No.723933

快傑ネコシエーター11

五沙彌堂さん

51、おひぃさん
52、さつきとキジコと侯爵
53、侯爵の職場見学
54、ガード伯爵とエリカ17歳
55、氷の刃と日輪の十字架の使い手

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2014-09-29 12:19:41 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:569   閲覧ユーザー数:565

51、おひぃさん

 

「源さん、銀ねぇのことなんでおひぃさんって呼ぶの。」

美猫はおひぃさんの由来が気になり思い切って源さんに聞いてみた。

「そりゃ、竜造寺家のお姫様っていう意味じゃよ。」

「高位の猫又の家系でたいそう大きな家じゃった。」

「名前で呼ぶなど畏れ多いのでお姫さんだけで通じたのじゃ。」

「竜造寺家がそんな立派な家だったなんて聞いたことが無いよ。」

「そりゃ100年以上前の話でおひぃさんがまだ小さい頃に没落したんじゃ。」

「竜造寺家の執事の鍋附田ってやつが竜造寺家の財産を根こそぎ奪ったんじゃ。」

「お屋敷を売っておひぃさんと妹姫さんたちが食べていくのが

やっとの生活を強いられたんじゃ。」

「おひぃさんは苦労して妹姫さんたちを養って何とか自立できるまで面倒みたんじゃよ。」

「おひぃさんは今でいうところの未公認のエクスタミネーターの

ようなことをして稼いでいたんじゃよ。」

「白鞘の霊刀と聖別された銀の細身の懐剣をナイフに仕立て直したものを

得物にしておった。」

「今でこそ変幻自在の高位のライカンスロープじゃが

当時はほとんど体当たりの体術のみが武器じゃった。」

「当時から外見は17歳~25歳で変化してないが変幻自在になったのは

20年前ぐらいからじゃなあ。」

「8年前に亜人街に現れた右京門邦春っていう坊ちゃんに入れあげるまでは

氷の刃と呼ばれるほどの凄腕のエクスタミネーターじゃった。」

「7年前の事件以降は本人が右京門陸軍中将の事件の時に話していた通りじゃろう。」

 

「ところでなんで私がこの場にいるのかな、ものすごく怖いオーラが感じられるのだが。」

とても不安そうに侯爵は美猫と源さんに尋ねた。

「瓦おじさんがここにいてくれれば絶対に攻撃してこないからだよ。」

「文字通り猫をかぶって本性をださないじゃろう。」

「誰が攻撃してくるの、なんか巻き添えになりそうで不安なのだけど。」

「なんか銀さんの様子が変だけど何かあったの、何かぶつぶつと

物騒なことを言いながら一心不乱に日本刀を研いでいるけど。」

雅が不思議そうにみんなに尋ねた。

 

52、さつきとキジコと侯爵

 

コンビニエンスストアは通常ペット厳禁であるが亜人街のこの店にはライカンスロープ

のお客が獣化してくることもあるのでそれほど煩くないのである。

ただ普通の動物は一応お断りが建前だが雅の家族の一員として扱われているキジコに

対する対応は特別だった。

キジコはお客としてやって来て買い物をきちんとしていくので冷やかしや本の立ち読み

の客よりもずっと売り上げに貢献しているのである。

キジコは首から小さな財布をぶら下げてやって来て、

自分の体格で何とかなるものは咥えてレジまで持っていき、

大きなものは店員を呼んで取って貰い、購入後は雅の部屋まで

配達してもらうのであった。

店長をはじめ店員一同はキジコを特別に上客として大事にしていた。

さつきはキジコとすっかり仲良しになり休憩時間などは一緒に遊んでいたりしていた。

さつきはキジコの賢さをよく知っているためノートパソコンに文字を入力してもらい

簡単な会話まで可能になっていた。

 

「キジコちゃん、さっき騒がしかったけど何があったの。」

みゃー

かちっ、かちっ、かちっ、かちっ、かちっ、かちっ、かちっ、かちっ、かちっ、・・・。

「なるほど、それで銀さん切れて荒れまくっていたんだ。」

「ほほう、君はキジコちゃんとそれで意思の疎通ができるのですか。」

「はわっ、失礼ですがあなたはどちらさまでしょうか?」

「これは失礼しました、私は四方野井雅の遠縁の四方野井瓦と言います。」

「あなたが瓦おじさんですか、美猫ちゃんから噂は聞いています。」

「初めまして、私は美猫ちゃんの友人で安達原さつきと言います。」

「キジコちゃんはノートパソコンのキーボートが打てるのか。」

「すごいな、私などはパソコンに触る事すらできないというのに。」

実際、侯爵は極度の機械音痴でパソコンに触れると壊すか誤動作させるので

側近の人たちは侯爵をパソコンから1m以上遠ざけていた。

「キジコちゃんは凄いんですよ、一階のコンビニで買い物が出来たりするんです。」

「人が何を考えているかわかるみたいで悪い人には絶対近づかないんです。」

さつきはまるで自分のことのようにキジコを誉めていた。

みゃー

キジコは照れ臭そうにさつきの手にじゃれ付いていた。

 

53、侯爵の職場見学

 

侯爵が雅の普段の職場を見てみたいというので美猫が雅の事務所まで案内した。

「ここがみやちゃんとあたしが所属する高田春樹事務所。」

「一番奥の窓際の机で居眠りしているのがここの所長の春さん。」

「机の上のパソコンに齧り付いている乳眼鏡が事務の糞ババア。」

「あんたなんていう紹介しているのよ、ところでこちらはどなた?」

「初めまして、申し遅れましたが私は雅の遠縁の四方野井瓦と言います。」

「失礼いたしました、雅君の親戚の方でしたか、私ここの経理担当で稲原紀美と申します。」

「今、お茶を持ってまいりますので応接間のソファーでゆっくりと寛いでください。」

紀美は給湯室でお茶を入れに行った

「紀美さん滅多にお茶なんか入れないくせにこういう時だけ格好つけて、

多分手間取って時間がかかるからゆっくり待っていましょう。」

美猫は皮肉たっぷりに言った。

「いつもはみやちゃんが手際よくお茶を入れてお客さんをもてなすんだよ。」

「その方が効率がいいしお客さんも喜ぶし。」

その時、

カチャーン

床に茶碗を落として派手に割れる音が響いた。

「あっ、やっぱりやったか。」

「紀美さん緊張しているようですね。」

美猫は予想通りという感じで意地悪く言った。

「しょうがない助け船を出すか。」

美猫は給湯室に救援に行った。

しばらくして涙目をした紀美がお茶を持って応接間にやって来た。

「すいません、遅くなりました。」

「いや、いいのですよ。本当にお気持ちだけで。」

侯爵は紀美の悪戦苦闘を想像して気の毒に思っていた。

しばらくして、お茶菓子を持って美猫が帰って来た。

「緊張せずに自分のお茶を入れる様にすれば問題なくできるのに。」

「大体ここの事務所はお茶はセルフサービスで自分で入れるのが基本だから。」

雅と大和警部補が現場から戻って来た。

この事務所にいつの間にか大和警部補の指定席が出来ていてかなり私物も持ち込んでいた。

「瓦おじさん遊びにいらしたのですか。」

「一度、雅君の職場を見ておきたかったのだよ。」

「ではお茶でも、あれお茶が入っていますけど誰が。」

「稲原さんが入れてくれたのだよ。」

「あっみやちゃん、あたしが後片付けしたから、大丈夫2次災害は起きていないから。」

美猫がフォローをいれた。

「紀美さん大丈夫でしたか怪我とかされませんでしたか。」

雅は紀美が緊張して怪我でもしてないか心配していた。

「えぇ大丈夫、ありがとう雅君。」

定時のチャイムがなり大和警部補が、

「みやちゃん、瓦さんもいることだしこのまま飲みに行こう。」

「せっかくだから、春樹さん、紀美ちゃんも一緒に行きましょう。」

雅は美猫に今朝の悪戯で銀が激怒していたことを心配して、

「もう、銀さんの機嫌は直っているかなぁ、ネコも源さんもやり過ぎだったぞ、あれは。」

「とりあえず銀ねぇ、源さんを徹底的にいたぶって少しは気分も晴れたと思うけど。」

「では、みやちゃんの遠縁の四方野井瓦さんも交えて事務所の親睦会と参りましょう。」

いつの間にか目を覚ました高田春樹が会話に加わっていた。

 

54、ガード伯爵とエリカ17歳

 

エカチェリーナ・キャラダイン少佐ことエリカはガード伯爵とは古い付き合いで

国際S級エクスタミネーターに成りたての頃5年前に英国留学で海外研修の時、

直接指導を受けた。

指導教官としてのガード伯爵は文字通り鬼教官で一度の訓練では絶対合格できない、

それもバンパイアハーフでも皆無だった。

しかし、当時17歳のエリカは1度の訓練で全て合格しガード伯爵を驚喜させたの

であった。しかもバンパイアハーフではなく、訓練された人間であったのでガード伯爵

の喜びもひとしおだった。

体力だけではなく対魔力もまさに人間離れしていた。

ガード伯爵はエリカをディナーに招待してその功を労った。

「キャラダイン君、君は普通の人間でありながら訓練だけで、対魔力しか自慢できない

バンパイアハーフ以上の実力を示してくれた、素晴らしい。」

「いいえ、ガード伯爵、私は恩讐に囚われた人間で決して誉められた存在ではありません。」

「君の義弟達の悲劇のことは調査済みだ、君は復讐のためではなく自分と同じ悲劇を

繰り返さないために強くなったのだろう、充分に賞賛に値すると思う。」

「もし君が仇を討つだけなら、一人で収容所に押し入って無期懲役犯を殺すこと

ぐらい簡単なはずだ。」

「そんな無駄なことは、聡明な君は絶対にしないだろう。」

「デミバンパイア単独の犯罪者が大多数を占めているが討伐するのはデミバンパイア

だけではないのだ。」

「恥ずかしい話だが真祖バンパイアの中にも犯罪者が存在する。」

「国際S級エクスタミネーターはネゴシエーターも兼ねているが生かしておいては

いけない真祖バンパイアもいるのだ。」

「君の実力なら何れ真祖バンパイアの犯罪者を抹殺する任務を熟せるようになるだろう。」

エリカはガード伯爵がとんでもないこと言ったので驚いて反論した。

「真祖バンパイアなど倒せるものなのですかそんな武器は存在しないはずです。」

しかし、ガード伯爵は微笑みながら答えた。

「真祖バンパイアが自分を倒せる武器など提供するわけがないだろう。」

「しかし、人間が作り出した武器の中に実際に真祖バンパイアを倒せる武器が存在する。」

「残念ながら公には出来ない、真祖バンパイアによって破棄される可能性があるからだ。」

「50年位前には確かに存在していた不死族に対しそれを覆す伝説の武器が。」

「君が今住んでいる国に伝わっていたはずだ。」

「探してみる価値はある、君あるいは君が信頼する人物の手のもとで守って欲しい。」

「頼んだぞ。」

ガード伯爵はエリカに頭を下げた。

 

55、氷の刃と日輪の十字架の使い手

 

竜造寺銀は通り名を氷の刃と呼ばれる凄腕の未公認エクスタミネーターだった。

通常は1人で仕事を熟していたがふつうの人間でありながら国際S級エクスタミネーター

だった密教の慧快という僧侶と組んで仕事をすることがあった。

慧快は日輪の十字架という自作の樫の木の武器を得物にしておりデミバンパイアに対し

圧倒的な強さで抹殺していた。

慧快は銀を年長者なので銀姉さんと呼んでいたが銀はそれが気に入らず17歳の外見で

いることが多かった。

「銀姉さん、今度の相手は一寸厄介な相手なんだ、報酬の分け前7:3でいいから

手伝っておくれよ。」

「気に入らないねえ、せっかく外見を17歳の姿にしているのに27歳のおっさんに

姉さん呼ばわりされるなんて。」

「私みたいな若造が、姉さんのような大先輩をつかまえて呼び捨てなんかできないよ。」

「それに今度の仕事はデミバンパイアと配下のライカンスロープの数が多いんだ。」

この人懐っこい青年僧を無碍にできずに銀は協力を約束した。

当時のこの国には真祖バンパイアは大検校と呼ばれた大谷行基しかおらず、

海外から流入してきたデミバンパイアは無法状態だった。

この大検校から慧快は仕事をもらい非道なデミバンパイアを討ち取っていた。

大検校はバンパイア先進国の英国からデミバンパイア退治のノウハウを学んでいた。

まず、慧快を英国留学させ国際S級エクスタミネーターにして英国の最新の技術を

学ばせた。

慧快は当時未公認の凄腕のエクスタミネーターに助力を求め、国内の治安を守っていた。

「今回退治するデミバンパイアは夜須ヶ峰に巣食っている連中なんだ。」

「お国の近代化に逆行する様な人身御供や従わなければ拐かしも辞さない奴らで、

周りの人々も困り果てているんだ。」

「で退治するのは何体だい。」

「デミバンパイアが3体配下のライカンスロープが15体だよ。」

「デミバンパイア3体は私が狩るとしてライカンスロープ多分狒々だけどこいつらは

デミバンパイアの支配下から離れても、また別のデミバンパイアの下に仕える外道だから

生かしちゃ置けない、だから姉さんの手で皆殺しにして欲しいんだ。」

「坊主が皆殺しとか穏やかじゃないないねえ。」

「どうせ、私は地獄行きさ、それだけの業を背負っちまってる。」

「わかったよ、手伝ってやるけど報酬7割も貰ってもいいのかい。」

「本来、頭割りなら15:3のところだから、構わないよ。」

「何言ってんだよ、デミバンパイアとライカンスロープじゃ格が違いすぎるだろう。」

 

夜須ヶ峰の夜明けが近い頃、2人は戦闘の準備を始め、夜明けとともに襲撃する予定だ。

大きな岩の上で胡坐を組む慧快は朝日が昇るのを待っていた。

やがて朝日が昇ると日の光を全身に受け超常的な力を得た慧快は日輪の十字架を持って

走り出した。

銀は寄り添うように飛び跳ねながらついて行った。

敵の砦につくと銀は有無を言わさず獣化した狒々の首を霊刀で刎ねていった。

15体全ての首を刎ね終えると他にも眷属がいないか注意した。

慧快は雄たけびを上げながら洞穴に進んでいき入り口に近い所にいたデミバンパイアを

日輪の十字架で串刺しにした、日輪の十字架の大日如来の梵字が眩しく閃き、

デミバンパイアは指先から塵に変わっていった。

慌てて飛び起きたデミバンパイアと既に襲いかかって来たデミバンパイアを2体纏めて

日輪の十字架で串刺しにした、日輪の十字架の大日如来の梵字が眩しく閃き、

デミバンパイア2体ともは指先から塵に変わっていった。

慧快はデミバンパイアの爪でかすり傷を負っていたが気にせず、生贄にされた娘たちの

骸を荼毘に付して弔った。

銀は慧快が経を読み終えると、慧快の傷の手当を始めた。

「あんた、またそんな無茶してそんなに怪我して、命がいくつあっても足らないよ。」

「なあに、生贄にされた娘さんやその親御さんの苦しみに比べれば軽いものです。」

「しょうがないねえ、それがあんたの性分じゃ。」

銀は呆れながらもこの愚直な男とまた組んで仕事をすることになると思った。

 


 
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