No.728407

熾天使外伝・運命の獅子 番外編・獅子なる守護者

第四話 英雄王激昂

2014-10-06 22:01:01 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1934   閲覧ユーザー数:1771

獅子なる守護者 其ノ四

 

宝剣と宝槍の、その煌く切っ先がウルに向けられそのまま射出される

全マスターとそのサーヴァントはアサシンを斃したその攻撃に目を見張る

空を切り裂き、ウルに迫り来る宝具の弾丸

それに対してウルは懐から一つの指輪を取り出して右手の指に嵌める

その指輪をベルトのバックルに押し付けた

 

《コネクト、ナウ》

「そんな物騒な物、寄越さないで下さいよ」

 

ウルが指輪を嵌めた右手を前に突き出した

するとその方向に藍色の幾何学的な魔方陣が展開し、アーチャーが放った二振りの宝具を防がんとする

 

誰もがそんな貧弱な魔法の『盾』で防げる代物ではないと考える

しかし、誰もがしたその予想に反しアーチャーの宝具は魔方陣に触れた途端、魔方陣に吸い込まれる

マスターとサーヴァントは驚愕し、アーチャーはその端正な顔を不愉快だと言うことを隠しもせずに歪める

 

「そのようなちゃちな手品で我の宝物をくすねるとは…其処まで壊されたいか贋作が!」

 

激昂とともにアーチャーの背後に再び空間が波打ち、煌びやかな宝具たちが姿を現す

その宝具の数はおよそ10丁を超える

 

「そんな、馬鹿な…」

 

思わず声を上げたウェイバーだったが、それは全てのマスターが抱いた感想だった

宝具を3つ、4つ、もしくはそれ以上備える英霊も中にはいる

しかしいる事にはいるが精々4つが限度で、それ以上の宝具を持つのは破格の英霊だろう

その破格の英霊が今、目の前で宝具を解放しようとしているのだ

 

「そのちゃちな手品で持ってどこまで凌ぎ切れるか…。さあ、見せてみよ贋作めが!!」

 

アーチャーの号令によって全ての宝具が我先に、と言わんばかりにウルへと殺到する

空を切り裂き、空を揺るがす轟音が響く

閃光が迸り、闇夜を染める

しかしその宝具の群れはアーチャーが意図した結果とはならない

何故ならば、ウルが展開した魔方陣がアーチャーが射出した宝具を全て吸い込んでしまったからだ

それでもアーチャーは宝具を射出する手を止めない

自身を強く見据える贋作の目が、煩わしいからだ

 

「―――どうやらあの金色は宝具の数が自慢らしいが、だとするとガーディアンとの相性は良いとは言えんな」

 

セイバーとランサー、二人のサーヴァントが目を見張る中一人、ライダーは呟いた

 

「ガーディアンはどういうわけかは知らんが、武器をあの魔方陣で防ぐことが出来る。金色もああも節操無く投げまくっては動きも取れなくなるだろうに、融通の聞かぬ奴よのう。―――それに」

 

アーチャーは宝具を撃ち終える

その数、十六丁。明らかに尋常な英霊ではない

―しかし、それは異世界の存在であるウルも同じことである

 

「お返ししますよ。英雄王(・・・)殿」

《コネクト、ナウ》

 

再度ウルはバックルに指輪を押し付け、前面に魔法陣を展開する

すると―――

 

「はぁ?」

 

間抜けな声を出したのはやはりウェイバーだ

さもありなん、なぜならウルが展開した魔方陣から、先ほどアーチャーが放った宝具が、そっくりそのまま射出されたからだ

 

「坊主よ、そう驚くことでもあるまいに。魔方陣に吸い込んだのなら、吐き出す(・・・・)事もまた可能であろうよ」

 

ウルが放った二振りの宝具は、アーチャーが立っていた街灯のポールを切断する

必然、アーチャーは地面へと引き摺り下ろされることと成る

 

「痴れ者が…。天に仰ぎ見るべきこの我を、同じ大地に立たせるかッ」

 

アーチャーの怒りは限界まで極まったのだろう

青筋を立てて右手を挙げると、その背後の空間が金色に揺らめく

 

「その不敬は万死に値する。そこな贋作よ、もはや肉片一つ残さず塵としてくれる!」

 

三度アーチャーは背後に宝具を展開する

その宝具は先ほどに倍する数だ

流石のウルとライダーもこれには押し黙り、渋い表情となる

 

緊迫した空気、アーチャーは憎悪にも似た感情を込めた瞳でウルを睨む

―が、突然その視線の方向を転換し、忌々しそうに吐き捨てる

 

「…貴様如きの諫言で、王たる我の怒りを静めろと?大きく出たな、時臣…」

 

口元をひく付かせギリッと小さく歯軋りをすると、背後に展開していた宝具の群れがフッと姿を消した

 

「命拾いしたな、贋作…」

 

ウルを一瞥すると、アーチャーは居並ぶ英霊達を見渡す

 

「雑種共、次までに有象無象を間引いて置け。我と見えるのは真の英雄のみでよい」

 

最後にそう言い放つとアーチャーは実体化を解いた

金色の鎧の輝きは、もう残滓すらその場には無い

 

「ふむ、どうやらアレのマスターはアーチャー自身ほど剛毅な質ではなかったようだな」

 

ライダーは多少苦笑しつつも嘯く

しかしこの場にいる他の面々は気が気ではない

何故なら一番危険なサーヴァントは撤退したが、未だバトルロイヤルは終わってはいないからだ

 

「…ガーディアン、貴方は『同盟を組む意思は有る』と言ったけれど…相手は考えているの?」

「今は特に。ですが、組むのだったらサーヴァントだけでなく、マスターの人柄も考えますよ」

 

まずはアイリスフィールが同盟を暗に匂わす

しかし、ウルが発した言葉に顔色を悪くする

 

「ガーディアンよ、マスターの人柄、とはどう言う事だ?同盟を組むべきサーヴァントを選ぶのは分かるが」

 

今度はランサーがウルへと問いを投げかける

それに対してウルは苦々しい顔で答えた

 

「僕は生前、合理性の塊みたいな人物、マッドサイエンティストとしか言い表せない人物、ただ一人に執着して他を省みなかった人物を知っていましてね。そんな人物と組むと、下手をしなくとも途中で切り捨てられるに決まっているでしょう?」

「…成程、良く分かった」

「もうホントに…あの人は旅団のために少数を切り捨てようとするし、あの人は以前の美空さんを消すしお姉さんが来て丸くなるかと思ったら全然だし、あの人は八神はやて至上主義だし………」

「お、おいガーディアン?」

「あっ…いや、とりあえずマスターの人柄を気にする理由はそんな所です。今現在はどの陣営と組むかは全く考えていませんよ、アーチャー陣営は僕側はともかく、あちらが無理でしょうしね」

 

そのとき、戦場に響く声があった

 

『ランサーよ、今宵はこの辺りで良い。撤退しろ』

「了解しました、我が主」

 

ランサーは双槍の構えを解き、油断無いままにセイバーを見据える

その瞳同士が雄弁に語り合っていた

―決着はいずれまた、尋常に―と

そしてランサーは実体化を解き、撤退する

実体化を解いた際の風が戦場を軽く撫でる

 

「それでは僕もこの辺りで。ライダーにセイバー、次に会うとき僕達は敵同士かそれとも…いや、詮無きことですね。また今度」

《テレポート、ナウ》

 

ウルは友達に別れを告げるような気軽さで去っていった

またもバックルに先ほどとは違う指輪を押し付けると、足元から上っていく魔方陣とともに転移していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが本物の英雄達…やっぱり迫力が違いましたね。…あのギルガメッシュですら、団長には遠く及びませんでしたけど…」

「それで、ウル。同盟を組めるような相手は居たのか?」

 

間桐邸に帰還したウルとそれを迎えた雁夜

そのままウルと雁夜は居間で作戦会議に入った

 

「そうですね…。まずライダー陣営が一番の候補ですね。ライダー本人の人柄は分かりやすいですし、マスターの方も戦場に自ら出てくる根性は評価できます。それが蛮勇で無ければいいんですけどね」

「成程、第一候補はライダーっと…。それじゃ、次は?」

 

ウルの評価を雁夜は元ジャーナリストらしく、手際良くメモに纏めていく

 

「次はセイバーですね。騎士らしく信用の置ける人物です。それにアインツベルンのマスターも正直そうでした。…しかし、一つ気になることが」

「なんだ?」

「…僕が『マスターの人柄を考慮する』と言ったとき、僅かに顔を顰めたんです。それがどういう意味なのか分からないうちは、警戒せざるを得ませんね」

「サーヴァントの直感って奴か。じゃあ次、アーチャーは論外として、ランサーだな」

 

アーチャーは論外と断じた雁夜

これにはアーチャーとウルの相性の悪さだけではなく、マスター同志の因縁も入ってることは用意に頷けるだろう

 

「ランサーは…本人の人柄はセイバーと同じく、信用には置けるでしょう。でも信頼までは行きませんね。それにマスターも」

「マスターって言うと…途中で聞こえてきたあの声か。確かに高慢そうだったな」

「典型的な魔術師とでも言えばいいんでしょうね。ただ、ランサーを問題なく使役してることからそれなりの魔術師であることは明白ですよ」

「そうだな…。よし、今日はこれくらいにしておこう。俺は少し寝るからお前もきちんと休めよ」

「はい、分かりました。おやすみなさい、マスター」

 

そう伝えると雁夜は寝室へと赴く

ウルは居間でもう少し作業をするつもりのようだ

 

こうして、英霊が5人も集まった聖杯戦争の夜は終わりを迎えたのだった

 

さて、ウルはどの陣営と同盟を組むのでしょうか?

そもそも同盟を組むのでしょうか?!

次回はあの『青髭』が…出るんでしょうかね?


 
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