第Ⅶ話『黒』
---汝南---
薄暗い小部屋。
蝋燭の灯を頼りに、書簡へ目を通す。
ゆらりと浮かぶ文字の形。
文官筆頭である雷薄は、いつもこうして夜遅くまで政や陳情に励んでいた。
雷薄「…儂は、何をやっておるのかのう。」
もうそれは必要ないはずだった。
あの時陳蘭とともに蜂起し、その見返りに地位や金を手に入れる。
あわよくば袁家を我が物にと。
雷薄「…所詮は器よのう。」
小さく笑う。
兄君さま…いや、袁基様のあの輝きには誰も敵うまい。
その時、コツンと窓に何かが当たった。
窓を開け、小さな塊を拾い上げる。
中を見た儂は、その紙をすぐに蝋へと投げ捨てた。
息が荒くなる。
鼻をついて紙が焼ける匂いがする。
雷薄「陶謙が…動きおった。」
儂はどうすれば良いのだろうか。
きっと袁家といえど、あの兵どもには敵わないだろう。
いとも簡単に飲み込まれ、黒く染まる。そして
雷薄「儂は…」
裏切り者だ。
---汝南、北の関所---
関所の通用門では、金髪くるくるヘアーの二人が鉢合わせしていた。
お互いに最小限の人員のみを連れており、一行の違いは荷物の多さだけである。
袁紹「あ、あら~華琳さん奇遇ですわね~!お、お~っほっほっほ!」
曹操「えぇそうね。」
袁紹「…か、華琳さんは荊州に何のようですの?」
曹操「勿論、汝南城主の即位祝いよ。」
袁紹「そ、そう…奇遇ですわね。」
曹操「あら、不満かしら?」
袁紹「ふ、ふふふ不満なんて有りませんことよ?
ただ~…華琳さんには必要ないと思いますけど~?ここは私たちにお任せして華琳さんは」
曹操「必要よ。隣国の当主交代だもの。
自分の目でもちゃんと確かめるべきでしょう。」
袁紹「…。」
曹操「…。」
何か言いたげにモジモジとする袁紹をちらりと見る曹操。
中々言葉の出てこない彼女に、一つため息をついた。
曹操「はぁ…。
大丈夫よ。貴女の恋路の邪魔はしないわ。」
袁紹「っ?!
し、知っておりましたの?!」
曹操「…バレバレよ。
貴女ともう何年の付き合いになると思ってるの。
昔から数えて、貴方の口から何度『お兄様』って言葉を聞いてきたと思ってるのよ。」
袁紹「っ~~~///」
曹操「ふふっ、貴方も可愛いところがあったのね。」
袁紹「お、お黙りなさい!」
その時、お待たせしました、と関所番が通行証を手に戻ってきた。
どうやら積み荷の検査が済んだようだ。
曹操「あら?あなた確か…。」
兵A「はい?」
曹操「前によく許昌まで来ていた行商人ではなくて?」
兵A「お、覚えていて下さったんですか!」
曹操「面白い品が多かったもの。
でもどうして商人が兵士なんてやっているのかしら?」
兵A「それが…これよりは行商を辞め、汝南に店を構えようと思ったのです。
ただ、お恥ずかしい話ですが資金が足りず、こうして兵士をしてお金を貯めようかと愚考した次第です。」
曹操「そう…。
貴方が許昌を選んでくれなくて残念ね。」
兵A「申し訳ございません。
汝南ではよく城まで蜂蜜を卸していたので…何かと顔が利くので住みやすいのです。
それに、新しい太守の袁基様はお世話になっておりますので。」
曹操「(民草だけでなく、行商人の心まで掴んでる。これは中々の人物のようね。
存在だけは麗羽から嫌ってほど聞いてたけど…少し会うのが楽しみになってきたわ。)」
こうして、一行は汝南へと出立した。
その頃…。
---汝南、城壁にて---
二人の少女が、城壁から草原を見渡していた。
毎朝、そこから彼の帰りを待つのが日課になっていたのだ。
美羽「のう七乃…兄様遅いのう。」
七乃「そうですね~、そろそろ戻ってもいい頃かと思うんですが~。」
美羽「ふおっ?!
な、七乃!アレを見るのじゃ!!」
美羽は城壁から身を乗り出すと、はるか遠くを指さす。
七乃「お、お嬢様!危ないですから…ん?」
七乃も何かに気が付き、目をぱちくりとさせる。
草原の遥か先から、大軍がゆっくりと近づいてきているのだ。
急ぎ斥候を呼びつけ、先行して確認させる。
だが、出発してそう時も経たずに兵が戻ってきた。
斥候「報告します!」
七乃「ずいぶん早かったですね~。」
斥候「謎の軍勢の数はおよそ一万ほどと見られます!」
七乃「い、一万ですって?
部隊の展開を急がせなさい!」
斥候「それが…必要がないかと思われます。」
七乃「…はい?」
美羽「…はい?」
斥候「率いているのは袁基様でございますので…。」
七乃・美羽「えぇ~~~~~?!」
斥候「(なんか既視感があるなこの下り…)」
のしのしと歩く初初の上、一刀は留賛を前に抱えながらタンデムしていた。
城門が目の前に迫ってきた頃、口を開いた。
一刀「…鈴鳴。」
鈴鳴「どうかしましたか?旦那様」
一刀「これから俺達は凄く怖い人に会うからね。」
鈴鳴「そうなんですか?」
一刀「うん。だから」
七乃「だから…なんですか~?」
一刀「ひぃ?!」
ドスの聞いた声と同時に、重い音を立てて城門が開く。
そこには腕を組んで仁王立ちする七乃と、城壁の影で恐る恐る覗き込む美羽が居た。
七乃の顔は笑っているものの、眉間に浮き出た血管が怒りのボルテージを表している。
要するに、激おこである。
一刀「あの、これには訳が」
鈴鳴「この方は女中さんかしら?」
七乃「女中…?」ビキッ
鈴鳴「この度は旦那様の元へ嫁ぎに参りました。留賛と申します。
以後お世話になりまする。」
七乃「嫁ぎに…?」ビキビキッ
一刀「七乃さん、いえ七乃様!
ちょっと私めの話を…」
七乃「…そうですね~、では聞いてみましょうか~。
『一人目』の奥様と一緒に、玉座で、ね~?」
鈴鳴「一人目…?」
一刀「…。(終わったorz)」
花蘭 SIDE
---洛陽---
玉座にて、臣下たちが平伏す中、花蘭はある人物たちと謁見していた。
二人の少女を付き従えた劉備という者。それから、北平を治める公孫瓚である。
唐突に都へ呼び出された四人は、少しビクビクとした様子で花蘭を覗き見る。
花蘭「よくぞお越しくださいました。さ、おもてをお上げください。」
劉備「ひゃ、ひゃい!」
花蘭「音々音さん。
アレをお願いします。」
陳宮「御意ですぞ!」
元気よく応えた小さな文官の少女は、とててっと書簡を運んできた。
それを劉備と公孫瓚に読むよう促し、その場を下がる。
劉備「え~っと…劉備玄徳を西城の太守に任ずる…。
…へ?」
関羽「なっ?!」
張飛「にゃにゃ?!」
公孫瓚「す、凄いじゃないか桃華!義勇軍から大出世だ!」
劉備「ど、どどどどどうしよう!!え、え~っと、え~~っと…!」
花蘭「受けてくださいますか?」
劉備「あの…!へ、陛下に対して失礼かもしれませんけど…どうして私なんですか?
私、まだまだ全然みんなを幸せになんて出来てなくて、愛紗ちゃんや鈴々ちゃん、白蓮ちゃんが居ないと何の力もなくて…。
そんな私でいいんでしょうか?」
関羽「桃華様…。」
そこで一度目を伏せる花蘭。
胡蝶「(ね?言った通りの子でしょ?)」
ゆっくりと目を開けると、玉座から降り劉備の元へ歩み寄る。
その行動に驚き、座したまま頭を下げる劉備たち。
花蘭はそっと劉備の肩へ手を置くと微笑んだ。
花蘭「貴女の夢は何ですか?」
劉備「夢…ですか?
…みんなが、たくさんの人達が、笑顔で暮らせる世の中にしたいです!」
花蘭「ふふっ。
そういう貴女だから任せるのです。」
劉備「で、でも…私のことなんて」
花蘭「貴女のことは、少しだけ知っています。」
劉備「えっ?」
花蘭「…私、天の御遣いですから。」
劉備「陛下…。」
花蘭「受けてくださいますね?」
劉備「…お、お任せください!
謹んでお受けいたします!」
ガランっ
劉備たちの横で、突如不思議な音がなった。
横を見てみると、小さく震えながら呆然とする公孫瓚がいた。
どうやら書簡を落としてしまったらしい。
劉備「白蓮ちゃん?」
公孫瓚「え…え…き…」
わなわなと震える口を動かすも声が出てこないらしい。
劉備「どうしたの白蓮ちゃん!何が書いてあったの?」
公孫瓚「…越騎将軍」
劉備「え?」
公孫瓚「私が…越騎将軍に…。」
しばしポカンとする二人。
それもそのはずで、越騎将軍といえば都でも発言権を得られるほどの官位であり、
近衛軍・漢八校尉に名を連ねることになったのである。
花蘭「皆さん、期待していますよ?」
「「ぎょ、御意!!」」
花蘭「(これで良いんですよね?)」
胡蝶「(うん!この子たちなら大丈夫!きっと貴女の力になるわ!)」
一刀 SIDE
---汝南---
玉座にて、兵たちがニヤニヤする中、一刀はある人物たちの前で正座していた。
妻となった蔡文姫と留賛。それから、孫堅から預けられた孫権と、腹心の七乃である。
集まった四人は、ビクビクとした様子の一刀を三者三様の目で見つめる。
一刀「…え~っと、だな。これは…」
七乃「これは?なんですか~?」
顔はニコニコしているのだが、怒気に満ち溢れた様子の七乃。
七乃「次は許しませんって言いませんでしたっけ~?」
一刀「おっしゃいました…。」
蓮華「…。」
説教が繰り広げられているすぐ横では、
蔡文姫こと琴里と、留賛こと鈴鳴が笑顔で談笑をはじめていた。
鈴鳴「はじめまして、此度は一刀様の妻になりました。留賛と申します。」
琴里「あらあら、これはご丁寧に~。私も妻の蔡文姫です。」
鈴鳴「旦那様ったらおモテになるんですね。」
琴里「えぇ!だって私のダーリンですもの!
それに…夜も凄いんですのよ?」
鈴鳴「…知ってます♪
私、こんな身体ですのにあんなに激しくされて…いやん♪」
琴里「まぁまぁ!羨ましいですわ~!
私も今晩に…ふふっ♪」
蓮華「…。」
一刀「ご、ゴホン!!
あ~、二人とも、その話は外で」
七乃「へぇ~、毎日毎日お楽しみなんですね~…。」
一刀「ひぃっ?!」
七乃「…私なんてまだなのに。」
一刀「え?」
七乃「なんでもありません!!」
一刀「ごめんなさい?!」
その時、伝令の兵が入室し声を上げた。
兵「お取り込み中失礼致します!
袁基様へ客人がお見えになっております!」
一刀「お客?(助かった…!)」
七乃「まさか助かった、とか思ってないですよね~?
要件だけ聞いて、今は忙しいと伝えてください。」
一刀「ぁぁ…orz」
兵「い、いえ、それが…。」
袁紹「お兄様~~~~~~~~~~~!!!!」
曹操「ちょっと麗羽!落ち着きなさい!」
背景にお花畑でも見えるかのように走ってくる少女と、それを止めようとする少女。
一刀「麗羽?!」
麗羽「お兄様!!」
そのまま正座してる一刀の胸の飛び込み、抱きつく麗羽。
周りも止める隙もなく、曹操はただ「やれやれ」とこめかみに手をやった。
麗羽「ん~~!あぁ…お兄様!お兄様!」
一刀「ちょ、ちょっと麗羽…くるしい…てか今はマズイ…!」
麗羽「…ハッ!
い、いやだわ私ったらはしたない!!」
急に我に返ったように起き上がり取り繕う麗羽。
その手を取るように立ち上がる一刀。
麗羽「…お兄様、お久しゅう御座います。
またこうしてお会いできるなんて夢のようですわ。」
一刀「あぁ、心配かけてすまない。
…綺麗になったね。」
麗羽「…ご冗談でも嬉しいですわ///
いつかお兄様がお帰りになった時、そう仰って頂きたくて磨いておりましたの///」
曹操「(なるほど。
麗羽が馬鹿なりに勉強するようになったのはこういう理由だったのね。)」
一刀「冗談なんかじゃないけど…ありがとう麗羽。
…それで、曹操さんはどうしてここに?」
曹操「っ?
私は貴方とは初めて会うはずだけどどうして私が曹操だと?
城門でも許昌からの使者としか名乗っていないわ。
どうしてかしら?」
一刀「(…相変わらずキレる子だな。)
ま、たまたま『知っていた』だけだから気にしないでくれ。」
曹操「…そう。
今回は許昌太守として即位祝いに来ただけよ。少しだけど贈り物も用意したわ。」
一刀「あははっ、わざわざありがとう。これから仲良くしていければ良いな。」
曹操「…そうね。そう願いたいわ。
ん?」
曹操は何かを見つけたのか、わずかに横へ目を向ける。
視線の先には、一刀の後ろに控え、うっとりした表情で一刀を見つめる蔡文姫がいた。
曹操「…つかぬことを聞くけど。」
一刀「??」
曹操「彼女は匈奴の姫君よね?」
一刀「そうだけど。」
曹操「なぜここに居るのかしら?」
一刀「ん?なになに?
…月夜に浮かぶ夏草も、水面に映る貴女の横顔には…って何だこれ。」
一刀「ア゛…!!」
琴里「…妻、ですもの♪」
麗羽「えっ…?」
曹操「 よ ろ し い な ら ば 戦 争 だ ! 」
一刀「ちょっと待」
兵士「伝令!!!伝令ーーーー!!!」
七乃「どうかしましたか?」
兵士「十万を超える大軍がこちらへ向かってきております!!」
「「「 ?! 」」」
バッと一斉に曹操を見る全員。
曹操「いや、私じゃないわよ!こんな早いわけないでしょう?!」
麗羽「…。」
一刀「冗談はここまで。
敵の旗印は?」
兵士「あまりの数にまだ全容を把握できておりませんが…『陶』とだけ書いてありました。」
一刀「…陶謙か。」
---汝南、北の関所---
目の前で何かが起こっている。
黒い何かが起こっている。
もう色しかわからない。
何かは関所を飲み込むと、私達をいとも簡単に屠っていった。
どこまでも一定な軍靴の音。
その一つが私の前に迫る。
袁基様へ伝えなければ…だが伝令などもう居ない。いや、ここに兵などもういない。
ふと下をみると、私の胸にも一本の剣が刺さっていた。
兵A「袁基…様…お、おきをつけを…」
---汝南---
一刀達は緊急の軍議を開き、広間へ集っていた。
そこには、客人である曹操、袁紹も加わっている。
伝令から伝えられた状況からすると、既に敵は北の関を突破しそのままの速度でこちらへ向かってきているという。
夏侯淵「華琳様!どうかお早くお逃げください!」
夏侯惇「このような所におらず、さ、お早く支度を!」
曹操「…もう無理よ。
関所からここまでそう距離はなかった。伝え聞いた行軍速度で考えると、本日中にもここまで到達してくるわ。」
夏侯惇「ならば許昌から救援を」
曹操「許昌もあの関を通った北にあるのよ?どうやって使いを寄越すというの?」
夏侯惇「う゛」
一刀「…。」
曹操「(??…ずいぶんと落ち着いているわね。)」
雷薄「袁基様、申し訳ございません。
用意出来た兵は約5万ほどで御座います。」
一刀「ありがとう。助かったよ。」
雷薄「…いえ。」
麗羽「お、お兄様!」
これまでぎゅっと拳を握り、俯いていた麗羽が唐突に声を上げた。
目は少し潤み、顔は赤らんでいるが、力強い眼光だった。
麗羽「お兄様…私が貴方のお力になります!」
一刀「麗羽?」
麗羽「お兄様がもうご結婚されていたなんて…私ったら勝手に舞い上がって…。
お恥ずかしいですわ。」
一刀「…。」
麗羽「でも!わ、私は絶対に諦めませんわ!必ず振り向かせてみせます!!
斗詩さん!南皮にいる田豊さんに連絡を!今動かせるありったけの軍を陶謙とやらの本丸にぶつけなさいと!」
顔良「はい!」
曹操「待ちなさい!」
麗羽「華琳さん!邪魔をしないでくださいまし!」
曹操「…今この場で軍師の真似事ができるのは私だけ。違うかしら?」
一刀「あ、あはは…痛いところつかれたな。」
麗羽「う゛…な、ならどうしろと言うんですの?」
曹操「よろしい。
敵が陶謙ということなら、まずはその大軍を下邳へ向けなさい。」
麗羽「下邳へ?」
曹操「えぇ。そこを落とせば敵は完全に分断されるわ。
まさか敵も北から大軍が押し寄せるとは思ってもないでしょうし、包囲すればすぐ落ちるでしょうね。
形式的には意趣返しにもなるかしら。ふふふっ。」
一刀「(…やっぱり恐ろしい子だ。敵にだけはしないように)」
曹操「貴方はもう敵よ?」
一刀「心だけは読まないでくださいまし?!」
麗羽「でも、それならここへ今向かっている敵はどうしますの?」
曹操「それに関しては袁基に聞きなさい。もう何か案があるのでしょう?」
一刀「ご明察。
まずは第一陣で俺と初初で討って出る。そこで時間を稼いで、寿春からの援軍を待つ。
あそこには紀霊が控えてるからね。第二陣としてうまく動いてくれるだろう。」
曹操「ふむ。」
蓮華「お母様たちに救援要請を送りました。
ただ、軍を立て直したばかりなので数には期待しないでください。」
曹操「それでも、江東の虎に麒麟児が居るのなら十分な戦力ね。」
一刀「第三陣は匈奴・山越の連合軍を遊撃隊として、俺と初初を援護しつつその間に全軍城内へ退却。
目的はあくまでも防衛だから、これを忘れないように。」
麗羽「心得ましたわ。下邳を落としたら援軍を寄越すように手配しておきます。」
一刀「ありがとう。助かるよ。」
麗羽「そんな…。でも、第一陣でお兄様が出陣なさらなくても…それなら私や猪々子さんにお命じ下さいまし。」
一刀「あははっ、大丈夫だって。俺と初初でなんとかしてくるさ。」
麗羽「その方はどなたですの?」
一刀「あぁ、紹介するよ。」
そう言うと、一刀は指笛を吹いた。
するとしばらくして、ズシンズシンと地を揺らし何かが近づいてくる。
何事かと警戒しながらあたりを見回していると、窓からひょっこり初初が顔を出した。
猪々子「でかっっ!!!!」
夏侯惇「な、なんだこの化け物は!!華琳様お下がりください!!」
曹操「え、えぇ…。」
初初「ぬぉ♪」
こうして、迫り来る軍団への準備を着々と進める一刀達。
だが…敵の目的が何であるかを、彼らは知る由もなかった。そして、
雷薄「儂は…」
あらゆる思惑も。
拠点Part 『必殺仕事人』
時は後漢、ここは汝南。
とある野望を胸に秘め、今日も奴らは悪を討つ!
下着屋の朱音!(通称女中A)
風呂屋の涼夏!(通称女中B)
速逝きの彩夢!(通称女中C)
主の平和を守るため、むしろ色々乱すため、『変態仕事人』ここに見参!
間諜「…ふぅ、やっと忍び込めたぜ。
なんだってこんなに兵士が多いんだ。おっと、ここか。」
怪しげな男は、城内にある離れの邸宅に辿り着いた。
ここは一刀が住む家である。
間諜「ふっ、奴が今日は帰ってこないことは調査済み。
ならば今のうちに忍び込み、情報を頂いておこう。」
二階の小部屋の窓から中を覗き込む。
中にはタンスや衣装などが並んでいた。どうやらここは衣装室のようだ。
しめたとばかりに男は小窓へ手をかけたその時。
ガコン!という音とともにダンスの引き出しが勝手に開いた。
間諜「っ?!」
開いた引き出しから、のそりと帽子をかぶった小柄な少女が起き上がる。
間諜「(え?!いや、え?!何アレ、何なのアレ!何でそんなところから出てきたの?!)」
朱音「ふぅ~!堪能した~!
ご主人様がお留守の時しかこんなこと出来ないもんね。下着入れで寝るだなんて。」
間諜「(そこ下着入れだったのかよ!どんだけ変態なんだお前は!)」
朱音「あ!いっけない!」
間諜「(そうだよいけないよ。)」
少女は帽子をとった。
朱音「名残惜しいけどこれも戻しとかないと。」
間諜「(それ下着だったのかよ!!も、もうこの部屋は駄目だ!違う部屋から行こう!)」
そうして場所を移った男は、次に風呂場の前に辿り着いた。
間諜「(ん?水の音?誰か使っているのか?だが真っ暗だぞ。)」
小窓からちらりと覗き見る。
すると、中にはスレンダーな女性が何故か着物を着て座ったり立ったりを繰り返していた。
間諜「(おいおい…今度は何してんだ?)」
涼夏「ご主人様、お背中お流しいたします。」
間諜「(…いや一人で何言ってんだよ。)」
涼夏「そんな、申し訳ないだなんて言わないでください…抱いて。」
間諜「(何でだー!!流れが強引すぎるだろ!!)」
涼夏「よし、これで行けるか?」
間諜「(お前そんなんじゃどこにも行けねえよ!!)」
涼夏「ふむ…むしろこういうのはどうだろう。
ご主人様…お背中お流ししますので仰向けになってください。」
間諜「(仰向けだったら背中流す気皆無じゃねぇか!)」
涼夏「これは来た!」
間諜「(どれも来ねぇよ!もうここも辞めだ!他の部屋は…)」
次に向かったのは広間であった。
これまで小部屋だったゆえに曲者が居たと考え、
むしろこういったところからの侵入のほうが上手くいくと踏んだのだった。
間諜「(ん?…薄明かりが?こんな遅い時間に中で一体何を)」
見つからないようにそっと覗き込む。
そこには、蝋燭のか細い明かりを頼りに、一本一本丁寧に箸や食器を磨いている女中が居た。
凛とした佇まいに、男は感心してしまった。
間諜「(おぉ…!あれでこそ!あれでこそ女中!ぶっ飛んだ奴ばかりで心配したが…。
いやいやいや、何で俺が心配せなならんのか!)」
彩夢「ふぅ…。」
女中の口からため息が漏れる。それはどこか色っぽく聞こえた。
間諜「(…街であったら声かけて口説きたいくらいだぜ。)」
切なげに映る伏し目に、月明かりが照らす横顔。
それはまるで芸術品のような姿であった。
彩夢「…あ~、ムラムラする。」
間諜「…ん?」
彩夢「もう一回だけ…い、いやダメよ私。またやっちゃったらすべて洗い直しになってしまうわ。
でも…。」
箸を持った手がゆっくりと自らの股へ伸びていく。
彩夢「だ、ダメよ…絶対ダメ…これ以上やったらまた…」
間諜「結局かーい!!てかお前ずっとそれで晩くなってたんかバカちんが!!」
彩夢「誰です!!」
間諜「し、しまった…!!」
男は逃げようとするも、脚が動かないことに気がつく。
ふとみると、裾に箸が刺さっており地面と縫い付けられていた。
間諜「な、なにぃ?!」
朱音「うふふ、この屋敷に忍び込もうだなんて、馬鹿だな~!」
涼夏「お覚悟はよろしいですね?」
いつの間にそこに居たのか、ジリジリと間を詰めてくる女中たち。
間諜「ひっ…!
お、お前らは…お前らは一体何なんだ!」
彩夢「知りたいなら教えて差し上げましょう。」
間諜「っ…!」
涼夏「揚州州牧、汝南太守の袁基様を主と仰ぎ。」
朱音「お世話係兼、護衛係の…」
彩夢「必殺女中人です!」
こうして、彼女らの活躍により男は警ら隊へ引き渡された。
右手には性欲を、左手には性欲を持つ彼女らの活躍は、まだまだ続くのであった。
今回もお読み頂き、誠にありがとうございます。
皆さんお待ちかねの変態達は如何だったでしょうか。
次回から本格的に戦闘シーンが増えていくと思いますが、ぶっちゃけて言えば自分は戦闘描写があまり得意では有りません…。お見苦しいかもしれませんが、何卒お付き合いくださいませ。
そして、コメントの方もいただければ喜びます!
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お待たせしました!
女中3人衆、満を持して登場です。