No.706506

義輝記 星霜の章 その五

いたさん

義輝記の続編です。よろしければ読んで下さい。

2014-08-06 00:32:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1058   閲覧ユーザー数:903

【 洛陽七不思議 の件 】

 

〖 洛陽 宮殿内 通路 にて 〗

 

蒲公英より…………不思議な話を聞いた。

 

つい最近になり、洛陽に伝わる七不思議。

 

『年を取らぬ童』

 

『月様の裏の性格』 

 

『洛陽の《お猫様屋敷》』

 

『華雄の真名が無い』 

 

『《とある人物》の年齢を語ると、どこからか射られる矢』

 

『風様が偶に見に行く《こめんと欄》』

 

『………………………?』

 

ーーーーー

 

始めは、新人である私への洗礼かと思っていた…………。

 

とある日、仕事の休憩中に、馬岱……蒲公英が教えてくれた内容も、この話題。 都では、この話題で持ちきりなんだという。

 

蒲公英「あぁ~! 蒲公英の言うこと信じてな~い! 顔で分かるんだよ? 顔でぇ~!!」

 

西涼の錦馬超の従姉妹にあたると聞いていたが………よく喋る女の子だ。

 

私は、顔を触りながら、可笑しなところが無い事を確認して反論する。

 

愛紗「しかしだなぁ………このような話は、何かしら訳というか理由が付き物であってだな。 現実に起きている事は少ない………」

 

蒲公英「へぇ~? 愛紗~怖いんだぁ~? 蒲公英達が怖い話してると、何時もは『怖い物なんかありません~!』なんてぇ~顔して、早足で去っていたけど………やっぱり怖いんだぁ!!」

 

愛紗「そ、そそ、そんな事は無い!! ただ、青龍偃月刀で処理出来ないから苦手なだけだ!! お、お化けには、足も実体も無いという話だぞぉ!?」

 

実体があれば、叩き斬るとか縄で捕縛するとか、抵抗出来るのだが………。 

 

★・・・・・・☆・・・・・・★

 

お化け『………実体が無いから反撃無効。 でも、俺からは好き放題させて貰う! 勿論、お前に拒否権など無~い!!』イヒヒヒヒッ!

 

愛紗『く、来るな、来るなあぁ~!!』

 

★・・・・・・☆・・・・・・★

 

ブルブル! そんな不公平な輩など正直……相手に……したくない!!

 

蒲公英「………愛紗も『脳筋』って事だったの? ヤダよ、これ以上脳筋増えたら、蒲公英の担当事務処理が増えちゃうよぉ!!」

 

だ、誰が脳筋だぁ!! 春蘭よりは遥かに……っても、分からないかぁ……。

 

ーーーーーー

 

次の日、蒲公英から竹簡が手渡され、七不思議の確認をするように頼まれた。

 

『公務があるから駄目だ!』と断ったのだが、私の本日の仕事がコレだと申し渡されたそうだ!!

 

……………『晋』との戦が始まっているのに、私の仕事は……噂の解明か?

 

しかも、正式な命令書を蒲公英に預けてくるとは…………。

 

『 洛陽の住民からの、七不思議の解明要望が高まりつつある。 住民慰撫の大事な仕事、董卓軍で真偽を確認をし、速やかに公表しするように。

 

追記 天城颯馬からの要望により、関雲長が最も適しているとの奏上を受け、関雲長に調査を命ずるもの也 』 

 

私が適任と奏上したのは…………『天城颯馬』様?

 

な、何故! 天城様が蒲公英の悪巧みに一枚噛んでいるのだ!?

 

思い当たる事を考えていたら………ありすぎた………。

 

や、やはり、私の事を憎んでおいでなのだ………ガクッ! 

 

確か、朱里の机に置いてあった『指南書』に『………初めは生娘の如く接し、後は飢える獣のように!』と書いてあった! 

 

うむぅ………きっと、この事を指すに違いない!! 流石……朱里が読むだけの物だ。 私でも分かるように図解入りで示してくれてあった………。

 

確か、男同士……半裸で格闘をしている絵だったな。 多分、相手を油断させ、隙をみて全力で襲い掛かれというのだろうな。

 

私は天城様を信用していた分、落ち込みつつ調査に向かった。

 

 

◇◆◇

 

【 真相は……… の件 】

 

こうして、洛陽七不思議の調査が始まった。

 

何故、調査する者は、私だけなんだぁ!?

 

せめて、書記とか連絡する為の要員ぐらい、必要なのでは!?

 

天城様にお願いしたら……『皆、決戦準備で忙しい!』と断られた。

 

この調査は、苦渋と困難を極めるな。 ……纏める事が出来たら、自分を自画自賛したい。 褒めてくれる者も居ないだろうしな………。

 

ーーー

 

★『年を取らぬ童』☆ 

 

他の者に聞いて直ぐに判明。 

 

天の御遣いの一人『山縣昌景』殿だった。 

 

昌景「儂の齢かぁ? ふ~む、六十越えてるのは覚えておるが……はっきりした齢となるとのぉ~?」

 

信玄「えぇ、変わりませんよ? 私が物心付いた時から変わりません!」

 

信廉「皺も白髪も無いですからねー? 人魚の肉を食べたやら、不老不死の妙薬を飲んだとも言われてましたが……本人は、何もしてないと………」

 

あの容姿で六十を越えているだとぉ!?

 

私は、この事実に唖然とするしか…………なかった。

 

ーーー

 

★『月様の裏の性格』☆

 

あの、お優しい月様が………? 

 

御本人には聞けず、周辺の聞き取りから始めたら……少し分かった。 

 

禁裏兵「次の弾を請求されとき、いつもの董卓様とは違う……禍々しい存在が辺りを覆っていたんです!」

 

護衛兵「天城様の生死を賭の対象にした、トンデモナイ奴らが居ましたので、董卓様と風魔様が懲らしめる相談をされていました。 お二人共、剣呑な気配を示されましたが、俺も同じ思いだったので、咎める気はありません!!」

 

そんな時、西涼に居た詠殿が短時間だが………戻られた。

 

天城様に、策の指示を仰ぎたくて、急遽寄ったという。

 

詠「あの子は………何か限界を超えると、性格が反対になるというか嗜虐嗜好を好むというか………つまりね、『魔王』になるのよ!」

 

『魔王』になる?

 

信長様に関係があるか不明だ。

 

詠「いいっ!? ぜっっったいに!! 月の事や私が喋ったなんて漏らすんじゃないわよ!? あの子、颯馬にその性癖バレるのが……とても怖がってるから………。 だから、その内容も公開禁止!!」

 

………仕方ない。 今、仕える主の忠義に報いなければな。 

 

私は、書き留めた竹簡を……人目に付かないよう、庭で焼いて処分した。

 

月様の部分だけ………適度に誤魔化すか。

 

ーーー

 

★『華雄の真名が無い』☆ 

 

詳しくは知らないが、華雄殿に真名が無い。 

 

その件で聞こうと部屋を訪ねると………留守だった。

 

愛紗「また、鍛錬に出掛けたのか? ………あれっ?」

 

何時も自分の幸せより、主の守護を優先する華雄殿。 密かに尊敬の念を持っているのだが、何時も持って行く金剛爆斧が置いてある。

 

宮廷内の者に聞くと、川へ向かったと聞く。

 

胸騒ぎがしたので…………後を追いかけた。

 

ーーーーーーー

ーーーーー

 

〖 洛陽 郊外 河川敷 にて 〗

 

華雄「…………………」ポイッ ────ポチャン!

 

ハァ、ハァ、ハァー!

 

どうやら………華雄殿は無事だったようだ!

 

川岸に腰を下ろし、顔を川に向け……小石を投げている。

 

でも、様子が変だ……? 

 

『声を掛けてみようか?』……と思い、足を踏み出そうとすると……

 

華雄「…………愛紗……か?」

 

顔を此方に向けず、声を掛けてきた!? 

 

愛紗「………何故、分かったのです! 気配が漏れていました?」

 

華雄「後ろからの足音、呼吸を整えた時の声、それと……これだよ」

 

華雄殿の指した場所は、自身の左側。 そこに磨かれた銅鏡が置いてあった。

 

華雄「武人に取って左側は死角だから。 直ぐに誰が来たか分かるように準備してあるんだよ。 このような隙だらけの時でもな………」

 

私は益々感服して、傍に近付こうとした! この孤高の武人と言葉を交えてみたかったのだが………。

 

華雄「………すまん、愛紗。 今日は……誰とも会いたくない。 仕事なら別だが……。 とある事情があり、休みにして貰った!」

 

愛紗「どうしたのです? 貴女程の武人が……泣いている!?」

 

華雄「──────!」ガバッ!

 

少し近付いた時に、銅鏡に写し出された物。

 

…………目を赤くして、落涙数行が克明に分かる、華雄殿の泣き顔だった。

 

慌てて銅鏡を取るが、既に私に見られている。

 

顔を見せたくない華雄殿は、こちらを向かずだが、訳を話してくれた。

 

詳しくは言えないが………と前置きをして。

 

華雄「私が真名で呼ばれていた記録があったそうだ………」

 

ポィ───────ッ!   ポチャン!

 

愛紗「───────!」

 

……『華雄殿の真名があった』と言う報告。 

 

この大陸で真名が無い者など少数。 

 

親より授けられる……自分の根幹になる名前。

 

それなのに、真名を受けた記憶が無いため名乗れず、署名な将なのに関わらず、『真名が不明の半端者』扱いされ続けたと言う………華雄殿! 

 

どんなに喜んだ事か……多分、私の思っていた以上の喜びようだったのだろう! 真名を最初から知っている私には、とても考えれない気持ちだろうと察しられた。

 

でも、どうして……落ち込み………泣いて………………?

 

華雄「その後……詳しく……調査して貰ったら……………」グッ!

 

……その喜びも束の間。 結局は『誤報』だったそうだ…………。

 

ポイッ、ポイッ……シュシュシュシュッ!!

 

ポチャッ! ポチャッ! ポチャッ! ボチャボチャボチャ!

 

華雄殿は、一掴みして小石を拾い上げて、川面に向かい……滅茶苦茶に石を投げつけた……………。

 

華雄「………なぜなんだ! どうしてなんだよ! 今頃になって……私に希望を与え……また奈落の底に叩き落とすんだ!? 馬鹿野郎ぅぅぅ───!!」

 

華雄殿は、座ったまま………大声で叫んだ後、嗚咽を漏らす。

 

華雄「ううぅぅぅ─────────!!」

 

正直───声の掛けようがなかった。 

 

『 真名が無い者の気持ちは、真名が無い者しか分からない! 』

 

私が何か言っても、慰めにもならない。

 

私は、短くも……ゆっくり想いが届くように……語る。

 

愛紗「…………それでも、『皆さん』待っています。 貴女の元気な姿を見たい為に。 私も…………待っていますので…………!」

 

私は、華雄殿に声を掛けた後、宮廷内に戻った。

 

いつか、時が解決してくれれば………そう想わずには、いられなかった。

 

ーーー

 

★『《とある人物》の年齢を語ると、どこからか射られる矢』☆

 

〖 洛陽 宮廷内 愛紗部屋 にて 〗

 

蒲公英より貰った竹簡を読み、中身を確認していた。

 

愛紗「その人物の名は…………こ『シュッーン! ガッ!』………」

 

一本の矢が、私の顔近くを通り過ぎて………壁に刺さる。

 

窓を開けて屋根を見た。 庭を見た。 天井も見た。

 

入り口も見た。 部屋全体を見た。

 

………………異常は無い。

 

 

・・・・・・☆

 

 

────よしっ! 調査終了!

 

ーーー

 

★『風様が偶に見に行く《こめんと欄》』☆

 

〖 洛陽 宮廷内 風の部屋 にて 〗

 

洛陽の三軍師と恐れられた風様が……すっかり怠惰な生活に陥ってしまっている。 原因は、敵の計略が……周到に動いてている為だ。

 

風様の真名を……松永が謀略を用いて汚したのが原因……だと。

 

☆★☆  ☆★☆  ☆★☆  ☆★☆

 

『真名』とは神聖にして─────その人物の魂を示す大事な物。

 

この世界は……自分達の魂を、他人にも伝わる手段として『文字』を利用した。 五感で伝える事が出来る、簡単で有効な方法。

 

『目』で見て、『口』で発音し、『耳』で聞く。 

 

『鼻』と『手』は直接の接触は出来ないが、その魂の器である『本人』を知る事の手段になるため、副次な意味合いで利用できた。

 

☆★☆  ☆★☆  ☆★☆  ☆★☆

 

ーーー

 

風「お酒は……二日酔いが酷いから、もう呑まないんですー! 変わりに健康にいい牛乳にしたんですよ!!」

 

確認と様子を伺いに風様を尋ねると、机の上に………ヤケ酒……では無く、ヤケ牛乳を朝から飲んでいらっしゃる。 近頃は、牛よりも山羊の方が飲みやすいと、にこやかに語ってくれるが、仕事はどうしたんです、仕事は?

 

バアァ──────ン! 

 

詠「アンタねぇ───!! いい加減に仕事しないよ!!」 

 

風「ぐぅー」コクコク ゴクン!

 

稟、詠「「寝るなぁ────!」」

 

三軍師の二人が部屋に突然入り込み、風様に怒鳴りこむ!

 

しかし、どこ吹く風か………器用に寝ながら牛乳を飲んでいる。

 

稟「風ぅ! 何時までも策として、仕事をしないんですか!? 松永の策が上手くいっているように見せかける為、風が部屋に閉じこもっていましたが、此方が限界です!! 早く仕事を始めなさい!!」

 

稟様の言葉を受けて、目を覚ました風様。

 

風「まぁまぁ……イライラは鼻血の元。 南蛮より手に入れた『混ぜると色が変わるお菓子』を食べれば……怒りも収まりますよ?」

 

風様は、机の上に乗っていた二つの菓子を混ぜて、捏ねだした。

 

詠「何やってんのぉよ!! 『練るな!』」

 

風「起きてますよぉ~?」

 

ニヤリと笑いつつ、そのまま菓子をこね回していた。

 

★☆☆

 

愛紗「良かった! 松永達を嵌める為、演技をしていたのですね!?」

 

詠様達が怒りながら帰られた後、私が安心すると……風様は力無く笑った。

 

風「………演技はさっきの態度ですよー。 本当は……精神的にヘトヘトなんです……」グラッ!

 

愛紗「あっ!!」

 

倒れそうになる身体を……急いで支える! 思ったより軽い身体だった。

 

慌てて寝台に寝かすと………息が荒くなり、此方を潤んだ目で見る。

 

風「ハァハァ………風だって、この世界の人間なんですー。 真名を弄られるのは、極度の精神的負担になるんですよ~。 ……ですが、真の軍師は、逆行をも我が力に変えちゃうんです! 颯馬お兄さんのようにー!!」

 

愛紗「そ、そんな! 貴女程の軍師が……それ程までの負担を負っていたなんて……!! 申し訳ありません!! 全然気付きませんでした!!」

 

私は、急いで謝罪して……風様の手を握る! 

 

くっ! こんな細い手で、あんな重圧に耐えさせるとは………! 

 

『松永久秀』なる謀略家の手腕は、風様より上手だと認めざるえない!

 

しかし、この世界の真名の意味を知りながら……その弱味を突くとは!!

 

おのれぇ~~!! 松永あぁぁ!! ただではすまさん!!!

 

風「あ、愛紗さん……。 風は、どうなってもいいんですー! ただ……他の皆さんには、風のような思いをさせたくない……。 だから………力を貸して下さい……。 お願いします…………!」

 

愛紗「もう、何も言わないで下さい! 必ずや、この関雲長! 松永等を討ち取り───皆を守り抜いて、ご覧にいれます!!」

 

風「……あ、ありがとうです………ぅ」ポテッ

 

眠られたか………。 

 

私は、風様の手を優しく布団の中に入れる。

 

そして、涙が零れ落ちる寝顔に、改めて誓った!

 

愛紗「風様! ご安心されよ!! この関雲長が、逆賊『晋』を倒し、再び風様の名誉を回復させてみせる!!!」

 

そう、小さい声で宣言し…………私は、静かに部屋を退出した。

 

ムッ? 私の役目を忘れてないかって!? 

 

その前に───風様の無念を晴らすのが先決! 無念を晴らせば、その悪意ある掲示も自然に消えるだろう!!

 

天城様も、話せば分かってくれるさ!!

 

 

ーーーーーー

 

シ────ン

 

風「……………行っちゃいましたか?」

 

寝ていた風が、辺りに人が居ないか確認して、寝台から起き出す。

 

ゴソゴソ ポン! 

 

風「…………えーと、これで十一人目……っと!」

 

寝台の下から取り出した竹簡に、『風に協力してくれる人』の名前が書き加えられた。 兵士から官僚と色々、この応対で風に同情したり、久秀に対して怒りを覚える者で協力を申し出た者達である。

 

勿論……風は健康体。 多少?は悩み苦しみもした。 酒を飲んで二日酔いになったのも間違いない。 

 

だが───何時までも弄られたままで、終わる風では無い!!

 

…………………伊達に面の皮は厚くないのである。

 

風「ふふっ! 久秀さんに目にモノを見せてあげるですよー!!」

 

人の義理人情を逆手に取って、駒と扱う……風の人心操作術。

 

風「おぉー! 今回は関雲長将軍ですねぇ! 頼りにさせて貰いますよ!!」

 

風が何を考えているのか………知る者は居ない。

 

◆◇◆

 

【 猫屋敷の怪 の件 】

 

〖 洛陽 宮廷内 謁見の間 にて 〗

 

 

『洛陽の《お猫様屋敷》』

 

元宦官十常侍『張譲』の屋敷だった。

 

もはや、誰も住んで居なかったのに…………いつの間にか、多数の猫達と管理人が住み着くようになった。

 

ところが、つい最近………夜中まで明かりが灯り、人の話声が聞こえる……と噂が立っていた。 その調査のため、私が向かう事になっている。

 

ーーー

 

愛紗「………う、うら若き乙女を……しかも、夜に……一人だけで猫屋敷に向かわせるなんて……な、何を考えているんだぁ!!」

 

猫屋敷に向かっているが……刻は既に夜遅く (午後10時頃) の時間帯。

 

★☆★  ★☆★  ★☆★  ★☆★

 

私は、天城様へ報告と同時に、今から猫屋敷を探索する事を伝えた。

 

颯馬「……それなら、正体を確かめる為、夜に行かないと駄目だよ?」ニヤニヤ

 

な、何ですとおぉぉ───!! 

 

わ、私に…………『化け猫の餌食になれ!』っと言われるのかぁ!!

 

流石の私も天城様の笑顔に腹立ち、反論しようとしたが…………

 

義弘「アンタねぇ! 戦場で何十何百何千の敵兵を斬ってきたのでしょう? それなのに……なんで、お化け如きに怖がる訳ぇ?」

 

ご主人様の本家と言う『鬼島津義弘』殿が私に向かい、罵声を放つ!

 

義弘「ちょっと! なんで『鬼島津義弘』なんて、私限定にするのよ!?」

 

愛紗「北郷一刀様が申したのだが!?」

 

義弘「………この世界、ア、アイツの所為(せい)で『鬼』の名が広がたんだよ………うぅぅぅ!!」

 

歳久「ひろねぇ……異名を伏せる事など無理ですよ? 遅かれ早かれ『鬼』の名は広まるのですから。 『大人しい楚々としたひろねぇ』など……とても思い浮かびません!」 

 

義弘「としちゃんっ!! ひどっ!!?」

 

鬼島津……いや、義弘様の隣に居た人物が、義弘殿を制し名乗り出る。

 

歳久「孫呉で紹介されましたが、念の為、再度名乗らせて頂きます。 島津四姉妹の一人、島津歳久。 『天の御遣い』なる大袈裟な異名が噂されていますが……気にされないように願います」

 

愛紗「はっ、はいっ! ………こちらこそ、宜しくお願いします!」

 

うぅっ……嫌みを言われてしまった。 気落ちしてしまう………。

 

いやいや、こんな事では駄目だ。 誠心誠意、お仕えしなければ!!

 

歳久「天城颯馬より、申し渡されました件ですが……」

 

★☆★  ★☆★  ★☆★  ★☆★

 

 

その後、結局……言い包めら(いいくるめら)れて、向かう事になった。

 

ーーーーー

 

トボトボと……夜道を歩いた。

 

この道が……今後の自分自身の末路に重なって見える。

 

そのため、夜空の月を見ながら……最後の別れの言葉が紡ぎ出された。 

 

愛紗「 姉上、鈴々、元気で……。 朱里、雛里………皆を頼む。

 

星……お前の忠告、もっと早く耳を傾けていたらなぁ………。

 

…………ご主人様、もう一度……お会いしたかった…………」

 

教えてもらった暗い通路を……月明かりを頼りに進む。

 

松明を持てば明るいが、猫屋敷の『何か』に気付かれると不味い。

 

震える足を、無理やり進めさせ………門まで到着する事ができた。

 

★☆☆

 

愛紗「此処がそうか………」

 

大きな門から見上げると……三階建ての大きな屋敷。

 

かの……十常侍筆頭の張譲が住んでいた屋敷だけある。 

 

庭は、手入れが行き届けられていて、綺麗に掃除がしてあり、窓も壁も廃屋とは思えないほど新しい。 管理を任されている人物は、余程しっかりした人物なんだろう。

 

しかし、大きいだけに辺りが暗く、光が殆ど分からない状態。 

 

愛紗「こ、この中を……入って、か、か、か、確認しろ………か」

 

私の頭の中では、『無理! 無理! 無理!』と単語が飛び交い、足は竦んで動けない。 で、でも、任務だ! 入らなければ───!!

 

──────スッ!

 

??『まどろっこしい方ですねぇ! サッサと入って下さい!!!』

 

う、後ろで……声が!?

 

??『───問答無用! お猫さま方が待ってます!!』

 

どんっ!!

 

愛紗「な、何ぃ───っ!?」

 

後ろを押された私は、暗闇の道をヨタヨタと歩き、扉に張り付く。

 

ギイィィイイィィイ!!  バッ!!!

 

愛紗「うわあぁぁぁ!!」

 

扉が急に開いて、前にのめり込み……四つん這いでの状態で倒れた! 

 

何がなんだか分からないが、これで、私の最後だぁ─────!

 

★★☆

 

??「………目、開かない?」

 

??「少し……怖がらせたか?」

 

??「美以に任せるのにゃ!」

 

プニプニ! プニプニ!

 

か、顔に柔らかい者が当たる? な、何んだ!? この気持ちいいのは……。

 

美以「これでもダメにゃのかぁ! 美以の『肉球』に反応しにゃいなんてぇ───!?」

 

あぁぁ…………柔らかい物が………遠退いていく………

 

美以「フゥ───! カプッ!!」

 

いっ? いっったあぁっっい──────!!

 

急に青天の霹靂如し展開に、私は付いていけず……転げ回る!

 

ドタンバタン! ドタッバタッドタッバタッ!

 

??「止めなさい! 暴れると猫ちゃん達が怖がるでしょう!」

 

慌てて起き上がり、噛まれたお尻をさすりながら、目を開く……。

 

もっと客間だったのだろうか? 人が二十人ぐらい寝る事が出来る広間に、猫が二十も三十………沢山いる!! 

 

色々も白、黒、斑目、焦げ茶。 大きさも様々な猫が……寛いでいた。

 

??「やっぱり遅くなったようねぇ……怖がり屋さん」

 

??「余りにも遅いので、門まで迎えに出れば………震えながら立ち止まっていました!!」

 

??「猫……怖い? 可愛いのに…………」

 

美以「全く失礼にゃ!! 美以は美以なのにゃ!!」

 

??「……人間、誰でも弱みは有るものさ!」

 

??「それを克服できるのも……また人間ですからね」

 

あ、あれ? 聞いた事のある声が…………!!

 

颯馬「ようこそ……猫屋敷へ!! 歓迎するよ、愛紗!!」

 

愛紗「………へっ?」

 

私は事態が掴めず、間抜けな返事で応じる。

 

そこには、天城様や島津の二姉妹、恋、明命、美以や配下の将が立っていた。

 

歳久「どうでしたか? 洛陽勢の将達とは……接する事が出来ました?」

 

歳久様が……私に近付いて……今回の件を説明する。

 

歳久「今回のコレは、名目は『調査』になっていますが、実質上は『貴女に洛陽や将に馴染んで欲しくて、颯馬が提案した事なんです!」

 

愛紗「………………………はっ?」

 

颯馬「君は……責任感が強くて我慢強い。 それは素晴らしい事だけど、何か息抜きはしているのかい? ここには、君の知り合いは殆どいないんだ。 そのまま、緊張ばかりしていると……何時かは倒れてしまうぞ?」

 

愛紗「そ、そんな事は────!」

 

明命「私が見ていた限り、会った方にはガチガチでしたね。 もぅー、見ているのが気の毒な程………」

 

トラ「トラも思う!!」

 

シャム「シャムも!!」

 

ミケ「……………zzz」

 

愛紗「───────!」

 

恋「警戒心強いのは………自分に自信が無いから。 普段と変わらずボォーとする………皆、集まってくれる……」

 

義弘「そ、そうよ! さっきは、あんな事言ったけど………お化けを怖がるのは……謝罪の意識が強いからって、聞いた事あるしぃ! 

 

…………颯馬に対して、散々嫌な思いさせたアンタだけど……当の颯馬が許しているのに、外野の私達が恨むのも変だしねぇ。 だから、許してあげる!」

 

歳久「…………今の敵は『晋』なのに、内部抗争していては、勝てる戦も負け戦になってしまいますから! だから、一時休戦にしてあげます! 

 

ですが……私は……貴女を許してなんかいませんから。 颯馬の受けた苦しみは、まだまだ、こんなモノではないはずですよ?」

 

颯馬「ま、まぁ……なるべく穏便に………」

 

愛紗「で、では! 最後のここは!?」

 

明命「星さんからお聞きしました! 可愛い物が大好きだと!」

 

★★★  ★★★  ★★★  ★★★

 

『愛紗の好きなモノ……それは当然、一刀殿だ! クククッ! いやいや真面目に答えるとしよう。 小さい動物なども…よく見ていたな。 猫や犬、小さい子供……やはり、日頃から弄られるから、癒やしが欲しいのだろうよ!  

 

んっ? 私が原因じゃないかって? それは違う! 私は愛紗が心配でな? 誰か達に弄られて、心が弱くならないように、鍛えてあげているのだ! 礼にメンマを私へ贈ってくれても、罰は当たらないぞ!?』

 

★★★  ★★★  ★★★  ★★★

 

愛紗「あぁぁのぉ! メンマの遣いは!!!」

 

明命「……ですから、お猫さま達で、疲れた身体を癒やしては、如何かと!」

 

愛紗「………………………」

 

★★★

 

猫「ミュウ! ミュウ~!」 猫「にゃ~にゃ~!」

 

ゴロゴロゴロ ゴロゴロゴロ

 

明命「あぁ~天の国に勝るとも劣らない幸せ王国ですー!!」

 

義弘「天の国にも、こんなとこ……無いわよ。 それに、お父さんも居ないし! はぁ~極楽、極楽っと!!」

 

愛紗「………………………」

 

美以「ん~? 何を固まっているのにゃ?」 ポンポン!

 

愛紗「………そうか。 私は確かに固かったようだ……。 ご主人様や皆に迷惑を掛けないように、体面を気にして自分を抑えていた。 そうだな、此処なら、羽目を外しても苦情は無いだろう! ならば…………!!」

 

美以「こ、こらぁ!! 離せ、離せなのにゃ!!」

 

愛紗「あぁ~猫、猫、猫ぉ! う~ん! 和む、和むぅぅ!!」

 

美以「シャム、トラ、ミケ!! 美以を助けるのだぁ!!」

 

ーーー

 

ミケ「みぃー様………ミケも……」

 

明命「お猫さま! やはり、お猫さまは、この大きさが最高ですぅ!!」

 

ミケ「ウニャ───ン! そこ駄目にゃ~!!」

 

ーーー

 

トラ「だいおー、トラも………捕まった………」

 

義弘「あぁ~可愛い可愛い可愛い~~~えへへへ!!」

 

トラ「ふにゃ~!! ふにゃ~ん!!!」

 

ーーー

 

シャム「みぃしゃま…………zzz」

 

歳久「寝姿を観察するのが………最高ですね!」

 

ーーーーー

 

颯馬「楽しんで貰えて良かった。 さて………俺も宮廷に戻り………」

 

グイッー!  ドサッ!

 

颯馬「お、おいっ!!」

 

恋「恋も眠い………颯馬も寝る……」

 

颯馬「恋! 俺は仕事があるから!!」

 

恋「颯馬も……お疲れ。 だから……早く休む。 皆……心配するから……」

 

颯馬「いや、まだ仕事が残ってるから………」

 

恋「駄目!!」

 

颯馬「…………しょうがないな。 それじゃ、横にさせて貰うよ」

 

他の将達が騒ぎ立てる中、恋と颯馬は仲良く寝た。

 

ーーーーーーーーー

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ーーー

 

洛陽七不思議の一つ 『猫屋敷』

 

多数の猫達だけが住む屋敷であるが………夜になると……若い女性達が狂喜乱舞する声が響き渡る……得体の知れない場所として、恐れられている。

 

 

ーーーーーーーー

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あとがき

 

最期まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

オマケが長くなったので、別にして出そうと軽く考えたのが運の尽き。

 

文字数が二千文字しかない、短い物でした。 

 

これでは、話としてつまらないって事で、足しに足しまくり、一万文字数を超えました! 一昨日か昨日に投稿するとほざいてしまい、申し訳ない!

 

作品中の華雄の話は、なかつきほづみ様の情報を目にしまして、小説で華雄の無念さを表せないかなと思っての事。

 

作者様に御許可を得るべきか悩んだのですが……情報の元が閲覧可能な場所なので、いらないのではないかと、示唆する者がいましたので……御許可無しでおこないました。 もし、御不快でしたら、削除するつもりです。

 

こんな話ですが、また、よろしければ読んで下さい。

 


 
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