~鞘華視点~
私達が汜水関に撤退すると董卓軍も追撃を諦め陣を退いた
一番最後に撤退してきた一君を見て声を失った
全身傷だらけで血塗れ、と言う他形容のしようがない
我に返って
「一君大丈夫なの?
直ぐに手当てを!」
一君は治療を受けながら私達に話す
「傷は出血があるから派手に見えるけど全部浅手だ
それよりも呂布 彼女の武はとても俺達が相手を出来る物じゃない
一騎討ちなんてはっきり言って自殺行為だ
間違っても一騎打ちをしようなんて考えない事だ」
私も武術を修得しているので強い者には興味がある
だが、私と同じ位の実力を持った一君がここまで言うなら避けた方が賢明だろう
こうして、1日目が終わった
2日目、葵の読み通り董卓軍は後方に下がって出てこない
代わりに劉表や陶謙が出てくるが此方を攻めあぐねていた
膠着状態のまま3日が経過した
5日目、前線に出て来たのは劉備軍だった
「こら~、お前等なんか鈴々が一人で相手してやるのだ
だから、正々堂々出て来るのだ~」
私達は挑発とも呼べない口上を並べる少女を呆れて見ていた だが
「あれが張飛か なら相手をしてやるか」
一君が呟いた
「そうですな、張飛を討てれば劉備軍も役立たずに陥ります」
葵も同調する
~一刀視点~
俺達は汜水関に兵糧を7日分しか持ち込んでいない
これ以上、此処で踏みとどまると攻城兵器を大量に持った両袁家が前線に出てくる可能性がある
そうなったら物量で汜水関と言えど落とされてしまう
その前に撤退する
虎牢関の方では食い止める策を考えてある
だからそろそろ撤退する頃合いなのだがその置き土産(?)に劉備軍の最高戦力を討ち取って置きたい
汜水関の門を開けて俺が進み出る
「其方が一人で相手をすると言うなら此方もだ
俺の名は北郷一刀 いざ勝負!」
「鈴々は張飛なのだ 相手にとって不足無しなのだ
うりゃりゃ~!」
張飛の突きを躱し斬撃を放つが防がれる
そのまま数合討ち合うがどちらも有効打を決められない
示現流の蜻蛉の構えに似た構えからの斬撃も防ぐどころか打ち返してきた
この体でとんでもない力だ
体術もあの体格では出せる技が少なく、決め手が無い
だが、此方も向こうの攻撃は全て見切っている
完全に互角の攻防
そんな時、視界の端に弓兵が見えた
俺の両斜め前方から矢が大量に飛んでくる
一騎討ちの最中に弓による攻撃だと!
一瞬、劉備軍の策かとも思ったが
「うわ、なんなのだ」
張飛も慌てふためいて矢を叩き落としているから違う
おそらく両袁家かその命令を受けた諸侯だろう
矢を叩き落とすが数が多い為、一本腕に受けてしまう
撤退しか道は無いので汜水関に戻る
「一体、誰の仕業なのだ」
張飛が激昂していたが俺も同じ気持ちだ
~連合軍にて~
「袁紹さん、何故鈴々ちゃんが一騎打ちをしている時に弓で攻撃するんです!
北郷さんを倒せたとしても、鈴々ちゃんも危なかったんですよ」
劉備が袁紹に抗議する
「私は劉表さんに弓で攻撃しろなんて言ってませんわ
劉表さんが私の指示を勘違いしたのでしょう
それに貴方の所の将の犠牲で北郷を討ち取れたのならそれはそれで問題無いのではありませんか?
第一、貴方の所の将も無事だったんでしょう?
今回の劉表さんについては指示を勘違いしたものの実害は無し
よって誰にも処罰は無しとしますわ
これは総大将 袁紹本初の決定です」
「そんな・・・」
ここにきて劉備はこの連合に疑問を持った
そしてこの連合が間違っているのなら連合と戦っている北郷達は・・・
更に自分の北郷達への評価が間違っていたのでは、と
~鞘華視点~
今回は一君を攻められないけど本当に心配させないでよ
そんな事を考えていたら一君の治療は終わり葵が話しかけて来た
「一刀様、鞘華様、予定通り虎牢関へ撤退しましょう
一刀様の怪我の回復時間も稼いでおきたいですし、兵糧の残りもあと僅か
虎牢関の準備も終えております」
「そうね、虎牢関へ撤退するわ
門に石を積んで封鎖 それが済み次第虎牢関へ撤退する」
私の指示で兵が動き始め、半刻で準備が整い虎牢関へ撤退を開始した
~あとがき~
一刀対鈴々は袁紹の邪魔で勝負なし
戦場で一騎討ちに邪魔が入るのは珍しくないでしょう
桃香が少々、考え始めました
動機はちょっと自己(仲間)愛からだからまだ甘いですけど考えるのは重要な事です
更新はゆっくりになるかもしれませんが続けるつもりです
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汜水関の戦い 後篇