No.702977

少年少女達の幻想物語 第九話 幻想入りとその経緯

四姉妹さん

今回も遅くなってすみません!

2014-07-22 23:31:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:681   閲覧ユーザー数:668

麻喜side

 

 

うん、この本も少し目的とずれてるね。まだ、イマイチ知りたい事と違う本ばかり読んでいる。しかし、なんとなく分かった事がある。それは、ここが「幻想郷」という名前の場所だという事、少し信じられないが、ここには妖怪が数多く住んでいるという事、そして、さらに信じられない事がある。それは、ここは元いた世界とはほとんど違う世界で、私達の元いた世界に帰ることは出来ないだろうという事だった。後は、ここの地名というか場所の名前だが、面倒だったので覚えていない。なんにしても、分かった事が、まだ少ない。私は思わず、深い溜め息をつき、本を閉じた。その時、

 

 

???「すみません、ちょっといいですか?」

 

 

と声をかけられた。丁度、読み終えた所だし、すぐ振り向くと、

 

 

麻喜「え・・・?リーナ!?黒人も!?」

 

 

なんと、声をかけてきたのは、数少ない私の友人である、リーナだった。その横には同じく友人の黒人もいた。

 

 

リーナ「麻喜ちゃん!?幻想入りした女の人って麻喜ちゃんだったんだね!黒人くん!」

 

 

そう言って、リーナが黒人の方を向くと、彼もさすがに驚いた表情で

 

 

黒人「まさか、こんな身近な人物とはな・・・」

 

 

正直、こっちの台詞だ。元の世界とは違う世界で友人二人と再会出来たのだから。

 

 

リーナ「ところで、麻喜ちゃんが担いでたって人は?」

 

 

何故知っているのかと思ったが、多分、後ろにいる人から聞いたのだろう。

 

 

麻喜「魅月だよ。そこに座らせてある。」

 

 

と、まだ意識のない魅月を座らせてある方を指差した。するとリーナが心配した表情で聞いてきた。

 

 

リーナ「魅月さん、どうしたの?」

 

麻喜「大丈夫。気を失っているだけみたいだから。」

 

 

そう言うと、安心したようで、リーナは安堵した表情で、ホッと溜め息をついた。

 

 

???「貴方方とその方達は、知り合いなんですか?」

 

 

と、リーナの後ろにいた人が聞いてきた。

 

 

黒人「ああ。外の世界で友達だったんだ。こっちが横島 麻喜で、あっちで座っているのが如月 魅月だ。」

 

 

と、黒人が答えた。

 

 

麻喜「あなたは?」

 

阿求「私は、この稗田家の現当主、「稗田 阿求」と言います。」

 

 

あ、ここの当主さんだったんだ・・・。それにしても、自分と同じくらいなのに、当主をしてるって凄いなぁ。と、一人感心していると、

 

 

リーナ「麻喜ちゃんも、紫さんに連れてこられたんだよね?」

 

 

と、リーナに聞かれたのだが、聞き覚えのない名前に、頭に?を浮かべていると、

 

 

黒人「ここに来る時、特徴的な女性にあっただろう?」

 

 

と、黒人が訂正し、リーナがそれに気付いたようで、黒人に礼を言っていた。

しかし、そんな女性は見たことがない。なので、答えに困っていると、

 

 

???「残念ながら、その子は私が連れてきた訳ではないわ。」

 

 

と、突然、どこからか声が聞こえたと思うと、驚く事に、空中に裂け目ができ、中から特徴的な女性が出てきた。もしかして、この人がその「紫さん」なのかな?

 

 

リーナ「え!?じゃあ、どうやってここに来たの?」

 

 

と、リーナが聞いてきた。とりあえず、ここにきた経緯を話すことにした。

あれは今から、数時間前のことだろうか・・・

 

 

数時間前・・・

 

 

やけにうるさい目覚ましが、まだ眠っていたい気持ちを妨げる。このままずっと、目覚まし時計と不毛な戦いを続ける訳にもいかないので、仕方無く、起きる事にする。

もう春休みだというのに、私は補習で校に行かなければならなかった。春休みぐらい休ませてくれてもいいだろうに・・・。と、心の中で不満を呟きながら、のろのろと準備をする。まあ、勉強しなかった自分の自業自得なのだが・・・。

学生服に着替え、日除けの為に帽子を被り、時間を確認すると、完全に遅刻確定な時間だった。どうがんばっても間に合うことはない。それを、確認した途端、一気にやる気が削がれた。遅刻して怒られた後、勉強させられるのなら、いっそ、行かない方がいい気がしてきた。

よし、決めた。サボろう。

実は、こんな事を繰り返して三日目になる。多分、もう補習に行くことはないだろう。

しかし、補習に行かないとなると、やる事がない。昨日、一昨日と寝て過ごしたものの、毎日毎日寝て過ごすのはどうかと思う。そこで、友人を呼ぶことにした。だが、呼んだ後何をするか等、考えてはいない。十中八九、一日中ゴロゴロすることになるだろう。まあ、一人よりはマシなので、誰かをこの堕落生活に付き合わせようと思う。

だが、リーナは方向音痴なので、逆に迎えに行かなければならなくなる気がするし・・・。そうだ、魅月を呼ぼう。魅月は、リーナの知り合いで、母親がいなく、父親が夜遅くまで仕事で帰ってこれないリーナの面倒を、よく見ていた。簡単に言うと、リーナの姉の様な人だが、誰に対しても敬語で話し、上下関係をあまり気にしないからか、四つも歳が上なのに、同い年の友人のように、気軽に話せる人である。さっそく、電話をしてみることにした。

 

 

魅月『私は構いませんが、今日は補習ではありませんでしたか?』

 

 

うっ!どうしてその事を魅月が?さては、リーナめ、魅月に教えたな!兎に角、あまりずっと黙っていると怪しまれてしまう。ここは、適当に誤魔化そう。

 

 

麻喜「きょ、今日は休みなんだ。」

 

 

いやいや、厳しいだろう、これは。さすがに、魅月でも・・・

 

 

魅月『そうですか。安心しました。麻喜のことだから、またサボリかと・・・』

 

麻喜「あ、あははは、そんなまさか~。」

 

 

信じた!?信じられない程、すんなり信じた!?魅月は、もっと、人を疑うべきだと思った。騙している本人が言うことではないが・・・。

とりあえず、暇潰しの相手を確保する事に成功したので、良しとしよう。後は、魅月の到着を待つだけだ。

 

 

~数分後~

 

 

魅月「正直に言って下さい。サボリましたね?」

 

 

さっきまで温厚だった声が、嘘の様に怒りに染まっていた。

 

 

麻喜「ち、違いまーす。頭痛が痛かったんでーす。」

 

 

それは勿論、私に向けられているものだ。想像がつくと思うが、嘘がバレてしまったのだ。机の上に補習の日程を置きっぱなしにしていたのが、見つかってしまった。少し、雑過ぎる嘘をついてしまったようだ。

これからはもう少し考えて、嘘をつこうと思いました。(作文)

だが、ここで正直の話すと何かに負けたような気がするので、嘘を通す事にした。

 

 

魅月「力と体の丈夫さだけが取り柄の麻喜が、そう簡単に頭痛なんてするはずがありません!こら!ちゃんと聞いていますか!?」

 

 

どうやらまだ、説教は続いていたらしい。ていうか、力と体の丈夫さだけが取り柄って、何気にひどくない!?

 

 

麻喜「全く聞いてませーん。」(ちゃんと聞いてまーす。)

 

魅月「正直に答える事は良いことですが、いい度胸ですね。」

 

 

しまった!思った事と言った事が入れ替わってしまった!嘘よりも、さっきの言葉の仕返しを考えすぎて、そっちに意識がいき過ぎた。魅月は、顔は笑っているものの、目は明らかに笑っていない。そして、魅月が何かを言おうとした、その時

 

 

???「おーい、麻喜や。じいちゃん、木材取りに行ってくるからなー。」

 

 

祖父だ。趣味で、木材を、山で仕事をしている知り合いから、余った部分を貰い、色々な物を作っている。椅子を作ることもあれば、机を作ることもある。大きさは、小さいものばかりだが、便利で助かっている。そんな力仕事をしているせいか、結構な歳だがまだまだ元気だ。

 

 

麻喜「はーい。いってらっしゃー・・・ぃ」

 

 

そう言いながら、魅月の方へ向き直ると、なんともいい笑顔で、何か思い付いたという顔をしていた。そして、魅月が

 

 

魅月「おじいさん。それ、手伝わせて貰えませんか?」

 

 

と言い出した。意外な発言に驚いたが、とりあえず、エールを送っておこう。

 

 

麻喜「木材は結構重たいから、気をつけて、頑張ってね~。」

 

 

すると、魅月は笑顔で振り向き、

 

 

魅月「あら?私じゃなくて、麻喜が運ぶんですよ?」

 

麻喜「はい?」

 

 

いきなり、何を言い出しやがってくれてるんですか、この人は。私は行くなんて、一言も言ってない筈なんですが・・・。

 

 

魅月「私を騙して、補習をサボったんですよね?それなら、これくらいの罰は受けて貰わないと。力と体力はあるんですし、老人を労る事も、そろそろ覚えるべきでは?あ、それと、私もついて行くので、サボリは許しませんよ。」

 

 

なんという事だ。さっきからしてた、いい笑顔はこういう事だったのか。冗談じゃない!あんな疲れそうな手伝い、誰がするものか!それに、さっきも説明したように、祖父は元気そのものだ。労る必要などない。しかし、ここで逃げ出しても、すぐ捕まってしまうだろう。私はチャンスを待つことにした。

 

 

麻喜「うーん、仕方ないなぁ。」

 

 

チャンスを待つため、無駄な抵抗は止めよう。

 

 

魅月「うん、感心感心。」

 

 

と、笑顔で言う魅月。やはり、魅月は人を疑う事を覚えるべきだ。私は、必ず逃げ出してみせると決意した。

 

 

~数分後~

 

 

麻喜の家を出て、山を登り、そろそろ目的地に到着しようとしていた。麻喜は、まだ、逃げ出すチャンスを待っているが、なかなかチャンスは訪れなかった。麻喜も諦めかけていた。その時、

 

 

魅月「おっとと。」

 

 

魅月がつまずいた。少しの隙だが、麻喜はそれを逃さなかった。

 

 

麻喜(今だ!)

 

 

麻喜が登って来た方ではなく、森の中へ走っていった。どうやら、森を抜けて逃げるつもりらしい。

 

 

魅月「こら!逃がしませんよ!」

 

 

すぐに魅月が、後を追いかけた。そして、残された老人は頭を掻きながら、

 

 

麻喜の祖父「やれやれ、結局一人で運ぶことになったのう。まあ、最初からそのつもりじゃったが・・・。

しかし、魅月ちゃんも、大変じゃのう。あんなひねくれ者を追いかけて森へ入るとは。まあ、小さな森じゃから、大丈夫じゃろう。もしもの時は、麻喜がいるしのう。」

 

 

そう呟きながら、木材を受け取りに向かった。

一方、そのひねくれ者は、森の中まで追ってくるのは、予想外だったのか、驚いていた。

 

 

麻喜「まさか、森の中まで追ってくるなんて・・・。ありゃ相当怒ってるのかなぁ?

ひえぇ、ますます、捕まる訳にはいかなくなった。」

 

 

意外な一面を見た麻喜は、顔を真っ青にしながら逃げていた。

しかし、魅月はというと、かなり限界が近かった。追ったはいいが、慣れない山に、普段より多く体力を消耗してしまったのだ。

段々と差がひらいていくのを、確認した麻喜は

 

 

麻喜「さすがに、疲れてきたかな?」

 

 

と、安心して前を向くと、目前に木の枝が迫ってきていた。突然の事に驚いた麻喜は、体を大きく仰け反り、木の枝は避けられたものの、足を滑らせてしまい、山の斜面を滑り落ちていってしまった。

 

 

麻喜「しまっ・・・!?たぁぁぁーーー!!」

 

 

そんな叫び声を聞いた魅月は、体力を振り絞り、麻喜のいた方へ走った。

 

 

魅月「麻喜!?どうしたんですか!?」

 

 

しかし、疲れて、麻喜が滑ってしまい、さらに滑りやすくなった地面に気づかずに踏んでしまい、魅月まで滑り落ちていってしまった。

 

 

魅月「キャーーー!!」

 

 

~現在~

 

 

麻喜「んで、気づいたら、霧が深くて、彼岸花がいっぱい咲いてる所にいて、いきなり怪物・・・っていうか妖怪?に襲われて、慌てて近くで気絶してた魅月を抱えて、闇雲に走ったんだ。そしたら、いつの間にかそこから抜け出せてて、近くに里のようなのが見えたから、そこに行って、そこで、門番してる奴に、ここはどこか聞いたら、ここに行けって言われて、今現在?」

 

 

と、麻喜は一つ一つ思い出すように、ここに来た経緯を話した。

 

 

リーナ「へぇ~。そんなことがあったんだ。大丈夫だった?」

 

麻喜「うん。少し、服が汚れただけで、怪我は無いよ。」

 

 

と、両手を広げ、怪我の無いことを見せた。すると、紫が

 

 

紫「阿求。今の話を聞いて、わかったかしら?」

 

 

と、口元を扇で隠しながら阿求に聞き、阿求は

 

 

阿求「はい。何故、彼女達は、紫さんスキマを使う事なく、些細な事で幻想入り出来たのか、普通の人間どころか、弱小でも妖怪ですら、危険な無縁塚を傷一つ無しで済んだのか。

麻喜さん、あなた人間ではありませんね。」

 

 

と、真剣な面持ちで言った。

 

 

リーナ&黒人「ええ!?」

 

 

と、リーナと黒人が驚く中、当の本人は、

 

 

麻喜「・・・・・へ?」

 

 

と、少し遅れて、間の抜けた声をあげた。


 
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