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真・恋姫†無双 外史 ~天の御遣い伝説(side呂布軍)~ 第五十四回 拠点フェイズ:高順②・護衛、それは時に人を駄目にするストーキング(前篇)

stsさん

みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!


お話の紹介の前に前回の霞おまけ話の補足をします。

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2014-12-14 00:00:24 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:4501   閲覧ユーザー数:3769

 

 

高順「一刀様の護衛、ですか」

 

 

 

季節は寒さの厳しい真冬。そのとある早朝に、高順は陳宮の執務室に呼び出されていた。

 

 

 

陳宮「はいです。これまでの経験上、特に2年前の陽平関が顕著でしたが、一刀殿はどうもそのお人柄から危うい場面が多々見られるの

 

ですよ」

 

 

 

陳宮は両腕を組んで難しい顔をしながら話している。

 

 

 

高順「ですが、政務で外出する時などはちゃんと護衛の兵がついているじゃありませんか」

 

 

 

一応、北郷は益州牧にして成都の領主ということもあり、外出する際は護衛兵が常に目を光らせているという体制がとられていた。

 

 

 

陳宮「ねねが言っているのは、外出の時に限らず常に、ということなのです」

 

鳳統「この前合肥で私たちが孫策軍を退けたよね。世間的には曹操軍が退けたってことになっているけど、その筋の情報に詳しい人なら、

 

私たち北郷軍が退けたってすぐにわかるはずだから、ご主人様の名は間違いなく広まっているはずなの」

 

 

 

陳宮とあらかじめ北郷の護衛の件について話し合っていたであろう鳳統が、陳宮の隣で補足の説明を加えた。

 

名を挙げることは、外交上有利になるなどのメリットもあるが、

 

さまざまな恨みを買うことにもつながるというデメリットもあるものである。

 

 

 

高順「では、私でなくとも、兵たちに交替でつかせればよいのでは?」

 

陳宮「ねねも最初はそう思って一刀殿に言ったのですよ。ですが、一刀殿に断られてしまったのです」

 

 

 

高順の提案に、陳宮は深いため息をつきながら困った表情を作ってみせる。

 

 

 

高順「なぜですか?」

 

鳳統「一日中見張られている感じがして落ち着かないらしいよ」

 

陳宮「まあ、気持ちは分からないでもないですが」

 

 

 

四六時中護衛を受けていれば、少なくとも身の安全はかなり保障されるが、

 

これが親しい相手ならまだしも、単なる主君と臣下という関係になれば、まして北郷の性格を鑑みれば、

 

精神的にかなり気疲れしてしまうであろうことが容易に想像できた。

 

一国の主になってしまえば、プライバシーなど限られてしまうのは当然のことだが、

 

それでもこの北郷の我が儘は理解できるものであった。

 

 

 

高順「ですが、それではいざというときに一刀様をお守りすることが・・・」

 

 

陳宮「ですからななに頼んでいるのですよ。幸い、ここ最近は一刀殿に任せている事務がたまっているので、屋根裏からでも覗いておく

 

だけでいいはずなのです。コソコソと気づかれないようにすることが得意なななにとっては朝飯前のはずなのですよ」

 

 

高順「・・・・・・・・・その言い方にはすごく物申したいですけどね」

 

 

 

ドヤ顔で失礼極まりない発言をする陳宮の言い様に反論したい高順であったが、

 

事実、隠密行動は高順の得意とするところであるため、特に言い返すことはできなかった。

 

 

 

陳宮「ふん、ありがたく思うのです。考えようによっては、一日中一刀殿を見ていられるという訳なのですぞ?こっちはむしろ替わって

 

ほしいぐら―――げふん」

 

 

鳳統「いいなぁ・・・」

 

 

 

陳宮は漏れ出る本音をわざとらしい咳払いで紛らわし、一方鳳統はもはや本音が出ていることにすら気づいていない。

 

 

 

高順「なっ・・・!?わ、私は別にそのようなこと―――っ!」

 

陳宮「見とれて仕事を怠るんじゃありませんぞ~?」

 

高順「いや、ねねじゃないのですからそんなことありえません」

 

 

 

一時取り乱した高順であったが、陳宮のニヤニヤした挑発のおかげで普段通りの冷静さを取り戻し、

 

冷めた調子でピシャリと陳宮を斬り捨てた。

 

 

 

陳宮「なっ、い、いつねねが一刀殿に見とれていたというのですか!?」

 

鳳統「それじゃあななちゃん、宜しくお願いね。御主人様はまだお部屋で寝ていらっしゃるはずだから」

 

高順「了解です」

 

 

 

二人とも無視ですとー!?という陳宮の叫びを合図に、高順の護衛任務が始まった。

 

 

 

 

 

 

【益州、成都城・北郷自室】

 

 

二人に別れを告げた高順は、さっそく北郷の自室の屋根裏に侵入した。

 

 

 

高順(まったく、こうも易々一刀様のお部屋の屋根裏に侵入できるなんて・・・これは、一度張任様にでも部屋の設計の改善を相談した

 

方がいいかもしれませんね)

 

 

 

すると、高順は寒さを凌ぐために完全に覆っていた手を、煩わしそうに無駄に長い袖から少しだけ出すと、

 

屋根裏の片隅に覗き穴をこっそりとこしらえ、ちょうど覗き込むと北郷の姿が視認できる、

 

常人ならまず気づかないであろう覗き穴を作り上げた。

 

 

 

北郷「う~~~ん・・・われこそはしんのさんごくむそぉ~なりぃ~ムニャムニャ・・・」

 

 

 

どうやら北郷はまだ眠っているようであり、奇怪な寝言を口走っている。

 

 

 

高順(あぁ、なんて無防備な表情なのでしょう・・・まぁ寝ていらっしゃるのですから当然ですが・・・)

 

 

 

すると、高順は陥陣営モードもかくやというほどの鋭い視線を北郷の部屋全体に向けた。

 

 

 

高順(・・・・・・・・・今なら誰もいませんね・・・・・・そういえば、かつてねねは寝ている一刀様に口づけを―――って何を考えて

 

いるのですか私は!あ、目を覚まされたようですね)

 

 

 

高順が自分を見失おうとしたその時、北郷がタイミング良く(悪く?)目覚め、

 

なぜかブルブルと身震いしたのち左右をキョロキョロ見回していた。

 

そして、高順が少し気を落としているうちに、そのまま北郷が布団から抜け出すと・・・

 

 

 

高順(はっ!か、一刀様がお着替えを!これはさすがに――――――いえ、ですが護衛するからにはひと時も目を離すわけには・・・!

 

そうです!着替えを襲うことなどよくある話じゃないですか!そうです、これは護衛であって決してやましい考えはありません!!)

 

 

 

北郷がいつもの聖フランチェスカの制服に着替えようと寝巻に手をかけたため、高順のテンションが変な方向にヒートアップ。

 

傍から見れば、黙ったまま表情だけが目まぐるしく変化する怪しいことこの上ない人物になっていた。

 

 

 

高順(なるほど、確かにいつか霞の言っていた通り、つくべき筋肉はついているといった感じの良い体つき―――――って何をじっくり

 

見ているのですか私は!!あぁッ!?つ、つつつつつついに下衣に手を!!こ、これでは一刀様の下着姿が・・・今回ばかりはさすがに

 

―――ぃぇ、ですがここで目を離した隙に賊に襲われるかもしれません!!いえ、きっと襲われるに違いありません!!ここは心を鬼に

 

するのです高順!!陥陣営の心を思い出すのです!!いざッ!!!!)

 

 

 

と、高順が長い葛藤の末、とってつけたような白々しい言い訳で自身を納得させ、愚行に及ばんと括目したその時、

 

 

 

高順(「はうあッ!?め、目にゴミが!?こ、これでは一刀様のお姿が見えな――――っと、もうお着替えが済んでしまったようですね。

 

ふぅ、何事もなくて何よりです」)

 

 

 

因果応報か、高順の括目した目に塵か埃か、とにかくゴミと称すべき何かが襲い掛かり、高順の血迷った行動は未遂に終わり、

 

特に誰かに見られているわけでもないのに高順は白々しくすまし顔で安堵し、数瞬の後深い深いため息をついた。

 

そして、そのように高順のたった一人の戦いが繰り広げられているうちに、北郷は部屋から出ていった。

 

 

 

高順(「あ、外出なさるようですね。朝食でしょうか」)

 

 

 

北郷が部屋から出るや否や、高順も北郷に気づかれないようにササッと、

 

ある時は物陰に、ある時は屋根の上に、隠れながら後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

【益州、成都・城下町】

 

 

高順(この方向は、やはり食堂街ですね。では、今日は長丁場になりそうですし、私も食料の補給をしておきましょう)

 

 

 

すると、高順は北郷の尾行、もとい護衛を続けながら、無駄に長い袖の中をごそごそと漁ると、何か白くて丸いものを取り出した。

 

 

 

高順(やはり、このような状況ではあんまんに限りますね。特にこの『麻婆姑姑』の裏めにゅーのあんまんは一品です)

 

 

 

『麻婆姑姑』とは『麻婆伯伯』の姉妹店に当たるのだが、ここの女将は麻婆一点張りの『麻婆伯伯』店主と違い柔軟な考えの持ち主で、

 

高順の、辛いものの後は甘いものが食べたい、というリクエストに快く答え、

 

裏メニューとして自家製あんまんを用意しているのであった。

 

そして何のためらいもなく、北郷が朝食にありつくよりも先に、高順はそのやや大き目のあんまんを口に運んだ。

 

 

 

高順「(はむはむ、モックモック・・・う~ん、程よい甘みが脳内に染みわたります♪まさに至高の一品。これさえあれば、大陸も平和に

 

なるに違いありませんね)」

 

 

 

小さな口で一口二口と咀嚼するごとに、とても護衛任務中とは思えないほどの完全に緩み切った表情になる高順は、

 

文字通り大陸規模の夢を見たりしていた。

 

 

 

高順(はぁ~・・・あれ?いつの間にか子供たちに囲まれている?)

 

 

 

と、高順がどこか遠い世界へ旅立とうとしていたその時、いつの間にか北郷から目を離した隙に、

 

北郷が子供たちに囲まれていることに気が付いた。

 

これが仮に賊だったらミッション失敗などという言葉では片付けられないほどの大失態であるが、

 

そのことについてツッコむべき人物はここにはいなかった。

 

 

 

男の子1「御遣いの兄ちゃん!あれ取ってくれよ。ヒョウのヤツが飛ばしちゃったんだよ!」

 

 

 

北郷に話しかけているのは、年の頃10に満たないほどの、外はねの癖毛を短く切った、

 

いかにも活発そうな、そしてヤンチャそうな男の子である。

 

 

 

男の子2「コウくんが思いっきり振り回すからだなー」

 

 

 

一方、コウに対してのびのびした口調で文句を言っているのは、恐らくコウと同い年であろうややぽっちゃりした男の子である。

 

 

 

女の子「御遣いのにぃさま!お願い!にぃさまの御遣いくおりちーで!」

 

 

 

そして、最後に北郷に対してしがみつく様な勢いでお願いをしているのは、

 

これまたコウ、ヒョウと同い年か一つ二つ幼いくらいであろう、ブロンドの髪をお団子にした、活発そうな女の子である。

 

 

 

高順(あの子たちは確か、孟達様のご子息の孟興くん、張松様のご子息の張表くん、法正様のご息女の法邈ちゃんでしたっけ・・・・・・

 

ん?くおりちー?)

 

 

 

高順はうる覚えであった同僚の子供たちの名前を思い出していたが、ふと、法邈が発した聞きなれない単語を思わず復唱していた。

 

 

 

北郷「よし、わかった。ちょっと待っとけよ!」

 

 

 

状況から察するに、どうやら子供たちが剣の稽古をしていたところ、

 

孟興が張表の武器を吹き飛ばし、そのまま木の枝に引っかかってしまったようであった。

 

北郷は早速背伸びをしてお手製の木剣を取ろうとする。

 

しかし、全然届きそうにない。

 

試しにジャンプしてみるも、全然効果はなかった。

 

 

 

北郷「もうっ・・・!ちょっとっ・・・!なんだけどっ・・・!おい、誰かオレが肩車してやるから!」

 

孟興「おれに任せろ!」

 

 

 

すると、孟興が北郷に肩車してもらい、手を伸ばすが、しかしまだ届きそうにない。

 

 

 

孟興「くっっっそ、ダメだ。おい、ヒョウもおれを上に―――いや、ヒョウはダメだ。御遣いの兄ちゃんがつぶれちゃう」

 

張表「はは、減量するなー」

 

 

 

このままただ手を伸ばしているだけでは一向に届きそうになかったため、孟興は三人肩車という、

 

サーカス団ばりの曲芸に踏み込もうとしたが、張表の10代に満たないにしてはややボリューミーな体型を鑑みて、断念した。

 

張表もそのことについては自覚しているため、また、孟興と同じような掛け合いを幾度となくやってきているため、

 

特段気にすることなく普段通りのおっとりとした口調で返した。

 

 

 

法邈「しょうがないわね、じゃあバクちゃんが上ってあげる!」

 

 

 

すると、今度は法邈が元気よく挙手して人間三段タワーの頂点に君臨するのに立候補した。

 

 

 

孟興「えぇ~、おまえで大丈夫かよ?」

 

 

法邈「ふっふーん♪バクちゃんがコウ君と違って、木登り大会でじょーいにゅーしょーしてるの忘れたの?バクちゃん高いところなんて

 

へっちゃらだもん♪」

 

 

高順(ぇ、なら最初から法邈ちゃんが木を上ればよいのでは・・・)

 

 

 

法邈が自信満々に年相応の無限の可能性を秘めた胸を張り、得意げに木登り上手であることを告白したことに対して、

 

高順は当然誰もが思い浮かべるであろうことをツッコんだが、しかし、

 

どうやら法邈含め、北郷たちの誰もその事実に気づいていないようであった。

 

 

 

北郷「・・・な、何でも・・・いいから・・・早く・・・してくれ・・・」

 

高順(あぁ、一刀様がプルプルしていらっしゃる・・・)

 

 

 

北郷は孟興を肩車したままずっと背伸びをしているため、相当体に負荷がかかっているようであった。

 

そして、結局北郷に孟興が肩車され、更にその上に法邈が肩車される形になった。

 

 

 

法邈「もう・・・ちょっと・・・!」

 

 

 

法邈は人間タワーの頂点で懸命に腕を伸ばして枝に引っかかった木剣を取ろうとする。

 

そして・・・

 

 

 

法邈「やった、取れたわ!」

 

 

 

見事木剣を手中に収めた法邈は、人間タワーの頂点で体全体を使って喜びをあらわにした。

 

しかし、当然そのような場所で喜びをあらわにされたら、下で支えている者にとってはたまったものではなく・・・

 

 

 

孟興「お、おい、暴れんなって!」

 

北郷「ぐ・・・もぅ・・・だm――――――」

 

 

 

限界に達した北郷は、バランスを崩し・・・

 

 

 

孟興「うわぁーーー!」

法邈「きゃぁーーー!」

 

 

 

およそ尻餅をつくような格好で仰向けに倒れてしまった。

 

そして、土台を失った孟興、法邈も同様に地面へとまっさかさま。

 

それと同時に砂埃が巻き上がる。

 

 

 

高順「一刀様!!」

 

 

 

もはや影ながら北郷のことを護衛していたことなど忘れてしまった高順は、

 

声を大にしてすぐさま北郷の元に駆け寄ろうとしたが、しかし・・・

 

 

 

高順「ぁ・・・・・・・・・」

 

 

 

砂塵が収まり、高順の目に飛び込んできたのは、北郷が倒れながらも見事に孟興、法邈両名を見事に受け止めていた光景であった。

 

 

 

高順「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ッッッ!!??」

 

 

 

しかし、高順が思わず声を漏らし、そのまま絶句したのち声にならない叫びをあげたのには理由があった。

 

つまり、高順の目に飛び込んできた光景。

 

さらに言うと北郷が見事に二人を受け止めたということまでは良かったのだが、その受け止め方に難があったのだ。

 

具体的には、孟興は北郷の股間付近にヘッドバットする形で北郷の胴体に不時着しており(この光景を見て思わず声を漏らす)、

 

さらに、法邈が北郷の顔面に尻餅をつく形になっていたのである(この光景を見て絶句=心の整理を試みる、からの声にならない叫び)。

 

 

 

張表「おぉー、これはなかなかー」

 

 

 

これは絵的に非常に危険な光景だったのだが、幸い、その場には普段通りの間延びしたおっとり口調で感心している張表以外誰もおらず、

 

北郷が通報されるという事態を回避することができたのが救いか。

 

 

 

 

 

 

その後、しばらくの間気を失っていた北郷であったが、やがて目覚めると、

 

自身の股間を労わりながら、子供たちのお礼の嵐からの遊びの誘いを何とか振り切り、食堂街へと向かった。

 

しかし、食堂街に到着するまでの間に、迷子の親探しや、夫婦喧嘩の仲立ち、木から降りられなくなった子猫や怪我をした鳥の保護、

 

果ては老人の荷物運びから話し相手などをこなし、食堂街に着いた時にはもうお昼になっていた。

 

 

 

高順(・・・・・・・・・一刀様・・・いつもこのような感じなのでしょうか・・・)

 

 

 

それらの北郷の行動の一部始終を見ていた高順は、半ば感心、半ば呆れを含んだ感情でぼんやりと考えていた。

 

 

 

高順(なんて人のいい方なのでしょう・・・いったい誰がこの方を天の御遣いなどと思うでしょうか・・・まして州牧や領主などと・・・

 

ですが、こんな一刀様だからこそ、多くの人々から慕われ、絶大な人気と信頼を勝ち取ることができたのでしょうね)

 

 

 

威厳という点において北郷は上に立つものとしてあまりにも未熟であったが、

 

徳という点においては、北郷は常人以上のものを持っていたということだろうか。

 

その是非については議論の余地があるところではあったが、事実、北郷が入蜀して以降の益州安定には、

 

確実に北郷の人柄も大きな要因として挙げることができた。

 

と、高順が長考に入ろうとしているうちに北郷が入った店は行きつけの麻婆専門店『麻婆伯伯』である。

 

高順は考えながらも鮮やかに誰にも気づかれないまま店内に侵入。

 

当たり前のように天井裏に張り付いた。

 

無駄に長い袖が天井でプラプラしているが、なぜか誰も気づく気配がない。

 

 

 

北郷「う~さぶさぶ、親父、激熱の麻婆ラーメンテラ盛り、あとチャーハン山盛り」

 

店主「合点でィ!」

 

 

高順(―――ですが、もし一刀様が威厳をも手にされたらもはや・・・・・・・・・ん?てら盛り?そういえば、いつの間にか品書きに

 

「天老盛り始めました」と書いてありましたね・・・)

 

 

 

その刹那、高順に電流走る。

 

それはまさに奇跡的な閃き。

 

 

 

高順(・・・・・・なるほど、老は老練、つまり経験を積んでいるということ。ということは、天に届かんばかりに積み上げられたという

 

意味でしょうか。桔梗も言っていましたが、確かに天の言葉は実に奥が深いですね)

 

 

 

そのように高順が天井にへばりつきながら一人で納得していると、ものの数分で、

 

へいお待ちッ!というレスラー店主の威勢のいい声と共に巨大な麻婆ラーメンとチャーハンが出てきた。

 

ラーメンのドンブリは通常の3倍以上はあるかというもので、そのドンブリにすり切れギリギリの麺が詰まっており、

 

さらにその上に麻婆が山形というよりも若干円筒形になりつつあるほどに盛られていた。

 

さらにチャーハンの皿も通常の2倍ほど。

 

そこに米が山盛りに積まれていた。

 

 

 

高順(ですが、この量は恋様にも負けず劣らないもの、さすがは一刀様ですね―――――というか一刀様!背中が寂しすぎます!いつも

 

お一人で食べていらっしゃるのでしょうか・・・私をお誘いくださればご一緒しますのに・・・!)

 

 

 

高順は無心にラーメンを啜る北郷の背中姿に、何とも言い難い哀愁を感じ取っていた。

 

すると、北郷が店主に何かを語り掛けているようだったので、高順は気を取り直して話の内容を聞いてみた。

 

 

 

北郷「・・・うん、やっぱ冬はラーメンに限るな。体の芯から温まる。それに旨い。けど、もう少し麺の縮れ具合を調節した方がいいかも

 

しれないな。そうしたら、この至高の麻婆が今以上に麺に絡むんだろうけど」

 

 

店主「おや?旦那ァ、今日はいつになく辛口ですなァ!」

 

北郷「ふ、当然辛口だよ・・・麻婆だけにね・・・」

 

 

 

しかし、聞いてすぐに高順は先ほど以上に居たたまれない気持ちになった。

 

 

 

高順(・・・・・・・・・・一刀様、さすがにそれはないです・・・あぁ、そんなに得意顔になって・・・ほら、隣の子供が不思議そうな

 

目を・・・あぁ、母親が見ちゃいけません的なことを囁いています・・・)

 

 

 

高順の言う通り、北郷のドヤ顔での寒い発言に、臨席で優雅なランチタイムを堪能していたであろう親子連れが、

 

真顔で北郷を避け、筋肉店主だけが、はっはっはと快活に笑っているというシュールな光景が繰り広げられていた。

 

 

 

北郷「けど、それでもここまでの味に仕上げるなんて、さすがのクオリティだな」

 

高順(あ、またくおりちーですか・・・)

 

店主「へいッ、おいらァ常に至高のくおりていを目指してるってェもんよッ!」

 

高順(あ、店主もちゃんと使っているみたいですね。もしかして城下では流行っているのでしょうか)

 

 

 

もはや店内は高順を除けば北郷と店主の二人だけ。

 

そんな中、北郷と店主との会話の中でたまに出てくる聞きなれない天の国の言葉を不思議そうに聞きながら、

 

高順は昼食用にと無駄に長い袂に忍ばせていたあんまんを口に運ぶのであった。

 

 

 

【第五十四回 拠点フェイズ:高順②・護衛、それは時に人を駄目にするストーキング(前篇) 終】

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

第五十四回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

え?別に二回目の拠点=一話完結などという縛りはありませんよ?

 

オリキャラだから既存キャラよりやりたい放題できたせいで一話にまとまらなかったとかそんなんじゃないですよ?

 

どうせ今回一人分拠点が足りないしいいやとか投げやりになったわけじゃないですよ?

 

 

とまぁ言い訳はこれくらいにしまして 汗

 

護衛とストーキングって紙一重だよねって思いながら書いてたわけですが、

 

高順ちゃんが変な子になってしまい、まぁこれはこれで可愛いからいいんですけど。

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

何気にちょくちょく登場する子供たち。ついにフルネームが解禁されましたが果たして今後孟達、張松に出番はあるのかw

 

 


 
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