

 

「あんらぁ~もしかして、死んじゃった?あっはっはー、残念。」

 

 

ブラズはそれをみて不気味に笑う。

 

 

こいつが、殺した。

 

カタリナを。

 

 

一日だけの付き合いのはずなのに。

 

なぜか、涙がこぼれる。

 

 

まるで、昔から昔から付き合いがあったかのように。

 

思い出がこみ上げる。こみ上げる。

 

だけど、それは思い出せない。

 

 

彼女と、どんな思い出があった?

 

なにもないはずなのになんでこんなに涙がこぼれるのだろう。

 

 

言葉も出ないまま。

 

時は動き始めた。

 

 

ピコピコ。

 

 

「あん?通達?何だって、非常事態発生ただちに帰還せよ?んん。」

 

 

ピッピッピ。

 

 

「ああ、もしもし?何これ、何があったの?」

 

 

・・・。

 

 

「おいおい、まじかよ…どういうことだよ…?だって、そいつは…んあ!わかった。今行く。」

 

 

そして、ブラズは一言。

 

 

「命拾いしたな~。」

 

 

そういい残し、窓に足を掛け風に乗るように空を駆けていく。

 

 

「カタリナ様・・・!カタリナ様・・・!」

 

 

俺は、その声が途切れるまで。

 

涙をこぼしていた。

 

 

「待ってよ!カタリナ!」

 

 

俺は少女を追いかける。

 

 

「はやく、ここまでこんか、カナタ。」

 

 

「無理だって~」

 

 

「無理ではないぞ。はやく、上ってくるのじゃ。」

 

 

――俺は彼女が何をしようとしているのか。

 

彼女は何を俺に見せたいのか。

 

多分、それが気になってたのかな。

 

必死に追いかけて、でも追いつけなくて。

 

 

「また今度じゃな。」

 

「えー。」

 

 

だけど、一度だけ追いつけた時があったんだ。

 

その村で一番大きな木を容易に登るカタリナを見て

 

俺も、追いかけていた。

 

 

「おぬし…よくここまでこれたの、えらいぞ」

 

 

彼女は俺に微笑んだ。

 

それに、頷いた俺はなぜこんなところに登ったのか問い詰めた。

 

 

「カナタ、おぬしはもっと視野を広くみるのじゃ。ほら。」

 

 

カタリナが向けた腕の先には

 

 

それは、時代を感じさせ村を一望できる風景がそこにはあった。

 

 

「どうじゃ、綺麗であろう。昔からここは好きなのじゃ。」

 

 

その言葉に、俺は同調して頷いた。

 

 

「うん。では、帰るぞ。」

 

 

彼女は、また俺に微笑み手を引いてくれた。

 

 

Spirit World -04- END

 

-05-に続く。


 
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