レジスタンスのアジトにて…
「つまり、他の皆とはまだ合流出来てないってか?」
「そういう事になる」
「…たく、先は長ぇなぁ」
あれから旅団メンバー達は、少しずつ合流しつつあった。しかしそれでも全員という訳ではなく、現時点ではロキ、Blaz、ディアーリーズ、刃、支配人、二百式、miri、蒼崎、ユイ、フィアレス、シグマといったメンバーしか揃ってはいない。おまけに二百式は数分前にレジスタンスの一員によって叩きのめされ、再び意識を飛ばす羽目になってしまっていた。
現在、一つの部屋にロキ、Blaz、ディアーリーズ、刃、miri、蒼崎のメンバーが揃っていた。二百式は意識を飛ばしているので医療室、支配人とフィアレスはレイモンズに連れられ調理室に、ユイはアジトの外で見張り番を続行中、シグマは好きなようにアジト内を闊歩している最中だ。
「miriと蒼崎の方は、他のメンバーの事を見てないのか?」
「いや、俺と蒼崎だけだ。まぁモンスターと戦ってる最中に……その、あれだ。ちょっとばかり特殊な奴と出くわしちまってな」
「特殊な奴?」
「そう、私は特殊なの! 天才故にね!」
「「「「「うわビックリしたぁ!!?」」」」」
「だから何で不意打ちで出て来るんですかね…?」
「私もいるぞー!」
一同に気付かれない位置から葵と楓が気配を察知させずにヌッと姿を現し、刃は同じ突っ込みをするのにうんざりしてるかのような表情になる。
「あら、思ってた以上に可愛い反応を見せてくれたものね。良いわそういうの、嫌いじゃないわ! もっと可愛いところを見せて頂戴!」
「は、はぁ…?」
「おうおう、言ったそばから出てきやがったぜ……んで葵さんに…」
「あ、そういえば名乗ってなかったね。楓だよ、よろしく!」
「そうか……んで、葵さんに楓さんよ。わざわざここまで何の用だ?」
「えぇ~別に良いじゃん、私達が誰と話をしたって。せっかく出会ったんだから話でもしようよ」
「そうよ。せっかく出会ったのに会話もせずに仲間外れだなんて、そんなイジメは人として良くないわ。夜のイジメなら例外だけどね!」
「お前のそのエロハイテンションはどうにかなんねぇのか? まぁおかげで、蒼崎はあんたにフラれて完全に沈黙しちまったがよ」
「うぅ……駄目なのか…一途じゃない俺はポンコツな駄目犬なのか…」
((((あ、だからずっと落ち込んでたのかコイツ))))
miriの言う通り、蒼崎は部屋の隅で体操座りをしたままへの字を書いて落ち込んでおり、事情を知らないロキ達は心の中で蒼崎が葵にアプローチせずに落ち込んでいる理由を知って納得する。
「葵…だったっけか? ここにいるって事は、あんたもレジスタンスの一員か?」
「えぇそうよ? 私も結構自由にやらせて貰ってるわ、レイモンズのおかげでね。おかげで私は何時でも何処でも私のままでいられる! 本当に最高よ! 私ってずっと素敵!」
「いよ、葵様! そこに痺れる憧れるぅ!」
「良いわ、もっと褒めなさい! 私って褒められて伸びる子なの!」
「(う~ん、何か絡み辛い人だなぁ)えっと……葵さんもレジスタンスの一員という事は、何か能力を?」
「おぉ、そういえばそうだ。なぁ葵、あの時お前が使ってた能力って何なんだ? モンスターの攻撃を一つも通しちゃいなかったしよぉ」
「あらあら、そんな事をわざわざ聞いちゃうの? 先に話しかけた私が言うのも何だけど、自分の個人情報を赤の他人に対してそんなホイホイ話すと思ってるのかしら?」
「ぐ……まぁ、確かにそうだがよ」
「でも私は自慢しちゃう♪」
「「「「するのかよっ!?」」」」
(本当に自由だなぁこの人…)
ロキ達の盛大な突っ込みを他所に、葵は自身の周囲に無数の鳥居型紋様を出現させる。
「そうそう、これだこれ。これでモンスターの攻撃を防ぎやがったんだ」
「これは……結界? いや、結界にしては何か違うような…」
ロキは目の前にある鳥居型紋様を軽くデコピンをかます。するとデコピンを受けた鳥居型紋様が砕け散り、すぐにまた新しい鳥居型紋様が出現する。
「私はね、元々踊る事が大好きなの……あ、あとエロネタも好きね。でもいくらエロネタが好きだからって、誰にでも簡単に自分の身体を許すと思ったら大間違いよ?」
「どういう事だ?」
「そうね……そこのあなた」
「え、僕ですか?」
「他に誰がいるのよ? 何でも良いわ、この私に攻撃してみて頂戴」
「え、いやでも…」
「良いから早くして頂戴、時間の無駄になっちゃうわ。あなた思ったよりヘタレね。決めたわ、あなたは今からヘタレボーイよ!」
「初対面の人にヘタレ扱いされた!?」
((((どんまいディア))))
葵によって変な呼び名で呼ばれる羽目になったディアーリーズ。何か納得がいかない素振りを見せつつも、ひとまず葵の言葉通りレオーネ・フォルティスを構える。
「さぁ、何時でも来なさい」
「…行きます!!」
葵が合図を出した瞬間、ディアーリーズは目に見えない速さで葵に接近。すれ違い様に彼女の腹部を斬りつけてから立ち止まる。
「おぉ、早いじゃん!」
「ディアの奴、またスピードが上がってんじゃねぇか」
「…あれ?」
楓やBlazが賞賛する中、ディアーリーズは自身の攻撃の手応えに違和感を感じていた。それもその筈、彼が繰り出した一閃は…
「ふふふ、どうしたのヘタレボーイ? 攻撃が届いてないわよ?」
「な…!?」
葵には、全く通じていなかったのだから。
「終わりかしら? もっと攻撃して来たらどうなの?」
「ッ…おぉぉぉぉっ!!」
言われるがままに連続で攻撃を仕掛けるディアーリーズ。しかしディアーリーズの繰り出す斬撃は葵に届く事は無く、葵を囲っている鳥居型紋様が斬撃を防いでは砕け散り、そしてまた無数の鳥居型紋様が出現する。それらのパターンが何度も続くが、ディアーリーズの攻撃は葵には一切届かない。
「く…どうして攻撃が…!!」
「それなりに頑張るわね。良いわ、詳しく教えてあげる。私の能力は“
「! 術式…?」
「私が『この人になら枯らさせられても本望だ』と心の底から思えるような人以外は、この私に触れる事が一切出来なくなるの。私が高嶺の花で在り続ける限り、私は常に孤高であり続けるのよ」
「一切触れられなくなるだと…!?」
「なるほどな。道理であの時、モンスターの攻撃が何一つ通らなかった訳だ」
「葵さんの高嶺舞は本当に凄いんだよ。私だって全然攻撃通じないし、レイモンズさんですら掠り傷程度しか付けられた事が無いんだもん。葵さんの防御はメチャクチャ固いんだ」
(触れられなくする術式、か……確かokakaやげんぶ辺りが何か知ってたような…)
「とにかく、今のあなたでは私に触れる事は出来ないという事よ。分かったかしら? ヘタレボーイ」
「いや、分かったは分かったんですが……その呼び方はどうにか出来ませんか?」
「お・こ・と・わ・り♪ やめて欲しかったら、この私に傷一つでも付けてみなさい!」
「いやいや葵さん、それ多分無理だから」
「…僕はヘタレボーイのままなんですね分かります、いや分かりたくありませんけど」
((((本当にどんまいディア…))))
「でもそうね、ヘタレボーイだけじゃ平等じゃないわ……そこのあなた、名前は?」
「あ? Blazだが…」
「Blaz……ブレズ……決めたわ、あなたはブレザーよ!」
「いや何で服名なんだよ!?」
「それからあなたは?」
「無視かよ!?」
葵はBlazの声を無視し、次は刃に声をかける。
「む、私ですか? 私は黒鉄刃と申します。以後、お見知りお…」
「その服装、あなた執事ね? 執事、しつじ、ひつじ……あなたはメリーよ、はい決定!」
「いやちょっと待てやオイ!?」
アッサリと決められた事に思わず敬語がなくなる刃だったが、そんな彼を他所に次々とメンバー達に名前がつけられていく。
「ロキ、そしてキリヤ・タカナシね……じゃあ簡単にキリーで良いわね?」
「あぁ、構わない」
「miri……ミリンク、でも大人よね…じゃあリンクね!」
「お、おう…」
「蒼崎……蒼…それに犬だから…ブルーにドッグ、ブルドッグね!」
「「「「どんな名付け方だよ!?」」」」
「はい、ブルドッグでOKです!!」
「「「「そして了承しちゃったよ!?」」」」
「認めた、認めたわね! 言った筈よ、そんなホイホイ従っちゃうような人は好きじゃないって!」
「ガーンッ!!」
「「「「そしてまた落ち込むんかい!?」」」」
「あははははは! 皆面白いね~!」
そんな会話をしていた……その時だ。
「葵さん、楓さん!」
ちょうどそこに、二人のレジスタンス隊員が駆けつけてきた。
「先程、ユーリさんが目覚めました! すぐに来て下さい!」
「キリヤさん達のお仲間さんも目覚めました!」
「「「「「!」」」」」
待ち焦がれていた知らせに、一同はすぐに振り返った。
そして…
「ユーリィィィィィィィィッ!! 無事で良がっだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「うわっぷ!? か、楓、少し離れてくれ…!!」
「あわわわわ!? だ、駄目ですよ楓さん、まだユーリさん目覚めたばっかりなんですから!!」
医療室にて、無事に意識を取り戻していた銀髪の女性―――ユーリ。そんな彼女の目覚めを知った楓は泣きながら嬉しそうな表情で彼女に抱き付き、愛華が必死に楓をユーリから引き離す。
「うふふ♪ 無事に目覚めたようね、ユーリ」
「あ…葵さん…」
ユーリの下には楓と愛華だけでなく、葵や旅団メンバー達も揃っていた。ただしロキとBlazだけは二百式の方に向かっている為、ここにいる旅団メンバーはディアーリーズ、刃、miri、蒼崎のみである(ただし蒼崎は未だに部屋の隅で落ち込んでいるのだが)。
「あの、葵さん…あれから私は…」
「聞いたわよ? あなた、モンスターに襲われてた子供を助けようとして死にかけてたって。他人を助けようとするその意思は立派よ? おかげで子供は助かったんだし。でも、それであなたが死んでしまったらどうしようも無いわよ?」
「う……その、すみません…」
「ふふ♪ まぁ今は良いわ。それより、あなたを助けてくれた人がちょうどここにいるわ。ちゃんとお礼を言っておく事よ、これ凄く大事」
そう言って葵は下がり、代わりにディアーリーズがユーリの寝ているベッドの前に立つ。
「ユーリさんですね? 無事に目覚めて良かったです」
「君は……そうか、君が私を助けてくれたのか」
「僕は自分にやれるだけの事をやったまでです……あ、自己紹介がまだでしたね。僕はウルティムス、ウルと呼んで下さい」
「ウル、か……分かった。私はユーリア・レオンハルト、ユーリで構わない。命を救ってくれた事、感謝する」
「いえいえ。あ、何か欲しい物はありますか? まずは栄養をつけなくてはいけませんから」
「む、そうだな…ひとまず、何か飲み物を飲みたいところかな?」
「分かりました、すぐに持って来ますね」
「飲み物でしたら、私も一緒に向かいましょう」
「あ、私も行きます!」
ディアーリーズは目覚めたユーリの為に飲み物を用意しに向かい、刃と愛華もそれに同行していく。
「いやぁ~にしても本当に目覚めて良かった! ユーリに何かあったらどうしようかと…」
「ちょ、そんなにくっつくな!? 心配してくれていたのは分かったから!!」
「本当に良かった良かった良かった!!」
「人の話を聞いてるのかお前は!?」
「…やれやれ」
涙を流しながら抱き付いてくる楓を引き離そうとするユーリを見て、miriは溜め息をつく。
「いつもこんな調子なのか? アイツ等は」
「えぇそうよ。でも、あなた達の方も結構楽しそうじゃない」
「…ま、違いねぇな」
「うぅ、俺は…俺は…」
葵とmiriが笑みを浮かべ、蒼崎は未だに部屋の隅で体操座りをしている。
その時…
「…ッ!? うぁ、が、あぁっ!!」
「!? ユーリ、どうしたんだい!?」
「「「!?」」」
突如、ユーリが両目を押さえて苦しみ出した。突然の事態に楓は慌てて彼女を抱え、葵やmiri、蒼崎もすぐにユーリの下に駆け寄る。
「ぐ、ぅあ……はぁ、はぁ…」
「ユ、ユーリ、大丈夫かい?」
「あ、あぁ……大丈夫だ…」
「!?」
すぐに両目の痛みが消えたのか、ユーリは息を整えながらゆっくりと両目を覆っていた両手を離す。その時、ユーリの両目を見たmiriはある事に気付いた。
「お前、その目は…!!」
「え…?」
「!? ありゃりゃ、マジで…?」
「な、何、ユーリが一体どうしたんだい!?」
miriだけでなく蒼崎も驚いているのを見て、楓がmiriに問いかける。
「…ユーリだっけか」
「あ、あぁ…」
「お前さん、とんでもない能力が目覚めちまったようだぜ」
「…え?」
miriはユーリの両目を指差す。それを見た楓や葵達も驚愕する。
「な…!?」
「ユ、ユーリ、その目…」
「な、何だって言うんだ!? 教えてくれ!!」
「ユーリ、あなた…」
「その目、どうして色が変わってるのかしら?」
場所は変わり、調理室…
「おーい、そっちの肉は焼き上がったかー!?」
「早くしろ、飯の時間に遅れちまう!!」
「分量間違えんなよー!!」
「「…まぁ忙しそう」」
現在、調理班の面々がレジスタンスの一員達の為に調理を行っている真っ最中だった。レイモンズに「暇だから何か手伝いたい」と頼んだ支配人とフィアレスは彼に案内されて調理室にやって来たのだが、調理班が忙しそうに働いているのを見て、
「レイも
「あぁ、去年のクリスマスなんてマジで地獄だったからな…」
二人がそんな会話をしていたその時…
-ガンッ!!-
「痛ッ!?」
「おっと、ごめんよ!」
荷物を運んでいた青年が、支配人にぶつかってしまった。
「痛ぅ~…たく、ちゃんと周りを見、て…」
「…え」
ぶつかって来た青年の顔を見て、支配人とフィアレスは言葉を失った。
「…お前」
「ティーダ・ランスター…?」
「え? 何で俺の名前知ってんだ?」
「…あ、いや、何でもない。名前はそこらの人達から聞いただけだ」
「?」
「ティーダさん!」
そこに、一人の少年が駆け寄って来た。
「お、琥珀か」
「遅いじゃないですか! もう調理は始まってます、ティーダさんも手伝って下さい!」
「悪い悪い、すぐ行くから! …っと、悪いな。ぶつかっちゃって」
ぶつかった青年―――ティーダ・ランスターは少年―――
「…レイ、今のって」
「あぁ、間違いない……こっちの世界じゃ生きてるんだな」
『ティアナの事、よろしく頼んだぜ……レイ』
「…ま、平行世界なら当然だよな」
支配人はそう言いつつ、調理班の面々の仕事を手伝いに向かおうとする。しかし…
「あ、どうも支配人さん」
「「うぉわぁっ!?」」
いつの間にか姿を現していた竜神丸によって、それは阻まれた。
「竜神丸!? お前、いつの間にここに…」
「ついさっき、高町なのはとフェイト・T・ハラオウンによって保護されましてね」
「私もいるぞ」
「ありゃ、キーラさんまで…」
どうやらリバインズ姉弟も、先程このレジスタンスのアジトに到着したばかりのようだ。竜神丸の真後ろからキーラがひょこっと顔を出す辺り、彼女のブラコンは変わっていないんだなと支配人は思いつつ、今度は別の疑問を竜神丸に投げかける。
「…高町にハラオウンもいるのか?」
「えぇ。私達をここに連れて来た後、さっさとここのリーダーさんの下に向かっちゃいましたけど」
「…となると、八神はやてもいるって事か?」
「さぁ? まだ出会っておりませんので何とも」
「そうか…」
ティーダ・ランスター。高町なのは。フェイト・T・ハラオウン。
この三人以外にも、自分達の知っている顔が他にもいるのだろうか?
そんな疑問を思い浮かべる支配人だったが、ここで竜神丸が別の話題を持ち出す。
「あ、それはそうと支配人さん」
「何だ? こっちは考え事を―――」
「いえ。実を言うと私、支配人さんにも渡しておきたい物があったんですよ」
「? 何を……ッ!」
竜神丸から渡された物を見て、支配人の表情が一変する。
「…これは」
「あなたにとっては、馴染みの深い代物だと聞いてますよ?」
竜神丸から渡された物、それは…
「…貴虎」
戦極ドライバーと、No.04と描かれたメロンロックシードだった。
そんな彼等の様子も、ユーリの異変も知らないディアーリーズ達はと言うと…
「ユーリさんの件は、本当にありがとうございました」
「いえ、礼を言われるような事じゃありませんよ」
「ま、何処かの誰かさんは魔力の使い過ぎで倒れちゃいましたけどね」
「うぐっ!! す、すみません…」
「あ、あはは…ど、どんまい? ですよ」
ユーリの為の飲み物と食事を用意しに調理室に向かっていたディアーリーズ、そして刃と愛華。ディアーリーズは刃からも毒舌を吐かれ、落ち込むディアーリーズを愛華が励ます。
「ところで……えっと…」
「あ、申し遅れました。私は愛華と言います。よろしくお願いします、ウルさん、刃さん」
「えぇ、よろしくお願いします」
「こちらこそ、お見知りおきを。愛華さんも葵さん達のように、このレジスタンスの一員に?」
「あ、いえ。私の場合は、少々事情が違いまして」
「というと?」
「私、元はミッドチルダじゃなくて別の世界の住人なんです」
「! 愛華さんも…?」
「はい。とある事故に巻き込まれて、世界転移に使っていた装置が壊れてしまって。元の世界に帰れないまま、このレジスタンスの下で過ごしていたんです」
「おやま。それは気の毒に…」
「それから先は、何時になったら帰れるのか全く分からない状態になってしまって……それでも何時か帰れる日が来る事を信じて、今こうして戦い続けているんです」
「そうだったんですか…」
愛華は二人に対して可愛らしい笑顔を見せるも、二人の視点からは彼女が無理して笑顔を作っているのが容易に理解出来た。それに気付いた上で、ディアーリーズがある事を思いつく。
「愛華さん」
「はい、何ですか?」
「あの……もし良かったら、僕達と一緒に―――」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「「「!?」」」
突如、彼等の下に女性の悲鳴が聞こえてきた。
「今の悲鳴……
「あ、愛華さん!! すみません刃さん、ユーリさんの飲み物お願いします!!」
「え、ちょ、ディアさん!? ちょ…おぉぉぉぉぉい!?」
愛華とディアーリーズは悲鳴の聞こえた方向へと走り出し、ユーリの飲み物用意係は刃に押し付けられてしまうのだった。
そして、悲鳴の発生源である広間では…
「いや、やめて下さい!!」
「あぁん? うるせぇなぁ。テメェ如きに、魔導師である俺様の命令を拒否する権利なんか無ぇんだよ!」
「そうだそうだ! 大人しくディラックさんにその身を捧げろ!」
二人組の男達が、一人女性を壁際まで追いつめてから彼女を取り押さえていた。女性は自身の腕を掴んでいる男達の手を必死に振り払おうとするも、やはり男達の方が握力が強い為に、どう頑張ってもその手を振り払う事が出来ない。
「この…大人しくしやがれってんのが分からねぇのか!!」
「あ…っ!?」
魔導師である金髪の男性―――ディラックは女性の頬に無理やりビンタをかまし、女性が床に倒れる。そんな彼女を背の低い茶髪の男性―――アトロワが無理やり押さえつける。
「い、いや!!」
「ホラホラ、大人しくして頂戴よ~? ディラックさん怒ると超怖いよ~?」
「あぁそうだ。テメェ等みたいな戦う力も無い雑魚は、精々俺様の為に働いてくれりゃ良いんだ! …とはいえ」
ディラックは女性の顔や全身を見下ろす。ポニーテール状に結んだ長い黒髪。大人ながらも何処か幼さの残った可愛らしい容姿。細い腕にスラリとした綺麗な両足、そのふくよかな胸。まさに大和撫子を思わせるような雰囲気を持った女性だった。
「…へっへっへ」
ディラックは小さく笑みを浮かべてから舌舐めずりをする。
「お前、結構良い身体してんじゃねぇか」
「!? な、何する気ですか…!」
「何する気かって? 答えは簡単だ……こうするんだよ!!」
「!? キャアッ!!」
ディラックは女性が着ているシャツの胸元を掴み、ボタンを引き千切る勢いで無理やり開く。それによってシャツの下の下着が露わにされてしまい、女性は顔が赤くなり意地でもアトロワの押さえつけから抜け出そうとする。
「や、やめて下さい!!」
「うるさいっすよ! せっかくディラックさんが美味しく頂こうとしてくれてるのに失礼だぞ!」
「あぁ、確かに失礼だなぁ……という訳だ、罰としてテメェは徹底的にお仕置きしてやる」
「やぁ!! だ、誰か! 助けてぇ!!」
ディラックに犯されそうになった女性は必死に周りに助けを求める。しかし周囲にいる人達は全員が魔導師であるディラックを恐れているのか、誰も女性を助けようとはしない。
「あ、あぁ、そんな…」
「ヒャハハハハハハハ!! 残念だったなぁお嬢さんよぉ? 誰もテメェを助ける奴なんていな―――」
「おぉっと手が滑ったぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
-ジョリジョリジョリッ!!-
「―――あ?」
ディラックは思わず動きが停止した。何故なら…
「え…?」
「デ、ディラックさん…!」
「な、な、な……俺の髪が…!?」
ディラックの金髪が、飛んで来た剃刀によって剃られてしまったからだ。おかげで彼の頭は綺麗に丸刈りになってしまい、ディラックはワナワナと震えて剃刀の飛んで来た方向を見据える。
「あ、どうもすみません。ちょっと手が滑ってしまいまして」
剃刀を投げた犯人―――ディアーリーズは、悪びれない様子でヘラヘラとディラックに謝罪した。
当然、そんな謝罪で済む筈も無く…
「テメェ……死ぬ覚悟は出来てんだろうなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
ディラックは怒りに身を任せ、ディアーリーズに向かって殴りかかるのだった。
一方、ミッドチルダ南部…
「「……」」
「……」
ユリスとフレイアの目の前には、kaitoが上半身から地面に突っ込んでいる光景が存在していた。
「…ユリス」
「言うな、フレイア。俺達は何も見なかったんだ」
「そうじゃな。、儂等は何にも見とらん」
「だから見捨てないで頂戴よお願いだから、てか何これデジャヴ!!」
ユリスとフレイアに見捨てられそうになった為、すかさずkaitoも復活してみせたのは言うまでもない。
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