「おめでとうございます。三ヶ月ですよ。」
先生は笑顔でそう言った。
言われた瞬間、頭の中は真っ白になった。
「どうしました。」
はっ、と気づくと、先生の不思議そうな顔が目の前にあった。
「いえ、別になんでもないです。ちょっとビックリしただけですから。」
複雑な気持ちを、押し隠しながらそう答えた。
「そうですか、ではお気をつけてお帰りください。」
先生の声を背にしながら、病院をでた。
病院の玄関をでた、瞬間に私は呟いた。
「どうしよう。」
ここ三、四日、体調が良くなかった。風邪っぽいかんじだけど風邪じゃないし、まさか、そんなね。
気のせいだよねって気持ちでいた。
そんな不安をなくすためにきたのに、見事に裏切られた。もう少し、早く病院に来ていたらよかったな。そしたら、アイツは止まってくれたかもしれない。
ううん、ちがう、アイツはそんな事じゃ止まらないやつだ。もう、吹っ切れたはずなのにな。あぁ弱いな私は。アイツの事、やっぱりまだ好きなのかな。私、
考えても仕方がない事ばかりが、頭の中に浮かんでは消えていく。ダメダメ、こんな終わった事を考えるんじゃなくて、これからの事を考えなきゃ。
とはいえ、どうしたらいいのだろうか。新しい命と共に生きていきたい。
これが私の素直な答え。でも現実的じゃない。さよならした方がお互いにも良いのだろうか。
この二つの答えが、頭の中をハツカネズミのように一週間駆け巡った。ぼんやりと答えはでた、でも不安で誰かに否定されたら吹き飛びそうだ。亜輝ならなんていうかな。ふっとそう思い亜輝に電話した。
「もしもし、亜輝ちゃん。ちょっといい、今から会いたいんだけど。」
「いいよ、どうせアイツのことでしょ。いつもの場所でいいよね。」
「うん、じゃ20分後ね。」
亜輝にもだいぶ心配かけているな、このこと話したらたぶん怒るだろうな。そんなことを考えながら、そう言って私は電話を切った。薄く化粧をして約束の場所に向かった。
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どこかで起きていそうで、でも身近に遭遇する事のない出来事。限りなく現実味があり、どことなく非現実的な物語。そんな物語の中で様々な人々がおりなす人間模様ドラマ。