No.699366

九番目の熾天使・外伝 ~短編その⑫~

竜神丸さん

幽霊騒動その21

2014-07-08 17:18:57 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3451   閲覧ユーザー数:1012

「ぐ、がは…!!」

 

「くっ……テメェ…!!」

 

「ッ…支配人、さん……ウルさん…!!」

 

『フン…』

 

アザゼル率いる怪人軍団を前に、全身ズタボロで傷口から煙が出ている支配人とディアーリーズ。その後方の結界内で美空が悲痛そうな表情をしている中、アザゼルはフンと笑ってみせる。

 

『あれだけ決着ヲつけると言ッテおきながら、何だコノ弱さは? 以前我等が王を倒シタ時ノ強さは一体、何処に消エテしまったのダロうなァ…?』

 

『『『『『グルルルルル…!!』』』』』

 

アザゼルが指を鳴らし、彼の後ろにいたライノセラスビートルオルフェノクやスタッグビートルオルフェノク、アルビノレオイマジンやガーゴイルレジェンドルガ、ズ・ザイン・ダやドラス、サイコローグやカーバンクル、ビースト・ドーパントやサドンダスなどの強豪怪人達が傷付いた二人に迫り寄って行く。立ち上がって応戦しようとする支配人とディアーリーズだったが、先程アザゼルの繰り出した一撃が相当ダメージになったのか、上手く立ち上がれず膝を突く。

 

「くそ、さっきの一撃が……ディア、まだやれるか…!!」

 

「何の、これしきですよ……一刻も早く、助けたい人がいるんですから…!!」

 

「…あぁ、そうだよな。なら早いところ」

 

『『『『『グルァァァァァァァァァァァァッ!!』』』』』

 

「「―――全員叩き潰すのみ!!!」」

 

怪人達が襲い来ると同時に、二人も同時にその場から駆け出す。

 

≪スクリュー・ナウ≫

 

≪METAL SLASH≫

 

「「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」

 

『『グガァァァァァァァッ!?』』

 

まずはディアーリーズの繰り出した氷の槍が錐揉み回転しながら発射され、一番間近まで迫って来ていたオルフェノク達に命中。その隙に支配人が怯んだオルフェノク達の頭を踏み台に飛び出し、着地地点にいたズ・ザイン・ダを硬化したブレイラウザーで斬りつけてからアザゼルの下まで駆け抜ける。

 

『頑張るものダナ。何度やったトコロで、結果は同ジだろうニ』

 

「じゃあこれはどうだ!!」

 

≪Clock Up≫

 

『何、ム…!?』

 

アザゼルの振るった剣を回避すると同時に支配人は擬似クロックアップを発動し、高速移動でアザゼルの視界から姿を消す。しかし、それでもアザゼルの余裕は崩れない。

 

『そちらがソノつもりならバ……時の流れその物ヲ、塞き止めてやれば良イだけの話ダ』

 

アザゼルが剣を真上に掲げたその瞬間、その場にいたアザゼル以外の者達が一斉に行動を停止。それは擬似クロックアップを発動したまま、背後からアザゼルを斬ろうとした支配人も例外ではなかった。

 

『速さで我ヲ撹乱しようトハ……芸が無イ!!』

 

「―――な、がはぁっ!?」

 

「支配人さ…ッ!? うわ、この…!!」

 

再び時間が動き出した瞬間、アザゼルの振るった剣で支配人が吹き飛ばされる。支配人の方まで加勢に向かおうとしたディアーリーズだったが、サイコローグがスラッシュダガーを振るう形でそれを妨害し、ディアーリーズも召喚した炎剣ですかざず防御する。

 

『ギギギギギギ…!!』

 

「この……邪魔をするな昆虫如きが!!」

 

『ギシャアッ!?』

 

ディアーリーズはスラッシュダガーの柄を掴み、サイコローグの胴体を炎剣で一閃。同時にこちらへ迫ろうとしていたビースト・ドーパントに炎剣を投げつけて怯ませ、今度はサイコローグから奪い取ったスラッシュダガーでタイガーロイドやカーバンクルを攻撃していく。しかし…

 

「キャアッ!?」

 

「!? 美空さん!!」

 

離れた位置で、今度は美空が窮地に陥っていた。彼女のいる結界をガーゴイルレジェンドルガが爪で攻撃しており、今にも結界を打ち破ろうとしている。

 

「美空さんに手を出すな!!」

 

『ガァアッ!?』

 

振り回したスラッシュダガーでガーゴイルレジェンドルガを強引に押し退け、美空のいる魔法陣の結界を修復してから魔力で更に強化する。

 

「美空さん、怪我は?」

 

「大丈夫、で…ッ!? 後ろ!!」

 

『フンッ!!』

 

「あぐ!? く、貴様…!!」

 

≪コネクト・ナウ≫

 

後ろから振り下ろされたアルビノレオイマジンのモーニングスターで、ディアーリーズは後頭部を負傷。頭から血が流れながらもディアーリーズはウォーロックソードを魔法陣から取り出し、両手でそれを構えたまま敵の振るって来たモーニングスターを防御してみせる。

 

「ぐ、ぅぅぅぅ…!!」

 

しかしアザゼルの攻撃でだいぶ体力を消費してしまっているからか、アルビノレオイマジンと鍔迫り合いになったまま少しずつ後ろまで後退し始める。ディアーリーズは痛みで両足がガクガク震えているも、それでもその場から動こうとしなかった。

 

「ウルさん、傷が…!!」

 

「大丈夫です……美空さんは、今度こそ…僕がこの手で守ってみせま…うぁっ!?」

 

ディアーリーズの右肩がアルビノレオイマジンの左手に掴まれ、力ずくで他の怪人達がいる下まで押し転がされる。立ち上がろうとしたディアーリーズの顔面をドラスが殴りつけ、その衝撃で再び倒れてしまう。

 

(コイツ等、強い…!!)

 

その後も倒れたディアーリーズは無理やり起こされては、ズ・ザイン・ダに腹を殴られ、ガーゴイルレジェンドルガに蹴られ、サドンダスの尻尾で背中を攻撃されどんどん傷が増えていく。

 

『喰ラェイッ!!』

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

更にはタイガーロイドが背中の大砲から発射した砲弾で、ディアーリーズは足場の端まで大きく吹っ飛ばされてしまう。その際、彼の手元からウォーロックソードが手放されて床に落ちる。

 

「ぐ、がは…!!」

 

『グゥゥゥゥゥゥ…!!』

 

床に倒れたディアーリーズの背中をドラスが何度も踏みつけてから、彼の首を掴んで高く持ち上げる。持ち上げられたディアーリーズの足元には床が無く、その下は行き場の無い亡霊達の魂で溢れ返っていた。

 

「!? ディアさぁん!!」

 

「ディア!? くそ、そこを退けアザゼル!!」

 

『無理な話ダナ。奴はアノまま、死者の漂ウ闇へと消エル…!!』

 

「チィ、クソッタレがぁっ!!」

 

『爆ゼロ、魔刃剣(まじんけん)

 

『グォンッ!!』

 

「!? な…がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ディアーリーズの窮地に気付いた支配人だったが、アザゼルが妨害する所為で動けない。それどころかアザゼルの召喚した無数の魔剣が支配人を取り囲んだまま次々と爆発し、更にサドンダスが口から放つ火炎弾が支配人を爆炎で包んでいく。

 

「ウルさぁん!!」

 

魔法陣の結界内部から、ディアーリーズの窮地を見て叫ぶ美空。何とか彼を助け出したい彼女だったが、自分はあくまで非戦闘員。戦う為の力などありはしない。

 

(このままじゃウルさんが、どうすれば…ッ!?)

 

その時、彼女は結界の近くにウォーロックソードが落ちているのを発見。先程、タイガーロイドの砲撃を受けた際にディアーリーズが落とした物だ。

 

「ッ…!!」

 

それを見た美空は、すぐさま行動へと移り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『グゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!』

 

「が、は…ぁ…!!」

 

ドラスに首絞められたまま、足場から落とされようとしているディアーリーズ。落ちれば亡霊達の漂う闇となっており、生きた人間が落ちればただでは済まないだろう。

 

『ヨォシ、ドラスヨ!! ソノ小僧ヲ落トセェッ!!』

 

『グゥ…!!』

 

タイガーロイドの命令で、ドラスがいよいよディアーリーズを落とそうとし始めた……その時。

 

「―――あぁっ!!」

 

-ザシュッ!!-

 

『グゥッ!?』

 

「!?」

 

何と、結界から抜け出した美空がウォーロックソードを振り下ろし、ドラスの背中を斬りつけたのだ。これには斬られたドラスだけでなくタイガーロイド達やディアーリーズも驚く。

 

「美空、さん…!?」

 

「ウルさんを、離して…離して!!」

 

『グゥ!? グルルル…ガァ!!』

 

「あぐっ!?」

 

しかし、何度も背中を斬られたままでいるドラスではない。妨害されて苛立ったドラスは右手を振るい、美空を床に薙ぎ倒す。

 

「痛、た…!!」

 

「ッ……でりゃあっ!!!」

 

≪ディフェンド・ナウ≫

 

『グル…!?』

 

『何、ウゴワァッ!?』

 

ドラスの注意が美空に向いた隙に、ディアーリーズはすぐさま冷気の壁を召喚し、ドラスをタイガーロイド達の下まで吹き飛ばす。吹き飛ばされたドラスはそのままタイガーロイドやカーバンクルをも転倒させ、その間にディアーリーズは美空の下まで駆け寄る。

 

「美空さん、無茶しないで下さい!! 何であんな事を―――」

 

「私も…」

 

「?」

 

「私も……ディアさんの、力に…なりたかったから…!!」

 

「美空さん…」

 

『何ヲ悠長に話してイル?』

 

「「!?」」

 

二人の足元に紫色の魔法陣が出現し、そこから黒い炎が噴き出されようとする。

 

「美空さん!!」

 

「あぅ!?」

 

ディアーリーズが美空を抱き寄せて移動し、その瞬間に魔法陣から黒い火柱が噴き出す。間一髪の所で回避した二人は再び結界を張り、その結界をズ・ザイン・ダやオルフェノク達が破壊しようと攻撃し始める。

 

「ウルさん、聞いて……私も、あなたの…力になりたい…!」

 

「美空さん…?」

 

「ウルさん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と、仮契約…して下さい…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!? な、ちょ…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

 

突然の提案に、ディアーリーズは思わず驚いて叫んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、“鍵”の周囲では…

 

 

 

 

 

 

≪SWORD VENT≫

 

「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『『『クキュォォォォォォォォォォォォォ…!?』』』

 

≪Exceed Charge≫

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『グギャァァァァァァァッ!?』

 

龍騎サバイブがドラグバイザーツバイを振るい、そこから繰り出される炎の斬撃でギガンデスヘブンやイッタンモメンの大群を次々と撃墜していた。更に上空ではファイズ・ブラスターフォームがファイズブラスター・ブラスターモードを構え、その銃口から光線を放ちプテラノドンヤミーを爆散させている。

 

「くそ、数が多過ぎる!!」

 

「あぁもう、どんだけいるんだよコイツ等…どわっと!?」

 

『『『『『キュォォォォォォォォンッ!!』』』』』

 

マザーサガークの大群が放つエネルギー弾をドラグランザーは飛んで回避。龍騎は危うくバランスを崩しかけるもドラグバイザーツバイから炎の斬撃を繰り出しマザーサガーク達を撃墜していくが、それでもモンスター達の数は減らず、飛んでいたファイズもだいぶ体力を消費していた。

 

「キリが無ぇな、どうするか―――」

 

その時。

 

≪BIO≫

 

≪CHOP≫

 

「よいしょっとお!!」

 

『ギシャァァァァァァァァッ!?』

 

「お?」

 

フロートの力で宙に飛来してきたカリスが、手に持ったカリスアローから何本もの蔓を発射。それに捕らえられたレイドラグーンがカリスの前まで引き寄せられ、腹部に強化されたチョップが炸裂し爆散する。

 

「お、フィアちゃんか」

 

「ヤッホー、助太刀に来たよん……と言いたいところだけど、レイは何処にいる? もしかして、もう鍵の方に向かっちゃった?」

 

「あぁ、ディア達も一緒にいる。早いところ加勢に向かってやってくれ」

 

「ほいほい、了解ですよっと!」

 

そうと分かれば話は早いと、カリスはそのまま“鍵”の方まで一気に飛び去ってしまった。ここで、ファイズはある事に気付く。

 

「―――あ、しまった!? 結局増援増えてねぇ!!」

 

「ちょおい!? 俺、そろそろ疲れてきたんだけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!?」

 

「耐えろ真司!! 何としてでも耐えるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

結局増援は一人も増えないまま、ファイズと龍騎はヒィヒィ言いながらモンスター達を退治し続ける羽目になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大変そうだな、彼等も…」

 

「…助太刀、して来る」

 

「あぁ、分かった。気を付けるんだぞ」

 

その後、見かねたギャレンがジャックフォームとなり、ちゃんと二人の助太刀に入ってくれたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は戻り、“鍵”の内部…

 

 

 

 

 

 

『ヌゥンッ!!』

 

『ギギギギギギギギ…!!』

 

カーバンクルやサイコローグが結界を破壊しようとする中、ディアーリーズはリカバーの魔法で傷を回復しながら美空の話を聞き入れていた。

 

「僕と、仮契約を…?」

 

「前に聞いた、仮契約……あれで出るっていう、アーティファクトなら……あの人達、とも…戦えるかも…!」

 

「で、ですが…!!」

 

『フン!!』

 

「のわぁっ!?」

 

「ッ!? 支配人さん!!」

 

アザゼルの攻撃を受けた支配人が吹っ飛ばされ、二人のいる結界と激突する。

 

「くそ、無駄に硬ぇなコイツ等…!!」

 

『ハァッ!!』

 

「ぬぉっと!!」

 

支配人はライノセラスビートルオルフェノクの振るった剣を両手で白刃取りし、右足で蹴りつけて他の怪人達にぶつける。

 

「ウルさん、早く…仮契約を…!!」

 

「ッ……美空さん、こんな僕と仮契約をしたいと言ってくれるのはとても嬉しいです。でも良いんですか? こんな僕で。僕は次元犯罪者で、人造人間で、貴女以外にも複数の女性に好意を持っている男ですよ? なのに―――」

 

「ウルさん!!」

 

「!?」

 

突然美空が声を張り上げ、ディアーリーズの両肩を掴む。

 

「何度も、言わせないで……私は…ウルさんだから、助けたいんです……何も、出来ないまま…ただ見てるだけなんて……もう、耐えられない…!!」

 

「な、え…!?」

 

美空が涙目で訴えてくるのを見て、ディアーリーズは思わず言葉に詰まる。

 

「だから、手伝わせて下さい……ウルさんの戦いを…力がなくても良い……せめて、あなたと…繋がりを、持っていたい…!」

 

「美空さん…」

 

「お願いだから……あなた一人に…全て、背負わせたくない…!!」

 

「…!!」

 

ディアーリーズの両肩を掴む美空の手は、僅かに震えていた。本当は怖いのだろう。しかしその手は震えていようとも、彼女の向ける目は少しもブレる事なく、ディアーリーズの目を捉えてみせていた。そんな彼女の覚悟を無下に出来る程……ディアーリーズも無慈悲ではなかった。

 

「…後悔は、ありませんね?」

 

「後悔なんて、ない……私は、それを望んでるから…!!」

 

「ッ……美空さん…!!」

 

ディアーリーズも、美空の肩を掴む。

 

「行きましょう、美空さん」

 

「二人で、一緒に」

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ん…!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人の唇が、ゆっくりと合わさった。

 

その瞬間、二人は魔法陣から放出される光に包まれていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『! 何事ダ…?』

 

「あの光は…」

 

その光に、戦闘中だった支配人やアザゼル達の視線が集まる。

 

『何ヲスルつもりか知らんが……邪魔をした方ガ良さそうダナ』

 

「させっか!!」

 

≪Exceed Charge≫

 

アザゼルが振るった剣から巨大な斬撃を放ち、支配人はオーガストランザーから長く伸ばされた巨大なエネルギー刃でそれを防ぎ、更にビースト・ドーパントやサドンダスをも弾き飛ばす。

 

「さて……何をする気なんだ? あの二人は」

 

後ろから飛び掛かって来たガーゴイルレジェンドルガをマグナバイザーで撃墜し、支配人はディアーリーズと美空がいるであろう魔法陣に再び視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ん、ちゅ…!」」

 

二人の接吻が続く。そして時計の文字盤がいくつも張り付いたような結界が二人の周囲を覆い、そして二人はゆっくりと唇を離す。

 

「! 凄い……これが、ウルさんと…私の…新しい、力…!」

 

「はい……レアアーティファクト“イノセンスシリーズ”の一つ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間を操る能力を持つアーティファクト…刻盤(タイムレコード)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

眩い光が少しずつ収まっていき、美空の手元には小さなレコード状の小道具が具現化された。

 

『フン、所詮コケオドシダ!! コレデモ喰ラェイッ!!』

 

それがどうしたとでも言うかの如く、タイガーロイドは背中の大砲から連続で砲撃を放ち、二人のいる魔法陣が爆発する。

 

「ディア!! 美空ちゃん!!」

 

『グハハハハハハハ!! ヤハリ見カケ倒シダッタカ!!』

 

タイガーロイドが高笑いする中……アザゼルは気付いた。

 

『!? イヤ、違う!! コレハ…』

 

煙が晴れていき、そしてタイガーロイド達も驚愕する。

 

『バ、馬鹿ナッ!?』

 

「な…」

 

爆炎の中、ディアーリーズも美空も無傷だった。美空の手に収まっているレコードが再び光り出し、彼等の真上に巨大な時計の紋様が出現する。

 

「分かる……アーティファクトの、使い方が…頭の中に入って来る…!」

 

『チィ、ナラバモウ一度ォッ!!』

 

「―――時間停止(タイムアウト)!」

 

再び放たれるタイガーロイドの砲撃。しかしそれはディアーリーズと美空に届く前に、二人の目の前で爆発して消滅する。まるで、時間の止まった空間によって遮られたかのように(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

『ナ、何ダトォ!?』

 

「結界か…? いや、にしては違和感が…」

 

『ッ……まさかアノ娘、時ヲ止めたというノカ…!!』

 

アザゼルやタイガーロイド、支配人達が驚く中、美空は更なる能力を発動する。

 

時間回復(リカバリー)…!」

 

「!? 傷が、消えていく…!」

 

『カ、回復シタダトォッ!?』

 

一同のいる足場全体が特殊結界に包まれる。すると突如、支配人の全身の傷が少しずつ回復し始めたのだ。これにはタイガーロイド達だけでなくアザゼルも驚きを隠せない。

 

『馬鹿ナ、そんな事ガ……いや、あくまで時ヲ巻き戻シテいるだけナノか…?』

 

「どぉら!!」

 

『ム…!?』

 

支配人が取り出したギガランチャーの砲撃で、アザゼルのいた場所が爆発する。

 

「うし! 何かよく知らんが、傷が治るなら万々歳だ」

 

「いえ……あまり、期待は…しないで下さい」

 

「?」

 

「あくまで、時間を戻してるだけです……能力を、解除すれば…また、さっきの傷が戻ってしまう、から…」

 

「となると、致命傷は避けた方が良いみたいですね……支配人さん!!」

 

「あぁ、状況は大体分かった!!」

 

ディアーリーズは美空から受け取ったウォーロックソードを構え、支配人はオーガフォンとブレイラウザーを構えてアザゼルのいる方向へと振り返る。先程ギガランチャーで砲撃した箇所では、アザゼルが煙の中からゆっくりと姿を現す。

 

『我と同ジ、時止めの力を持ッタか……面倒なマネを』

 

「チッ、やっぱ無傷か」

 

ギガランチャーの砲撃を受けてもなお、アザゼルは鎧が少し傷付いているだけの状態だった。アザゼルが剣を掲げると、足場の周囲を漂っていた亡霊達の一部が引き寄せられていく。

 

『死シテなお“生”を望む魂共よ、我が鎧の糧トナルが良い…!!』

 

「!? アイツ、亡霊達を…!!」

 

「美空さん、刻盤(タイムレコード)で…」

 

「無理、です…! 戻せる、のは、生きてる人だけ…死んだ人の、時間までは…戻せない…!」

 

「くそ、このままじゃ…!!」

 

引き寄せられた亡霊達は次々とアザゼルの鎧に吸収されていき、アザゼルの鎧は修復されるどころか更に強化される事でより強固な鎧となり、アザゼルの全身から放たれている邪気も更に強まる。

 

『ドノ道、その娘ノ時止めを打ち破ル方法などいくらデモあるノダ。今はこの世界ニ、絶望の闇ヲ降り注イデやるとしよウ』

 

「待て!! 行かせる訳には―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

助、ケテ……美、空…チャン…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!!」」

 

アザゼルを止めようとしたその時、ディアーリーズと美空の脳内に雲雀の声が響き渡る。

 

「今の声、雲雀さん!?」

 

「お母、さん…? お母さん、何処にいるの……お母さん…!!」

 

『母ヲ探しテイるのか? ならば会ワセてやろう、今この場デ…!!』

 

「「「!?」」」

 

『『『『『オォォォォォォオオオオォォオォォォオオォォォォォオオォォォォッォオオオォォォォォオォォオォォォォオォォォオオォォォォオォォォォォオオオォォォォォォォォッ!!!!!』

 

アザゼルが右手から繰り出した紫の炎は宙に浮き、そこに無数の亡霊達が集まっていく。

 

『サァ、精々存分に働クガ良い!! 我が計画ノ、成就の為ニ!!!』

 

『―――グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!』

 

「な、これは…!!」

 

「デカいな……仮面ライダーアークくらいか、それ以上に…!!」

 

三人の前に、亡霊達が無数に集まって出来た存在―――巨人兵が降り立った。床に足が着くと共にズシンと音が鳴り、その大き過ぎず小さ過ぎない巨体は、三人に不気味な印象を植え付けるのには充分だった。

 

「!? お母さん…!?」

 

『アァァァアアァァウゥゥゥウゥゥゥゥゥ…苦、シイ……ミソ、ラ…チャン…!!』

 

「お母さん!!」

 

「雲雀さん!!」

 

『ウゥ、ガ…アァ……レ、イ……助ケ、テ…!!』

 

「クレア!?」

 

巨人兵に取り込まれた亡霊達の中には、雲雀とクレアの姿もあった。巨人兵の中から抜け出せないまま、二人は両手で顔を覆ったまま苦しみ続けている。

 

『所詮、糧トナル以外に利用価値など無イ存在ダ。我の為ニ役立てる分、アリガたいと思ウノダな』

 

「ッ…アザゼル、テメェ!!」

 

『クハハハハハハハハハハハハハハハ…!!』

 

支配人がオーガフォンで狙い撃つも、巨人兵がそれを右手で防御。その隙にアザゼルは自身の足元に巨大な紫色の魔法陣を出現させる。

 

『サァ、始メるとしヨウ……ココカラが本番の時ダ!!』

 

「「!?」」

 

「な、何だ…!?」

 

突如、彼等のいる足場が大きく揺れ始める。アザゼルの立っている魔法陣からはドス黒いオーラが大量に放出されていく。

 

『貴様等にも見セテやろう……これからコノ街に、終焉が訪レル瞬間ヲ!!!』

 

「アザゼル、貴様何を…!!」

 

『貴様は覚えてイルダろう? かつて死者共ヲ、より強く活性化サセタ兵器の存在ヲ』

 

「兵器……ッ!? お前まさか、閻竜(えんりゅう)を…!!」

 

『ソウダ!! ダガこの力は、モハヤあんなモノの比ではナイ!! 我は閻竜に更なる改良ヲ施シ、更ナル闇のエネルギーをコイツに組み込ンデやったノダヨ!! ドウダね暁零!! 素晴らシイダろう!? これ程ニマデ強化された閻竜……いや、暗黒竜へと進化したコイツデ!! 全テノ命に、終焉を迎エサセル事が出来ルノダからナァッ!!!』

 

「おい、ふざけんじゃねぇぞテメェ……何処まで腐れば気が済むってんだこのクソッタレがぁっ!!!!!」

 

『好キナだけ吠えるが良イ!! コノ兵器が完成した今、お前達に止メル術など存在シナイ!!!』

 

「あ、待て!!」

 

≪ゲイザー・ナウ≫

 

ディアーリーズが放った氷柱も当たる事なく、アザゼルは魔法陣の上に乗ったまま真上へと昇って行ってしまった。そしてディアーリーズ達の前にはゆっくりと迫ろうとしている巨人兵、そしてタイガーロイド率いる怪人軍団が立ちはだかる。

 

『小僧共メ、今度コソ纏メテ始末シテクレル!!』

 

『『『『『グルァァァァァ…!!』』』』』

 

「くそ、しつけぇなコイツ等…!!」

 

「あ、あぁ…お母さん…!!」

 

「大丈夫です美空さん……雲雀さんは、僕が助け出す!!」

 

「あぁ、クレアも一緒にな!!」

 

これ程の強敵達を相手取っても臆する事なく、支配人とディアーリーズは再び武器を構え直すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして外の世界に出て来たアザゼルは、“鍵”の真上へと降り立つ。

 

『生きトシ生ける人間共ヨ、貴様等ニモ見せてヤロウ……この鍵が持ツ真の姿ヲ!! この“(いざな)いの鍵”がモタラス真の力を!!! 全テノ魂を闇ニ誘イ、死の世界ヘト誘う力を!!!! 今この地デ、その全テヲその目に焼き付ケテクレヨウッ!!!!!』

 

アザゼルの叫びと共に、禍々しかった“鍵”の形状が少しずつ変化し始めた。手足が生え、尾が長く伸び、翼を羽ばたかせ、竜の頭部をも出現させる。

 

『ドウダ生者共!! コレコソが“誘いの鍵”の力ダァッ!!! 今に思い知ルガ良イッ!!!! フハハハハハハハ…ハーッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!!』

 

高笑いするアザゼル。そんな彼が操る“鍵”は本来の姿である“誘いの鍵”として―――暗黒竜としての真の姿を露わにしてみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ何じゃありゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」」

 

「ッ……あれは…!!」

 

上空を飛び回っていたファイズや龍騎、ギャレン達も暗黒竜の姿を見て驚愕する。しかし、驚くべき事はそれだけではなかった。

 

『『『『『ギ、ギギ、ギギギギギギギギ……グガァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』』』』』

 

「!?」

 

「な、何だ…うぉわっ!?」

 

「ギャーッ!?」

 

何と暗黒竜の出現と共に、マザーサガークやギガンデスヘブン、ウブメ達が一斉に活性化し始めたのだ。これには流石のファイズ達も動揺せざるを得ない。

 

「ちょ、待て待て待て待て待て待て待て待て!? 落ち着きたまえチミ達!! ここは冷静に話し合って平和的解決をしようじゃな…」

 

『『『『『グルァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!』』』』』

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉい!? 更に怒らせてどうすんだよ馬鹿野郎!?」

 

「ちょ、お前に馬鹿って言われると何か心外なんだが!?」

 

「それより……どうする?」

 

「「……」」

 

ギャレンの問いかけに、ファイズと龍騎は無言になり…

 

「―――逃げるが勝ちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「ですよねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

「…全く」

 

『『『『『グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!』』』』』

 

結果、ファイズ達は一目散に凶暴化したモンスター達から逃げ出すのだった。この時、ギャレンが仮面の下で呆れた表情をしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に、別の場所でも…

 

 

 

 

 

 

 

『ム、ゥ……ヌォォォォォォォォォォォ!!! 力が…力が漲ルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!』

 

『『『グルォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!』』』

 

『『『『『イィィィィィィィィィィィィィィッ!!!』』』』』

 

「「「「「!?」」」」」

 

ディアラヴァーズ達も、十面鬼達の異変に出くわしていた。

 

「な、何だいコイツ等!? 急にパワーアップって、いきなり過ぎておかしいでしょそれ!!」

 

「ねーねー、あれかなー? オニさんたちが強くなったのってー」

 

咲良の指差した方向では、暗黒竜が翼を羽ばたかせている光景があった。

 

「「な、何よあれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」」

 

「あ、あんなのが……あんなのって…!!」

 

「皆、無事!?」

 

「皆さん!!」

 

「あ、アキちゃん、みゆちゃん!」

 

凛やアスナ、響達が驚いている中、アキとみゆきも合流。そして彼女達の前に、より凶暴化した十面鬼率いる怪人達が立ちはだかる。

 

『フハハハハハハハ!! 素晴らしいぞ鍵の力……負ける気がせんわぁ…!!』

 

「うぇぇ、また面倒な事になってきた…」

 

「嫌そうにしない!! とっととコイツ等も潰して、早くウルと合流するわよ!!」

 

「「「「「おぉー!!」」」」」

 

「おー!」

 

アキが先導する形で、ディアラヴァーズは一斉に襲い掛かる十面鬼達を迎え撃つのだった。その後ろで、咲良は旗を振って可愛く応援しているのはここだけの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はたまた、別の場所でも…

 

 

 

 

 

 

『ム、クゥ……オォォォォォォォォォォォォォォ…!!』

 

「!? おいおい、何だってんだ急に…」

 

クリムゾンと戦闘中だったジェネラルシャドウ達が、暗黒竜の力で活性化を始めていた。

 

『な、なんという力だ……鍵の力がまさか、これ程の物とは…!!』

 

「はん、どんな力だろうが関係ねぇ……こっちはそれ以上の力で、潰してやりゃ良いだけの話だ!!!」

 

突然の活性化にも全く怯まず、クリムゾンは召喚したブラッディードールの軍団をジェネラルシャドウ達に向かって解き放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

更に…

 

 

 

 

 

 

 

『む、これは…』

 

「!? 何だこの邪気は…!!」

 

ショウと戦闘中だったガドルも、暗黒竜の力で肉体の活性化が始まっていた。しかしガドルはあまり驚いている様子を見せず、それどころか興味深そうに掌を見つめる。

 

『アザゼルの言っていた、鍵の力か……まぁ良い。どれほどの力か、試してみるとしよう』

 

「!?」

ガドルは大きく息を吐き捨てると、その全身が闇のオーラに包まれ始めた。その上半身には黒く禍々しい紋様が浮かび上がり、筋肉はより強固となり、その両目は黒く染まる。

 

ガドルは新たに、闇を司る形態―――暗黒態の力を手にしたのだ。

 

『制御を怠れば、たちまち俺の意識は闇に溺れる事だろう……だが敢えて、この力で戦ってみるのも面白いかも知れん』

 

「リスクを気にしないんだね。良いよ、ならばこっちもそうするとしよう……ヌゥゥゥゥゥゥンッ!!!」

 

ショウも同じように息を大きく吐き捨てる。すると彼の全身からメキメキと鈍い音が鳴り出し、茶色だった髪は白金色の地にまで着くストレートヘアとなり、両目の瞳孔は猫のように鋭く収縮。極めつけとして彼の背中からは悪魔とも言える翼が生え、頭部からは大きな角が伸び、そして胸元には『666』という悪魔の数字が紋様として浮かび上がる。

 

『…ほう』

 

目の前で起こった現象を見て、ガドルは思わず笑みを零す。ショウのその姿は先程までとは大きく異なり、完全なる“悪魔”としての姿に変わってみせたのだから。

 

「ふぅ、この姿になるのは久しぶりだ……さぁ、ゴ・ガドル・バ」

 

ショウはガドルを指で挑発する。

 

「セギレギ、タンギラセデグレヨ?」

 

『フッ……ゴグジデリゲジョグ、リントボゲンギジョ』

 

二人はグロンギ語で対話した後、ゆっくりと姿勢を低くして構え…

 

『「―――オォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!」』

 

そして、二人同時に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海鳴市を覆う結界、その外では…

 

 

 

 

 

 

「い・い・か・げ・ん・に・せ・つ・め・い・し・な・さ・い・よ・このアンポンタンがぁ!!!」

 

「ちょ、死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ…!! 死ぬってアリサ、少し待っ―――」

 

「言い訳無用!!!」

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」

 

「…あははぁ」

 

外に避難させられたアリサが、ルカに思いきりヘッドロックを炸裂させているところだった。彼女の繰り出す技でルカは口から泡を吹き始めており、すずかは離れた位置で苦笑いしている。

 

「たく……で、説明しなさいよ。この状況を」

 

「い、いやアリサ―――」

 

「し・な・さ・い・よ?」

 

「…イエッサー」

 

「も、もうよそうよアリサちゃん」

 

アリサの背後から見える修羅の姿に、ルカは土下座で答える事しか出来ない。そんなルカを庇うようにすずかも前に出る。

 

「何すずか。まさかアンタも、コイツの事情を色々知ってたとか言わないでしょうね?」

 

「あ、えっと……ごめんね」

 

「…あぁもう!!」

 

すずかは知っていて、自分だけ何も知らないでいた。そんな自分に腹が立ったのか、アリサは自分の髪を掻きながらルカと目を合わせる。

 

「アキヤ!!」

 

「は、はい!?」

 

「どいつもこいつも大変な状況に巻き込まれといて、周囲にはそれを隠して私にも伝えない!! アンタのそういうところ、なのはと全く同じよ!!」

 

「は、はぁ…」

 

「隠し事をしてたのはもう良いわ。アンタが今まで一体何をしていたのか、この海鳴市が今どういう状況になっているのか……一字一句、私が納得出来るまできちんと説明しなさい!!」

 

「アリサちゃん…」

 

「……」

 

アリサの言葉に、ルカもとうとう観念する。

 

「分かった、話すよ。僕が今、何をしているのかを―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、暗黒竜の真上では…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…貴様ハ何をしに来タ?』

 

アザゼルは振り返る事なく、うんざりしていそうな声で語りかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何、単純な話だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アザゼルの後方に、紺色の着物を纏ったガルムが降り立つ。

 

 

 

 

 

 

「潰しに来たのさ。お前の言う、計画とやらを」

 

 

 

 

 

 

『…全ク、鬱陶しい連中ノ多い事ダ』

 

 

 

 

 

 

アザゼルは無数の魔剣を、ガルムは無数の魔力弾を周囲に出現させる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

激闘は、まだまだ終わらない。

 


 
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