「ぐぅ…」
風はうとうととしゃがみながら寝ていた。
…やけに器用だと思うがそれは風だからと言っておこう。
そよ風が吹き、木の葉が鼻に擦れた時…風の重い目は開く。
何時もの眠たい目のまま最初に感じたのは違和感だ。
「…む?…可笑しいですねー。頭がやけに軽いようなー」
頭をブンブンと振り、違和感を確かめようとする。
…そして気付いてしまった。
頭にいつもつけている人形…宝慧が無いことに。
「……………」
そこに宝慧があったであろう場所に手を近づけるが当然そこには何もない。
すかっ、とただ空を切るだけ。
普通は少し狼狽えるのだろうが…
「家出ですかねー」
この娘はそれで済ませた。
「お兄さんー」
「ん?風か…どった?」
「宝慧が家出してしまったのですー」
「OK。順番から話そう」
庭でばったりと風にあったリトはまずそう答える。
宝慧と言われてもなんのことやら…
自分の知っているほうけいではないと思うが。
とりあえず話を聞くことにする。
結果は要約:頭の人形無くなったどうしよう。
「あの太○の塔モドキそんな名前だったんだ」
「それで見てませんかー?」
「見てないな。俺ずっとここにいたけどそんなの見なかったぞ」
リトの言う通り、彼は庭から離れていない。
ただ暇になり、空を眺めていただけだが人形なんて見ていない。
風は納得したように頷くと、
リトの手を引いていた。
「そですかー。じゃあお兄さんも一緒に探しましょう」
「いいけど、何で?」
「単純に一人より二人の方が効率がいいですし。あとお兄さんが余りにも暇そうだったのでー」
「悪かったな」
図星だが一応そう言っておく。
風の鋭さは下手したら超直感並かもしれない。
リトもこれからの予定がないので手伝うのだが。
「あ、飴ちゃん食べますー?」
「ああ、ありがとう」
「ちなみに魚の肝味ですー」
「やっぱいい」
「冗談ですよー」
「なにこの子予測できない」
だけどちょっぴり不安になる。
魚の肝味なんて食べたら卒倒するだろうし。
そんなこんなで歩いていると、正面から恋と音々音が歩いてきた。
「恋、音々音。丁度いい所に」
「……………どうしたの?」
「何かあったのですか?」
「宝慧知らない?」
“宝慧”と聞かれて首を傾げる二人。
実を言うと、彼女達は宝慧が何なのか知らない。
なので恋は首を傾げているのだが…音々音は途中で顔を真っ赤にした。
理由としては、べつな“ほうけい”を頭に浮かべたから。
「りっ、りりりりりリト兄ィ!?ほうけいがどうしたのですか!?」
「?ああ、無くて困ってんだよ(風が)」
「困るのですか!?…リト兄ィがほうけいが…ほうけいじゃなくて困ってる…」
「……………ほーけい」
音々音はぶつぶつと呟き、恋は一層首を傾げる。
リトは何故こうなっているのかさっぱりだが、風はある程度察したので悪ふざけをした。
「そうなのですよー。ほうけいが無いと跡継ぎができないのですー」
「え、あれそんな役割あんの!?」
「おやー?お兄さんそんなことも知らなかったのですかー」
「ね、ねねも!ねねも探すのです!だから特徴を教えてくだされ!」
何だか色々と誤解しているが…リトは一応宝慧の特徴を言う。
だがまたしても、音々音は勘違いし続ける。
「あー、何て言うか…白くて俺の拳より一回りでかいかそうでないかで…」
「リト兄ィの手より…!?」
「先っぽは少し尖り気味で、左右に…触角的な腕がある」
「触角!?腕!?」
音々音はさらに顔を赤くし、煙が頭から舞い上がる。
目はぐるぐると周り、逆上せたようにふらついていた。
と言うか明らかに勘違いしてる…人形とリトの股にぶら下がるバベルの塔を完璧に間違えている。
「あの、リト兄ィ…」
「ん?」
「ねねは、リト兄ィの…受け入れられるかわかりませんが…その、は、はじ、めて…はリト兄ィが…」
「……………ご主人様、ほうけいってなに?」
「風の頭にある人形だけど?」
「…………………え?」
瞬間、音々音の顔は面白いように変わる。
赤く染まっていたのが一気に戻り、逆に青ざめる。
そして思う…自分はとんでもない事を言ってしまったのではないだろうか、と。
「…うわあああああああああああん!!」
「え、ちょ…音々音!?」
「いけませんねー。女の子を泣かせちゃ行けませんよー」
「泣かせることした覚え無いんだけど!?」
「………………ほーけい?」
音々音は泣きながら走り去り、リトは動揺。
風はちゃっかり罪を擦り付け、恋はいまだに首を傾げていた。
―――――。
「稟ちゃーん」
「おや、風?それに平沢殿も」
城中をくまなく探したが見つからない。
もしかしたら誰かが持っているのかも、と思い探していると稟が外から帰ってきていたので声をかけた。
ちなみに稟とは真名を交換している。
曰く、風に対する抑止力仲間だそうだ。
「よぉ。宝慧知らないか?」
「宝慧…?ああ、あれなら先程猫が加えて持っていきましたよ?」
…何故に猫…?
食べ物と間違えて持っていったのか…と思うが、あれを食べる気にはならない。
むしろ何で猫なのか…とリトが考えていたら風がポンと手を叩く。
「おおー。そう言えば風はさっき猫と戯れていたのでしたー」
「それを早く言えよ!?」
「それはそれですねー。あと稟ちゃんも来てくださいー」
「何故私まで!?」
「旅は道連れ世は情けですねー」
一度外に出たのにこの仕打ち…稟はとことん苦労人だ。
風が言うには猫のいる場所は把握しているから大丈夫らしい。
いつも猫と戯れている彼女だ…大体の場所は分かっているのだろう。
そしてついたのは…魚屋だ。
「おじさーん。すみませんが奇妙な人形を見ませんでしたかー?」
「自分で奇妙って言うのかよ!?」
「人形?ああ、それならそこに捨ててあったけど誰か持ってったぞ」
店主と思わしき人物は売れない魚を猫にやりながらそう答える。
…なるほど、寄ってくる訳だ。
店主の言われた通りに持っていった人物が行った道を辿ると、ふと服屋に目が止まる。
看板には『胡巣不礼』と書かれてあった。
たぶんコスプレと読ませたいのだろう。
実行犯は十中八九沙和なので後で凪の修行に混ぜようと思うリトだった。
だが…三人の足は同時に止まる。
何故なら…そのコスプレ店の所に、探していた宝慧があったからだ。
しかも何故か吊るされている。
「日光浴ですかー」
「いや、天日干しだろ」
「いえ、むしろ魔除けです!?二人とも何を言っているのですか!?」
二人はボケて、稟が突っ込む。
そんな間にも風は宝慧をおろし、心臓マッサージをする。
「おーい、宝慧ー。生きてますかー?」
(人形に心臓マッサージしてる…あれ?この時代に心臓マッサージの技術あったっけ?)
稟がコスプレ店の店主に説明している間にもそれは続けられている。
てか人形にするのかよ…と言いたそうだがスルーしよう。
「はっ!?…ふぅ、嬢ちゃん助かったぜ。危うくあの世にいっちまうとこだった」
「いえいえー。風と宝慧は腐れ縁ですからねー」
「そこは友達と言うところでしょう?」
息を吹き返す…ような腹話術をする風。
見慣れた稟は冷静に突っ込みを入れる。
とまあ、これで一件落着…と思ったのだが、ふと更衣室のほうから声が聞こえた。
「あら?この声…平沢に風?それに稟かしら?」
「おやー?華淋様、いらしてたのですねー」
声の主は華淋…なるほど、買い物に来ていたのか。
リトはそう思い、カーテン越しに声をかける。
が、それとほぼ同時に華淋が出てきた。
その格好は…明らかに自分がデザインしていない、魔法少女の服だ。
格好についてはPS2版を見てね!
「珍しいな。一人で買い物に来るなんて」
「一人じゃないわ。桂花と来たのだけど、あの娘飲み物を買って行ってるの」
「ふーん。…てか、沙和こんなのまでデザインしたのかよ」
時々何者かと思う。
リトはため息をつき帰ろうとするが…稟の様子がおかしい。
華淋を見て、肩をぶるぶる震わせ、小言をぶつぶつ言っている。
風一人は冷静に稟の方向をリトに向けさせる…と同時に、
稟の情熱がリトの顔面にぶちまけられた。
「ブハァーーーーー!!」
「 」
「おおー。流石稟ちゃんですねー。今日の鼻血は今までよりも両が凄いですー」
「それよりも平沢が息をしてないけど?」
幸せそうに鼻血を出す稟、それを見て記録更新と思い拍手する風。
華淋に至っては頭を抑え、リトに対しての突っ込みをする。
「やれやれだぜ。稟の姉ちゃんの癖は相変わらずすげぇな」
「これこれ宝慧、いくらなんでも可哀想ですからいっちゃダメですよー」
「…聞こえてますけど!?」
首筋をとんとんしながら宝慧が…と言うより風は言う。
それを聞き稟は復活した。
正直怒っているが事実なのでどうしようもない。
で、その後リトの顔面の周りの鼻血を拭くと勢いよく蘇生…もとい復活した。
「……えいきっき、それダメェェェェェェェ!!?」
「おおー。お兄さんも復活しましたねー」
「内容が臨死体験のようなのだけど?」
「文字通りの復活ですね…」
「あ゛あ゛ー!?あ゛あ゛ー!?」
「それよりどうしようかしら、これ」
「………ぐぅ…」
「「寝るな!!」」
「あ、治った」
この後、リトは稟の真正面に立たなくなったとか、ならなかったとか。
XXX「えらいこっちゃ…」
一刀「どうした?作者」
XXX「アンケートさ…メイド以外集まってなかったぜ!」
一刀「はぁ!?じゃあどうすんだよ!」
XXX「俺の独断と偏見で残りを決めるか…それともギリギリ今回のコメント欄に何か書いてたらそれ採用」
一刀「最初に一言。今回短っ!」
XXX「宝慧が家出しました」
一刀「いや、猫がつれてっただけだろ。サザエさんのオープニングかよ」
XXX「そして安定の不思議系少女、風。けっこう気にいってんだよね」
一刀「前の短編恋姫でけっこう優遇してたよな。メンタルブレイク的な意味で」
XXX「まーね、頭の中でそうなってるんだよ」
一刀「てかねね話をちゃんと聞けよ」
XXX「しょうがないって…ほうけいってあれくらいだろ、思い付くの」
一刀「で、禀は相変わらず巻き込まれてるし」
XXX「貴重なツッコミだからさ。ただし鼻血を除く」
一刀「むしろリト大丈夫かよ」
XXX「知ってるか?あいつ修羅場切り抜けてきたんだぜ…?」
XXX「さて、アンケート回ともう一話位で魏編と仮面編は終了っす。次はラストの“三巡編”が始まります」
一刀「三巡…あれ、どっかで聞いたような…」
XXX「最初見返せばわかるよ。ちなみに仮面編のラストはゲストが出ます」
一刀「ゲスト?」
XXX「ああ。B」←【作者はログアウトしました】
一刀「作者ああああああ!?」
Ο□Ο;再見
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