10月31日のハロウィン。
この日は子供達が様々なお化けの仮装をして大人達にお菓子を要求し、お菓子を用意出来なかった大人には悪戯をしてもOKな一日。
これだけだと「普通のハロウィンで楽しいんじゃないか?」と思う人もいる事だろう。
だが忘れてはいけない、それはあくまで本来のハロウィンにおける常識だ。
非常識な者ばかりが集うOTAKU旅団においては、本来のハロウィンの常識はまるで通用しないと思った方が良いだろう―――
「「「「トリック・オア・トリート!」」」」
「「うぉいビックリしたぁ!?」」
「あれ、咲良さんに蓮さん? それにニューさんまで…」
「じんくん、ぶーちゃん、トリック・オア・トリート!」
「お菓子ちょうだーい!」
「お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞー!」
「しちゃうぞー!」
「だからぶーちゃんは変えて欲しいんだがな……ん、菓子?」
「菓子……あぁ、そういえばそうでしたね。確か今日は…」
「ん? …なるほど、ハロウィンか。なら仕方ねぇな。ほらよ」
「「「「わーい!」」」」
子供達からお菓子を要求されたBlazと刃は、それぞれ棚の引き出しに隠していたお菓子と冷蔵庫に入れていた洋菓子を用意し、子供達にそれらを渡す。子供達が嬉しそうにしている中……二人はある事に気付いた。
「…一人多くないですか?」
「…確かにな」
「「「「うにゅ?」」」」
咲良達子供メンバーが同時に首を傾げる中……確かに二人の知らない顔が一人存在していた。
「咲良、蓮、ニュー。取り敢えず聞くが、その子は誰だ?」
「にゅ? この子は桜! お友達だよ!」
「桜だよー、よろしくー!」
「「桜?」」
ピンク髪の少女―――
「ちなみに、保護者は?」
「ほごしゃ? うーんとねぇー……明久お兄ちゃん!」
「明久? それは誰の事ですか?」
「誰だそいつ?」
「うにゅ? お兄ちゃんだよ。皆と一緒にいるお兄ちゃん」
「「?」」
桜が一生懸命説明するも、
「トリック・オア・トリィィィィィィトッ!!」
「「やかましいわ!!」」
「あじゃぱーっ!?」
そこに、吸血鬼の仮装をしたkaitoが突っ込んできた。Blazと刃はタイミング良く回し蹴りを繰り出し、それを見事に炸裂させられたkaitoが壁に激突して床にずり落ちる。
「い、痛い……何でそっちが悪戯で返して来るのさぁ…!」
「お前はむしろ悪戯される側だろうがよ」
「ていうかkaitoさんもそんな恰好で何やってんですか、良い年してる癖に」
「うるさいやい! これでも見た目が若いから良いんだよ、俺だから許されるんだよ!」
「「いやどういう理屈だよそれ」」
「パパ?」
「「…へ?」」
桜がkaitoに向けて発したパパ発言に、Blazと刃は思わず桜の方に視線を向ける。そしてkaitoも桜がいる事に気付き、驚きの表情を見せる。
「さ、桜!? 何故にここに!?」
「パパって……kaito、まさかお前がこいつの父親!?」
「ありゃま、マジですか。非リア充だと思ってたのに」
「ちょい待て刃それどういう事だ、いやそれよりも!! 何で桜がここにいるんだ!? お母さんは、幽々子はどうしたんだ!?」
「うにゅ? えっとねぇ、パパにイタズラしてしてきなさいってママが言ってたー」
「幽々子お前は何を言ってんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
「だから、パパにイタズラするのー! それー!」
「うわぷ、熱ぃぃぃぃぃっ!? ちょ、これ普通に熱湯じゃん!? 熱い熱い熱い熱いって!!」
「私達もイタズラしよーっと! それー!」
「それー!」
「それそれそれー♪」
「うわ、ちょ、やめ…熱ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
調子に乗り始めた桜や他の子供メンバー達も、一斉にkaitoに向かって水鉄砲で熱湯を噴射し始めた。しかも熱湯自体に特殊効果が加えられている事からkaitoに対して効果は抜群であり、敵わないと判断したkaitoは衣装が汚れるのも気にせず慌てて逃げ出し、子供達も一斉にkaitoを追いかけ始めるのだった。
「…行っちゃいましたね」
「ま、たまにはkaitoに対して良い薬になんだろ。放っときゃ良いんだよ、あぁいうのは」
「そういうものですかねぇ…」
刃は熱湯で濡れた床や壁をすぐさま掃除し始め、Blazは何事も無かったかのように苺ミルクをカップに注いで飲み始めるのだった。
一方、別の部屋では…
「「「「「トリック・オア・トリート!」」」」」
「おぉ、皆すごく可愛いよ」
「流石はエリカだ、衣装の裁縫もバッチリ決まってる」
「もう、褒めても何にも出ないわよ♪」
ディアラヴァーズ一同も、それぞれハロウィンの仮装の準備を開始していた。結果としてこなたは妖精、アキは女吸血鬼、アスナは泣き妖怪、凛は死神、みゆきは九尾の狐、響は猫女、アンジェは女悪魔、美空は幽霊、ショウは魔法使い、エリカは雪女、ハルトはフランケンシュタイン、そしてディアーリーズは狼男の仮装を完了した。
「さて。せっかく休暇と共にやってきたハロウィンだ、皆でしっかり楽しもうじゃないか」
「「「「「イエーイ!」」」」」
「あの…ハロウィンって…? それに、この服は…」
「あ、そっか。美空ちゃんはハロウィン知らないんだっけ」
「ハロウィンは毎年行われる行事よ。お化けに変装した子供達が大人にお菓子を要求し、お菓子が用意出来なかったら悪戯してもOK。やる事はそう複雑じゃないわ」
「お菓子を…?」
「一緒にやってりゃ美空ちゃんも楽しめるよ。聞くよりも実際にやってみた方が早い」
「まぁでも、この旅団の中でやる以上は気をつけなきゃならん事がある。基本的には誰にお菓子を要求しても良いのが本来のハロウィンだ。だがこの旅団においては相手を間違えると、想定外の被害を受ける羽目になる」
「あぁ…そういえば去年のハロウィン、響が間違えてZEROの部屋に突入しちゃって、逆に追い掛け回される羽目になってたわね…」
「うぅ…もうあの部屋には絶対行かないぞ…!」
「ははは…とにかく、目いっぱい楽しみましょう。お菓子をくれそうな相手は大体察しがついてます」
「おう! んじゃ、まず最初の一人目は…」
「―――んで、いきなり俺の所に来たってか?」
「「「「「トリック・オア・トリート!」」」」」
「否定しないなお前等!? …まぁ菓子くらいなら、俺がいくらでも用意してやるよ」
「わーい、お菓子だー♪」
「ヒャッホーイ!」
「あ、全部は持ってくなよ? 他の奴等の分も用意してあるから」
ディアーリーズ一同が最初に仕掛けたのは、厨房でハロウィン用のお菓子を作っていた支配人。既に誰かがお菓子を求めてやって来る事を想定していた支配人は、テーブルに並べていたお菓子を彼等に渡し、こなたや響がハイテンションでお菓子を掻っ攫って行く。
「トリック・オア・トリー…」
「アンタは大人組だから駄目です」
「チッ」
「抜け目ないですねショウさん」
「まぁショウさんらしいというか何というか……ん? 支配人さん、何故に銃を…」
保護者ポジションであるショウに対して釘を刺しておく一方、何故かマグナバイザーを取り出して一枚のカードを装填する支配人。そんな彼の行動に首を傾げるディアーリーズ達だったが…
「トリック・オア・トリー…」
「やっぱり今年も来やがったなアホが!!」
≪SHOOT VENT≫
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁハバネロエキスが両目にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」
「あぁなるほど、kaitoさんに…」
「いやぁ凄い、見事ヘッドショット決めてんな」
隠れてお菓子を回収しようとしたkaitoの顔面に、召喚したギガランチャーでハバネロエキス入りの砲弾を発射する支配人。両目を押さえて「目が、目がぁ~!!」と叫びながらのたうち回るkaitoを見て、支配人がマグナバイザーを取り出した理由が分かって納得するディアーリーズ達だった。
「「「「「トリック・オア・トリート!」」」」」
「うん、まぁ来るのは分かってた。そこに置いてある奴を持って行け」
二人目はガルム。休暇を存分に満喫していたガルムはテーブルに置いてある大量のお菓子を指差し、やはりディアラヴァーズが次々とお菓子を持ち去って行く。
「のんびりしてるねぇガルム。仮装とかはしちゃわないの?」
「仮装は小っちゃい子供達の特権だろうよ……まぁそれは別に良いとして。俺は昨日まで任務で忙しくしていたもんでね、疲れが溜まってるんだ。早苗も今は幻想郷に帰っちゃってるし、あんまり騒ぎたいって気分じゃない」
「そりゃ勿体ない。一緒に楽しめば良いのに」
「そうは言われてもな……それに」
「それに?」
「…ここ最近、何か妙な感じがしてきてな」
「「「?」」」
「いや、何でもない。忘れてくれ」
ハンモックに身体を寝かせたまま、アイマスクも付けて昼寝を始めるガルム。ディアーリーズ、ハルト、ショウの三人は彼の告げた言葉に首を傾げるのだった。
(それに……竜神丸の奴が、いつ何をやらかすか分かんないしな…)
当然、ガルムのその考えがディアーリーズ達に伝わる事も無かったのである。
そして三人目は…
「「トリック・オア・トリー…」」
-ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!-
「「どぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!?」」
「きゃあっ!?」
「!? 美空さん!!」
『グォォォォォォォォォォ…!!』
「…おや、あなた達でしたか。てっきり不審者かと思いましたよ」
竜神丸だ。しかし彼は先程の二人と違って歓迎するようなムードではなく、部屋に入って来たこなたと響に対してネメシスのロケット弾が飛んで来る始末である。しかもロケット弾が爆発した衝撃で、ディアーリーズが支えなければ美空が危うく転倒していた事だろう。
「ちょ、いきなり危ないじゃないですか竜神丸さん!」
「危ないと思うのであれば、始めからそんな可笑しな服装をしないで来て貰いたいところですね。ま、どうせ任務で忙しいので最初からあなた方に構っている余裕など無いのですが」
「おいおいドクター、いくら何でもそりゃ無いんじゃないの? せっかくの休暇なんだし、研究とか無しにハロウィン楽しんだらどうよ? そんな過ごし方は寂しいって」
「知った事じゃありませんね。そんなに下らない仮装パーティーを楽しみたいのであれば、それはあなた方だけで楽しめば良いだけの話でしょう? 少なくとも、この私には一切関係はありませんので」
「ッ……もう、だから言ったんだよショウさん! こんな研究ばかりのマッド野郎に、ハロウィンの楽しさを追求しちゃ駄目だって! 去年だって同じ結果だったよ!」
「うぅむ。もしかしたらとは思ってたけど、やはり駄目だったか…」
「さ、分かったらとっとと出て行って下さい。あなた達とこうして話してるだけでも、かなり時間を無駄にしてしまっていますから」
そう言って、竜神丸は一同を部屋から完全に閉め出してしまった。ドアの内側からロックもかけられた為、再突入は叶わないだろう。
「もう、アイツの所為で一気に嫌な気分になっちゃったよ! もう良い、次行こう次!」
「やれやれ、俺からドクターに頼み込むべきだったかねぇ…」
「む? どうしたんだ皆、そんなに落ち込んで」
「あ、キーラさん! ねぇちょっと聞いてよ!」
「おっと」
竜神丸の所為で、上がっていたテンションが大幅にダウンしてしまった一同。そこにちょうどキーラが通りかかり、こなたが勢いよくキーラの胸元に飛びかかる。
「チッ巨乳め……って、そうじゃなくて! 竜神丸の奴が酷いんだよ! 今日はハロウィンの日だってのに、一方的に私達を閉め出したんだ!」
「む、そうだったのか……アルが済まなかったな。お菓子ならちょうど、イーリスちゃんと一緒にお菓子を作ったばかりだ。それで我慢して欲しい」
「本当!? 流石キーラさん、話が分かるぅ! 胸だけは除いて!」
「「「「「胸は駄目なんかい」」」」」
一同がキーラとそんな話をしている中…
「……」
エリカだけは、閉ざされた竜神丸の部屋のドアを見つめていた。
(全員が休暇を与えられている中で一人だけ任務? 休みを消費してまで、一体何をしているのかしら…)
そして、四人目はと言うと…
「……」
Unknownだ。しかし現在の彼は朱音や他の仲間達の策略により、露出度の高いサキュバスの仮装をさせられているところだった。胸の詰め物も徹底している辺り、既に彼はこういった物事には慣れてしまっているのだろう。
「「「「「え、何この美人」」」」」
「うん、言うと思ったよ」
「そしてアン娘さん、その後ろで倒れてる朱音さん達や蒼崎さんはどうしたんですか? 全員が鼻血を噴いて倒れてるみたいですけど…」
「ハロウィンらしく悪戯してやったまでの話だ」
「「「「「どんな悪戯!?」」」」」
Unknownの後方では、彼の悪戯(?)によって鼻血を噴いたまま倒れている朱音達の姿があった。全員が満足そうな笑顔をしている事から、悪戯(?)の内容もある程度想像がついてしまうのが彼の恐ろしいところである。ちなみに蒼崎が鼻血を噴いている理由についてはもはや語るまでも無い。
「これだけじゃ終わらんぞ。これから他のメンバーにも同じように、積極的に悪戯を仕掛けていくつもりだ。お菓子なんてどうでも良い、今はこのストレスを発散しなければ気が済まない」
「「「「「お化けがお菓子を要求しないでどうするよ」」」」」
(ま、アン娘さんらしいですけどねぇ…)
その後、Unknownも同じように悪戯をして回る事になった。その被害はかなり凄まじく…
「トリック・オア・トリック!! 悪戯をさせろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「ちょ、いきなり何だコラ…ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」
「兄貴!? ちょ、何で僕まで…NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!?」
ロキとルカに対しては、部屋に突入された直後にUnknownからバズーカを発射されてしまい…
「トリック・オア・トリィィィィィィィィック!!!」
「いやお菓子求めろよそこはゴブゥッ!?」
Unknownがmiriの部屋の扉を蹴り壊し、吹っ飛んだ扉がmiriの顔面に直撃してしまい…
「トリック・オア・トリックだ畜生めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「いやいや何で逆ギレされなきゃいけない…のぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」
Unknownの投げつけた唐辛子入り手榴弾が、awsを巻き込んだまま爆発したり…
「トリック・オア・トリックだヒャッハー!!」
「トリック・オア・トリックだ、今すぐ首を置いてーけー!!」
「いや何でZEROまで加わってんのさ…みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「FalSig!? ちょ、何で俺まで…あれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」」
ドサクサに紛れたZEROがUnknownと一緒になってFalSigとokakaの二人を襲ったりと、ストレスが溜まりに溜まっていたUnknownの暴走は留まるところを知らなかった。
「ありゃま、ちょっとやり過ぎじゃないかな?」
「まぁいつもの事だ。去年も大体そうだった」
「去年もこんなだったの!?」
「「「「「そうだけど?」」」」」
実際、
…が、Unknownの暴走もそこまでだった。
「トリック・オア・トリィィィィィィィィィィィィック!!!」
「あ、またやらかす気だ」
「次は誰が被害を受けるんだ?」
例の如く、通りかかったメンバーに悪戯特攻を仕掛けたUnknown。しかし…
「…あ」
今回ばかりは、その悪戯を仕掛けた相手が悪過ぎた。
「ほう? 面白い事をしてるじゃないか、Unknownよ」
「だ、団長…?」
そう、相手は団長のクライシスだったのだ。悪戯目的で振り下ろされたUnknownのピコハンマーを右手で受け止めたクライシスは、実に楽しそうな笑顔をUnknownに向ける。
「ふむ。そういえば私も、最近はハロウィンといった行事をあまり楽しめてはいなかったな」
「あ、あの、その…これには色々と訳が…」
「せっかくだ。私も誰か一人くらい悪戯を仕掛けてやるとしよう」
「え、えっと…」
「Unknown、済まないが少しばかり私の悪戯に付き合ってくれないかね?」
「す、すみま…」
「kaito」
「お呼びですか隊長!!」
(((((隊長…?)))))
何処からか素早く現れてはクライシスに敬礼をするkaito。呼び方が「団長」ではなく「隊長」となってしまっている辺り、今のクライシスに歯向かってはヤバいと察したのだろう。
「これから少し、悪戯の準備をしようと思う。君も手伝ってくれたまえ」
「サー、イエッサー!!」
クライシスはUnknownの首元を掴んだまま、kaitoと共に何処かの部屋まで立ち去って行く。
そして…
「アッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!??」
「「「「「!?」」」」」
Unknownの断末魔が、
数時間後…
「……」
「…kaito、何を手伝わされたんだ?」
「うん、聞かない方が君達の為だと思う」
「あ、はい」
真っ白けになったUnknownが、ブツブツ何かを呟きながら放置されているのが発見されたという。それをたまたま目撃していたデルタと二百式は…
「…参加しなくて正解でしたねぇ」
「…今回ばかりは俺も同意する」
普段は仲の悪い二人も、珍しく互いの意見が一致するのだった。
ちなみに…
「ムグムグ」
ZEROだけは一足先に逃げた為、難を逃れていたという。
とある森。
その最奥部に存在する、一つの遺跡前にて…
「―――さて」
テレポートで移動して来た竜神丸が、この場に到着していた。
「…何か仕事でも出来ましたか? ニグルムさん」
『やぁ。来てくれると思っていたよ、竜神丸君』
竜神丸の前に、小さな光の玉がふよふよ浮きながら出現。それが空中に制止した後、その光の玉が人の形へと少しずつ変わっていき、黒装束を身に纏った緑髪の少年が姿を見せた。
『どうだい、旅団の様子は。皆は楽しくやってるかい?』
「大半のメンバーが、ハロウィンとやらで盛り上がっている事でしょう。私はどうでも良いですけど」
『ははは、クライシスが休暇でも与えたかな? まぁ構わないよ。彼等も任務で大変だろうし、休める時にしっかり休んで貰わないとね』
「働かせる理由を作ってるあなた方がよく言いますねぇ……ところで、何か用があって私を呼んだのでは?」
『あぁ、そうだった。君に頼んでおきたい事があるんだ』
「頼みたい事?」
『うん、頼み事』
黒装束の少年―――ニグルムは指をパチンと鳴らし、竜神丸の前に巨大なディスプレイを出現させる。その映像にはいくつもの赤いレーダーポイントが映し出されている。
「これは?」
『ある神様がね、我等が“マスター”の意志に背いた。おかげで転生させてはいけない魂がいくつも転生しちゃって大変な事になっちゃったんだ。早いところ、そっちの方で全部始末しちゃって欲しい』
「これらを全部、ですか……しかし、何故よりによって私に?」
『アルブムはその裏切り者の神様を追ってる真っ最中だし、フラシヌスは相変わらず“マスター”に付きっきりの状態だし、他の皆もあまり手が空いてる状態じゃないんだ。そこでクライシスを除いたナンバーズの中で、一番旅団の意志に忠実な君に頼もうと思った訳』
「際ですか」
『数も多いから大変かも知れないけど、頑張ってね? 僕も君を応援してるから』
「それはどうも。あぁところでニグルムさん、その裏切り者の神様についても一応話だけは聞いておきたいのですが」
『あ、聞いておきたい? じゃあ教えるよ。その裏切り者の神様なんだけど…』
『確か、名前は“エリス”だったかな? ほら、げんぶ君を転生させた神様だよ』
そして…
「―――!」
ハロウィンの仮装準備をしていたげんぶも、ある“何か”を感じ取っていた。
「耕也、どうした?」
「あ、いや、何でもない(何だ? 今、何か違和感を感じたような…)」
全員の知らないところで、暗躍は更に続いていた…
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何とか間に合ったので、ひとまず更新。
それではどうぞ。