その振り返った2人を見た瞬間。
私は、気絶してしました。
その日は、一刀様のお仕事がお休みで、久しぶりに周邵と遊んでいただける日でした。
「父様!今日は邵とお出かけです!!」
周邵も久しぶりにお父さんと一緒に出かけることが嬉しいらしく、とってもはしゃいでいました。
「はは。わかったから、そんなに引っ張らないで。そんなに急いで歩いたら、邵も転んじゃうよ?」
一刀様は微笑みながらそう言うと、周邵が転ばないようにゆっくりと歩いていました。
「大丈夫です!邵は転んでも泣いたりしません。この前母様と一緒に、お庭に隠れる訓練もしましたもん!!」
周邵はそう言って、誇らしげに胸を張りました。
「へぇ~。もうそんな訓練をしたのかぁ。邵は将来、お母さんみたいな立派な隠密になれるな。」
一刀様はしゃがみこんで周邵の頭を撫でながら、私の方を向いて少し微笑みました。
「おんみつ?それは何ですか??」
周邵は気持ち良さそうになでられながら、一刀様を見上げて言いました。
「隠密ってのは、明命みたいにいろんな所に隠れて、いろんな情報を集めたりする人のことだよ。明命はとっても立派な隠密だから、邵も頑張って訓練すれば、きっと立派な隠密になれるよ。」
一刀様はそう言いうと、ふっと私の方を見て微笑み、また周邵の方を見て話始めました。
「けどね。邵。これはちゃんと覚えておいてね。隠密は平和のために、みんなのために、いろんな情報を集めたりするんだ。いくら上手に隠れられても、それは平和のために、みんなのために使わなくちゃいけないんだ。それはちゃんと覚えておいてね。」
一刀様は、周邵に言い聞かせるように、やさしく、ゆっくりと言いました。
「立派な隠密になっても、平和のために、みんなのために頑張るって約束してくれる?」
一刀様はそう言うと、周邵の目を見つめました。
「約束??」
周邵は、首を傾げてそう聞きました。
「そう、約束。出来る??」
一刀様はもう一度やさしく言いました。
「・・・はい!約束します!!きっと母様みたいな立派な「おんみつ」になって、みんなの役に立ちます!!」
周邵はそう言うと、一刀様の首に抱きつきました。
「おっとっ。」
周邵は嬉しいと、よく一刀様の首に抱きつくので、一刀様も慌てることなく、それを支えていました。
「よし。それじゃあ、出かけようか。」
一刀様がそう言うと、周邵は一刀様の首を放して、一刀様の手を握りました。
「はい!!行きましょう!!」
周邵が嬉しそうに言うと、一刀様が私の方を見ました。
「明命も手。つなごうか。」
そうやさしく微笑みながら、手を差し出してくださる一刀様に、思わず顔が熱くなってしまいました。
「・・・は、はい!!」
少し恥ずかしかったのですが、手を一刀様の手に乗せました。
「早く行きましょう!!」
そう言った周邵が一刀様の手をひっぱりながら、私たちは町へと出かけました。
「父様!あれを見てください!!あんなところに、父様の絵があります!!」
少し前から、店先などに多く貼られるようになった一刀様の絵を見ながら、周邵はそう言いました。
「そうですよ。周邵。旦那さまはとても立派な方だから、ああして、絵に描かれているのですよ。」
私がそう言うと。
「はは。明命もすっかりお母さんになったね。」
と一刀様が私に笑いかけました。
「えへへ。」
なんだか、少しくすぐったい様な、恥ずかしい様な気持ちで私も笑いました。
そうしていると、突然周邵が走り出しました。
「あ。こら!周邵!どこに行くのですか!」
そういう私の声が届いたのか、周邵はくるっと振り向くと、少し先にある呉服屋さんを指さして言いました。
「あそこ!可愛い服がいっぱいあるって、小蓮さまが言ってたお店です!」
そう言い終えると、周邵はまた、その店に向かって走りはじめました。
「こら!待つのです!!」
そう言いながら走りだそうとした私の手を、一刀様が引きました。
「大丈夫だよ。あそこは、いつも俺が服を作ってもらってるお店だから、きっと周邵のことも分かってると思うよ。」
そう一刀様は微笑みながら言いました。
「ですが・・・。」
日頃、母親として周邵と接している私としては、町に来て落ち着きなく動き回ることに対して、きちんと注意をしたい気持ちでした。
「今日は、日頃遊んでやれない俺がいるから、はしゃいでるんだと思うんだ。いつもは町に来てもきちんとしてるんだろ?」
お店の方へゆっくりと歩きながら、一刀様はそう言いました。
「確かに、そうですが・・・。」
お城を出たときからずっと手をつないだままだったので、私も一刀様の隣をゆっくり歩きました。
「甘いって言われちゃうかもしれないけど、今日は多めに見てあげてくれないかな。今度一緒に遊ぶときは、俺がちゃんと注意するからさ。」
そう言って一刀様は、私の方を向いて頭を下げました。
「お願い。」
「か、一刀様!頭をお上げください!!」
人の往来で、店先に絵を飾られているようなお方が、一将軍に向かって頭を下げているなんて、あまりいいことではありません。そこが一刀様のいいところではありますし、町の皆さんもそれをわかってくださっていると思いますが、それでも、きちんとしないといけないことだと思いました。
「お願い、聞いてくれる?」
そう、少しすがるように私を見つめる一刀様。
(あぁう~。卑怯です~。そんな目で、そんなこと言われたら、頷くしかないじゃないですかぁ・・・)
「わ、わかりました・・・」
そう言うと、一刀様はパァっと顔が明るくなって、
「ありがとう!明命!!」
そう言ってキラキラ笑う一刀様に、私は再び顔を赤くしてしまいました。
そうしている間に、周邵が入っているお店につきました。
「あ。父様!母様!」
私たちが入ってくるのを見て、周邵がとととっとこちらに駆け寄ってきました。
「見てください!あのお猫様の模様の服!!」
周邵はそう指を指しながら、楽しそうに言いました。
「え!どの服です・・・・か・・・。」
その服を見たとき、私は言葉を失ってしまいました。
周邵が指をさしていた先には、黒地の大きい着物、一刀様のいう「ろんぐてぃーしゃつ」が掛けられていました。
おそらく私が着たら、裾がちょうど膝上ぐらいまで来るだろう、その「ろんぐてぃーしゃつ」には、白い線で細く美しいお猫様の背を向け横を見つめる姿が描かれていました。
そのお猫様の背中には、いろんな色の大小様々なお星様が描かれていました。
「あうあう~。」
私はそのお猫様の美しさに見とれてしまいました。
そのため、後ろで行われていた一刀様と周邵、そして呉服屋さんの会話に気がつくことが来ませんでした。
~一刀・周邵・店主の会話~
後ろで明命が服に見とれているのを見て、俺の頭にひとつのアイディアが浮かんだ。
「周邵。ちょっとこっちにおいで。」
「??どうしたんですか?父様??」
首を傾げながら、とてとてっとこちらに歩いてきた周邵を抱き上げて、俺は顔なじみの店主のおっちゃんの所に向かった。
「おっちゃん。こんちわ。」
そう言うと、店主のおっちゃんが恭しく頭を下げた。
「これは御使い様!いつもお世話になっております!!」
そう言うおっちゃんに、静かにするようにジェスチャーで伝えると、俺は小さめの声で言った。
「あのさ。また作ってほしいものがあるんだ。それも大急ぎで。お願いできるかな。」
そう言うと、おっちゃんはふっと頷くと、
「いつも御使い様には素晴らしい意匠をいただき、大変お世話になっておりますので、わたくしどものできる範囲でよろしければ、いくらでもご協力いたします。」
そう言って、手近にあった布きれと、筆記用具を持ってきた。
「さて、どのような意匠でございましようか。」
そう言って渡された筆を走らせて、俺は布きれにそのデザインを描き上げた。
「この部分は、もふもふとした感触を出す生地を使って、あと、ここはぷにぷにした感触で・・・・」
そう描いたデザインをこと細かに説明すると、おっちゃんは、大きくうなずいた。
「それで、大きさは、この子に合う大きさのものを1つと、あと大人用を1つ。色は両方とも黒でお願い。」
そう言うと、おっちゃんはすぐ様周邵に巻尺を当て、寸法を取り始めた。
「・・・わかりました。2刻・・・いえ、1刻で仕上げて見せますので、お待ちいただけますか?」
「わかった。いつも悪いね。」
「いえいえ。それでは、針子たちに指示を出してまいります。」
そう言うと、おっちゃんは奥に入って行った。
私は、どれくらいそのお猫様に見とれていたのしょうか。
気がつくと、一刀様と周邵がニコニコしながら、私を見ていました。
「うふふ。母様。そのお猫様きれいですよね。」
そういう周邵に少し恥ずかしくなっていると、
「その服、ほしいの?」
と一刀様がおっしゃいました。
「い、いえ!別にそういう訳では・・・。」
慌てている私を気にせず、一刀様はそのお猫様の服をひょいっと持って行きました。
「周邵。いつもお母さんには、お世話になってるよね??」
そう、にこやかに一刀様が言うと、
「はい!母様にはいつもお世話になってます!!」
そう、笑いながら周邵が答えました。
「それじゃあ、お母さんにお礼しようね。」
「はい!!」
とても楽しそうにそう言いながら、二人は服を持ったまま、お会計へと歩いて行きました。
「あ。か、一刀様!そんな、買っていただくなら、私が買いますから!!」
そう言って二人を追いかけたのですが、一刀様は、私に支払いをさせてくれませんでした。
「それでは、袋に入れてまいります。」
そう言って、お店の方が服をもって奥へ歩いて行きました。
「うん。お願い。」
一刀様はそう言うと、周邵と目線を合わせて、ニコニコと微笑んでいました。
「??」
その様子を見ながら、何で微笑んでいるのか分からない私は、首を傾げていました。
「おまたせいたしました。」
そう言う声とともに、お店の方が、私の服が入っているにしては、大きい袋を持ってきました。
「・・・あの。袋が大きいようですが・・・。」
そう私が言うと、
「周邵の服も少し買ったんだよ。ねー?」
と一刀様がニコニコしながら周邵を見ました。
「ねー。」
二人で楽しそうにそう言うと、一刀様がその袋を受け取りました。
「それじゃ。そろそろ帰ろうか。」
二人の様子があやしかったのですが、そう促されるまま、私たちはお城に帰りました。
「ねぇ明命。早速これ着てみてくれないかな?」
お城の私たちの部屋につくと、袋から先ほどの服を出して一刀様がそうおっしゃいました。
「えぇ!?今すぐですか??」
一刀様は、びっくりしている私を悲しそうな目で見つめると、
「だめかな?」
とおっしゃいました。すると、
「かな??」
と周邵も同じように、悲しそうな目で私を見つめて言いました。
(う~・・・。やっぱり、卑怯です~。)
そう思いながらも、私は二人のお願いに抵抗することができませんでした。
「うぅ。わかりましたぁ・・・。」
「やった!ありがとう!!」
そう言うと、一刀様は周邵の手を引いて、部屋を出ていこうとしていました。
「あの。一刀様。なぜ周邵を連れて行かれるのですか?」
そう私が声をかけると、二人とも一瞬ビクッとして、
「い、いやぁ。周邵に買った服を・・・着せに・・・そう!着せに行こうと思ってさ。」
そう一刀様が言うと、周邵も、うんうんと頷きました。
「そ、そうですか・・・。」
やっぱり怪しかったのですが、私はそのことを聞くことができませんでした。
「そ、そんじゃ、隣の部屋で着替えさせてるから・・・。」
そう言うと、一刀様は周邵と部屋を出て行きました。
(どうしたのでしょうか・・・)
そう考えながらも、私は一刀様に買っていただいた服に着替え始めました。
(早く着替えて、二人が何をやっているか、見に行きましょう。)
そう思い、着ていた服を脱ぎ、お猫様の描かれた服に着替えました。
(・・・やっぱり、お猫様きれいですぅ・・・)
着替え終わり、鏡で確認すると、やっぱりそのお猫様はうつくしかったです。
(・・・さて、二人の様子を見に行きましょう。)
私は、隠密活動をするときのように、気配を消して部屋を出ました。
「これ!父様も付けてください!!」
少し開いている隣の部屋の扉から、周邵の声が聞こえてきました。
「い、いや。これは俺のじゃなくて・・・」
「いいからつけてください!!その方が母様もきっと喜びます!!」
少し困ったような一刀様の声も聞こえてきました。
「わ、わかったから・・・でも、今だけだからな?」
そう言う一刀様の声が聞こえると、しゅるしゅるっと何かを結ぶ音が聞こえてきました。
(いったい何をやっているのでしょうか・・・)
私は気配を消したまま、そっと扉に近づきました。
「・・・これでいいか?」
「はい!!父様もよく似合っています!!」
そう周邵の満足げな声が聞こえて来た時に、私はちょうど扉の横の壁の所に立ちました。
(いったい何を・・・)
そう思って中をのぞいた時でした。
「・・・・え?」
思わずそう声を上げてしまった私に気がついて、一刀様と周邵がこちらを向きました。
(あ、あ~う~・・・)
ドサッ!!
その振り返った2人の姿を見た瞬間。
私は気絶してしまいました。
「み、明命!!?」
そう言う一刀様の声は、もう聞こえていませんでした。
「・・・めい。・・・・みん・・・・・。・・・みん・・・めい。」
そう呼ぶ一刀様の声が遠くから聞こえた気がしました。
「お、お猫様が・・・一刀様・・・。周邵が・・・お猫様・・・。」
私は先ほど目にした、夢のような光景を思い浮かべていました。
「みん・・・めい。・・・みん、めい・・・。明・・・命・・・。明、命・・・。・・・明命!!!」
「はっ!!!」
一刀様の呼ぶ声で私は目を覚ましました。
けれど、そこはまだ夢の世界でした。
「明命!!大丈夫か!?」
そう、目を開けた私の眼に映った一刀様の頭には、見まごうことのないお猫様の耳がついていて、私を抱きかかえている一刀様の手は、大きな肉球のついたお猫様の手になっていたのです!!
「母様!!大丈夫ですか!?」
周邵の声が聞こえた方を見ると、そこには、お猫様の耳をつけ、手も一刀様と同じようなお猫様の肉球になっていて、しかも、お尻にも可愛らしいお猫様の尻尾がついていました。
「あうあうあぁ~・・・」
私は再び、意識を失いそうになりました。
「明命!しっかりしろ!!」
けれど、そう言った一刀様の声で、何とか意識をとどめました。
「な・・・なんで・・・お猫様・・・??」
私は、何とかそう言いました。
「え?・・・あぁ。これか。これは今日服を買ったお店で作ってもらった、ねこみみだよ。明命と邵に着てもらおうと思って買ったんだけど、邵に着てくれって頼まれてさ。」
私を布団の所まで運んだあと、恥ずかしそうにくるっと回って、全身を見てくれました。
「は・・・・はうぅ・・・・。」
くるっと回った一刀様のお尻にも、周邵と同じような尻尾がついていて、一刀様はお猫様になっていました。
私はあまりの幸せな光景に、また意識が遠のいてきました。
「とうっ!!」
「あうっ。」
そんな私に周邵が飛び乗ってきました。
「母様!幸せな現実を前にして、意識をなくしてはいけません!!」
そう言った周邵は、ニコっと笑いました。
「父様の言っていた、母様にお世話になっているお礼です!!」
そう言って周邵は私の上から飛び降りると、一刀様の手を取りました。
「さぁ!父様!母様!今日はこのまま一緒に寝ましょう!!」
そうニコやかに言うと、周邵は一刀様の手を引いて、隣の私たちの部屋へと歩いて行きはじめました。
「さぁ。母様!早く行きましょう!!」
そう呼ぶ周邵の声に引っ張られて、私は自分の部屋へと向かいました。
「あ~う~。お猫様の一刀様と周邵に囲まれて、お猫様の服を着て眠れるなんて、幸せですぅ・・・」
そう言いながら、私は一刀様の肉球をぷにぷにしていました。
「一刀様のにおいのぷにぷに・・・最高ですぅ・・・」
その日、私はそんな夢のような環境の中で眠りました。
「上手に隠れられても、それはみんなのために使わないといけないって言ったでしょ!?」
っと周邵の前で一刀様に叱られたのは、次の日のことでした。
怒られながら、「今度から、時々あの格好をしてもらおう」と考えていました。
「ちょっと明命!!ちゃんと聞いてるの!?言っとくけど、そんなことじゃ、もうあのねこみみ着けないからね!!」
私の考えを察したのか、一刀様にそう言われてしまいました。
「あうあう~。ごめんなさいぃ~!!」
私は、あの幸せな時間のために、泣きながら一刀様に謝りました。
そうして怒られている私を尻目に、ねこみみを着けたままの周邵は2日連続で一緒に居られる一刀様にすり寄っていました。
(あぁ。可愛いですぅ・・・)
「明命!!」
あ~う~・・・・。今日も呉は平和ですぅ。
あとがき
どうも、komanariです。
とりあえず、前作「女の子として、覇王として」に多くの支援・コメントをくださいましてありがとうございました。皆さまの温かいコメントが、とてもうれしかったです。
さて、今回のお話ですが、明命の幸せな条件を出来るだけ満たしてみようと、自分なりに考えた結果こうなりました。
明命の好きなもの=お猫様&一刀様
なので、その二つをくっつけてみました。
あまり内容がなくてごめんなさい。
あぁ。文才と内容をひらめく脳がほしい・・・・
一刀のねこみみ姿とかに不快感を持たれる方がいらっしゃいましたら、ごめんなさい。
こんな作品ですが、今回も閲覧していただきありがとうございました。
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結構前にだめぱんだ♪様からリクエストしていただいた明命のお話を書いてみました。
こんな話が、即出だったらごめんなさい。
今回は周邵も出てきますが、その性格とかは独自設定です。
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