No.746607

真・恋姫†無双 裏√SG 第19話

桐生キラさん

こんにちは!
Second Generations夏候覇伝其四
次章に向けて、役者を揃える回その一

2014-12-28 17:16:19 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1759   閲覧ユーザー数:1597

 

 

 

 

 

夏候覇伝其四

 

 

 

 

士希「そうか。そんな事になってたのか」

 

毎年恒例のクリスマスパーティーを行った次の日の朝、私は兄者にここ最近あった出来事を報告した。

主に、友紀に関する事を

 

秋菜「兄者は、友紀の目的について、何か知っておられましたか?」

 

士希「……そうだな。王異という人間が、正史でどの様な人物だったかを知ったのは、俺も別世界に住み始めてからだった。王異と馬超の間にあった因縁…気にしなかった訳じゃないが、この世界では関係ないだろうと軽視していた。だが、実際に因縁はあった。これは、見抜けなかった俺の落ち度でもある」

 

兄者は申し訳無さそうに言い、湯飲みに淹れたお茶を一気に飲み干した

 

士希「咲希、友紀がどこにいるか、掴めているか?」

 

咲希「いや、私の索敵範囲外だ。少なくとも魏領にはもう居ない。呉か蜀か、もしくは五胡か。可能性が高いのは五胡だ。あそこまで行けば、追跡も逃れるだろうからな」

 

恐らくは、姉者の言う通りなのだろう。

現に、一カ月が過ぎて友紀の姿を見たという報告は入っていない。

あいつは、国を出て行った

 

士希「わからないのは、あいつがその徐福とかいう組織と繋がっていた事だ。

少なくとも、俺の部隊に居た時は、そんな素振りなかったが」

 

秋菜「あいつはいつも、ふらっと何処かへ消えてしまうから、その時にでも会っていたのでしょう。まったく、アレが兄者の補佐官だとは、とても思えません」

 

士希「そうか?あいつはアレで、なかなか優秀だったぞ?

昔はサボるなんて事もしなかったし、酒を飲む事もなかった」

 

兄者の友紀への評価は、私からしたらとても信じられないものだった。

サボらない、酒を飲まない友紀なんて、友紀じゃない

 

士希「俺はあいつを信頼している。それは今もだ。あいつが裏切るとは思えん。

まず間違いなく、何かあると思っていい」

 

兄者は、例え何があっても、感情論で何かを判断する人間ではない。

ありとあらゆる可能性を考慮し、最悪と最善を考えて結論を下す。

そんな兄者が、友紀は裏切らないと断定していた。なんの根拠もないのに

 

士希「俺も、何か手伝うぞ。元とは言え、隊員の不始末だ。俺にも責任は…」

 

咲希「士希、お前は関わるな」

 

手を貸してやる、という兄者の申し出を姉者が断った。

とても低い声で、少し殺気も交えながら。その声に、兄者も息を飲んでいた

 

秋菜「姉者?」

 

どうしたのだ?と目で訴える。姉者は私を見て、少しため息を吐いていた

 

咲希「悪いな秋菜。この件、私が手を貸してやる。だが士希はダメだ。

士希も、わかってるだろ?」

 

姉者が言うと、兄者がバツの悪そうな表情で視線を伏せていた

 

士希「……わかった。だが、俺の力が必要になったらいつでも言え。

秋菜、悪いな。せめて、お前達の無事を祈ってるよ」

 

秋菜「え?あ、兄者?」

 

兄者は突然立ち上がり、兄者の使い魔らしいレーゲンと共に、消えてしまった

 

秋菜「姉者?何故兄者の申し出を断ったのですか?兄者の手を借りれば、この件も迅速に…」

 

咲希「秋菜、あいつには向こうでの生活があるんだ。あまりここの問題を持ち込んだりしちゃいけない」

 

その声音は、とても優しいものだった。

それと、何かを心配しているような、そんな声だった。

だからなのか、私はこれ以上追求できそうになかった

 

秋菜「わかりました。ただ姉者、いつか、理由を聞いても良いですか?」

 

兄者には、私達妹が知らない何かを抱えている。

恐らく、兄者が退役した事と関係のある何か。

父上と母上達、そして姉者達は知っているが、私達は知らされていない何か。

きっと今回の事も、それに関係のある気がした

 

咲希「……あぁ。いつか、必ずな」

 

姉者の瞳は慈愛に満ちていた。

そして私の頭に手を置き、撫でる手のひらの温もりが、とても優しかった

 

 

 

 

兄者が行ってしまった後、午後からの出勤だった私は【晋】で茶を飲みながら情報整理をしていた。

ここ最近の徐福の動きや、兄者から貰った友紀の情報。

特に兄者の情報には、注意して目を通していた

 

兄者が知り得る限りの友紀の能力について。

司馬昭隊に居た当時の友紀は兄者の補佐官だった。

どんな局面でも万能であったらしく、武官としても文官としても有能だった。

中でも、彼女は情報収集が得意分野だったようだ。

人脈を生かした情報収集、取捨選択、さらに彼女の観察眼により、信頼度の高い情報が集まるらしい。

観察眼に関して言えば、戦闘にも活かされているらしく、一度目にすれば、ある程度相手の技を真似る事ができるらしい。

 

秋菜「なるほど。だから友紀は、兄者や凪さんの技を使えていたのか」

 

だとすると、非常に厄介だ。あいつ一人で、何パターンも戦闘術があるということだ。

敵として戦うとなると、対策しづらくなる。凪紗はそんな相手をするわけか

 

秋菜「凪紗一人では、荷が重すぎるかもしれないな。私も、出来る限り協力して…」

 

「お邪魔するわよ」

 

【晋】の店の入り口から、久しく聞いていない、それでいて聞きなれた声がした。

その声の主は女性で、長い金髪のカーリーが特徴的な、スレンダーな女性。

全身から一般人にない気を放っている彼女は…

 

秋菜「か、華琳様!お久しぶりです!」

 

華琳「久しぶりね、秋菜。息災のようでなによりだわ。

ここ最近、ずいぶん面倒事があったと聞いて、帰って来たわ」

 

私は咄嗟に立ち上がり、頭を下げる。華琳様は気にしなくていいと手振りで示してくれた

 

秋菜「はい、我々が居たにも関わらずこの体たらく。まことに申し訳ありません…」

 

間違いなく怒られる。きっと激怒するに違いない。

あぁ嫌だ…いったいどんなオシオキが待っているのだろう

 

華琳「そうね、その件に関して言えば、魏の、この私の部下であるのに、とんだ失態ね。

だけど秋菜、私は別にそこまで気にしていないわ。

何故なら、おかげでこうして、許昌に帰れたのだから…」

 

そういう華琳様は、酷くゲッソリしていた。

洛陽での仕事が忙しい忙しいとは聞いていたが、こうもやつれていると、見るに堪えない

 

秋菜「あの…お疲れ様です…」

 

思わず視線を逸らしたまま言ったが、華琳様も遠い目で「ありがとう」と言ってくれた。

なんだか、申し訳ない気分になってきた

 

流琉「あ、華琳様!いらっ……ちょっと待ってて下さい、華琳様。

すぐにお茶の用意をします」

 

厨房から顔を出した流琉さんが、華琳様を見た瞬間、悲しい目をして厨房に戻って行った。

元主人と部下という関係だっただけあって、この辺りの対応は流石に速い

 

 

 

 

華琳様は流琉さんが出してくれたお茶を含み、一息つくと、ぼんやり遠い所を見つめているようだった

 

華琳「ふぅ…やはりここは落ち着くわね」

 

流琉「ありがとうございます」

 

流琉さんは、【晋】を褒められた事が嬉しかったのか、少し顔を伏せて、頬を赤らめていた

 

華琳「ところで秋菜、咲夜と猪々子はいるかしら?」

 

依然、華琳様らしからぬ、ぼぉーっとした様子で聞いてきた

 

秋菜「咲夜さんなら、今日は非番でうちの居間にいるかと。

猪々子さんは朝早くから何処かへ行ってしまいました」

 

そう言えば、猪々子さんは何処へ行ったのだろう?

この時期なら、考えられるのは競馬場だが、そんな事は言ってなかったし

 

華琳「そう。多分そのうち、麗羽と斗詩が訪ねて来ると思うんだけど」

 

流琉「麗羽さん達が?」

 

麗羽さんと斗詩さん

 

麗羽さんは、主に洛陽で劉協様付きの文官として政治に携わっている方だ。

かつて北方で大勢力を築いていただけあって、政治能力は高く、民からの信頼も厚い。

華琳様とはまた違った王才を感じさせる方だ

 

斗詩さんは、そんな麗羽さん、もしくは北郷さんの護衛として付いている女性だ。

純粋な力勝負なら、流琉さんや季衣さん、鈴々さんにも負けないと聞いている。

ちなみに斗詩さん、何故か猪々子さんと婚約されているので、ちょくちょく許昌にも顔を出していたりする

 

そんな二人が、揃って許昌となると、きっと猪々子さんに何か用があるのだろう

 

華琳「そんな事より、咲夜呼んでよー。愚痴を聞いてもらわないと辛いー。破裂するー」

 

とても、あの威厳ある華琳様とは思えないダラケようだ。

いったい、何がそこまで華琳様を変えてしまったのだろう

 

咲夜「おい華琳、私をはけ口にするな」

 

華琳「あ、咲夜」

 

店の入り口の方から、咲夜さんがやって来た。

うんざりした様子ではあるが、それでも華琳様が座っていたテーブル席に着いてくれた

 

華琳「もう、聞いてよ咲夜ー。ホント、頭の堅い連中はダメだわ。歴史とか伝統とか、それが大切なのはわかるけど、でも繁栄の為には何か新しい事をしていかなきゃいけない。そうでしょ咲希?」

 

咲夜「あぁ、そうだな。だからお前、許昌を都にしようなんて言ったのか?」

 

華琳「まぁね。私が許昌を都にする為に、どれだけ苦労したか。

許昌の良い所宣伝して、頭の堅い老人共説き伏せて、最終的にはコツコツ洗脳して」

 

洗脳までしたのか…

 

咲夜「そりゃご苦労なこった。許昌にはいつまで?」

 

華琳「明後日には洛陽に戻るわ。これでも忙しいの。

だけだ、せめてこの店にいる間は、王としてではなく、ただの個人として在りたいわ」

 

咲夜「わかってるよ。お前は、我らが【晋】の古くからの常連であり、私の大切な友人だ。

気が済むまでゆっくりしていけ」

 

華琳「お言葉に甘えるわ」

 

そして華琳様は、出されたお茶菓子を食べつつ、咲夜さんや流琉さんと話し込み始めた。

終始喋りっぱなしな華琳様と、それをただただ聞くだけの二人。

華琳様、向こうで相当鬱憤を溜め込んでいたようだ

 

 

 

 

麗羽「お邪魔しますわ」

 

斗詩「こんにちはー」

 

程なくして、麗羽さんと斗詩さんがやってきた。麗羽さんの髪、いつ見ても凄い巻きだな

 

流琉「いらっしゃいませー。麗羽さん、斗詩さん、お久しぶりです」

 

麗羽「お久しぶりです。いつも猪々子がお世話になってますわ」

 

咲夜「おう。猪々子に用があったんだよな?あいつ、今ちょっと出掛けてるんだ。店で待つか?」

 

斗詩「あ、そうなんですか?困ったなぁ。ちょっと急用だったんですけど」

 

猪々子さんに急用?

 

秋菜「何かあったんですか?」

 

私が聞くと、麗羽さんと斗詩さんは少し申し訳なさそうな顔で私を見てきた

 

麗羽「えぇ。徐福や翠さんの一件を鑑みて、猪々子には一刀さんの護衛として洛陽に来て欲しいと思いましたの。それで誘いに来たのだけれど…」

 

猪々子さんを護衛に?確かにあの人の武術は一線級のものだが

 

秋菜「そんなに人手不足なんですか?」

 

洛陽には、それこそ武術に秀でた者が多いはずだ。

それなのに、わざわざ猪々子さんに頼みに来たのか?

 

斗詩「人手は足りているんですが、信用出来る人が欲しくて。

その点文ちゃんなら、強さも信頼も出来ますから」

 

信用出来る人?その言い方だと…

 

咲夜「おい、まさか内部に…」

 

咲夜さんも同じ考えに行きついたらしく、私が思い至ったことを口にした。

すると華琳様がため息を一つ吐いて…

 

華琳「確証はないけれど、私や麗羽はいると踏んでいるわ。呉の事件も、警備案が漏れていた。許昌での、王異の一件もある。徐福って言う煙みたいな組織の実態が掴めないのも、内部に協力者が居て、そいつらが隠蔽しているから。考え過ぎかもしれないけど、私達は最悪の事態も想定しないといけないから」

 

確かに、華琳様の言い分はわかる。となると…

 

秋菜「流琉さん、お勘定です」

 

この許昌内部も、一度洗わないといけない

 

流琉「もう行くの?」

 

秋菜「えぇ。もう誰かが裏切るなんて、嫌ですからね」

 

華琳「そうね。秋菜、秋蘭と、それと氷華と甄姫も来ているから、その子達と協力して事に当たりなさい。なるべく慎重にね」

 

曹丕様と甄姫さんも来ているのか。それは心強い

 

秋菜「御意。では、出掛けてきます」

 

麗羽「我々も行きますわ。咲希、猪々子さんの場所はわかりますか?」

 

麗羽さんが聞くと、姉者は目を閉じ、集中する。程なくして…

 

咲希「猪々子さん、競馬場に居ますね」

 

相変わらず、姉者の探知は便利だな。と言うか、やっぱり猪々子さん競馬場に居たのか

 

咲夜「よーし、私も付いて行こう。あいつ、一回しばき倒してやる」

 

猪々子さん、ご愁傷様です

 

 

 

 

城に着き、そのままの足で母上の執務室に向かった。その途中…

 

秋菜「曹丕様!甄姫さん!」

 

曹丕様と甄姫さんの二人と偶然出くわした。これは好都合だ

 

氷華「秋菜、久しぶりね。母が貴女の店に行ったと思ったけど、一緒じゃないの?」

 

曹丕様。真名は氷華〈ひょうか〉。華琳様と北郷さんの間に生まれた一人娘で、一言で言えば才女。母の血を色濃く受け継いだのか、14歳でありながら王の風格を感じさせ、文武両方に優れている。次代の三国を引っ張って行くだろうと思わせる女性だ

 

甄姫さん。曹丕様付きの秘書。かつて兄者の部隊に居た一人であり、彼女も文武両方に精通している。妖艶な雰囲気に冷たい視線。兄者の女運の悪さを象徴付けた男嫌いな女性だ。その代わり、曹丕様に一目惚れしたらしく、自ら進んで曹丕様の付き人となった

 

秋菜「はい。先程華琳様とお話し、お二人と話し合いたいと思い、こうして参上しました」

 

甄姫「という事は、ある程度の概要は知ったと言うことね?話が早いわ」

 

私は彼女達に付き、共に母上の執務室を目指す。その道中、甄姫さんが口を開いた

 

甄姫「秋菜、友紀は本当に裏切ったのかしら?」

 

秋菜「現状を見る限りは。ただ兄者は…司馬昭は彼女の裏に何かあると」

 

そう言うと、甄姫さんは目を細めて私を見てきた

 

甄姫「そう。シャクですが、私もあの男と同意見ですわ。

あの子が何の理由も無しに、こんな事をするとは思いません」

 

元司馬昭隊に所属していた者の友紀の評価は異様に高い。

兄者も、甄姫さんも、それに霰と璃々さんも…皆友紀を信じている。

確かに、書類を見る限りは優秀だが、普段の態度からは想像もできない

 

甄姫「次に会うことがあれば、一度叩きのめさないといけませんわね」

 

妖艶に微笑む甄姫さんに、ゾワッと悪寒の様なものを感じてしまった。

この人に頼ることに、若干不安を感じてしまったが、今は少しでも許昌の態勢を整えるべきだ。

次に、友紀に会う前に…

 

 

 


 
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