~虎牢関にて~
「華雄、お前自分がどんだけ阿呆な事言ったか分かっとんのか!?」
虎牢関の一室で霞が華雄を怒鳴りつけている
理由は華雄が虎牢関に撤退する途中で一刀に言った一言
「北郷、まさかお前 敵と内通していないだろうな?」
その場は霞が場を治めて事無きを得たが霞は腹に据えかねていた
「しかし奴は敵に知り合いが居て親しげに話していた上にその相手から勧誘を受けたんだぞ
確認は必要だろ?」
華雄は当然とばかりの態度で答えるが、それが更に霞を激怒させる
「こんなご時世に知り合い同士が敵味方になるのが珍しいとでも思っとんのか!
それにその勧誘を一刀は断ったんやろ!
だったらそれで内通しとらんと言えるやろが!」
霞が怒鳴りつける
「しかし芝居の可能性も・・・」
「本当に内通しとったらアンタの目の前で話をする訳ないやろ!
大体、どうしても確認したかったらこういう一室でするもんや
兵の前で言う馬鹿がおるか!」
華雄の反論を霞が即座に否定する
「奴が内通していたら一番被害を被るのは兵だぞ
その兵の前で何故言ってならんのだ?」
「本気で言うとんのか?
そんな事言うたら兵は疑心暗鬼になって普段の実力を発揮できんようになる
それに一刀が内通しとらんかったらどうするんや 間違いなく内通しとらんやろうけどな
一刀は無実の罪で兵や周りの将から疑いの目で見られるんや
それこそ裏切りを誘発しかねん
己の言うた事がどれほど愚かか、これでも分からんのか!?
それに汜水関をこないにあっさり抜かれたのは9割以上華雄の責任や
アンタが勝手に出撃せんかったらまだ汜水関で粘れとった
それに華雄は敵に討ち取られそうになっとった所を一刀に助けてもろうたんやろ?
その恩人によくあんな事が言えたな」
「なに?私が助けられたと北郷が言ったのか!?」
霞の説明の最後の部分に華雄が食いつく
「いや、一刀は何にも言わん
周りの兵から聞いたんや
兎に角、華雄はちったあ自分の行動を反省しいや!」
「分かった、この虎牢関で大きな戦果を挙げればいいんだな」
(本当に分かっとんのか?)
霞の心配は尽きなかった
~一刀視点~
虎牢関に連合軍が向かって来た
今度の先鋒の旗は袁 袁術か
その両脇に馬と陶 馬騰に陶謙か
連合軍が虎牢関に接近して来た時、俺と霞は虎牢関に居なかった
汜水関から虎牢関に向かう経路は両脇が崖になっている
その両脇の崖の上に俺達は居た
連合軍が有る程度、接近してきた時虎牢関で銅鑼の音が上がった
「よし、突撃だ!」
俺と霞の部隊は両脇の崖を騎馬で駆け降りる
そして虎牢関も門を開けて呂布、華雄の部隊が突撃を仕掛ける
両脇の崖と云うあり得ない場所からの突撃に浮足立った処に飛将軍 呂布の突撃
完全に連合軍は混乱した
俺の部隊が突撃したのは馬騰の軍
数こそ少ないがこの国有数の強さを誇る西涼の軍が相手だ
混乱に乗じてどれだけ相手を倒せるか
開戦直後は圧倒的に此方が優勢だった
やはり奇襲が効いている
優勢な状況が続くうちに虎牢関に撤退する一撃離脱戦法が今回の作戦だ
この乱戦の中俺は馬騰を探していた
俺の濡れ衣を晴らす為には戦果を挙げなければならない
そして見つけた
「董卓軍客将 北郷一刀
馬騰、勝負!」
「面白い、相手をしてやろう!」
馬騰との一騎討ちになった
先手は馬騰の攻撃だった なにしろ向こうは槍、此方は刀、完全に間合いが違う
攻撃を刀で逸らして反撃を試みるも簡単に防がれる
何合も討ち合うが俺の方が明らかに劣勢だ
特に騎馬での戦いがそれを決定づけている
向こうの方が騎馬技術は各段に上 防御主体だから何とかなっている状態だ
「なかなかやるな
だがその程度の騎馬技術で私に向かって来るとはな
その程度で勝てると思うな 小僧ー!」
そう叫びながらの一撃は防いだものの馬から叩き落とされた
そこに
「これまでだね」
勝負あったな、とばかりに馬騰が馬上から突きを放ってくる
が、それを跳躍して躱し、その槍の上に着地する つまりは馬騰の槍の上に乗った
馬騰は力は有るのだろうが人が乗った槍を持ちあげれる筈が無い
俺は槍の上を歩いて馬騰に接近して
「貰った!」
斬撃を放つ
キン
「一騎打ちを邪魔して悪いが母様を殺らせる訳にはいかないんでね」
俺の斬撃を馬超(多分)が防いでいた
俺は慌てて後方に飛んで二人から間合いを取る
「大将の一騎打ちを邪魔する奴が居るとは思わなかったよ」
悔し紛れにそう言ったら
「ここにもいるぞ~!」
と更にもう一人突撃して来た
「蒲公英と翠姉様と叔母様 三人相手に勝てるの?」
流石に三人を相手に出来ない 一人でも手一杯なのに
俺は部隊と共に虎牢関に撤退した
~一刀が馬騰と戦っている時~
袁術軍は阿鼻叫喚の中に居た
只でさえ飛将軍呂布と猛将の華雄 この二人の突撃を受ければただでは済まない
しかも両脇からの突撃で混乱した状態ではひとたまりもない
正に地獄絵図だった
「お前等 弱い」
そう静かに言いながら迫って来る呂布と
「もっと骨のある奴はおらんのか~!」
と叫びながら迫って来る華雄から袁術は
「ピ~ 鬼がやって来るのじゃ~」
と泣きながら逃げる事しか出来なかった
「ああ、こんな状態のお嬢様も・・・」
と恍惚の表情をして眺めている張勲が居たのはいつもの事
一方で霞は突撃した陶謙軍を完全に翻弄
遂には陶謙を討ち取った
両部隊とも十分な戦果を挙げて虎牢関に撤退した
尚、華雄が大人しく適度な所で帰還したのは
「恋さん、華雄さんが撤退を渋るようなら殴り倒してでも連れ戻ってください
息さえしてれば責任は問いませんから」
コクリ
と云う静里と恋のやり取りを華雄も見ていたからだった
~あとがき~
今回は○○視点じゃない部分が多くあります
○○視点ではどうしても表現できなかったので
霞が華雄に説教した時に言った事が”あの事態”の最後を引き起こします
それは前回のあとがきに書いた通りこの戦いの最後の方です
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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虎牢関の戦い